その4
読んでくださっている方々へ
投稿が大分遅れて、大変申し訳ありません!
完全に熱中症にやられ、ノックダウンしてしまいまして・・・。
体調が未だに芳しくなく、申し訳ありませんが、次の投稿もかなり遅くなると思います。
ご理解ご協力をお願いします。
読者の皆様方も、熱中症には充分にお気をつけて、お勤めをなさいます様に。
洛陽内東西繁華街
時は100年代後半の世紀末・・・の10月、後漢の魔王・董卓に依って召喚されし涼州勢が、洛陽の都の至る所に跋扈・徘徊して、洛陽の民衆を恐怖に陥れていた!!・・・ワケもなく。
「ヒャッハー!?これこの値段で合ってんのかぁ?
ええ?店主よぉ!?」
明らかにカタギに見えない風貌の男が、ニヤニヤと笑う似たような風貌の男達と連れだって、果実を持ちつつ店主を睨み付けて威圧していた。
「ヒッ!?ハ、ははい~その値段で、商売させて貰っておりますぅ!?」
「んだとぉ~!?・・・安っす!3つくれや!」
「へい?あ、毎度?え~と丁度ですね。
お買い上げありがとうございます?」
目を白黒させながら代金を受け取り、混乱状態でも商品を渡して、定例句を述べる店主。
「どがいやお前、安かろーがい?」
「いや、素で(本当に)安うて驚いても~たわ。
涼州で買うたら、倍ぐらいするけんな~コレ。」
「ほやけん言うたろがな(だから言ったろ)、我がの(お前の)好物が安う売っとるてや。」
世紀末的風貌の男達がワイワイと、ヤーさん言葉っぽい方言で談笑しながら、立ち去っていく。
「なんだったんだ?あの強面達は・・・?」
呆然と見送る店主。
又、とある古着屋では、
「グェヘッヘッヘ・・・見ろよこの着物をよ。
母ちゃんに贈ったら喜ぶぜ~?きっとよう。」
癖の有る笑い声?で着物を見つめ、悦に入る世紀末的風貌の男。
「おいお前・・・目ぇ大丈夫か?
お前の嫁さん、こがいに小さい寸法やと入らせんと、破れるやろが?
なんやあれか?「コレが入るぐらいに、身い絞れ」言う比喩か?・・・シバき廻されるぞ?」
連れの世紀末的風貌の男が、半眼で諭す。
「・・・すんません、コレよりも一回り・・・いや二回り大きい寸法ください。」
即座に日和って指を2本出す。
又、大通りでは、
「わははは!汚物だと!?立派な燃料じゃい!」
道端に落ちている馬糞(遊牧民は草木が生えない冬季に、燃料として乾燥させて使用していた)を、ひょいひょい拾っていたりしていた。
このように涼州勢は、洛陽の外壁周りに幕舎を建てて仮住まいとし(定期的に馬を走らせる必要性が有るため=走らせないとストレスを溜めたり、鈍って走らなくなるから)、非番の者達がちょくちょく繁華街などに出没し、何とも言えない戸惑いと困惑を、洛陽の民衆に齎したのであった。
そんな涼州勢を糜芳から観たら、「修学旅行に来た学生かよ」と評するであろう、都会に浮かれて稚気を全面に出している、地方出身の学生の如く、微笑ましい?オッサン達である反面・・・
洛陽内南地区
「おどれらぁ!!遠慮する必要はねぇ!董卓のオジキの指示だ、徹底的にやれや!!
ガサ入れして家財・財産を根刮ぎ没収しろー!」
「「「「「ヒャッハ~!!やってやるぜ~!!」」」」」
高々と剣を掲げた後に四方八方に散って、とある名家の屋敷内を物色する涼州勢。
繁華街では都会に来て、はしゃいでいる涼州勢も、此処南地区の住人・名家連中相手には、情け容赦の無い鬼や修羅と化していた。
金目の物をドンドンと荷台に積んでいき、その家の子女と思しき人達の両手を縛り、縄をうって数珠繋ぎに連行していく。
「待て、待ってくれ!?無体な事は止めてくれ!」
家の当主と思しき者が、涼州勢にとり縋るも、
「無体だぁ!?どの口が言ってやがんだテメェ!」
「ぐああぁ!?」
額に血管を浮かばせた涼州勢に、蹴り飛ばされる。
「テメェ等腐れ野郎共がやぁ、俺達に届く筈の物資の横流しや着服をしやがるせいで、どんだけの俺達涼州民が困窮し、軍閥がひもじい思いをして、異民族と戦って来たと思ってやがる!?」
怒りに任せて、殴りつける。
「ブベ!?ヒィィアア!?」
「テメェ等が盗んだ物資で、ぬくぬくと洛陽で過ごしている間に俺達は、俺達はやぁ!
