表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ノルンとふしぎなものがたりたち

ノルンとたいせつなお買いもの

掲載日:2025/01/14

 ノルンは、いっしょに住んでいるマイヤーおばさんが大すき。

 おばさんは、町にひとつしかないお店をいとなんでいます。

 食べるものや、生活にひつようなたくさんのものを、マイヤーおばさんのお店で買うことができます。

 そんなおばさんのお店の前で、赤ちゃんだったノルンは、ニコニコとすわっていたそうです。

 それから、ノルンとマイヤーおばさんは、いっしょに住んでいます。


 ある日、マイヤーおばさんが、カゼを引いてしまいました。


「おばさん……だいじょうぶ?」


 ベッドでは、おばさんがよこになっています。

 ノルンは、へやのドアにちかくで、しんぱいしていました。

 うつってしまうから、近くに来てはダメと、おばさんが言ったのです。


「ごめんね、ノルン。パンが、テーブルの上にあるから、食べてね」


 そう言ったおばさんは、ゴホゴホとせきをしました。

 ノルンは、あわてて、おばさんにかけよりました。

 ノルンがせきをする時、いつもおばさんがしてくれているように、やさしくさすりました。


「ありがとう、ノルン」

「おばさん、お店におくすりはある?」


 いつもなら、お店にくすりもあります。


「それが……売り切れてしまっているの……」


 どうやら、町でカゼがはやってしまって、くすりも売り切れていたのです。


「お店におくすりがないと、町のみんながこまってしまうわね……それに、みんなのために、はやくお店を開けないと……」


 町には、マイヤーおばさんのお店しかありません。

 でも、おばさんは、苦しそうに、またゴホゴホとせきをします。

 ノルンは、おばさんのせなかをさすりながら、決めました。


「マイヤーおばさん、わたしがおくすりを買ってくるわ!」

「えっ⁉」

「おとなりの町なら、おばさんとなんどもいっしょに行ったもの」

「ひとりではあぶないわ」


 マイヤーおばさんは、しんぱいそうに言いました。

 ノルンとおばさんがすむ町からとなり町まで、歩いて三十分くらいです。


「なら、ジャックといっしょに行くわ!」


 ジャックのお家は、となり町との間にあります。

 それでも、おばさんは、しんぱいそうです。


「知らない人には、ついていってはダメよ?」

「分かったわ!」

「お金は、これね。おとさないように」

「うん!」


 おばさんとやくそくをしたノルンは、お気に入りのポシェットにお金を入れました。

 ぼうけんに出かけるような気分です。


「気をつけてね、ノルン」

「うん。いってきます、マイヤーおばさん!」

「いってらっしゃい」


 ノルンは、まずジャックのお家にむかいました。

 いつも通る道ですが、今日は少しちがって見えます。

 どこかほこらしいような、ちょっと心ぼそいような気もちです。


「あら、ノルンちゃん。いらっしゃい」

「こんにちは」


 ドアをノックすると、ジャックのママが笑顔で出てきてくれました。


「ジャックと、あそぶやくそくしているのかしら?」

「いいえ、ジャックのママ。マイヤーおばさんが、カゼを引いてしまったの。

「それはたいへん!」

「ええ。だから、ジャックといっしょに、おとなりの町へおくすりを買い行きたいと思っているんだけど、いいかしら……?」

「おくすりなら、うちの分を分けてあげるわ」

「ありがとう。でも、お店におく分もないの」

「そうなのね……今、カゼがはやっているから、マイヤーおばさんのお店にないのは、たしかにこまるわね……」


 ジャックのママは、少し考えていました。

 マイヤーおばさんと同じように、子どもたちだけではあぶない、と思っているようです。

 そこに、ジャックがやってきました。


「ママ、ボクもノルンといっしょにくすりを買いに行くよ!」

「ジャック」


 ジャックのママは、おどろきました。


「友だちがこまっているんだ。ほうっておけないよ!」


 ジャックのキリッとした顔に、ママはゆっくりほほえみました。


「ふたりとも、いいわね? あぶないと思ったら、すぐに帰ってくるのよ?」

「うん!」


 ノルンとジャックは、ジャックのママに手をふって、となり町にむかって歩き出しました。


「ボク、子どもだけでとなり町に行くのははじめてだ」

