俺は絵本で人生を変える!!
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人気であれば続編書きますので。
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俺は悟ったね。何をかって?そりゃぁ「人生甘くない」ってことさ。苦い。ビターすぎる。甘党の俺からすれば、「苦いっ」って叫びたくなるくらいさ。……いや、今のはちょっとカッコつけ過ぎたな。高校一年生とは思えぬ渋さだったと思うぜ。
だいたい、川田先生も不公平だと思うぜ。生徒の自主性を重んじて欲しいもんだぜ、ホント。
……と、学ランを着崩している親友の岩橋に愚痴ってみた所、「絵本で読書感想文なんて書こうと思ったお前が馬鹿だ。」という至極真っ当なご意見をいただいた。
「くっそぉ。中学の頃は絵本でも何も言われなかったのにッ」
「相羽……。馬鹿なのか? いや、前々から思ってはいたが」
「バカじゃねぇよッ これでも文才はある方だッ 中一の頃は「変化の洞窟」って本の感想文で、賞を取ったんだぜ」
「あぁ、あの入って行くやつが全員、その名前をもじったものに変わる奴か。懐かしいなおい……」
親友は、俺たちが小学生の時、図書室に置いてあった本を思い出しているようだ。だが、小学生の時にパラパラと読んでみたくらいで、特に興味は湧かなかっただろう。
ましてや、中学の時には存在すら忘れるようなものだし、覚えていても読書感想文を書こうとは思わなかっただろう。
「で? 中二、中三は流石に……」
「おう、確か中二が、「お前ってめちゃくちゃ美味しそうだよな」で、中三が「くっそ大食い芋虫」だったな」
「全部絵本じゃねぇか!? よくそれで原稿用紙何枚もかけたな、おい!」
「言ったろ? 「文才はある」って。将来は小説家にでもなってやろうかね」
そう言って笑う俺に、親友は呆れて溜息をつく。
「あのなぁ、文才ある奴は現代文で32点なんてとらねぇんだよ」
俺の顔が一瞬起動しなくなったた。
「そ、それは関係ねーだろッ かの宮沢賢治だって、落ちこぼれた所からはいあがったじゃねぇか!」
「いや、宮沢賢治は優秀だったらしいぞ。 この間どっかの雑誌で見た。通知表、俺らで言う”オール5”だとさ」
「マジか!? ……これからは芥川龍之介しか読んでやんねぇ……!」
「微妙な反抗をするんじゃねぇ」
そんなことを愚痴りながら、俺は岩橋と共に、自転車に乗って下校していた。家から学校までは、決して近くは無いが、自転車で行けなくはない距離なので、いつも30分ほどかけて登校している。
そんな俺だが、やはりそこらの人よりは文才がある方だと思っている。欠点としては「長々とした文が書けない」ということくらいだ。
つまりは絵本向け、と言った感じだ。
「なら絵本書けよ。馬鹿なの?」と思ったそこのお前。そして今の俺の言葉で「こいつ……能力者か!?」と思ったそこのお前。まぁまずは落ちつけ。
そもそも、絵が描けていれば別に普通に絵本作家デビューしているさ。とっくの昔、小学生のころにな。
言うまでもなく、俺の絵は「落書きを越えた殺人兵器」と言われている。「殺人兵器」というのがよく分からないが、まぁ、音痴なやつが歌う歌も殺人兵器と呼ばれるし、つまりは「下手の域を超えた下手」という意味だろう。
だが、それは本当の事だ。小学生の図画工作の時間の時、俺は粘土で象を作った。だが、何故か先生からは「ジャガイモかな? 上手だね」と言われ、俺は泣いた。
ありえねぇだろ。何処の世界に長い鼻や図太い足の生えたジャガイモがあるんだよ。それに、絵を描いた時だって、俺はカッコいい恐竜を書いたのに「おっきい木だね」って、先生……。
……いや、あんまり言っててもしょうがねぇな。自分の首を切り落としたくなるし。
ま、まとめると「文は書けるが絵は描けない。だが文も大したことない」という、情けない現状だ。
「んじゃ、また明日な。明日くらいは部活、来いよ。木塚先輩、怒ってたぜ?」
「おう、「弁当食うから行けない」って伝えておいてくれ」
「サボり魔のくせに理由は阿保みたいだよな、お前」
「だってなぁ……。バスケってめんどくさいじゃん……」
「なら何で入ったんだよお前……」
「そりゃぁ憧れの木塚先輩がいたからだよ。高校で知り合ったお前とは違って、中学のころからの付き合いだ」
親友は「そりゃ、よござんしたね。精々ラブラブしてな」といってチャリをこぎ、俺とは反対の方向の夕闇に、溶けるように消えて行った。
うーむ、別に俺も先輩もホモじゃねぇからなぁ。いや! 案外先輩その気だったりするのか!?
受け止めきれるもんかなァそれ……。確かに俺はイケメンだが……。
そんなことを考えていた俺だが、すぐにその考え事も吹っ飛んだ。背中に激痛が走ったからだ。
「何ボーっとしてんだ、相羽。どうせまたろくでもねぇこと考えてたんだろ?」
「あ、木塚先輩。今先輩の事、一途に考えてました」
「きめぇ」
人間、なんでもない二文字や三文字の言葉が最も心に来るもんだ。先輩は俺より背も高く、イケメンだし、バスケもできる。それに絵も書けるという、天敵のモテ男なわけだが、口が悪いのが難点だ。
俺が言われた”酷い言葉ランキング”では、一位は「黙れ、口くせぇ」だったな。あれは泣きたくなった。
でもなぁ……。先輩が他の奴にそんな悪口言うことねぇよな。……まさか俺が特別!?
