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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
99/111

その2

読んでくださっている方々へ


いいね・感想・誤字脱字報告と、諸々な事に読者様の時間を割いてくださり、誠にありがとうございます!


漸く書けたので早速投稿します!

    涼州漢陽郡隴県州治所州牧執務室


7月、糜芳は執務室で唸っていた。


「ぬおおおぉぉぉ・・・ふざけんなよ畜生ぅ。

こんな無理難題を押し付けやがってぇぇ!?」

頭を抱えて、ガリガリと掻き毟る。


(何で俺がこんな目に遭わにゃあいかんのよ!?理不尽過ぎるやろ!?)

こうなった経緯を回想する。


6月、中原(ちゅうげん)の混迷もなんのその、全くと言って良い程影響が無い涼州にて、就任直後の書類決裁地獄から解放され、のほほんと過ごしている所に、いきなり勅使として義父の蔡邕が、訪れたので有った。


此度(こたび)は勅命を伝えに参った次第に御座る。」

「はは、お務めご苦労様に御座います。

謹んで拝聴させて戴く所存に御座います。」

ヘヘーと同じ義息の蔡良と共に、拝礼する。


「では・・・こほん、涼州牧糜芳よ!畏れ多くも主上よりの勅命を伝える!

この度、長安と隴県の中間地点・右扶風(ゆうふふう)郡は郿県の郿塢(びう)に、新たに新都市を築く事と相成った!」

「ははぁ!」

再び平伏する。


(あ~・・・董卓が造ったと云われてた、郿城建設が始まんのかぁ。

ウン十年分もの食糧や、唸る程の金銀財宝が、蓄えられてたって云うヤツだっけ?)

平伏しつつ、脳内で前世の記憶を掘り起こした。


「え~とつまり、新都市建設に必要な人夫を、涼州から提供せよとの(みことのり)で御座いましょうや?」

先読みして蔡邕に確認するも、


「いや、さにあらず。

労働力は洛陽からの移住組で、十二分に賄える故に、涼州からの提供は必要無い。」

首を左右に振られて、違うと告げられる。


「あれ?違いましたか。

では建築資材の供出ですか?」

「いやいやそれも違う。

ええい勅を最後まで聴かぬか、せっかち者めが。」

やんわりと(たしな)められる。


「はっ、失礼しました。」

「こほん・・・改めて申すぞ?

涼州牧・糜芳よ、此度の郿塢に於ける新都市建設の()()()()()に任ずる。

心して取り掛かる様、務めよとの勅である!!」

バッと勅命が書かれた、紙製の勅状を(ひしがえ)し、糜芳に見せ付ける。


「・・・はい?いやいやおかしいくない?

右扶風郡て、思いっきり司隷の管轄地域でしょ?

幾ら何でも()()()の俺が、管轄外の仕事をやっちゃ不味いでしょうに。」

目を点にして、素のままの口調で尋ねた。


「あ~・・・つい先日右扶風郡は、涼州の行政区分に組み込まれたので、何の問題は無い。

依ってお主が統括責任者に成るのは、極々自然の理であろうが。」

「はぁ!?んな降って湧いた様な・・・あ!?」

そんなご都合的な話しが、と言いかけた時にハッとし、


「き、汚ね一!!面倒事を全部俺に押し付ける算段だろ!?オイこらジジイ!」

裏事情を察して、蔡邕に食ってかかる。


「な、何を申すか小童(こわっぱ)!?

閣下・・・ではなく、主上の御期待を疑うとは非礼で有るぞ!?」

元来嘘を吐くのが苦手な直言居士は、しどろもどろに答える。


「思っくそ董卓閣下が、裏で絵図面を書いているのを暴露してるやん!?

それによくよく考えたら、都市を新造するという大事業だったら、三公の司空(しくう)(土木・建築・水利の最高責任者)の仕事だろーが!?」

益々ヒートアップして、詰め寄る糜芳。


「勅使相手に、何て事を言うのです州牧閣下!?落ち着いてください!!」

「そうだたわけ者が!馬鹿を申すな!

司空府の連中なんぞに任せてみよ!