「わたしもよ」


 いつもならば、あっちこっちとより道をしてしまうふたり。

 きれいなお花をさがしてみたり。

 小川のお魚さんをながめたり。

 ワクワクすることが、ふたりにはいっぱいです。

 でも、今日はより道をしてはいけません。


「はやく、マイヤーおばさんにおくすりをとどけなくっちゃ」


 ノルンは、歩きながら言いました。

 マイヤーおばさんといっしょの時は、となり町は近く思いましたが、ふたりで歩く道は、どこまでもつづいているようでした。

 ジャックは、そんなノルンの手をギュッとにぎりました。


「マイヤーおばさんは、きっとだいじょうぶさ」

「うん、ありがとう」


 ジャックのやさしさに、ノルンのふあんが、少しきえました。

 歩いていると、とちゅうで、学校のクラスメイトのアーロンと会いました。


「ふたりで、どこに行くんだ?」


 アーロンは、ふしぎそうです。


「マイヤーおばさんのために、となり町におくすりを買いに行くのよ」

「えっ⁉ キミらだけで⁉」

「うん、そうだよ」

「ねぇねぇ! ぼくもいっしょに行っていいかい?」


 うでっぷしの強いアーロンがいてくれると、心強いです。


「もちろんよ!」

「いっしょに行こう!」

「やった! ありがと!」


 アーロンは、うれしそうにジャックのよこにならびました。

 すると、こんどは、ターニャがお家のまどから顔を出しました。


「あれ? みんな、どこへ行くの?」

「となり町さ」

「ノルンのおばさんのくすりを買いに行くんだ」


 それを聞いたターニャが、顔をかがやかせます。


「それって、わたしもいっしょに行っていい⁉」


 学校で一番頭のいいターニャが来てくれたら、さらに心強いです。


「ええ! いっしょに行こう!」

「ありがとう! ノルン」


 ターニャは、ノルンのよこにならび、歩きました。


 とちゅう、じてんしゃに乗ったゆうびんやさんが、ノルンたちに声をかけました。


「こんにちは。子どもたちだけで、どこへ行くんだい?」

「おとなりの町よ。みんなと、マイヤーおばさんのために、おくすりを買いに行くの」


 ゆうびんやさんは、やさしくほほえんでいます。


「そうか、より道しないように、気をつけて行くんだよ」

「はい!」


 ゆうびんやさんは、またじてんしゃを走らせました。

 あっという間に、見えなくなってしまいます。


「ゆうびんやさんって、かっこいいね」

「うん。毎日、いろんな人のお手紙をはこんでいるんだもんね」


 ノルンたちは、見えなくなったゆうびんやさんと同じ道をまた歩きます。

 ついに、となり町とのさかいの大きな川までやってきました。

 そこには、赤レンガのりっぱなはしがあります。


「川の向こうがわが、おとなりの町」


 はじめて、子どもたちだけではしをわたります。


「ねぇ、みんなで手をつないで、おとなりの町に入ろう!」


 ノルンのことばに、みんなうなずきました。

 四人で手をつないで、みんなでとなり町に一歩をふみ出した時です。


「やっときたかぁ!」


 前から、こわい顔のおじさんが、大きな声を上げて、やってきました。


「ジャック! 女の子たちを守れ!」

「えっ⁉ アーロンはどうするのさ⁉」

「ぼっ、ぼくは、あ、あいつをぶっとばしってやる!」

「えっ⁉」


 アーロンが、ノルンたちの前に立って、ふるえます。

 どんどんと近よってくる、顔がこわくて、声の大きいおじさん。


「アーロン、あの人はだいじょうぶ!」

「えっ?」


 三人がビクビクしている中、ノルンはかばってくれたアーロンの前に立ちました。


「ちょっ……!」

「ノルン!」

「あぶないわ!」


 アーロンとジャック、ターニャがおどろきました。


「もう! ミッキーおじさん、声が大きいよ!」


 おじさんの声よりも大きく、ノルンは言いました。


「それに、顔もこわい!」

「ガハハハッ! すまんすまん! 顔がこわいのはどうしようもない!」


 そう言って、ミッキーおじさんは、またガハハハッとわらいました。


「ミッキーおじさんは、となり町のお店の人なの」


 ノルンは、ミッキーおじさんをお友だちにしょうかいしました。

 そして、ジャックと、アーロンと、ターニャをおじさんにしょうかいしました。


「はじめまして、みんな」

「ミッキーおじさん、どうしてわたしたちが来るって分かったの?」


 そう、ここはまだ、となり町のはじまり。


