電子辞書なんて貸すんじゃなかった
あなたならどうします?
電子辞書といえば、田舎の私たちからしたら、高級品の分類になる。
紙の辞書は重たくてぱっと調べたい単語を探せないけど、電子辞書ならばローマ字を覚えて打ち込むだけで、調べたい単語が出てくるのだ。
なんと画期的なものを作ってくれたのだろうか。
心から感謝したい。
親に中学生になったとき、買ってくれるように乞うたのだ。
しかし、すぐには買ってもらえなかった。
しかし、条件としてテストで学年十位に入れば買うと約束し、見事私は電子辞書を我がものにしたのだった。
しかし、電子辞書にも困った事件が起きるようだ。
それが今、自分の目の前で起きている。
別に珍しいものではないが、持ってない人からしてみたら、一度は触ってみたいと思うものだ。なんでもいいから文字を打ち込んで、画面に出てきた意味を見て、驚く。
それはいい。
検索履歴に自分が調べたこともないような如何わしい単語を調べる男子を見過ごすこともできる。
だけど、これについてはできなかった。
『iloveyou』
いらぶゆぅ?
いや、違う。
アイ・ラブ・ユー……ですよね?
隣の席に座る男子に単語がわからないから、辞書を貸して欲しいと言われたのだ。
その男子はクラス内でも、たぶん学校内でもバカの分類に入るほうであった。
そんな男子が検索したのは、『I LOVE YOU』だったというわけだ。
何を調べるのか気になって、私が覗き込もうとしたのだが、その前に私の顔に画面を突きつけられて、「意味出てこないんだけど」と言われたので、検索欄に書かれた単語を見たら、それだった。
生憎、単語で調べなければ、意味は出てこない。
そのため、男子はこの文の意味がわからない。
だが、ここで疑問が浮かぶ。
この男子が果たして、『あなたのことを愛してます』を一度も英語で発したことがないのだろうか。
バカにも二通りある。
勉強が出来ないから『馬鹿』な人。
そして、考え方が『バカ』な人。
隣の男子はどちらかといえば、後者の方であったのだけれど、やはり、勉強の方もあまり出来のいい生徒ではなかった。
しかし、それでも『アイラブユー』くらい口にしていてもおかしくないはずだ。誰かに向けて発していれば、誰かしら指摘してくれるのではないか?
というか、意味ぐらい知っていてもおかしくないはずだ。
なのに、今こうして調べている。
じゃあ……本当に……愛の告白?
「そんなわけあるかっ!」
心の中でそう叫んだ。
大胆にも程がある。
画面が目の前にあるため、相手の顔を見ることはできない。
見たいが見れない。
どんな顔をしているのだろうか。
真っ赤にしていれば、本当なのかもしれない。
しかし、見れない。
気になって仕方ない。
だが、平然としたら?
それはそんなことを考えてしまった自分が恥ずかしいだけだ。
バカを抜けば、顔もまぁまぁだし、背は高いから、バカだけ見せなければ、モテるんじゃないだろうか。そう考えてしまうから、こんな想像を考えてしまうのだ。
それに、今は授業中だ。
この意味を口にすることなどできない。
言ってしまったら、自分から告ることとなってしまう。
自分から言わないで強制的に私から言わせるのか、なかなかやる。
いや、待て。
ただのイタズラかもしれない。
私を辱めようとしているのかもしれない。
「お前でもこれはわからないのか?」
遂にはそんなことを言ってくる。
私にそんな度胸があるかっ!
そう言ってやりたい。
いや、殴り飛ばしたい。
こんなバカに私は弄ばれるのか。
一体どうすればいいの?
誰か助けてっ!!
あなたならどれが合っていると思いますか。
静かな授業で、机と机に間が空いている時に、友達と電子辞書で会話したことがありました。
ある意味、ハイテクになった手紙のようなものだと思ってください。
電子辞書の検索欄に文を書いて話し合うだけです。
だったら携帯使えば? と思うでしょうけど。
一々電子辞書を貸し合い、先生から変な目で見られましたが、別に僕らは辞書を借りて、貸しているだけ。授業はちゃんと受けているんですよ。どうですか? 先生の話は聞いてませんけどね。
で、ふと思ったのが、この話。
読んで面白かったでしょうか?
感想・評価よろしくお願いします。というか、彼女はどうしたらいいんでしょうかね。意見待ってます。