星に願いを
ゆいは焚き火の前で膝を抱え、夜空を見上げていた。
街灯のない山の夜は、想像以上に暗い。けれど天を見上げれば、息をのむほどの星々があった。
——どうして、こんな所まで来ちゃったんだろう。
二十歳。社会に馴染めなかった、私はこれまでの生活から全てを放り出して逃げだした。
職場では人との話が噛み合わず、愛想笑いでやり過ごす日々はすぐに限界を迎えた。友達と呼べる人も、気づけば誰も残っていなかった。
勢いで解約したアパート。
勢いで引き出した貯金、ちょうど100万円。
勢いで買った、過疎地の山。
「……自給自足、なめてた」
小さく呟くと、言葉は夜に吸い込まれていった。
農業知識ゼロ。生活能力ゼロ。人と話すのも苦手。
なのに「一人で生きる方が楽だ」あの時の自分は本気でそう考えていた、今では信じられない。
焚き火は心細く、テントは薄く、現金も殆ど使い果たした、これからどうしよう。
その時
夜空を横切る、一筋の光。
ゆい「あ……」
流れ星。
ずっと速くのはずなのに、ずっと近くに感じる。
願い事を三回唱えると叶う。
子供の頃から何度も挑戦したが、流れ星が消える前に三回唱えることは不可能に思えた。
でも。
ゆい「……ダメ元、だよね」
息を吸い、星を目で追いながら、ゆいは必死に口を動かした。
ゆい「何でもやってくれる美少女に甘やかして欲しい」
ゆい「何でもやってくれる美少女に甘やかして欲しい」
ゆい「何でもやってくれる美少女に甘やかして欲しい」
——言えた。
三回、きっちり。
流れ星はまだ消えてない。
それどころか。
ゆい「……え?」
光は尾を引きながら、まっすぐこちらへ——
ゆいが所有する山へと落ちてきた。
次の瞬間、遠くで地面を叩く鈍い音が響いた。
ゆい「嘘でしょ!?」
ゆいは慌てて懐中電灯を掴み、音のした方向へ走った。
転びそうになりながら、草をかき分け、斜面を上る。
光が消えた地点。
そこには、浅く抉れた地面と——
ゆい「……人?」
白いワンピース。
とんがり帽子。
絵本から抜け出してきたような、魔法使い然とした少女が、仰向けに倒れていた。
微かに、胸が上下している。
ゆい「生きてる……?」
頭が追いつかない。
幻覚? 夢? 山に引きこもった初日で、もう精神崩壊?
少女は気絶しているようだった。
ゆいは震える声で呟いた。
ゆい「……もしかして、私の願い事のせい……?」