バタバタと戦友や家族が、目の前で死んでいく中、腹を空かせて戦って来たんじゃボケが!」
容赦なく追撃していく。
董卓が何進暗殺事件から後に、まず真っ先にやった事は、地方軍・地方に支給されている物資、食糧や武具を横領・着服している、していた者達に対する苛烈な処断だった。
地方軍閥の長である董卓は、当然自分達に支給されている物資量を、把握しているし記録もしている。
そんな中で実質中央のトップとなり、何進暗殺事件解決後に、洛陽側の記録を確認して愕然とした。
本来支給される筈の量の半分処か、下手をすれば3分の1以下の3割未満でしか、自分達に支給されていなかったのである。
無論董卓とて軍人で有るので、洛陽からの物資支給が、十全に自分の所に届く筈が無いのは重々理解はしているし、納得出来る。
物資を輸送する輸送部隊自体が、人馬で荷物を運んでいる以上、食糧を消費するコストが掛かるので、至極当たり前の事だ。
しかし、しかしながら洛陽の有る司隷と、董卓の居る涼州は隣同士の州であり、洛陽から涼州の州都の有る漢陽郡までは約400キロ、歩いて凡そ10日の距離になり、軍事的に観れば指呼の間である。
(中国的感覚に於いて。参考に日本で例えると東京~京都間が約350キロで、洛陽~長安間とほぼ同じ距離になる)
凡そ10日から2週間で着く距離だと、どれだけ多く見積もっても2割弱の消費が限度であり、大凡8割は涼州に届く計算になる。
それなのに2割強の消費に加え、物資の半分近くを洛陽~長安間で謎に消費しているという、素人でも判る無茶苦茶さであった。
何進が大将軍に就任後に介入して以降、改善されて漸く半分の5割程であり、現状でも3割は中抜き・横領されているのである。
当然今まで支給物資のやり繰りに、散々に苦心していた董卓は激怒。
洛陽~長安間の物資輸送に携わった汚吏・悪吏を、悉く捕らえて厳しく詮議・拷問に掛け、族滅処分に処したのである。
そして現在、拷問に掛けた汚吏・悪吏の証言を基に、汚吏・悪吏からの賄を受け取り、職権を悪用して後ろ盾になっていた、腐れ名家を処罰していっているのであった。
この苛烈な処置により当初董卓の事を、「政治に疎い田舎出の、不作法な軍人」と観て軽んじ、何進よりも下に見て嘲笑していた中央名家連中は、色を失って震え上がった。
何進の場合は本人自体が文官気質で有り又、自身の権力のバックボーンの大元である軍部は、あくまで共生関係で有って劉弁が継ぐ迄の、借り物に過ぎないのをキチンと自覚していたので、無闇矢鱈と軍事力=武力を行使せず、当事者や周囲の関係者ぐらいで処分を済ましており、比較的文治的で鷹揚なやり方をしていた。
しかし、董卓の場合は根っからの軍人で有り、基本的に軍での軍律違反や横領等の不正は、軍全体に被害が及んで致命的な問題に陥り易いので、悪即斬程ではないが厳しくなる傾向が強く、董卓も武断的な判断が染み付いていた。
なので何進と同じバックボーンとなる軍部を、皇甫嵩・朱儁を通じてガッチリ掌握して抑え、軍部とは別に独自の軍=涼州勢と、先日吸収した呂布率いる并州勢を有している董卓は、何の躊躇いも遠慮も無く涼州勢と并州勢を使って、汚吏・悪吏粛清を断行しているのである。
この様な経緯を経て、名家閥連中から観た董卓の評価は一変、何進とは比にならない、相性最悪の天敵となったのだった。
なにせ何進と違って、軍人思考の実力主義なので、家柄や血筋をあまり重要視していない分、政治的な駆け引きが全く通じず又、武断的な判断で行動するので、罪科に関しては苛烈で容赦がなかった。
まぁ、政治的駆け引きと言っても、伝家の宝刀である「職務ボイコット」が使えないので、そもそもの話、マトモな交渉材料が無かったのであるが。
理由としては何進亡き後も、各府を実質上運営管理していて、何進に随身していた中~下級官僚が、後釜に座った董卓の下を、離反しなかった為である。
旧何進政権の政治部門の長老格である、蔡邕が董卓を支持したのも大きいが、董卓の名家閥に対する、果断な処置に内心「良いぞもっとやれ!」と拍手喝采を挙げて、熱い支持をしたからであった。
