第19話 「胸の大きさと黒塚先輩の意見」
放課後の校庭。夕陽が校舎を赤く染める中、黒塚先輩がいつものように突拍子もない話題を振ってきた。
「ねえ、座白君」
「……なんですか」
「胸の大きさって、気にする?」
座白は少しだけ眉を寄せ、微妙な間を置いて答えた。
「……その質問、どう答えればいいんですか」
「正直に答えればいいのよ。私は怒らないから」
黒塚はいたずらっぽい笑みを浮かべながら、じっと座白を見つめている。その視線に、座白は軽くため息をつきながら冷静に返した。
「……あまり気にしないですね」
「本当に?」
「ええ。結局のところ、それより大事なことがたくさんありますから」
その答えに、黒塚は少し驚いたような顔をしたが、すぐに満足げに頷いた。
「ふむ、意外と大人な意見ね」
「いや、普通の意見だと思いますけど」
黒塚は自分の胸元をちらりと見下ろし、軽く肩をすくめる。
「でもね、女子にとっては、案外気にするポイントなのよ」
「……そうなんですか」
「ええ。大きすぎると動きにくいとか、小さいと気にする人もいるし。いろいろ面倒なの」
その現実的な言葉に、座白は少しだけ目を丸くする。
「……思った以上に、複雑な話ですね」
「でしょ? だから、男子は簡単に気にしないほうがいいの」
黒塚はいたずらっぽく笑いながら、さらに付け加える。
「でも、もし私が気にしてるとしたら?」
「……先輩がですか?」
「そう。例えば、『黒塚夏は気にしてるんだな』って思ったら、どうする?」
座白はしばらく考え込んだ後、淡々と答える。
「何も言わないですね。余計なことを言って気にさせたくないので」
その冷静な答えに、黒塚は目を細めて微笑む。
「ふふ、優しいのね。でも、私は気にしてないわよ」
「……じゃあ、何でそんな話を振ったんですか」
「ただの確認。座白君がどんな答えをするか気になっただけ」
黒塚は満足げに立ち上がり、軽く手を振って歩き出す。その後ろ姿を見送りながら、座白は小さくつぶやいた。
「……先輩の話題選び、いつも困りますね」
夕陽が二人の影を長く伸ばしていく中、穏やかな空気が漂っていた。