中抜き・横領・賄賂の三位一体の悪行を成し、砂上の楼閣(ハリボテ)を造りかねぬわ!!」

「ちょっ!?義父上(ちちうえ)も何言っているのですか!?」

義父と義弟の間をオロオロと彷徨(うろつ)く蔡良。


「へ?そんなに杜撰(ずさん)なの司空府って?」

「ああ、長年名家閥の牙城だった弊害でな。」

苦々しい表情で、糜芳の問い掛けに頷いた。


蔡邕曰わく、元々公共事業関連の利権が絡み易く、多額の公的資金が集まりやすい部署な為、名家閥が自派閥の活動資金源や、自身の出世の資金源に利用していたらしく、その影響で司空府内の上層部から下っ端まで、大半がどっぷりと不正行為に腰まで浸かっている様だった。


その為当然の如く、公共事業に出入りを許された、業者(親方)連中の多くも「同じ穴の(むじな)」と化して、不正行為に加担して追従している有り様である。


何進の遺鉢を継いだ董卓が、一時的に司空になった際に、司空府の上層部の多くを粛清して下から引き上げたのだが、下っ端の汚染具合も半端なく、選出に苦労したらしい。


かと言って司空府の業務内容は、土木・建築・水利事業の管理・監督な為、専門知識がある程度ないと務まらず、余所の部署から引っ張って来ても役に立たないので、董卓も流石に悉く誅滅も出来ずに、やむを得ず大の虫を殺して、小の虫を生かす方法しか採れなかった様だ。


その結果、今回の洛陽からの強制移住に伴なう、長安の区画整理及び改修工事で、真っ当な司空府役人と業者と、比較的マシな役人と業者を使い切ってしまい、郿城建設に使える人材が、ロクデナシ集団しか残らなかった模様。


「・・・という訳でじゃ、そんな汚吏や悪徳業者なんぞに任せたら、碌でもない結果を招くのは火を見るより明らか。」

「それで涼州は、()()()()()()()()()()()()()()のを、董卓閣下は地元出身故に熟知しているので、使おうと画策したと?」

蔡邕の説明を聴いて、ある程度事情を察した糜芳が話しを引き継ぐ。


「その通りじゃ婿殿。」

コクリと頷く蔡邕。


因みに何故涼州では、土木・建築・水利業務には、真っ当な役人と業者しか居ないのかと言うと、いい加減な工事をすれば異民族の侵略の際に、文字通り命で贖う羽目に成るからで有る。


そんなアホな所業をする者は、とっくの昔に淘汰済みで有ったし、中央のバカ達が悪行三昧した事で荒廃して、不正行為の汚染が進んでいた状況下でも、土木・建築・水利関連部署だけは、しっかりと真っ当に機能していた。


それはさておき、


「まぁ事情は理解しました・・・納得は全っ然していないけども。

それに、現状では涼州(ウチ)でも異民族侵攻に備えて、改修工事の真っ只中なので其方に手一杯でして、郿城建設に使える人材なんぞ居ませんよ?」

蔡邕の説明を聞いて平静に立ち返り、人夫なら出せるけど監督する役人・施工業者は出せないと、両手でバッテン印を作る。


「それは当然理解しておる。

しかしながらお主の伝手で、施工業者を呼び寄せる事は、可能で有ろうが?」

「伝手・・・ナニソレ?」

「たわけ、故郷の徐州や此処涼州で、寺院とか申す道場を建設しておる者達が、居るではないか。」

首を傾げて尋ねる糜芳に、渋い表情で誤魔化すなと、釘を刺す義父。


「あ、浮屠の者達ですか。

う~ん・・・確認してみないと何とも。」

思い出したとばかりにポンと手を打ち、


「それによしんば請け負ってくれても、管理・監督する役人は、涼州からは派遣できませんよ?」

懸念材料を告げる。


「儂の目と鼻の先に居るではないか。」

「へ?・・・あ、蔡良義兄さんですか。」

ジーッと睨む様に自分を見詰める、視線を辿って振り向くと、背後でオロオロオドオドしている、蔡良に辿り着いた。


ゴスッッッ!!


「ぐおおォォォ・・・!?」

「何を他人事の様に言っておるのじゃ貴様は!?

貴様に決まっておろうが、き・さ・まに!!」

怒った表情で拳骨を糜芳にかまし、痛みでしゃがみ込んだ所を、グリグリと人差し指で頬を(ねじ)る。


「ひたい痛い!止めて糞ジジイ様!?

ド素人の俺に、そんな大事業の監督業務なんぞ出来る訳ねーだろ、無茶言うな!?」

再び食ってかかるも、


「嘘を付け、嘘を!

お主が寺院とやらの設計に関与している事は、娘の手紙でちゃんと知って居るぞ!

