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動き出した探偵部

「みんな、考えられる真相を出していこー!」

 渚が元気一杯に、部長らしいことを言った。

「そうだな……。従妹とかはどうだ?」

 そう言ったのは飛鳥だ。

 体を乗り出し、快活な印象を受けるポニーテールが揺れる。

 従妹か……。

 確かにありえるな。さすがは特待生。的確な判断だ。

「迷子じゃねーの?」

 花音ちゃんは悪態を吐くように言い放った。

 小柄で人形のような容姿にその言葉遣いは似合わない。

「うーん、そうねぇ……。同級生?」

 由亜さんは、それはそれは立派な胸の前で腕を組みながら悩ましげにそう言う。

 おお! 豊満な双丘が腕に圧迫され強調されている。

 いやあ、いい眺めだ。

「おい、稜。鼻の下伸びてるぞ」

 飛鳥が白い目で俺を見てくる。

「い、いやこれは別に……」

「あら? どうしたのかしら、稜くん? ふふふ」

 官能的な笑みを浮かべ俺をからかってくる。

 はっきり言って由亜さんには勝てない。あと、男の本能にも。

「あ! まただ! そんなに胸がいいのか! 巨乳が!」

 飛鳥が涙目に訴えてきた。

「悪かったな、省エネサイズで……!」

 そう言い、黙りこくってしまう。って、なんで『省エネ』なんだよ。やっぱりエネルギーがそっちにいってしまうのか?

「飛鳥、アタシも頑張るからさ、一緒に高みを目指そうぜ。な?」

 うわあ……。会話に入りずれー……。

 男子高校生にとってこの空間は些か耐えがたいものがある。

 よし、ここは俺が何か案を出そう。

 ……、これでどうだ!

「お姉さん……とかはどうだ?」

 どうだ? 結構手ごたえあると思うんだが。

「お姉さん……まあ考えられるね」

 よし、渚には好印象のようだ。

「じゃあ、お兄さんはどうかしら?」

「はいぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 声を上げたのは他の四人を除く俺一人。

「お兄さんいる、って依頼人も言ってたでしょ?」

 由亜さんは平然とそんな質問をした。

「確かにそうですけど……」

 でもお兄さんだぞ?

「そう。女装好きの兄。いえ、弟に無理やり女装させられてる兄! あぁ……。そしてきっとこんなことを言うのよ。『兄さん、可愛いですよ』『もう〇〇くん! そんなことお兄ちゃんにしちゃイケないよ!』『うふふ。似合ってますよ。ああなんて愛おしいんだ。僕の兄さんがこんなに可愛いなんて』『え? 〇〇くん……駄目だよ。見つめないで……恥ずかしい……』『兄さん……』『〇〇くん……』。うはぁっ! 危ないわ。何、このカップリング。いいわね……。うへへ……」


 ……………………………


 由亜さ――――――――――――んッッッ!!


「えっと……夢ですよね」

 由亜さんが恍惚の表情で悶えている。

 いや……さすがに俺でも引きますよ。

「いや現実だ。そういえば、稜はまだ知らないんだな。由亜は腐女子なんだぞ」

「それもかなりこじらせたヤツだ。ったく……。おい、由亜。戻って来い」

 花音ちゃんが由亜さんの肩を揺さぶる。

 ゆっさゆっさ。

 おお……たわわに実った果実も一緒に揺れている。

「やっぱり胸なんだな!? う……うゎ――――――ッん!!」

 飛鳥が泣きながら、部室から全力疾走で逃亡した。

「は……。私ったら……一人で妄想に。うふふ、ごめんなさいね」

 恥じらいを見せる由亜さん。こういう反応は珍しい。

「えっと……飛鳥もどこか行っちゃったし、今日の活動は終わりにしよっか。ね?」

 明らかに困っている渚は、事態を収拾するためにか部長権限で部活を終了させようとした。

 ナイス判断だよ!

「じゃあ、解散!」

 


 こうして、初依頼後第一回の部活動は終了した。


 



       ◇                   ◇





 とある大企業の会議室、男が二人向かい合っていた。

「何だと? 探偵部がしたのか……」

 二人の男のうち、年上だと思われるのが渋みのある声でそう言った。

 世界に名を轟かせる大企業に相応しい巨大な会議室にはいやに重い空気が流れていた。

「はい。聞くところに因りますと、お嬢様も入部されたとか……」

「ふむ……。出来るだけこの世界(、、、、)には関わって欲しくなかったのだがな」

 またしても沈黙が流れる。

「だが入ってしまったからには仕方ない。我が社は依頼をしていくことにする」

 上司と思しき年上の男は立ち上がりその場から去っていった。

 上司が部屋から出るともう一人の男はすぐに携帯電話を取り出し、電話を掛けた。

「……成宮(なるみや)こうさんですか? ……はい。……はい。はい。よろしくお願いします。例の件、頼りにしてますよ」

 成宮洸。その男、探偵部の創始者なり。

 

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