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雨乞い

作者: スターリング

今回初めて小説を描いてみました。なんとなく気まぐれで1時間程度で仕上げた作品ですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

どうか雨よ降ってくれ…。とても下らない願いだ。ただ部活に行くのが面倒なだけである。しかし、今雨が降って欲しい人はどれだけいるだろうか、また、降って欲くない人はどれだけいるだろうか。さらに、その想いはどれだけ強いのだろうか。少なくともあの日僕がてるてる坊主に願った想いは今よりずっと強かった。

「N、起きなさい! 部活に遅れるわよ。」僕は情けない事に目覚まし時計で起きれない。自分で止めたのを忘れてしまうくらい直ぐに二度寝を開始する。そのため毎日母の声が目覚まし代わりになる。寝起きの悪い自分にぴったりのやかましい目覚ましだ。ただもう少し早く起こして欲しいものだ。母に八つ当たりしながら朝食の食パン一斤を半分食べて、急いで身支度をし、いってらっしゃいの一言も言わずに、僕は玄関を出た。たまにはゆっくりと朝を過ごしてみたいものだ。そんな事を考えながらも急いで自転車を漕ぐ。何とか集合時間に間に合いそうだ。中学3年生になり、自分も随分とサッカーが上達したと感じていた春季大会、まさかの初戦敗退で呆気なく終わってしまった。夏季大会で僕等は引退するため、春季大会の悔しさをバネにみんなで練習に励んでいた。出来ればこのままずっとみんなでサッカーをしていたいが高校受験もある。次こそは絶対に負けられない。(川平慈英ではないが)そして今日も1日中厳しい練習に励んだ。大会まであと2週間…

「絶対に勝ってよ!」最近は弟の体の調子が良い。普段は心臓が弱く、しょっちゅう病院に通っている。そのため、あまり外で遊んだり出来ない。そんな弟にやっとサッカーをする自分を見せるチャンスが来たのだ。カッコいい所を見せなければというプレッシャーもあったがそれ以上に弟にサッカーの楽しさを自分が伝えられるのが楽しみで仕方なかった。弟の喜ぶ顔がみたい。僕は人一倍練習を頑張る事が出来た。大会まであと一週間…

「神様どうか晴れにしてくれ〜。」父さんが願っている。僕も切実に願う。人間は身勝手だ。都合のいい時ばかり神頼みするのだから。でも明日は本当に晴れてくれなければ困る。大会当日だ。小雨程度なら実施されるが晴れるに越した事はない。それよりもっと強く望んでいるのは弟が来れるかどうかである。雨の降った日に外に出ると弟は決まって体調を崩してしまう。そのため、雨が降れば試合を見に来れなくなるかもしれない。ここまでチームの為にも練習を頑張ったが弟の為にも努力した。自分のプレーで内気な弟に少しでも元気を与えたい。僕はその想いと共にてるてる坊主を弟と一緒に吊るした。大会まであと1日…

「嘘だ…。」降水確率は40%だったが降ってしまった。弟の様子を見ていても外に出られそうな様子ではない。残念だが初戦を勝ち抜くしか手段はない。ポジティブに考え、大会の会場へと向かった。

試合終了。信じたくなかった、信じたくもなかった。相手が強かったわけではない。ただあまりにも悪条件が重なった。雨が降り、僕らのチームの強みであるショートパスで繋ぐポゼッションサッカーをしようとしても中々ボールが伸びず、パスが回らなかった。そして相手のロングボールのカウンターにやられ結果は3対1で負けた。言い訳なんてしようと思えばいくらでも出来るが自分達の実力が出し切れなかったのが悔しくてたまらなかった。何より、弟に自分達のサッカーを見せる事が出来なかったのは後悔では済まない程だった。僕も弟がどれほど楽しみにしていたのか神様は知っていただろうか。こうして無情にも僕の後悔してもしきれない夏が終わった。

「嘘だ…。」あれから一年経った今、僕は志望校には受かったものの退屈な日常を過ごしている。一応部活はサッカー部に入ったがあまり盛んではない。自分自身も特にやる気はない。そんな時に雨が降った。降水確率は確か30%だった。こんな時に限って雨は降る。僕は一瞬口角が上がったが、直ぐに下がってしまった。

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