「聞いてんのか、相羽ッ」
突然俺の耳に、先輩の声が響いた。あぁ、考えてる途中にボンヤリと先輩の声が聞こえると思ったら、何か言ってたのか。
だが、俺はここであえて、自分の疑問をぶつけてみる。
「先輩……!」
「あ? なんだよ。てか、さっさと進め。道のど真ん中で止まるな」
「先輩って……! ツンデレなんですか!?」
俺の腹を矢のような一撃が貫いた。
俺は渋々、自転車を押して歩く。先輩は近くの駅から通学しているので、自転車を持っていないのだ。
「いいか? 俺との作業で忙しいのは分かるが、部活にゃ顔出せよ?」
その意見はもっともだ。来るべき”その日”に向かい、俺と先輩は人生を変えようと結託した仲なのだ。いわば、“生涯を共にした戦友”と言ったところか。
「分かってますって。……でも先輩、俺たちだけって、なんかつまらないですよ。岩橋呼びましょうよ、岩橋!」
「お前アイツ大好きだな……。でも駄目だ。もし、大成功した時に賞金の分け前が減るし、岩橋はよくしゃべるからな。あっという間に校内のトップニュースだぜ……」
木塚先輩が恐れるのも、分からなくはない。岩橋は「メガ橋(メガホン岩橋)」という称号を貰うほどにぺちゃくちゃとよく喋る。
「これ、絶対秘密な」と言っていた同級生の話も、次の日には学年の常識となっているレベルだ。
「まぁ、確かにそうですよね……」
そう言っているうちに、俺と先輩は駅に着いた。だが、俺が駅に来たのは、別に電車に乗るわけでも、先輩を見送るわけでもない。俺の目的は、その駅にある人気のないカフェだ。
ボロボロのくすんだ緑色のドアを開けると、寂れたベルの音が響いた。そして「あぁ、君たちか」というにこやかな声が迎えてくれた。
カフェのマスターの坂本さんだ。白髪頭で、しかも男のくせに、年齢は「永遠の25」という、どこかの映画を想わせるようであり、「お前何処のおばさんだよ」と突っ込みを入れたくなる設定だ。
先輩は「とりあえず、コーヒーで」と言って、鞄の中から原稿用紙を取り出した。そして、カウンターで左隣に並ぶ俺に渡す。
「ほら、原稿。誤字は直しておいたぞ」
「ありがとうございます。……で、どうでした? 書けそうですか」
「いや、何と言うか。絵本にBLネタは拙いだろ」
俺が「やっぱり」と言って笑うと、先輩に頭をはたかれた。そして、腕を組んで「ちゃんとしてくれよ」とグチグチ言っている。
「あのなぁ、コンクールまで後一週間だぜ? いまだに話もかけてないっておかしいだろ……」
「だから今日はこうやって打ち合わせをしに来たんじゃないですか。ね、マスター!」
困ったような顔で「え、あ、うん」と言われた。基本ノリはいい人だが、突然の出来事に弱いのが難点だと思う。
さて、話は変わるし、もうお気づきの方もいるかもしれないが……。
俺と先輩は二人で絵本作家になろうと思っている。
俺が文を書き、先輩がそれに沿った絵を書く。何ともいいコンビネーションじゃないか。だが、肝心の俺の「文」が、「子供っぽすぎる」と言われたかと思いきや、次の作品は「子供がよめるもんじゃねぇ」と、中々厳しい評価だ。
俺達は既に、ネットで合作を先輩のブログに投稿しているが、何しろ閲覧数が2ケタ程の為、勿論有名にはなれそうもない。
なので、夏休中に行われるコンクールでみごと最優秀賞に輝き、作家デビューするつもりなのだ。
持ち込みをすれば早いのだろうが、先輩という名の厳しすぎる一次審査が終わった上での二次審査を受ける気力は俺には無いので、是非ともコンクールで大当たりを狙いたい。
だが、コンクールにはあと数日しかないため、こうして二人で案を練っているのだ。
「まず、大まかなストーリーだ。下手に長くねぇやつな。何か言ってみろ」
「そうですねぇ、王子が姫を救う……みたいな、王道ですかね」
「なるほどな。……で、姫はどうして救わないといけないんだ? この間みたいに「姑と嫁の関係」とか、ドロッドロのやつは無しな」
「分かってますって! 悪い魔女が魔法をかけた、とかどうですか?」
「ほう、お前にしては普通のストーリーだな。……で、どんな魔法だ? 前みたいに「40過ぎまで結婚できない」とかは駄目だぞ」
「俺も学習してますから、大丈夫ですよ。コップになっちゃうってのはどうです?」
「ほぉ、意外性があっていいな。……だが、何でコップなんだ?」
「王子様が、お茶を飲もうとしてそのコップに口を付けたら、キスしたことになって……みたいな感じです」
「まて、お姫様、お茶でビッショビショじゃねぇかッ!!」
坂本さんが折角入れてくれたコーヒーを放置したまま、俺と先輩の議論は続いた。そして、完全に日が落ち、二人とも親からどやされるレベルの時間になってしまった。
「……俺は「部活」って言っとくわ」
「……じゃぁ、俺もっす」
「ふざけんな。お前は来てねぇだろ」
先輩はそう言い残して、電車のホームへ向かって行った。ギリギリ終電には間に合ったようだ。
俺はそれを確認し、急いでチャリをこぐ。坂本さんの「頑張れよ! 相羽君!」の声を胸に。
俺と先輩の冒険は、まだ始まったばかりだ!!
………下手なラストで申し訳ない。こっちも門限があるんでな。
まぁ、そんな俺たちだが、十年後、有名すぎる絵本作家になるのは、まだ先の話だぜい。