何進は文治的な思考だったので、当人や直系筋を処断しても家自体は残るので、子弟や族子がスライドして跡を継ぐパターンが多く、役職の椅子があまり空かなかった。
反面、董卓は「遺族を遺せば後世の災い」とばかりに、容赦なく族滅処分にする武断的な思考なので、ゴッソリと名家連中がいなくなって、中下級官僚に役職の椅子が空いていくからである。
ついでに中下級官僚にとっても、無能でも家柄や血筋だけで役職の椅子に座り、自分達の功績や手柄を横取りして、出世の踏み台にするクソ上司を、合法的に根刮ぎ排除出来る最大の好機なので、せっせと董卓にリークしていったのであった。
その為、脛に疵を持つと言うか瑕疵だらけの名家閥連中は、いつ何時粛清の憂き目に遭うのか恐れ、戦々恐々としたのである。
それはさておき、
「おい、もう止めとけや。」
「何でや!?止めるんかいワレ!?」
血走った目で、止めに入った同僚に噛み付く。
「当然やろうがな。
しゃっちに(わざわざ)そんな腐れ野郎を殴って、己の手を血で汚す事を、せんでもよかろーがや。
それにソイツの着物も売っ払って、横領した分の補填をするんやけん、価値が下がろうが。」
淡々と激昂している同僚を、冷静に諭す。
「どうせ今までの悪行をした分、死ぬまで拷問されて晒し首になるんやけん、それで良しとせーや。」
「・・・そやな、俺が此処で殺ってもうたら、逆に慈悲になってまうか・・・スマン、戻るわ。」
パッと気絶している当主の、襟首を掴んでいる手を放し、本来の回収活動に戻っていく。
「わ、我々をどうするつもりだ貴様らは!?」
当主の親族らしき年長者が、食ってかかる。
「あん?お前ぐらいの年寄りだったら、其処で呑気に寝とる腐れ者と同じく斬首刑やろな。
奴卑(奴隷)にしても使い道が無かろうけん。」
「なっなっ!?」
絶望的な回答に、蒼白になって絶句する。
「働ける成人前後の男共は、鉱山送りか前線送り。
女達は色街の競売に掛けられて、大体は色街行き。
残りの女子供は奴卑に落とされて、奴隷商に売り飛ばされるって所やろな。」
年長者だけでなく、老若男女にも絶望を告げた。
「くっ、この鬼!獣が!!」
「はぁ?国家の罪人がナニほざいとんじゃ?
オドレらが散々好き勝手に罪を犯した、当然の報いを受けとるだけじゃろが。
他人様の生き血を啜って泣かして生きて来た、オドレら人面獣心の薄汚い輩の方が、よっぽど人非人の外道やわいボケが。」
さも被害者面をする、名家一族の身勝手さに呆れ、嫌悪感丸出しで吐き捨てる様に罵る。
こうして罪科を犯した者に関しては、血筋や家柄と云ったモノにも配慮せず、容赦なく処断する董卓の様を後世に於いて、阿鼻叫喚の地獄絵図を現出した(ほぼ南地区限定)、極悪非道の逆臣(名家閥限定の評)と称されたのであった。
そんな名家閥に、心底恐れられている董卓は・・・
洛陽大尉府改め司空府執務室
「・・・全くどいつもこいつも。
やりたい放題したい放題してやがる・・・ハァ。」
2通の記録書を観て、盛大にため息を洩らす。
大尉から司空にジョブチェンジした董卓は、国で記録されている書簡と、司隷地区の各郡の記録書を見比べて、明らかに予算の中抜きをしているバカ共の物証を確認し、名家閥版デスノート・「始末人物表」に当事者の名前を記載していく。
日本風に云えば防衛大臣に当たる大尉から、国交・農林大臣に相当する司空になった後、大尉の時と同じく問題がないか、ある程度の積もりでチェックしている董卓だったが、あまりの不正・中抜きの酷さに頭を抱えるのであった。
「比較的厳しい軍事関係でも、あの体たらくやったけん、ある程度は覚悟をしとったが、こがいまでに酷いとは・・・。」
「・・・済まぬ董卓殿。
大司農府(財務省)はキッチリ抑えて、金銭管理はしっかりとしとった積もりじゃったが、金銭の流れまでは把握しておらなんだ。」
董卓の発言を受けて、ぺこりと陳謝する蔡邕。
前述の通り司空は、国交省・農林省に相当する。
