表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

第17話 「泣き虫な子供と黒塚先輩の思い出」

放課後の校舎裏。秋風が心地よく吹く中、黒塚先輩が座白君の隣に腰掛けて、ふと遠い目をしながら話し始めた。


「座白君、泣き虫な子供ってどう思う?」

「……どう思うって言われても、子供なら泣くのは普通じゃないですか」

「そうかも。でも、泣き虫ってちょっとからかわれるイメージがあるでしょ?」


座白は黒塚の言葉を少し考え込みながら、冷静に答える。

「たしかにそうですね。でも、大人になれば誰も気にしませんよ。泣いていたことを覚えている人なんてほとんどいませんし」


その答えに、黒塚は少しだけ笑みを浮かべる。

「ふふ、合理的ね。じゃあ、泣き虫な子供が大人になったらどうなると思う?」

「どうなるか……それは人次第じゃないですか。克服する人もいれば、感情が豊かなまま成長する人もいるでしょうし」


黒塚は満足げに頷きながら、校庭を見下ろした。

「実はね、私も昔は泣き虫だったの」

「先輩が?」


少し驚いた声を出した座白に、黒塚は楽しそうに笑った。

「ええ、小さい頃はすぐに泣いてたわ。転んだだけで大泣きして、近所の子に笑われてね」

「……意外ですね」

「そう? 今でも泣きそうになることはあるわよ。最近はただ、泣き方が変わっただけ」


その言葉に、座白は少し眉をひそめる。

「……泣き方が変わったって、どういうことですか」

「涙をこらえるようになったってこと。泣きたいときでも、泣かないで笑うの」


黒塚は軽く肩をすくめて、夕陽に照らされる空を見上げた。その表情には、どこか切なさが混じっていた。


「でもね、たまには素直に泣くのも悪くないと思うの。そうしないと、心が窮屈になるから」

「……先輩は最近、泣いたことありますか」

「そうね。こっそり映画を観て泣いたことがあるわ。意外と涙が止まらなくてびっくりした」


その答えに、座白は少しだけ苦笑する。

「それなら、泣き虫ってわけじゃないですね。ただ感情豊かなだけですよ」

「ふふ、そうかも。じゃあ、座白君もたまには泣いてみるといいわ」

「……僕はそういうの、あまり得意じゃないので」


黒塚はくすくすと笑いながら、立ち上がる。そして、軽く手を振りながら歩き出した。

「泣くのが得意な人なんていないわよ。でも、泣きたくなったときは、我慢しすぎないことね」


座白はその背中を見送りながら、小さくつぶやいた。

「……やっぱり、先輩は自由な人だ」


秋風が二人の間を吹き抜ける中、穏やかな空気がそこに漂っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