「お手紙を出す時間、なかったし」

「教えてもらったんだよ」

「え? だれに?」


 ミッキーおじさんは、ジャックにウィンクをしました。

 ノルンは、ジャックを見ました。

 でも、ジャックもノルンを見て、ふしぎそうな顔をします。


「そんなことよりも、ノルン。はい、マイヤーおばさんとお店におく分のくすりだよ」


 ミッキーおじさんは、ノルンにくすりをわたしました。


「お金は、もってきたかい?」

「うん!」


 ノルンは、ポシェットに入れていたお金を、手のひらにのせました。

 でも、ノルンはこまってしまいました。

 いつもは、おばさんがお金を出しています。

 自分でくすりを買うことは、はじめてです。


「えっ、っと……ど、どれが、どのくらい、なんだっけ?」

「ノルン、ちょっと見せて」


 ターニャが、ノルンの上のお金を見ました。


「ミッキーおじさん、おくすりは、いくらですか?」

「これだよ」


 ミッキーおじさんは、ターニャにねふだを見せました。


「これとこれ。うん、ノルン、これで買えるわ」

「ありがとう! ターニャ!」


 ミッキーおじさんにお金をわたし、ノルンたちはくすりとキャンディーをもらいます。


「ここまでありがとうな! マイヤーおばさんやみんなが、はやくよくなることを祈ってるよ!」


 おじさんは、こわい顔でガハハハッとわらいながら、大きく手をふっていました。

 四人は、ミッキーおじさんからもらったキャディーを食べながら、自分たちの町にもどりました。

 行く時には、ふあんで長くかんじた道。

 でも、今はどこかほこらしい気分で歩いていました。

 ターニャが、先に帰っていきました。


「今日はありがとう! またね!」


 そのつぎに、アーロンが帰りました。


「つれてってくれて、ありがとな! またな!」


 ジャックのお家が見えてきます。


「今日はありがとう、ジャック」

「ううん、いいって。それに、ぼくは、アーロンみたいに守ったり、ターニャみたいにけいさんできなかったし」

「そんなことないわ。ジャックがいてくれたから、ぼうけんに出られた」


 はじめてのことにふあんな時、ジャックはいつもそこにいてくれます。

 ジャックは、にっこりとわらいました。


「また、ぼうけんに出かけよう!」

「うん! 出かけよう!」


 ジャックのママが、見えました。

 ジャックのママは、ふたりをやさしくだきしめました。


「おかえりなさい、ジャック、ノルン」

「ただいま!」

「とちゅうで、ゆうびんやさんに会った?」

「え?」

「うん、行く時に会ったよ」


 ノルンとジャックがうなずくと、ジャックのママはホッとしたようでした。

 そんなママのようすに、ふたりは、またおたがいの顔を見ました。

 じつは、ジャックのママが、ゆうびんやさんにノルンとジャックのことを教えたのです。

 その後、ゆうびんやさんが、ミッキーおじさんに、子どもたちがやって来ることを伝えたのでした。


「さあ、ノルン、マイヤーおばさんも待っているわよ」

「ええ、ありがとう、ジャックのママ」


 ジャックとジャックのママに手をふり、ノルンはマイヤーおばさんがまつお家に走ります。

 マイヤーおばさんに、はやく元気になってもらいたいから。

 だきしめてもらいたいから。

 そして、見てもらいたいから。

 少しなみだが出そうでしたが、泣きません。


「マイヤーおばさん、ただいま!」


 ノルンは、わらいました。

 そして、たいせつなお買いものをかかえて、おばさんのへやのドアを開けたのでした。




 ~おわり~

お読みいただき、ありがとうございます。

よかったら評価やブックマーク、いいねをしていただけると嬉しいです(*^^*)

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
優しさが伝わってきて、ほっこり╰(*´︶`*)╯♡ お買い物だって冒険ですね。早く元気になれますように。
2025/02/02 16:36 退会済み
管理
「冬の童話祭」から参りました。 今年もノルンのお話に出会えてよかったです。 大好きなマイヤーおばさんのために、遠くまで薬を買いに行くノルン、優しくて勇気もありますね。 ひとりで出かけたけれど、ジャッ…
とても面白かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