つまりは公共事業を計画する部署であり、当然の如く利権が多く絡み、莫大な金銭が流れる所なので、名家閥にとって司空の役職は、「金の成る木」であり、名家連中にとっては垂涎モノであった。
その為大尉として国家の軍事に於ける、不正にしっかりとケジメをつけた董卓は、今度は民事だと名家閥の牙城となっている司空に、前任者を強引に押しのけて就任し、不正捜査にメスを入れたのだが、これがまぁ出るわ出るわのオンパレードだった。
「いや頭を上げてくれ蔡邕殿。
コレは大司農府の権能を越えたモノだから、蔡邕殿達が責めを負う類ではない。
不必要な事柄に関しては掣肘出来ても、必要な事柄を水増ししとる事には気付き難いしな。」
手を上下して、気にするなと慰める。
露骨なモノだと、各郡県から提出された公共事業(道路整備・治水事業等)の予算案を、国には何割か増しで請求し、その差額分を懐に入れていたり、巧妙なモノになると、郡県と結託して予算案自体を、最初から水増しして提出させ、後で差額分の一部を郡県の協力者に渡し、残りをキックバックさせていたりと、ピンキリであった。
「全く・・・こういう知恵をしょうもない事に使わず、もっとマシな方向に使えんのか?此奴等は。」
「本当にのう・・・頭の使い所を深刻に間違えておるわ、情けない。」
悪知恵と悪事を働く事に関しては、超一流のバカ共に、呆れて2人して嘆く。
蔡邕と側近達と協同で、精査して不正を探り当て、せっせとデスノートに名前を記載していく董卓。
そしてある程度に目処が立った所で解散し、蔡邕達が去った入れ違いに、副官の牛輔が幾つもの竹簡を抱えて入ってくる。
「失礼します殿、先日の襲来した白波賊討伐関連の最終報告と、諸々の陳情を持って来ました。」
「おう、ご苦労。
早速報告の方を頼む。」
凝った肩を回しつつ、報告を催促する。
「はっ、襲来した白波賊の、討ち取った人数は凡そ1万弱、こちらの被害は凡そ50人程ですね。」
「ほぉ、まるで大人と子供の戦いやな。」
自然とお国言葉に戻って、苦笑いして聞く。
「ほらほうでしょうとも。
ド素人の黄巾賊くずれと、千軍万馬の古強者の我々が戦ったんですけん、当然の帰結ですわ。」
自慢げに言う事も無く、淡々と話す牛輔。
「まぁ、それこそほやな。」
「それはまぁええんですけどが、襲来して来た理由がちょっと・・・問題でして。」
「?なんぞ面倒くさい話なんか?」
首を傾げて尋ねる董卓。
「え~そのう、あくまでも捕虜の証言なんですが、「余所の同業者が、自分達の縄張りを荒らしに来た」と、勘違いしたらしゅうて。」
「・・・・・・擁護が出来んのが悲しい・・・。」
世紀末的格好の部下達と涼州勢を、洛陽の民衆と思い比べてうなだれる。
「・・・まぁ俺も同意ですね~。
只まぁ結果的に、賊徒を討ち取って治安良化に貢献しとりますけん、良しとするべきでは?」
「た、確かにその通りやな。」
牛輔のフォローに頷く。
「とまぁ対外的にはそれで良しとして、洛陽内東地区から陳情ゆうよりは、苦情が出とります。」
「苦情?何じゃ言うてや?」
眉間に皺を寄せて尋ねた。
「え~ウチらのガラが悪く、客としてはありがたいが、他のお客さんが寄り付かなくなるので、どがいにかして欲しい、と有りますね。」
「んなこたぁ当の本人に言えや本人に!?
逆に儂にどがいせぇ言うんじゃ!?」
しょうもない陳情に声を荒げる。
「オヤッサンが、涼州勢の元締めなのは周知の事実ですけん、言うて来たんでしょうね。
それに付随して東門の守備兵からも、苦情が寄せられとりますね~。」
「はい?守備兵からもか?」
「ええ、結構深刻みたいですわ。」
コクリと頷き竹簡を広げて、
「え~と、「行商人や交易商人から、賊徒が付近に屯していると、日に何度も繰り返し通報され、日に何度も確認する羽目になり、行ってみたら涼州勢と何度も顔を会わせて、何度も注意をしなければならない事態に陥っており、どうにかして欲しい」と、嘆願書が出てます。」
生々しい悲痛な訴えを、董卓に伝える。
「う~ん、う~ん・・・否定が出来ん!