ド素人に、そんな専門的な事が出来る訳なかろうが、たわけ者が!!」

しっかりと論破される。


「うぇ!?・・・あ、それはそのぅ・・・。」

部下の笮融(さくゆう)強請(ねだ)られ、前世で高校の建築科卒だった事もあり、テキトーに日本のお寺の平面図を、書いた事を指摘されてトーンダウンする糜芳。


「あの~嫁さんて色々と俺の事を、こまめに爺さんに書いて送っているの?」

「・・・ああ、惚気(のろけ)話をタップリ添えてのう。」

げんなりとした表情で頷く。


「え~と俺、州牧の業務で手一杯だから、とても監督業務をする余裕は無いんだけど?」

「又しょうもない嘘を申すな嘘を。

業務がかなり落ち着いていて、しょっちゅう黄昏れていたり、暇潰しに歌曲を歌っていたりしておるそうではないか。」

ジットリと半眼で糜芳を見詰める。


「ちゃんと良の報告で把握済みじゃ。」

「ちょっとぉ!?義兄さんん!?」

まさかの裏切り行為(?)に、再度後ろを振り向くと、土下座状態で両手を合わせて、「義父上には逆らえないんだ、ゴメンね!」とばかりに、謝り込んでいる蔡良が居た。


(・・・可哀想過ぎて、何も言えねえ・・・)

婿養子の悲哀を目の当たりした糜芳は、何も言えなくなり沈黙したのであった。


「え~じゃあ施工業者を仲介しますから、監督業務は司空にやって貰ってくださいよ。」

蔡良追及を諦め面倒事回避の為に、折衷案を提示してブー垂れるも、


(たわ)けた事を申すな。

今の司空である种拂(ちゅうふつ)殿は、剛直一本気な性格を買われて、先月病死した荀爽殿(荀攸の一族)の後任に指名されて任官した、只のド素人じゃ。

あくまでも司空府連中の監視役に過ぎぬし、門外漢にやらせた所で、マトモな結果に成らんわ。」

キッパリと無理と断じられた。


「・・・それに閣下に含む所(叛意)が有ると、チラホラ不穏な噂が出回っており、建設事業を任せるのは正直言って、かなり不安な所も有ってのう。」

ついでに裏事情も吐露される。


「それを言うなら俺も現在進行形で、含む所が増大中なんスけどねぇ!?」

「ほうお主、閣下に叛意が有ると申すか?

急ぎ閣下に報告せねばのう・・・厳しい詮議を受けて、拷問を受けるつもりとな。」

(ひげ)を扱いて糜芳を見据える。


「い!?い、いや~其処までは~・・・。」

「為らば暇で無聊(ぶりょう)を託っており、暇を持て余していると報告致そうかのう?

()()()()()に忙殺されておる故、閣下もさぞやお喜びになろうぞ。」

にたりと微笑みかける。


「いやいや、それもちょっとぉ・・・。」

「選択権は与えてやるから、好きに選べ。

さあ、性根を据えて返答せい!糜芳よ!?」 

ビシッと指を突きつけて問い詰める蔡邕。


「ううっ・・・やりますよ、やりゃあ良いんでしょうが、やりゃあ!

一生懸命頑張った苦労の末に、漸く安息の日々が訪れた所なのに。

噛み締める間もなく、こんな降って湧いた様な厄介事・・・あんまりだぁ~!!

汚ねーよ本当に!鬼!獣!妖怪!」

約束された選択肢を選び、orzと崩れ落ちて、悲痛な叫び声と共に蔡邕を罵る。


「ふん、問答無用で滅亡に追いやる策謀を企てる、お主にだけは言われとう無いわい。」

鼻を鳴らしてあしらう。


こうして済し崩し的に、新都市建設の統括責任者に成った糜芳であった。


「う~んう~ん・・・イーの呼びかけで浮屠の穴太(あのう)衆(日本の江戸期以前に活躍した建築集団)みたいな連中が、集まったのはいいけどさ?

「ある程度の完成予想図(パース)がないと、どうにも成らないから、絵図面を書いてくれ」って、どうしろっちゅうんじゃい?」

板に張り付けられた真っ白な布を眺めつつ、めそめそと泣き言をボヤく。


(そらーね!?曲がりなりにも建築科出てるから、卒業制作で商業施設の設計図ぐらいは、書いた事は有るけどもさ、流石にシムな街造りは無茶振りにも程が有るってばよ!?)

脳内で呻き、


(それに建築科卒って言っても、昭和期には「リアル戦争学校」、平成期には「リアルとあるボーズの学校orカラスの学校」って呼ばれてた、バリバリの不良校の出よ俺って?)

