表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ココロぞんび  作者: キタビ
第一話 親の墓を暴き、旅に出る幼児、そういう子だった
5/107

 ココロを家に置いて仕事へ来るのも慣れてきた頃、「その後どうだい、お姫様は」と同僚が話かけてきた。マリオは気にしない素振りを見せて、トラックのエンジン周りに入れた手を抜いた。


「いい子で留守番してるよ。もともと聞き分けがいいし、利口な子だ」

「聞き分けがいいなんて、よく言えるな」同僚は呆れたように言った。

「ここは場所が場所だ、仕方ないさ」


 言うと、トラックの下に潜っていた若い男が小さく笑った。彼には二人の子供がいる。


「子供ってのは油断ならないですよ、三歳児は特にモンスターです。悪戯も覚えるし、言い訳も上手になって、嘘もつくようになる。笑った顔は天使でも、腹の中に悪魔を飼ってる」

「その悪魔に骨抜きにされてんだろ?」

「だから厄介なんですよね」

「ココロは違う。コップを割っても言い訳もせず堂々としているし、嘘を吐いてもすぐわかる」

「嘘吐くんじゃねえか」

「バレる嘘は、吐いてないのと一緒だ」

「どう見分ける?」

「あの子は嘘を吐くと、鼻の下が伸びて、サルみたいな顔になるんだ。可愛いだろ?」


 マリオは整備していたトラックのボンネットを閉じ、鼻の下を触った。


「隠し事が出来ないってことですか?」トラックの下から声がした。

「その辺は器用じゃない。あれはわしの息子の血だな」


 マリオが言うと、同僚や部下は声を揃えて笑った。


「子供ってのは、親の目が届かないところで悪さをするもんです」

「っは、うちの子に限ってそれはない」マリオは自信満々に言った。


 やがて、仲間達の「ほら、言わんこっちゃない」という声が聞こえてくるような、思わず顔を顰めてしまう出来事が起きた。職場の電話が鳴ってグレイスに呼び出されると、コロニーの守衛から、「ご存知かどうかわからないんですけど、実はココロちゃん、度々脱走してるんですよ」と連絡が入った。


「家から?」マリオは片方の眉を上げた。

「壁から」


 マリオはオイルで黒く汚れた手を布で拭うと、左の首に挟んでいた受話器を右手に持ち替えて、「誰の話だ?」と聞き返した。


 あなたのお孫さん。


 ココロ・ココニと告げられて、マリオは掌で額を触った。


 脇で聞き耳を立てていたグレイスが鼻を鳴らし、読んでいた本に視線を戻した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