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通称『普通』の黒崎高校!  作者: とい


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2/2

御影蓮の日常

 俺、御影蓮の朝は別に早くない。


「‥‥‥ごちそうさま」


 母、御影京子さんが作ってくれた朝食を、俺はいつも7時半に過ぎに食べ終える。そして、俺は鞄を掴んで立ち上がる。


「ちょっと待って蓮くん! お弁当あるから!」


「あ、いつも‥‥‥本当にありがとうございます」


 いつものように素直な気持ちを伝え、ありがたく弁当を受け取る。すぐに鞄に入れて、リビングを出る。


「そんな他人行儀にーーー」


「時間無いから、ごめん」


 あまり気を遣わせても良くない。

 京子さんは俺を含めて、3人分の弁当まで作ってくれているのだから。俺が長居してると家事も捗らないだろうし。


「‥‥‥いってきます」


 誰にも聞こえないような声で呟き、玄関の扉を開ける。それが、母さんの教え。




 いつも通り、俺は8時前に教室に入る。

 通称の『普通』の黒崎高校。教室も普通である。いや、普通じゃない教室の方が少ない‥‥‥そもそもどんな感じ?


「「「‥‥‥‥‥‥」」」


 賑やかだった室内に、突然として静寂が訪れる。

 俺って何か特別な力があるのかも‥‥‥みたいな発想は小学生で卒業した。厨二‥‥‥じゃない中2の時も全く、これっぽっちも、いや本当に。


「お、おはよ‥‥‥御影くん」


 通り過ぎていく中で、挨拶してくれる人がいる。

 それはクラスの学級委員長。彼女は心優しいので、交流の無い俺にも挨拶してくれる。


「おはよ、委員長」


 学校で話す第一声は、大抵委員長の挨拶を返す時だと相場が決まっている。俺の相場ね。

 そして、俺の席は窓際の1番後ろという神席。前回の席替えで引き当てたのだ。運というチートスキルでな。


「あ、あのっ! 今日‥‥‥御影くん日直だよ」


 委員長の気遣いが優しい。そして今日豪運も持ち合わせていたようだ。


「ありがと。教えてくれて」


「い、いえ‥‥‥」


 気まずそうに呟く委員長に一瞥する。

 その後、俺は足早に後ろを歩いて自分の机に鞄を置く。椅子に座って教科書を入れ込んでいく。俺って置き勉とかしないからね、優等生だし。


「ーーーおはよう御影蓮。あなたが来ると静かになるから助かるわ」


 開口1番。どう返したら良いか分からない言葉が飛んできた。


「‥‥‥おはよう、小鳥遊」


「フルネームで読んで」


「そんな要求聞いた事ねえよ‥‥‥」


「ふんっ、私ルールよ」


 椅子に座った途端、隣の小鳥遊たかなしさくから小言を貰うのも、最近の日常になりつつある。高校生ならではのコミュニケーションだ。

 宿敵ライバル呼ばわりしてきた相手でも、俺は気兼ねなく会話をすることができる。


「‥‥‥毎朝勉強して、精が出るな」


「や、やだ。何言ってるの変態」


 前言撤回。あまり会話にならない。ていうか会話したくないかも。


「‥‥‥」


「な、なによ。言いたい事があるなら言いなさいよ」


 ガン見してくる小鳥遊に対して、俺は言い告げる。


「そこ、前提からして間違ってるぞ」


「前提って何よ!?」


 ほら。数学の話も会話にならないでしょ?




 小鳥遊朔は、その『普通』じゃない雰囲気で次々に人を魅了していった。


「小鳥遊さんの好きなタイプは?」


「ていうか彼氏っているの?」


「LINEやってる?」


 外見だけは正統派美少女だから、主に男が群がってきている。正直、隣の席に人が集まってくるのは見てて面白い。


「まるで発情期ね。気色悪い」


 そして、小鳥遊は持ち前の内面で一蹴していた。その堂々とした口の悪さが、むしろ清々しいと好評となり。


「小鳥遊さんっ、一緒にお昼食べよ!」


「小鳥遊さんの髪ってホント綺麗だよねっ」


 女子たちからの人気も、瞬く間に獲得していった。ほんと、大した女子高生だ。


「ごめんなさい。小テストの勉強しないといけないの」


 だが、小鳥遊は一瞥もせず机に縋り付く。5時間目にある英語の単語テストに向けて。


「そこの綴り間違ってるよ?」


「そんなっ!?」


 お前‥‥‥間違えたまま覚えちゃったのか。


「うぅ‥‥‥」


「さ、レッツゴー!」


「お〜!」


 そして、意気消沈の小鳥遊は女子2人に学食へと向かっていった。


「いただきます」


 俺は‥‥‥弁当を1人で食べた。すぐに食べ終わって昼休みが長くなるから理に適ってるぞ!



