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通称『普通』の黒崎高校!  作者: とい


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1/1

あなたは私の‥‥‥

       「御影蓮、あなたは私の宿敵ライバルよ」


 放課後の教室。さながらバトル系漫画のような言葉を、俺は浴びせられていた。


「‥‥‥身に覚えが無いんだが?」


「でしょうね。あなたにとってはその程度の認識なのよね。ああ腹立たしい。隣の席なのも腹立たしい」


 ひたすらに言葉責めをしてくる相手の中は、小鳥遊朔。


「‥‥‥なに髪と胸を見てるの? 見るならもっと控えめに見なさいよ」


「そんなに視線泳いでないと思うけど!? ていうか見るなって言えよ!」


 綺麗で長い真っ直ぐな黒髪に、目鼻立ちが整った容姿。10人がすれ違えば、10人全員が振り返りそうなほど整っている。

 『学内美少女ランキング』というものがあれば、間違いなく上位に入ると思う。あったらな。

 何より、目線を引き寄せて離さない豊かな胸。男なら、誰でも勝手に吸い寄せられます。俺も男ですから。


「こんな感じよ。まるで‥‥‥なんて例えようかしら?」


「再現しなくていい!! ていうか絶対に誇張してるだろ!?」


「その方が面白いでしょ?」


「‥‥‥」


「ほら、客観視して自分の行いを反省しなさい」


 そして見ての通り、かなりの変人。2、3年生なら皆が認知しているほどの個性の尖りっぷり。俺が止めても、小鳥遊は暫く上下運動を繰り返していた。


「‥‥‥首が疲れたわ。話が逸れたじゃない」


「逸らしたの誰だよ‥‥‥」


 こんな感じで、小鳥遊朔と話す時は体調が良いときに限定しましょう。頭とか痛い時に話したら、たぶん保健室行きです。まあ最初から行けって感じか。


「手段を選ばなければ、私の黄金の右手の人差し指が炸裂するんだけど」


「ちょっと説明が長いな!? すげえ分かりづらいし手段選べもっと!!」


「うるさいわね。ちょっと顔が良いからって調子に乗ってんじゃないわよ」


「それ、お前が言う‥‥‥?」


 ほら、勝手に口が言葉を返してしまうからね。これはもう小鳥遊の才能かもしれない。


「ぇ‥‥‥あなたから見て、私って可愛い?」


「なんで驚いてんだよ‥‥‥俺でなくても皆がそう思ってるだろ」


 こいつ、もしかして意外と褒められてないのか? 驚いてるの初めて見たな。いや、そもそもそんなに知らないけど。


「‥‥‥逃げたわね。このチキン野郎」


「お前、ほんとに2週間前に来た転校生か‥‥‥? 俺じゃなかったら泣いてるわ‥‥‥」


「だって宿敵ライバルだから」


「さっきも思ったんだけど、宿敵って書いてライバルみたいな言い方やめてくれないか? なんでライバルって言う時そんなに熱が籠ってるんだよ」


「‥‥‥宿敵ライバル、だからよ」


「俺の話聞かないのは充分に分かった‥‥‥それで、話ってなんだよ」


 もうさすがに喉が渇いてきた。そろそろ切り上げてオレンジジュースでも飲みたい。


「オレンジジュース売ってる自販機は昼に売り切れてたわ。諦める事ね」


「エスパー!?」


「倒すには、情報収集は常識」


「俺から見たら非常識そのものなんだが‥‥‥?」


 あかん。やっぱり小鳥遊に対して口が自然に動いてしまう。普段動かしてないから少し頬が痛い。


「要が無いなら、もう帰るからな」


「待ちなさい。用ならあるわ」


 帰ろうと踵を返す前に止められ、仕方なく小鳥遊の方を見つめる。

 そして、彼女が右手で持っていたものに驚いた。


「今日の小テスト‥‥‥私の点数見て鼻で笑ったでしょ!?」


 ーーー点数欄に0と記載されていた、漢字の小テスト用紙。


「いや‥‥‥絶対に笑ってない。というより笑えない」


「なんですって!?」


 正直に答えただけなのに、声を荒げてくる小鳥遊朔。小テストの採点は隣の席と交換して行う。つまり、小鳥遊が今もっている用紙を授業中に採点したのは俺自身。


「まあ‥‥‥仕方ないんじゃないか? 転校してきて日が浅いし、次頑張れよ」


「そうじゃないわよ!! あなたは見せつけるように全て記入した用紙を私に渡してっ‥‥‥!!」


「いやそういう決まりだからな?」


「それに満点だと私に採点させてっ‥‥‥どれだけ私を侮辱すれば気が済むの!?」


「むしろ今それを掘り返すのお前だからな? むしろその語彙力で漢字0点って何なの‥‥‥?」


 前々から思ってたけど、小鳥遊って‥‥‥まあ、うん。


「私は決めたのっ。私の目の前で満点を取っていたあなたを超えてみせる!!」


「そのモチベーションは素直に良いと思う」


「っ、余裕ぶって‥‥‥学力試験で勝ってみせるから!! 


「じゃあねっ、御影‥‥‥蓮くん!」


 小鳥遊は嵐のように早歩きで去っていく。途中なんで言い淀んだし。


「ーーーあいたッ!?」


 机の足に盛大にぶつかり、前のめりに倒れ込んで。なんとなく、俺は視線を逸らす。


「ざっ、残念でした〜!! 私の純白はそう簡単に見られないからね!!」


 そして墓穴を掘った事にも気付かず、小鳥遊は顔を真っ赤にして教室を出ていく。一瞬振り返って、無言で自分の鞄を回収してから。


「‥‥‥なんだったんだ、あいつ」


 俺は思わず息を吐いて笑っていた。ごく一般的で『普通』と呼ばれる黒崎高校に現れた、普通じゃないやつ。


「でも、誰かと話したの久々だな‥‥‥」


 『普通』な俺と、『普通』じゃない彼女の物語。


「〜〜〜学生証忘れたっ!!」


 ‥‥‥うん。たぶん起きないわ、そんなの。

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