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ココロぞんび  作者: キタビ
第二話 15歳のファインダー
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 東門ゲートに辿り着くと、日当たりがいい場所で日向ぼっこをしている守衛二人と目が合った。ガンツとリッキーは木陰にビニールシートを広げ、煙草を咥え、古いラジカセで音の飛んだ音楽を聴いていた。


「仕事しろよ!」


 エルマーが叫ぶように呼ぶと、顎鬚を生やしたガンツが嬉しそうに笑って腰を上げた。

 入出管理の通常業務は慣れたもので、会ってちょっぴり世間話をするのがいつもの流れだ。

 リッキーが差し出したボードに三人はサインをして、時刻を記入した。


「はいおっけー」リッキーはチェックしたボードを放った。

「久しぶりじゃないか、三人が揃ってこっちに来るのは」ガンツが口角をあげた。

「今日はテムにどうしてもってせがまれちゃって」


 ココロはちょっぴり困った風を装った。


「根負けしたか」

「そういうこと」


 そういうことにしてある。

 テムが遊んでとせがまれ、ココロとエルマーが仕方なく付き合ってあげているというていだ。

 テムも、「ずっと約束してたんだよ!」と調子を合わせた。


「よかったな。この間は一人で来てたもんな」リッキーはテムの頭を撫でた。


 テムは定期的に一人で森の中へ入り、感染者を捕らえる為の罠をチェックしている。その罠は誰も知らない場所にある。ココロやエルマーがブラウニーで働いていた頃は割と頻繁に来ていたのだが、その時も冒険ごっこと偽って四六時中、感染者を探し回っていた。


「ま、今日はお兄ちゃんお姉ちゃんも一緒だし、楽しんで来いよ」

「うん」

「そんなことよりエルマーよ」


 ガンツは困った息子でも見るような目をエルマーに向けた。

 エルマーも小言を言われるのを察して視線を逸らし、溜息を吐いた。


「なんだよ」

「お前また仕事辞めたんだってな。守衛の仕事も半年で辞めちまったし、あんまりふらふらしてるとろくな大人にならないぞ、こんなふうになりたいか?」


 ガンツがリッキーを指差すと、リッキーはどういう意味だと顔を顰めた。


「今その話はいいって、またすぐ別の仕事探すし」

「お前にその気があるならいつでも戻って来い。その時は根性もたたきなおしてやる」

「大きなお世話だって」


 エルマーは頭を撫でてきたガンツの手を払った。ガンツは鼻で笑うと、「おおそうだ。ちょっと待ってろよ」と守衛室へ戻り、単発式ライフルを手に戻ってきた。


「ほら、これ持ってけ」

「ライフル?」


 差し出されたライフルを、エルマーは渋々受け取った。


「使い方は教えたろ」

「そうじゃなくて、なんでこんなもん持たせるんだよ。狩なんてする予定ないけど」

「いや、近頃多いらしくてな」

「……感染者ゾンビ?」

「ああ、春だしな。連中もこの陽気に浮かれてるんだろ」

「それ関係なくないか」

「真面目な話、出入りしてる配給車や産廃車やらのドライバーがよく見かけるって報告があってな。北門側に山あるだろ、ちょっと前に俺達もあそこに入って行ったんだが、たしかに増えてた。今まで見たことないくらい、つっても広すぎて、まばらにって感じだけどな」

「あそこでまばらに見つかるって、結構居るってこと?」ココロが訊いた。

「ああ、数えちゃいないけどな」

「どうしたのそれ」

「確認して戻ってきたよ、そもそも俺達は、許可なく連中を撃つことは禁止されてるからな」

「大丈夫なの?」テムが訊いた。

「なに心配ないさ、どうせ奴らにこの壁は越えられないし、俺達が出入り用に使ってる扉だって開けられん」

「それでライフル?」エルマーが訊いた。

「念のためだ。一応は大人になったんだ、いざとなったらそいつで二人を守ってやれ」

「許可なく撃てないのに?」

「時と場合によるだろ」

「だとしても、ゾンビ相手にライフルは大げさだって」

「だな、まああったかくなってきたし、獣も増える頃だ。念には念をだ」

「そういうことなら、まあ借りとく」


 ココロとテムは目線だけをエルマーに向けた。

 エルマーは二人の視線を気にしつつ、ライフルの弾倉を抜き、金色の弾丸を親指で触った。

 弾は一発、念のためというのも頷けた。実際、このライフルはハンティング用で、ガンツ達が持つ自動小銃に比べれば骨董品だ。銃の教練用にも使われていて、エルマーが一時守衛だった時、一番触った銃だった。


「なんかエルマーかっこいいじゃん、手馴れた感じ」

「おいおいやめろよ」エルマーは弾倉を戻し、スリングを肩にかけた。

「兄ちゃんかっこいい!」

「まあそれほどでも、あるかな?」


 言いながら、ココロ達はおしゃべりを切り上げ、モペッドに跨った。


「日が暮れる前には戻って来いよ」

「もうそんなガキじゃないって」


 川が通る東の森へ向った三人の姿を見送り、ガンツは、「まだまだ子供だな」と微笑んだ。

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