溜め息を吐く。


今では考えられないかも知れないが、前世の母校はガチの不良校で、昭和期には学校の廊下を族車仕様のバイク(当然無免許)がフツーに疾走し、校舎の窓は割れ放題で落書きだらけだったらしい。(卒業生・大叔父談で、何気にラグビーが強く、花園に出場経験有り)


平成期も入学式を終えてすぐに、「新入生歓迎」のバケツの水が、各校舎から降り注げられ、即座に上級生にケンカを売られる始末で、ケンカ両成敗のルールに依り、停学プラス丸坊主のペナルティが課せられ、3日間の自主休学になる程酷かった。(本人談で、学校最短停学記録を更新した)


(そんな試験勉強を一切しなくても、フツーに入れて卒業出来る妖怪学校レベルのモンに、こんな無茶苦茶高難度な要求をされてもねぇ・・・無理に決まってるやろ!?)

再びボリボリと頭を掻き毟る。


因みに前世の母校には、母方の大叔父(剥製祖父ちゃんの弟)・伯父・自分と三代に渡って入学していて、専門科目の建築関連の成績が、他の一般科目より三代揃って(すこぶ)る悪く、「お前らの一族は、何で建築科を選択したんだ?」と、最長老の科長(科目主任)に首を傾げられていた。


それはさておき、


「えっと、あの州牧閣下?

私に出来る事は何か御座いますか?」

恐る恐るといった体で、蔡良が問い掛ける。


「じゃあこの任務を、全て委託するから宜しく。」

「無茶言わないでくださいよ!?

門外漢の私では、とても全う出来ません!」

ブンブンと手を左右に振る。


「じゃあ現実的に出来る事を頼もう。

ちょっとその辺の城で反乱を起こして、立て籠もってくれるかな?

そうすれば新都市建設処じゃ無くなって、計画自体が立ち消えに成るだろうから。」

司令官スタイルで蔡良に告げる。


「承知しましたって言うわけ無いでしょ!?

洒落にならない物騒な頼み事を、子供をお使いに出すみたいに、あっけらかんと気軽にポンポン言わないでください!?

流石に閣っ?・・・め、目が笑ってない・・・本気で言ってる・・・。」

戦慄の表情で(おのの)く蔡良。


当然の如く糜芳の要求は却下されたのであった。


(う~んう~んう~ん・・・駄目だ思い浮かばん!

助けて~レジェンドヒーローパイセン!!)

三度頭を抱えて悩んだ末、前世の母校の大々先輩で、元祖国民的変身ヒーローになった、レジェンドに助けを求め始める糜芳。


掃き溜めに鶴と言うべきか、鶴が出た時から掃き溜めだったと言うべきか、悩ましい話ではあるが、何故か戦争学校な時代の母校で、夏の始まりっぽい名前の、悪の組織と死闘を繰り広げたヒーローを輩出していた。


因みにレジェンドヒーローは、テレビでは少しぎこちない格闘シーンが有るが、リアルに荒廃した世紀末学校を、3年間に渡り生き抜いたガチンコの猛者なので、まかり間違ってもリアルファイトを挑んではいけない。


それはさておき、


(う~ん・・・そう考えると董卓のオッサンがラスボスで、蔡邕の爺さんはさしずめ某博士って感じかなぁ・・・キャスティング的に)

現実逃避気味に、益体もない事を思考する。


そして暫くの熟考の後、


「はっ!?そうだ!

董卓閣下と蔡邕の爺さんに、正義の飛び蹴りをかませば、2人共爆散して万事解決やんか!」

現実逃避の余り、迷案が思い浮かんだ糜芳。


「何がどうなって、そういう結論に至ったのかが一切理解不能ですが、落ち着いてください閣下!ホンマ止めて~!?

相国閣下を蹴り飛ばしなんかしたら、ウチの一族一門の首が飛びますから!!

義父上、義父上なら構いませんから、義父上迄にしてくださいお願い!」

取り縋る様に糜芳の足元を掴み、半泣きで義父の蔡邕を売り飛ばすのであった。


~~只今主人公が絶讃錯乱中につき、暫くお待ちください~~


(いや~()()()蔡良義兄さんが新都市建設が済むまで、州牧の仕事を代行してくれるって言ってくれたんだけど?

