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第27話 「黒塚先輩とクリスマスには少し早いマフラー」

夕方の校庭。放課後の澄んだ空気の中、座白冬はベンチに腰掛け、鞄から何かを取り出した。ほどなくして、黒塚夏先輩がいつもの黒タイツ姿でゆっくりと近づいてきた。


「待たせた?」

「いえ、時間通りです」

先輩の冷たいけれど柔らかい声に答えつつ、座白は少しだけ視線を逸らした。取り出した袋を手に、ためらいがちに差し出す。


「先輩。これ、どうぞ」

「……なに?」

黒塚先輩は首を傾げ、袋の中を覗き込む。丁寧に折りたたまれた黒いマフラーが見えた。カシミアの上質な素材感が、袋越しにも伝わる。


「少しクリスマスには早いですけど……マフラーです」

「クリスマス……ね。どうして?」

先輩は感情を読ませない顔でそう尋ねたが、その手は自然と袋を受け取っていた。


「前に、寒いって言ってたじゃないですか。それを思い出して……まあ、そういうことです」

「……座白くんが、ねえ」

黒塚先輩は袋の中のマフラーをそっと取り出し、その感触を確かめるように手でなぞった。

「これ、カシミアでしょ?高かったんじゃない?」


「気にしないでください。人にプレゼントするときはお金を惜しまない主義なんです」

あくまで淡々とした口調で、座白は答えた。その声には少しの照れも感じさせない。


「……私の中の座白くんは、無駄なものにはお金を使わないイメージだったけど」

黒塚先輩の声が、わずかに柔らかくなった。


「無駄じゃないです。使うべきところには使います。それだけです」

「ふふ……君らしいわね」

黒塚先輩はそう言いながら、マフラーを首に巻いてみせた。黒いタイツと制服に馴染むその姿は、いつも以上に大人びて見える。


「どう?」

「……似合ってます。思ったよりも」

座白は少し言葉を選びながらそう答えた。


「ありがとう、座白くん。君にこんなことされると……なんだかくすぐったいわね」

「別に深い意味はないですよ。ただのプレゼントです」

そう言いつつ、座白は微かに視線をそらす。


「でも、これで冬は少しだけ楽しくなるかも。あなたのおかげで」

黒塚先輩は穏やかな笑みを浮かべ、少しだけ照れているようにも見えた。座白はその様子に少し驚きつつ、口元にわずかな微笑を浮かべた。


「……それならよかったです」

静かな冬の夕暮れに、二人の間には不思議な温かさが漂っていた。

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