夢であれ
どうしてこうなったのだろう。そう、いつもと同じ日常のはずだった。
理由など誰も知らない。なんなら、理由なんてないのかもしれない。
でも、もし理由があるとしたらそれは傲慢な人類への罰なのだろうか。
「はーい、ホームルーム始めるから静かにしてー」
担任の先生に言われざわざわしていた教室が静かになる。
そこでクラスメイトの男子生徒がふざける。
「せんせー。まだおわんないんすかー?」
小さく笑いが起きる。
先生も少し笑いながらまだ始まってすらないからと言った。
いつもと同じ。
先生が明日の必要事項を伝えてホームルームが終わる。
クラスメイトが次々に教室から出ていく中、
僕も早足で教室を出ようとし、友人に呼び止められる。
「雪夜ー」
止まって振り返る。
「んー?」
高校生になってからできた友人のひとりがこちらにやってくる。
今日は友人のたまにある誰かと一緒に遊びたい日なんだろう。
「今から、サブン行かね?」
ほら、やっぱり。でも。
「ごめん、今日は用事があるから」
今日は家族と一緒に出掛けるから早く帰って来いってお母さんに言われている。
高校生になってから数ヶ月ぶりの平日のお出掛けだ。
しかも、お父さんから行ったことがない美味しいお店に連れて行ってくれると言われている。
なのでかなり楽しみにしている。
友人は僕の返事を聞いて「わかった、じゃ、また明日」といいさっさとどこかに行った。
多分、他の人を誘いに行ったのだろう。
僕も早足で教室から出て行く。
歩きながら片耳にワイヤレスイヤホンをし自分の好きな曲を流す。
学校を出て踏み切りのとこまで少し早足に歩く。
踏み切りがちょうど降りて歩みが止まる。
踏み切りが鳴り電車が通るのを見ながら今日どこに行くのだろうとわくわくしながら考える。
電車が通りすぎ踏み切りが上がるのを見ながら一歩踏み出そうと足を動かす。
その瞬間、
地面が消えた。
「ッッ!!」
あ、死んだと思った。
声なんて出なかった。
視界がスローモーションになる。
体が真っ暗な穴に落ちて行く。
この時、最後に残ってる記憶は、真っ暗な底なしの闇だった。
少し煩い音に目が徐々に覚める。
目を開けると真っ暗な空間だった。
あれ、部屋の電気なんていつ消したっけ。
お母さんが消してくれたのかな。
と思いながら今って何時、とスマホを探そうとする。
確か、スクールバッグの中にとそこまで思ったところではっとする。
さっき、学校からの帰り道で地面が突然消えて、穴に落ちたことを。
そこまで思い出して自分の体を手探りで無事か確認する。
傷も何もない。服も学校の制服のままだ。
次に荷物を探す。
ない。荷物がない。
どうしよう。お母さんたちにどうやって連絡しよう。
どれくらい経ったかわからないけど、もうとっくに家に着いてるような時間かな。
体は倒れていたようでゆっくり起き上がらせながら考える。
被害届とかもう出されてるかな。絶対に心配させ
「テロ組織の仕業よ!」
甲高い女性の声が聞こえた。
声がした方に顔を向ける。
不思議なことに人を朧げながら把握できた。
暗いので顔の詳しい特徴はわからないが性別と大まかな年齢くらいはわかる。
こういう視界を見たことがある。
なんだったっけ。
確か赤外線カメラみたいな、そういう視界に似ている。
そう思っている間に声がヒートアップしている。
「だから、これはテロ組織の仕業しかないでしょ!」
50代くらいの女性が甲高い声で騒ぎ立てる。
周りを少人数の人が囲み、それ以外の人は遠巻きに見ている。
まだ、周りには少なくない人数の人が倒れている。
だけど、この声で起こされたのか少しずつ起き上がっていく。
「じゃあ、この空間もテロ組織が作ったって言うんですか?」
近くにいた30代くらいの男性が興奮したような声で言い返す。
「そうに決まってるでしょ!」
女性も興奮したように言う。
自分より興奮している人を見たからか強張っていた体から力が抜けていく。
まだまだヒートアップしそう。
そう思った僕は状況を把握するために周りを見渡す。
だいだい周りにいるのは20代から70代くらいの人たちが多い。
その人たちは自分と同じくらいの年齢で固まっているかヒートアップしている集団を見ている。
僕と同じ10代はいない。
そのことに気づいた時、また体が少し強張った。
深呼吸する。何回も何回も。
ほんの少しずつ力が抜けていく。
大丈夫、大丈夫。
まだ、生きてる。
最後にもう一回深呼吸をし、また周りを見渡す。
起き上がってきている人たちの中に自分と同じ10代の人がいるかもしれないと思いながら。
もう倒れている人は誰もいない。
全員、起き上がってる。
その中でも10代みたいな人はいなかった。
今度は強張らなかった。
顔をヒートアップしている集団に向ける。
人数が倍くらいに増えている。
煩いくらいに声が飛び交っている。
巻き込まれないように人が少ない場所へゆっくり移動する。
どれくらいそうしていただろう。
体感数十分くらい経ったときいきなり上から大きなドアが降ってきた。
音はしなかった。
あたりが静まり返る。
そのドアは真っ白で2メートルくらいの高さがあった。
幅も分厚くて白以外色が何もなかった。
真っ白なドアは真っ暗な空間ではかなり目立った。
人々が距離を置いてドアを囲む。
みんな周りの人を伺っている。
そしてそこかしこから囁き声が聞こえてきた。
みんな、周りの人とどうするのか相談してる。
そこに一人の人が人々の輪を抜け、扉の前まで走ってきた。
扉の前に止まる。
20代の男性だった。
周りが静まり返る。
男性は周りが止める前に勢いよく扉を開けた。