まぁ、ノンビリ出来てラッキー・・・でもねーな。 

新都市の構想を練る課題は、シッカリ丸残りだし)

錯乱から立ち直って、振り出しに戻った糜芳。


すったもんだの末、とりあえず新都市建設の課題を脇に置いて、州牧の職務を果たそうとすると、「州牧の仕事は別駕従事の私がしておきますから、どうぞ閣下は相国閣下の依頼に専念為さってくださいませ!!」と言って竹簡を取り上げ、蔡良が一切の仕事を代行してくれたのである。


因みに蔡良が何故そうしたかと言うと、「今の状態で下手に州牧の職務をさせると、意図的にわざと反乱を誘発しそう・・・やりかねないというか、十中八九やる」という懸念が有ったからで有った。


日頃の言動の賜物(?)であった。


それはさておき、


「う~ん・・・とりあえず爺さんには、運転手キックをお見舞いするのは決定事項としてだ。

新都市の外部形状と規模の策定も面倒だけど、内部の街割り(区画)の()()()を、考えて決めにゃあならんのが何よりも面倒くさい。」

机に足を乗せて筆を鼻の下に置き、天井を眺めつつボヤく。


「まぁ、つっても外部の方は形状以外は、洛陽の規模を基準に換算すりゃいい訳だから、未だマシなんだよな~。」

形状が問題なんだよなぁと、溜め息を吐く。


「洛陽には約50万人住んでて、その内の約20万人が新都市に移住予定と。

記録だと洛陽の一辺の城壁の長さが約10里(4Km)、つまり新都市は一辺の長さを、大体半分の5里(2Km)に設定すれば良い訳だ。」

大凡(おおよそ)の概算値を算出する。


「・・・そう考えると現大阪城(徳川家が築城)と、道頓堀(豊臣秀吉が築城した大阪城バージョンの1番外の堀)って約3Km有るらしいから、太閤さんの大阪城って滅茶苦茶デカかったんだなぁ。」

20万人クラスがスッポリ収容出来る、超大規模の太閤大阪城に改めて感心する。


「まぁそれは置いといて、新都市の外壁は版築(はんちく)工法に日干しレンガを使うか。

汎用性の高い資材を使わねーと、いざという時に修繕・修復が出来なくて詰むしな。

城壁の高さは6(じょう)~7丈(1丈=約2.4mで約15m)にするかな?

大体5階建てのビルぐらいの高さだな。」

とりあえず簡単に設定出来る項目を、すらすらと書き連ねていく。


「こういった時に大概のチート転生者さんの場合は、「コンクリートで城壁を造るんだ!」って無造作にやるんだろーけどなあ・・・。」

溜め息を零す。


「現実を知ってる専業者の観点からすれば、現代工法を模倣してコンクリート造にしても、壁面の養生(ようじょう)=内部圧力の対策が出来ないから、確実に型枠が吹っ飛んで、灰色の津波が発生するのが判りきってるんだよなぁ・・・洒落になんねーわ。」

人夫さん達が、コンクリートの津波に飲み込まれる姿を想像し、ゾッとして身震いする。


「かと言って奈良の大仏(盛土(もりつち))工法だと、撹拌(かくはん)(かき混ぜる事)が出来ないから混合物のコンクリが砕石・セメント・砂利に分離して、下部は※マメだらけで上部は※粉が吹くといった、マジで指先1つでダウン(倒壊)しかねない雪花菜(おから)城壁に成っちまうし。

・・・ほんまもんにコンクリって、この時代つーか機械化が進むまで実用性がねぇな。」

前世の職業経験・知識が、悲しくなる程役に立たないのに凹む。


※マメ=キチンとセメントと砕石と砂利が混ざらず、重力に従って型枠の下部で、砕石だけが堆積してデコボコな表面になった状態。

当然碌に強度も無く穴だらけなので、指先でボロボロと砕石が取れる。


※粉が吹く=キチンとセメントと砂利と砕石が混ざらず、重力に従って型枠の上部で、砂利だけが堆積してサラサラな表面になった状態。

実質上砂の塊なので非常に脆く、息を吹きかけただけでサーッと飛んでいく。


「とりあえず外部は無難に四角にしとくか。

そんで街の中央部分の行政区画を高くして、四方を緩やかな下り勾配にしとけば、都市が雨で水没するリスクも減るし、恐らく大丈夫だろう、と思う。」

水道屋さんや道路屋さん達と違って、完全に門外漢なのでテキトーに決めていく。


一瞬、日本の信州真田家の拠点・上田城みたいに、町並みを迷路状にしようかと考えた糜芳だったが、よくよく考えて観ると、5階建てクラスの城壁を制圧された場合、町並みが丸見えで意味が無い事に気付き、残念ながら諦めたのであった。


「後は郿塢の方向性をどうするかだよなぁ。

地理的に郿塢から長安迄は約1日半の距離だから、商業系都市でも宿場町系が適性なんだけど、とっくに郿県自体が宿場町に成ってるから、郿塢を同系統の宿場町にしても結局、お互いに客の取り合いになって、潰し合いにしかなんねーしなぁ・・・。」