 そして放課後。

 ここで暫くの間、外を眺めて時間を過ごすのが俺の習慣。時には宿題したり、本を読んだり、寝たり。

 日常は、こうやって何事も無く続いていくのだ。


「ーーーねぇ」


 日常は、こうやって突然脅かされるものだ。

 頬杖を突いてぼんやりしている所を、小鳥遊に話しかけられたのだ。


「‥‥‥なに?」


「私は噂の転校生だから仕方ないけど、あなたは部活動とかやってないの?」


 痛い所を突いてくる。本当に痛い所を突いてくる。


「やってないよ」


「‥‥‥そう」


「だから勉強とか読書に時間割けても、けっこう余るくらいだ」


「何それ嫌味!?」


 いや、そう思うのは自意識過剰だと思う。小鳥遊の机には、教科書とノートが広がっている。


「‥‥‥お前も頑固だな」


「何がよ」


「今日の小テストだよ」


「うっ」


 隣の席だから、プリントを交換して丸付けする。つまり、小鳥遊の点数が分かってしまうのだ。


「あなたは満点だったわね。なに、自慢?」


「自慢っていうか‥‥‥まあ義務みたいな感じ」


「義務?」


 小鳥遊は椅子ごと俺の方を向き、真っ直ぐ見つめてくる。その視線が、俺には少し痛い。


「まあ、家族を心配させないように」


「私は心配されてるわよ? 『ちゃんと勉強した〜』って耳にタマができるくらい」


「タコな。なんか少し卑猥に聞こえるぞ」


「っ、だれの耳がキ○タマよ!!」


「お前だよ!!?」


 なんか話すのバカらしくなってきた。


「‥‥‥のよ」


 小鳥遊が視線を落として小声で呟く。俺は耳を澄ますことにした。


「え? なんて? 俺に負けられないって?」


「聞こえてるじゃないの!?」


 たまには揶揄ってやらないと、割に合わないからな。防戦一方は好きじゃない。


「それで、なんで俺に負けられないんだよ。今日の小テスト勝ったし、理由を聞かせてもらおうか」


「ぐっ、、卑怯よっ!」


「いや約束なんてしてなかっただろ‥‥‥」


 ほんと小鳥遊の頭を覗いてみたくなった。いや、卑猥な意味とかでは無く。


「‥‥‥もういい。私があなたに勝ったら教えてあげるから、精々眠って震えてなさい」


「あ、そう‥‥‥」


 もうツッコむの疲れて来たし、口休めするか。


「ーーーそこ、計算が間違ってる」


 自分の椅子を持って引き寄せながら、小鳥遊のノートを指差す。


「えっ‥‥‥?」


「簡単な計算を間違えて、ドツボに嵌るのが数学の恐ろしい所だ。えっと、ドツボっていうのはーーー」


「意味分かってるわよ!! なんで、あなたが私に‥‥‥?」


 ああ、それに驚いてるのか。


「理由はどうあれ。何かに頑張ってる奴も見かけたら、多少はお節介も焼きたくなるだろ」


「御影、蓮くん‥‥‥」


「隣で毎回間違われると、こっちも気になるし」


「悪かったわね!?」


 小鳥遊との会話は、いつも片方が大声を出してる気がする。


「教えてやる。俺に勝ちたいんだろ?」


「っ‥‥‥うん」


 少し可愛いじゃん。そういう態度は反則だろ。可愛ければ何しても許されるって、割と真理かもな。


「ほら、次の問題」


「うん」


 こうして、俺の日常に‥‥‥非日常が混ざっていく。




「‥‥‥‥‥‥」


「な、何よ‥‥‥」


「‥‥‥中学の範囲から、やり直そっか」


 いや‥‥‥混ざらない方が良いかもしれない。必ず許されるものなんて、現実にはない。

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― 新着の感想 ―
私、ペンネームが小鳥遊マロなので、小鳥遊さん小鳥遊さん主人公に言われると読んでるこちらがこそばゆくなってきてしまいました……という茶番は置いてといて最近のラブコメ?作品にはない展開やキャラクター、一昔…
最新話まで読了しました。とても読みやすい文章で読んでいて楽しかったですꕤ︎︎ 小鳥遊さんが御影くんのことをたまに"くん"付けして呼ぶのが可愛くて可愛くて可愛くて!御影くんがいつ小鳥遊さんの気持ちに気づ…
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