【読書感想文】年中行事に秘められた家族の思いやりを知って 読んだ本「夢十三夜」(八尺社)
月に一度、つめを切って神社にほうのうするのはなぜだろう、とずっとふしぎでした。
このなぞを解くためにぼくは本を読んで勉強したいと思ったのです。
本屋さんで店員さんに相談すると、店員さんはあまり詳しくないみたいでしたが、ひきつった顔で「夢十三夜」という本を教えてくれました。店員さんの後ろにはかみの長い女の人がいたように見えました。
ぼくはこの本を読んで、両親の愛を感じられました。
タイトルの通り、「夢十三夜」は十三回の夜に見た夢の話をまとめたものです。どの夜にも夢の中で階段をのぼるように言われる佐藤さんが主人公で、なんとかのぼらないですむ方法を探すという内容です。
夢の中ではいつも佐藤さんの後ろにはかみの長い女の人がいます。
かみの長い女の人がこっちへ来ないかと言っています。
こわくなった佐藤さんはしこうさくごのあと、最後には、かみを切ったり爪を切ったりしてまくらもとにおいておくことで、かいだんをのぼらなくてすむことに気がついたのです。
ぼくと違って、佐藤さんはよりしろをささげればいいと気づくのが遅く、なくなってしまいました。
佐藤さんの後ろにはかみの長い大きな女の人がいます。
ぼくははっとしました。
両親がぼくをお姉さんから守っていたのだと気づいたのです。
夢の内容はぼくが生きてきた中で体験してきたことににています。
おまつりの日にお母さんとはぐれてから、大きなお姉さんと十年いっしょにくらしたこと。気がついたらお母さんと会えるようになっていたこと。ほとんど時間がけいかしていなかったこと。毎月神社にほうのうをするひつようがあったこと。近所のおじぞうさんがすべてはかいされたこと。お父さんの左うでが通りまに切り落とされていたことなどです。
ぼくをゆうかいしたかみの長い女の人はぼくをあきらめていません。
ぼくの後ろにはかみの長い女の人がいます。
だから、よりしろをささげて神社の人がぼくのいばしょをごまかしていたのです。
ぼくを守ろうとしてくれた両親にはかんしゃしかありません。
ありがとうございまふざけるなよ。
よくも。
よくも。よくも。
だましたな。
だましたな。ふざけるなよ。だましたな。だましたな。だましたな。わたしのものだ。だましたな。だましたな。だましたな。腕でごまかしやがって。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。わたしのものだ。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。だましたな。かえせ。だましたな。だましたな。わたし。わたし。わたし。だましたな。だましたな。だましたな。かえせ。かえせ。かえせ。かえせ。
最近ぼくは夢を見ます。
階段をのぼっています。
お姉さんの声がします。
そっちに行ってはいけないとわかっていても、もうにげられません。
とうとう切った爪ではごまかせなくなったので、先々月は爪をはいで丸ごとおいておきました。
死ぬほどいたかったのですが、一回はごまかせました。
先月は歯をおいてにげきりました。
でも夢を見ます。
階段をのぼっています。
お姉さんの声がします。
そっちに行ってはいけないとわかっていても、もうにげられません。
もうげんかいです。
だから、さいごのしゅだんです。
この読書感想文を読んだ人におしつければいいと神社の人に言われました。
コンクールのしんさの人、今これを読んでいますか。
あなたの後ろにはかみの長い女の人がいますか。
いるなら成功です。
いなければぼくはお姉さんのところに行ってしまうのでしょう。
ごめんなさい。
さようなら。
小山内翔太(仮名)くん(小学六年生)による「夢十三夜」(八尺社)の読書感想文です。コンクールに投稿されたあと、翔太くんは行方不明になっています。
これを読んだ審査員は行方不明にはなっていませんが、部屋でひとりのときに髪の長い女性をたびたび目撃していると言います。
なお、この作品はフィクションですが、あなたの後ろにも髪の長い女の人がいます。