地域適性だけで観ると、既存の都市とモロ被りしてしまう問題点と、


「だからって敦煌の様な交易都市や、長安みたいな商業都市にしても、意味が無いしな。

国内の交易商人だったら先物買いで敦煌を選ぶし、国外の交易商人だったらより多く売買出来る、長安で商売する事を選ぶだろうし。」

地理的に中途半端で、別の商業的な分野での発展性に、かなり乏しい事を嘆く。


「じゃあいっその事、農業系都市にしたらって・・・無理だわ。」

速攻で無理と断じる糜芳。


地域特性上、羊や馬を生まれた時から接して、扱いに長けた涼州民が移住するなら、羊馬のセリや売買をメインとする、農業系都市に方向性を持って行くのもワンチャン有りだが、羊や馬をマトモに扱った事の無い素人の洛陽民に、羊馬管理等の都市運営を期待するのは、荷が勝ちすぎるからである。


「移住予定の洛陽民の適性を考えれば、商業系都市がベストで望ましいけど、地域的には発展性に乏しい・・・だぁぁ!にっちもさっちもいかねー!?」

20万規模の都市にそぐわない立地条件に、思わず声を上げる。


「もう神様でも仏様でもええから助けてくれ~。

はぁ・・・ベガかベガスにお出かけかぁ。

・・・うん?ベガに・・・ベガス・・・こ、これだぁ!!我、天啓を得たりぃ!?」

ピコーンと頭上に電球が(とも)る。


天啓を得て(?)閃いた糜芳は、勢い良く平面図・立面図を書き、完成予想図も書き上げたのであった。


そうして糜芳が涼州でのんびりしていた中、流星群の如く各地に散った将星(群雄)達が、「我こそが覇を唱えん」と徐々に、乱世に向けて輝きを増していた。


そんな将星達を支える、名臣・名将と後世に呼ばれる輔星(ほせい)達も又、世に出んとしていたのであった。


       徐州下邳国東成県


「・・・・・・。」

1人の青年が馬の背に乗って仰向けになり、雲がゆっくりと流れるのを眺めていた。


青年即ち魯粛は、才気に満ち溢れた人物であった。


学問所の成績は優秀で弁説も立ち、武芸・馬術にも秀でており、性格は気は強いが快活で爽やか、加えて生家も徐州で有数の資産家と、天は彼に二物も三物も与えていた。


だがしかし彼の周り=世間は、決して彼を優れた人物とは()()()()()()、相手にしなかった。


彼は確かに才気に溢れた人物ではあったが、残念ながら()()()()()ではなかったからである。


コレは古今の中国に於いてそうらしいが、「伝手やコネ」を重視する傾向が古来から強く、俗に言う「コネ入社」は父祖からの恩恵であり、父祖の遺徳を表した美徳という、儒教的な価値観を持っていた。


その為、特に儒教一尊と呼ばれる後漢時代は、儒教の影響が強いが為に、その風潮が依り強かったのである。


例えば袁術などは、政治的には痴政を敷いて民を苦しめた暗君であり、軍事的にはマトモに勝った事の無い愚将であったが、「四世三公」の家門に生まれた恩恵で群雄に成れ、一瞬とは言え「皇帝」を名乗る事が出来たのであった。


つまりはこの時代の「優秀な人物」というカテゴリーは、「家柄や血筋が良い」=「上位者(権利者)に強い伝手やコネ持つ」=「生まれ持った家門に恵まれた人物」こそが優秀な人物であり、当人の才気・才能の有無は、二の次三の次だったのである。


現代風に例えれば、一流大学で主席に成れる程の能力を持っていても、コネや伝手が無ければマトモに就職も出来ず、逆に三流大学のみそっかすな無能でも、コネや伝手が有れば一流企業に就職出来る様なモノであった。


その為才気・才能に優れた人物であるにも係わらず、マトモな家門を持たない魯粛は、この価値観に因って弾かれる反面、才気・才能に乏しくて品性が劣る愚物でも、生まれた「家門」の恩恵で「優秀な人物」と評され、世に出て出世するという或る意味で、世も末の体を成していた。


そんな時代の風潮なので、大概の寒門の人が立身出世を果たそうとするならば、何処ぞの涼州牧の如く強者に(へつら)ったり(当人は自覚無し)、(へりくだ)ったり(おもね)ったりするモノだが魯粛は違った。


持ち前の負けん気も相まって、「じゃあ俺自身が一旗揚げて、自分の力で世に出てやる!」と思い至ったのである。


そうして思い立った魯粛は、地元界隈で碌でなしと言われている不良達と交わり始め、時には実力で従わせ、時には弁説で言いくるめて瞬く間に劉備の如く、数百人規模の愚連隊を作り上げたのであった。


