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サンジの冒険

作者: 奏 音音♪

この作品は友人女性が飼っていたダックスフントをみて思いつき、絵をつけて女性に贈った作品です。とてもよい友人でしたが病気で亡くなってしまいました。

贈った時にとても喜んでくれていたので、この物語がいつまでも彼女の心に残っていたら嬉しいです。

サンジの冒険


犬のサンジとユカちゃんは、大の仲良し。ユカちゃんはサンジのことを弟のようにかわいがっています。サンジもユカちゃんをお姉ちゃんのようにしたっています。


ユカちゃんは毎日決まった時間に、必ずサンジを散歩に連れて行きます。サンジのことを考えて、散歩はとても時間をかけて歩きます。寝るときだってサンジとユカちゃんはいつも一緒。本当の兄弟のようです。


とっても幸せなサンジでしたが、いつも気になっていたことがありました。それは散歩の途中でいつも見かけるノラのことです。ノラは誰にも飼われていない野良犬です。自由気ままに歩いている姿を見て、サンジはいつしかこう思うようになっていました。


(ぼくは本当に幸せなんだろうか…)散歩はいつも決まった道のりです。しばらくすると、必ず曲がらなければいけない道があるのです。


(曲がらずにまっすぐ行ったら、どんな世界があるのだろう?)


その少し先はまた曲がった道で先がどうなっているかは分かりません。その先にはいったい何があるのか。


(きっとあの先にはすばらしい自由の世界があるに違いない)サンジはその先に何があるのか、そして夢に描く自由の世界を探すため、冒険の旅にでることにしたのです。


そして次の日、朝の散歩が終わり、ユカちゃんがちょっと目をはなしたすきに、サンジはさっと家から抜け出しました。しばらくしてあの、道の前まで来ました。


「この先の角を曲がれば自由の世界があるんだ」


サンジはドキドキしてその角を曲がりました。でも、そこにあったのはいつもと何ら変わりない道が続いているだけでした。


「なんだ、いつもとなにも変わらないじゃないか」


がっかりしたサンジでしたが、道はまだまだ続いています。きっとどこかに自由の世界があると信じて、サンジは歩き始めました。


しかし、いけどもいけども同じ景色が続くばかり、サンジが思い描く自由の世界にはたどりつけません。しばらくするとサンジはお腹がすいてきました。いつもなら、とっくにユカちゃんが食事の支度をしてくれている頃です。周りは暗くなりサンジが空腹に苦しみながら歩いているとノラが現れました。


「おや、君はいつも見かける飼い犬くんじゃないか。ご主人様はどうしたんだい?」


ノラは不思議そうにたずねました。


「ぼくは一人です。ぼくは自由の世界を探しに旅に出たんです。毎日自由に歩き回るあなたを見て思ったのです。ぼくも自由に暮らすって」


するとノラはうっすらとほほえみ言いました。


「それで君の言う、自由の世界とやらはあったのかい?」


「それは…」


サンジは口をつぐみました。


「そうかい、じゃあ教えてあげるよ。君の言う自由の世界は目の前にあるよ」


「え! 目の前に」


サンジはおどろきました。


「そうさ、空腹に苦しみ、寒さにたえ生きるためにえさをさがす。それが君の夢見る自由の世界さ」


「お腹をすかせ寒さに震えているのが、自由の世界…」


サンジは何も言えなくなってしまいました。


思い描いた世界が、こんなにも苦しいものだったなんて…


「しかし、俺から見たら、君はよほど自由だと思うがね」


「ぼくが自由に」


「そうさ、だってそうだろう。毎日おいしい食事をもらい、暖かいベッドでねむる。何不自由ない生活じゃないか。俺なんてその日の食事を見つけるのでひと苦労さ。残飯をあさりどぶの水を飲むんだ。冬なんて最悪さ!夜は寒さでどうかなっちまいそうだ。そうさ、俺から見たらおまえはの方がよっぽど自由さ」


ノラはぶつぶつと言いながら、どこかへ行ってしました。気がつくとあたりはすっかり暗くなっていました。見知らぬ町の真っ暗な道ばたで、サンジはとても寂しくなりました。いつもそばにいてくれたユカちゃんはいません。サンジは初めて一人きりになったのです。怖くて寂しくてサンジは思いっきり泣きました。そして叫びました。


「ユカちゃーん」


そのときです。


「サンジ!」


誰かがサンジを呼びました。そうです。それはユカちゃんでした。ユカちゃんはいなくなってしまったサンジを辺りが暗くなるまでずっと探し続けていたのです。


泣きじゃくってサンジを捜し回ったユカちゃんの顔は、涙でぐしゃぐしゃでした。サンジだって涙と鼻水でぐしゃぐしゃです。


サンジは急いでユカちゃんのところまで走ると、思いっきりその胸に飛び込みました。ユカちゃんも思いっきりサンジを抱きしめました。


(ユカちゃんってなんて暖かいんだろう)安心したサンジはとたんに眠くなってしました。そしてサンジはユカちゃんの腕の中で夢を見ました。青い空がどこまでも続く広い野原。曲がりくねった道も、うるさい車もいない。もちろん信号なんてありません。あるのは青い空と広い緑の野原。どれだけ走っても続く緑の野原を、ユカちゃんと二人で自由に走り回っているのです。サンジは言いました。


「ぼく、見つけたよ。見つけたんだ! ぼくの自由の世界はユカちゃんの胸の中にあったんだ!」


どうやらサンジはようやく、思い描いた自由の世界を見つけたようです。本当にほしいものは、とても大切なものなのかもしれません。そしてそれは以外と近くにあるものなのかもしれませんね。




おしまい


 

自由? に行動できる野良犬が幸せか? 制限はありますが飼い犬が幸せか? どうなんでしょうね

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