第21話 「犬と猫と黒塚先輩の発見」
放課後の帰り道。木漏れ日が差し込む並木道を歩く二人。黒塚先輩がふいに足を止め、座白君に向かってぽつりと呟いた。
「ねえ、座白君」
「……なんですか」
「犬の種類って、たくさんあるのに猫って形が似てるわね」
その言葉に、座白は少しだけ考え込む。
「……まあ、言われてみればそうですね。犬は大きさも形も種類によって全然違いますけど、猫は大体似たような体型ですね」
「そうでしょ? チワワとセントバーナードを見比べたら、同じ動物とは思えないくらい違うのに、猫はどれも猫っぽい」
黒塚の言葉に、座白は冷静に頷きながら返した。
「それ、多分、犬は人間がいろんな目的で改良してきたからですよ。牧羊犬とか狩猟犬とか、用途に応じて形や大きさが変わってきたんです」
「なるほど、実用性重視の結果ってことね」
「そうですね。一方で、猫はそんなに用途が求められてなかったから、自然な形が保たれてるんじゃないですか」
黒塚はその説明に感心したように頷いた。
「ふむ、座白君って、こういう話題には強いのね」
「……先輩の話題がいつも予想外すぎるだけです」
黒塚はくすくすと笑いながら続けた。
「でも、猫って形が似てても、顔つきや毛並みで結構違うと思わない?」
「まあ、確かにそうですね。毛の色とか模様のバリエーションは豊富ですから」
「たとえば、黒猫ってどこか神秘的に見えるし、三毛猫はかわいらしい感じがするわ」
黒塚の黒いタイツに包まれた足元が夕陽に照らされる。その姿を目にした座白は、ふと小さく呟く。
「……先輩、どちらかと言うと黒猫っぽいですね」
「え、どうして?」
「雰囲気が神秘的で、何を考えてるのか分からないところがあるので」
その答えに、黒塚は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。
「ふふ、それって褒めてるの?」
「どうでしょうね」
座白の淡々とした答えに、黒塚は嬉しそうに笑いながら歩き出した。
「じゃあ、座白君は犬っぽいかしら」
「……どういう意味ですか」
「なんでもない。ただ、そう思っただけ」
夕陽に長く伸びる二人の影。どこか穏やかな空気が、そこに漂っていた。




