第20話 「読み間違えと黒塚先輩の訂正」
昼休みの教室。静かにノートを広げている座白君の隣で、黒塚先輩が何かの資料を読んでいた。ふと、彼女が首を傾げながら声を上げる。
「座白君、この『重複』って『じゅうふく』で合ってる?」
「……いや、それ『ちょうふく』ですね」
「え、本当に?」
黒塚先輩が眉を寄せる姿に、座白は少しだけ微笑みを浮かべながら冷静に答えた。
「ええ、少なくとも正しい読み方は『ちょうふく』です。でも、日常会話では『じゅうふく』も使われることがあります」
「なるほど……でも、正式には『ちょうふく』なのね」
黒塚はノートにメモを取りながら、どこか満足げに頷いた。そして、ふと視線を座白に向けて問いかける。
「でもさ、正しい読み方を知ってても、間違えたら恥ずかしくない?」
「……まあ、恥ずかしいかもしれませんけど、それで知識が増えればいいと思いますよ」
その冷静な言葉に、黒塚は少し感心したように微笑む。
「ふふ、座白君って、こういうときは妙に大人ね。でも、私は間違えたらすぐ訂正してほしい派よ」
「……そうなんですか」
「そう。読み間違えたまま使ってるほうが、あとで恥ずかしいもの」
黒塚はそう言いながらも、どこか楽しげな表情を浮かべる。その様子を見た座白は、軽くため息をつきながら言った。
「じゃあ、次も間違えたらすぐに指摘しますね」
「ぜひお願いするわ。でも、ひとつだけ条件がある」
「……条件?」
「優しく訂正してね。冷たく言われると、私、少しだけ傷つくから」
その茶目っ気たっぷりの言葉に、座白は苦笑しながら肩をすくめた。
「分かりました。気をつけます」
「ふふ、頼もしいわね」
黒塚は笑みを浮かべながら、また資料に目を落とした。その柔らかな空気の中、二人の会話は静かに続いていった。




