後編
あの後、赤ちゃんに無関心な彼等をほっといて私は世話を始めた。おっぱいは出ないので乳母に選ばれていた使用人に頼み、両親達に赤ちゃんを私にくださいとお願いした。
「お願いします!赤ちゃん私にください!」
私はお姉様に約束した。だから助けたい。前世を覚えている私ならできるはず。
「好きにすればいい!私の子じゃない!二度と顔を見せなけれいい!」
お義兄様から言われたが都合がいい。
「そうよ!親友のフローリアを殺した子なんて見たくないわ!」
この子の母親を殺した人とは関わらせてくない。
「面倒を見るのはいいが使用人としてだぞ」
酷い目に合わせるよりいいわ。
「捨て子として貴女が育てるのよ、家名を名乗ることは許さないわ!」
面倒が見られるならどうでも良いわ。生きて行く知恵は教えるから。
「はい、それでもいいです。」
こんな事を言う人達に見切りを付けて優しい子に育てよう。お姉様と約束した可愛い息子なのだから。
早五年の月日が流れたお姉様の息子もすくすく育ち前世の記憶を使い英才教育を施した。しかし両親に暴露るとうるさい為、人にはばれないようにしている。
「お姉ちゃんお嫁に行くの?」
五才なる甥が泣きそうな顔で聞いてきた。
「大丈夫、貴方も一緒に行くのよ、いやかしら?」
この子を置いていけるはずない!置いていけばどんな目にあわされるか分からない。
十二歳になった私に婚約の申し込みがきた。帝国の王弟殿下らしい。あの子と一緒ならば何処にでも行きます。と返事を返した。
「了承の返事が帰ってきたわ、これであの子を連れていける。」
王女殿下は、元姉の夫に嫁ぐ事が決まっている。よく聞くと、王女殿下の替わりに私が選ばれたようだ。
「王弟殿下お迎えありがとうございます。私がミリアリア・ハージェスと申します。」
王弟殿下のオーラは中々美しいこの人は信じられる。
「この国を立つ前に一つ聞きたい。何故そこにいる子供が条件なのか知りたいのだ」
真剣な顔で殿下が聞いてきます。今、沢山の証人がいる前なら話せるわ。
「それを話すには、私達の身の安全を約束して頂かないと話せません」
嘘を言ったと殺されるのはごめんだわ。
「分かった、帝国将軍ライジットの名にかけてそなた達を守ろう」
それなら大丈夫ね。話すわ全て。
「この子は、私の亡くなったお姉様の子供です。子を生むときに亡くなったのですが本当は違います。殺されたのです、子殺しのお茶をのまされて、そのお茶は特殊なもので王族以外では手に入れられ無い物でした。様子がおかしくなる前に王女殿下に貰ったお茶を飲んでいたのです。」
「本当なのか!そんな物を飲んだのか!」
近くにいた、元お姉様の夫が叫びました。
「これが、私がすり替えたお茶です。どうぞ。」
震える手で証拠のお茶を受け取ります。
「でも、そのお茶は王しか扱えない物でした。王女殿下にお茶を渡したのは王です。お姉様が死ぬ事が、王の望みなんだと気が付きました。この子をこの国で騎士にすることは出来ません!母親を殺した王を守らせたくはないからです。」
「そなたの気持ちは分かった。帝国で健やかに過ごすが良い、私と共に行こうそなたを歓迎する。」
「王弟殿下ありがとうございます。お母様お父様今までお世話になりました。皆様のお幸せを祈っております。」
後ろで怒鳴り声が聞こえます。全ての真相を知った人達がどうなるのかは私達にはもう関係ありません。
帝国に来てからは、王弟殿下にはよくして貰っている。帝国皇子が成人しないと跡取りは作れないため、まだ本当の意味での夫婦ではないが、私達は大切にされて幸せだと思ってる。
お姉様の息子アークも王弟殿下に懐いて幸せそうだ。もうここには、私達を蔑む者はいない。これから穏やかに暮らして行こう。