来たるべき将来に備えて家の財力を、愚連隊の手下達に惜しまず注ぎ込んで装備を整え、馬の野駈け(騎馬訓練)や弓槍の習熟(歩兵・弓兵訓練)を精力的に行っていた。


そうした青雲の志を理解する者は、相変わらず魯粛の周囲には居らず、近隣からは「魯家の跡取りは気が狂った」と言われ、身内からでさえ「酔狂な狂人」と、陰口を叩かれる始末だった。


そんな世間の評判に魯粛は、馬耳東風と聞き流して無視していた。


百弁(ひゃっぺん)連々と口で言うよりも、1つの行動で示す方が効果的」と理解しているからである。


それはさておき、


(さて、どうするか・・・一旗挙げる準備は整いつつある・・・しかし)

雲を眺めつつ漠然と思い悩む魯粛。


「智者は未萌に見ゆ」の言葉通り智者で有る魯粛は、一旗揚げた場合の将来に於ける、メリット・デメリットを明確に自覚し又、自覚しているからこそ躊躇が出るのであった。


(・・・こんな気狂いと周りに言われてる俺に、一途に愛情を注いでくれて、今まで育ててくれた祖母(ばあ)ちゃんに1つも孝行もせずに、果たして飛び出していいのか?魯粛子敬よ?

それに残される形になるお袋は?)

自問自答する。


彼の生家である魯家の男系は、悉く不思議と夭折(ようせつ)(若死)して何故か短命であり、家付き娘で有る祖母と結婚して婿養子に入った祖父、祖父母の一粒種である父も揃って、子供が産まれる前に亡くなり、魯粛自身も遺腹の子(遺児)として生まれていた。


その為裕福な家なのに傍系(親族)が殆ど居らず、直系に至っては魯粛只1人な状況で有る。


自分だけなら兎も角、祖母と母を残して飛びだす事に躊躇するのは、至極当然であった。


そんなこんなで思い悩む魯粛の許に、


「お頭!お頭の家のモンが来ましたぜ?」

手下が魯家の使用人を連れて来る。


「何だよ一体?」

「若!急いでお戻りください!

お婆様が!お婆様が!?」

「!?」

尋常じゃ無い様子の使用人を観た瞬間、脇目も振らず全力疾走で馬を走らす。


そして転がる様に家に戻り、祖母の居室に駆け込むと、


「祖母ちゃん!どうした!?母上も一体!?」

「おお、粛や、粛やぁ。」

「うう・・・。」

しわくちゃな顔で祖母が母と共に、涙を流して泣いていた。


祖母達の傍らには、商売の交渉に涼州に旅立っていた筈の、祖父の弟で大叔父の胡紹が旅装も解かずに、旅塵(りょじん)にまみれたままの格好で佇んでいる。


「粛や良かったねぇ・・・亡くなったお爺様や伜も、どれだけ泉下で喜んでいる事か。」

再び嗚咽を上げて泣き出す。


「何が良いんだ祖母ちゃん?さっぱり解らん!

大叔父上、どういう事だ!?」

埒が開かないと踏んで、胡紹に問い質した。


「先日儂が涼州に行ったのは知って居るな?」

「それは無論。」

当たり前だろと頷く。


「その涼州に赴いた折に、州牧の糜芳様に謁見が叶い、儂が魯家の者でございと挨拶したら、スラスラとお前の名を挙げられたのだ。」

「はい!?糜芳っつったら天下(徐州)に知られた、あの朐侯様の事だよな?どうして?」

会った事も見た事も無い郷土の偉人が、無名に等しい自分を見知っている事に仰天する。


糜芳自身は、ウッカリと効率重視と保身で行った数々の行動は、結果的に第三者・特に徐州人からは、非常に高く評価されていた。


何せ「東の田舎」と、司隷方面から観られていた徐州から生まれた、時の皇帝に絶讃されて「楽聖」と謳われた文化人であり、寒門で有りながら僅か数年で九卿・侯位に迄立身出世し、政才にも恵まれて州牧に上り詰めた人物だからである。


同時に全くの無名だった国淵を、「屯田制度」の統括者と自分の後任の太守に推挙し、推挙された国淵は糜芳の期待に応え、屯田制度を充実させて州の食糧事情を、大幅に良くした事で確かな見識を示し、涼州でも無名の人物を抜擢して統治に成功した為、「無名才気の名伯楽」と評されたのであった・・・当の本人が知らぬまま。


その為今の徐州では、「名の劉虞、実の糜芳」とよばれ、皇族の劉虞と並ぶ声望が有ったりしてしまうので有った。


それはさておき、



「ああ、その朐侯様がお前の名を知っている事に儂は青ざめた。

お前の狂人っ振りが知られたのかと。

だが案に相違して、朐侯様はお前の事を「国士足る大人物」評されたのだ。

大バカ者のお前をだ。」

目頭を抑えて俯く。


「俺が!?・・・ハハッそんな。」

「ああ、儂もそう思ったさ。

だから恐れ幅ったい事だが、証文を書いてくれとせがんだら、躊躇無く書かれたよ。」

スッと竹簡を魯粛に渡す。


「魯粛子敬なる者、必ずや国士足る器を世に現し、後世の歴史に盛名を遺さん。  糜芳」と書かれた竹簡を読んだ魯粛は、


「うぉぉぉおおおああ!!」

膝を折って絶叫する。


今や徐州屈指の「名士」で、世に知られた国士と成った糜芳の証文は、徐州に於いては仕官を望めば、高級官僚確定のVIPカードに等しく、中央に於いても(董卓陣営に)即採用確定の、プラチナカードに等しい代物で有った。


そして実力・実績を以て名士と成り、才能で評価する「名伯楽」・糜芳に認められた事で、


「お、俺が名士に成った?

そんじょそこらの青瓢箪な批評家と違って、俺自身の才能を以て名士に・・・うう。」

今までの世評が180度ひっくり返る事実に、orzの格好で嗚咽する。


「義姉上、誠におめでとうございます。

貴女の孫は世に羽ばたきましたぞ。」

胡紹が深々とお辞儀をすると、益々泣き崩れる魯粛祖母。


自分が大事に慈しんだ孫が、周囲から酷評されていたのに心を痛めていた所、州で1~2番の名士に絶讃されたのだから、喜びようも一入(ひとしお)であった。


「それで粛よ、お前はこれからどうするのだ?」

「どうするって・・・?」

「其処までお前を買ってくれた、恩人とも言える朐侯様に何もせず、このまま無聊を託つつもりなのか?」

厳しい表情で問い詰める。


「そ、それは・・・。」

「朐侯様はな、その証文に加えてお前が望めば、州牧の地位を譲りたいとまで、申されておられたのだぞ?」

「其処まで俺の事を!?」

地方官僚の最高位を譲る程、自分の事を高く評価してくれた事に驚嘆する。


因みに糜芳の心情は、州牧だろうが例え相国だろうが、厄介事のババには変わりないので、よっぽどの碌でなしでなければ、喜んで変わって欲しいと思っていたりする。


「しかし、祖母ちゃんや母を置いては・・・。」

「義姉上もまだまだ健在じゃし、儂もまだピンピンしとる。

最悪は嫁殿(魯粛母)を、商会代理人に立てる事も出来る。

家を惜しんで名を捨てるのは、1人の男子として失格ぞ粛よ!」

躊躇う大甥(たいせい)に激をいれ、


「義弟殿の言うとおりです粛。

「人は一代名は末代」と言う様に、己が成したい事を為しなさい。」

可愛い孫を励ます祖母。


「判りました・・・お祖母様、大叔父上。

先ずは朐侯様に恩返しをした後、身の振り方を考えようと思います。

すぐさま涼州に旅立つ事にします。

・・・どうかご健勝で。」

深々と拝礼する。


こうして1人の輝く輔星が、糜芳の無自覚なやらかしにより、涼州に向かうのであった。


因みにだが、当の本人は「うぇ!?何で孫呉の重要人物が来んの?」と混乱し、鶏の様に右往左往して取り乱す事になるのは、全くの余談である。


                 続く


え~と、私自身は「1日平均で千文字ぐらい」をモットーに、書いているのですが・・・結構コレって長文なんですかね?


他の作者様の作品を、ちょくちょく拝見させて貰っているのですが、なんとなしにそう感じる今日この頃であります。


もしかしたら3千字から5千字ぐらいが、キリ良く読める文字数なんでしょうか?


まぁ、それはさておき、


楽しんで読んで頂ければ幸いです。


優しい評価を宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
魯粛のくだりが何回読み直してもすき
あまりの面白さと見識の深さに、仕事中まで含めて16時間で全て読み切ってしまった、、、 あぁ、、飢餓感があああ、、次話は、、時話は何処、、、?
レジェンドヒーローがバッタの改造人間な仮面バイク乗りにして二代目探検隊隊長の事なら、明らかに実在の某私立高の事じゃないですかー>母校 ……確かにあそこはヤンキー校だと昔チラっと聞いた記憶がありますけ…
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