とりあえず野郎共には、基本的に東地区の出禁と、東側に屯ってる奴らは、北と西に移動させーや。」
頭痛をこらえるかの様に、頭を抱えて指示を出す。
「了解しました、そう手配します。
んでもって、今度は涼州勢からの陳情ですね。」
「・・・一体何じゃ言うて来とんのじゃい。」
露骨に面倒くさそうな表情で、嫌々聞き返す魔王。
「はっ、え~・・・「遊侠の徒に絡まれとる庶民を助ける度に衛兵から、我が等(自分達)の方が悪さしとる方の、遊侠の徒に間違われて誤認逮捕されよるんで、どがいにかして欲しい」との事です。」
陳情を読み上げる牛輔も、頭痛をこらえる仕草をして、言い辛そうに話した。
「思いっきり我がで(自分で)、誤認逮捕されよる問題点を、ハッキリ言うとるやんけ!?
遊侠の徒に見える格好を、我がでどがいにかせんかいやボケぇ!其奴らはアホかぁ!?」
ダンッ!と机を叩いて吼える。
「地元の涼州では普通ですけん、自覚がないんでしょうねぇ~ホンマに。
・・・え~次は呂布殿からの苦情です。」
ラジオのパーソナリティの如く続ける。
「今度は呂布から?何だよ一体?」
「え~呂布殿からは、「自分に喧嘩を売ってきた、涼州勢をぶちのめして以来、腕試しで勝負を挑んで来る涼州勢が後を絶たず、断ると集団で座り込みをしたり、鬨の声を上げたりと、業務に差し障りが出ているので、止めて頂きたい」との事ですね。」
「・・・ボケ共が、やりたい放題してやがる。」
両手で頭を抱えて、ドスの利いた声でぼやく。
「大体なんで呂布に喧嘩を売ってんだよ?」
「あれですよあれ。
呂布殿が新規に、オヤッサンの傘下に入ったんで、ウチのモンを始め先輩として、可愛がりをしようと目論んで、返り討ちにあったつう事ですね。」
したり顔で予測する牛輔。
後輩になる呂布に、俗に言うマウンティングをしようとして、あっさり返り討ちに遭った結果、武尊気質な涼州勢は、「俺よりも強い奴に会いに行く」状態となり、呂布は勝負を挑まれ続けていた。
呂布にとっては、大迷惑この上無い事であった。
「ハァ・・・儂もやんちゃしとる時が有ったけん、偉そうに言えんけどが、他州者にすんなよなぁ。
とりあえず今後、呂布にちょっかいかけた奴は、涼州に強制送還させろ。
此処は洛陽であって涼州じゃないんやけん、地元の考えを持ち出すなやホンマに・・・。」
同郷として一定の理解を示しつつも、時と場所を考えて行動しろと愚痴る。
「ちゅーかや、ウチの兵隊って今どれくらい、地元から来とるんや?」
「え~、把握しとる限りやと、約4万位ですね。」
「はあ!?そがいに来とるんかや!?
お前それ涼州の守備とか大丈夫なんか!?」
予想外の多さに驚く董卓。
「あ~まぁ、その辺は糜芳殿が居りますので。」
大丈夫でしょ?と、安気に答える牛輔。
「う~んそれなら良いんやが・・・牛輔よ、涼州勢がまことしやかに噂しとる、あの話どう思う?」
「糜芳殿の妖術の事ですか?
首が落ちただの、空箱から兎を取り出しただのといった、眉唾物の話ですけんどが。」
半信半疑の表情を浮かべる。
「まぁそう思うのが普通なんやが、ど~も都でも糜芳殿が大勢の観衆の前で、仙術を披露して大騒ぎになったらしい。」
「ええ?ホンマにですか?」
疑わしげに首を傾げた。
「ああ、人から拝借した冠の中から水仙を取り出したり、手の平にある銭を蔡邕殿や皇甫嵩殿の目の前で、消したり現したりしたそうだ。
それに涼州の件もあやふやな話じゃなく、馬騰と韓遂が直に観ているそうだしな。」
信憑性の有る、情報ソースを提示する。
「ええ!?ちゅう事は、ホンマもんの仙人ちゅう事ですかいな、糜芳殿は!?」
「まぁそうなるわいな。」
思いっきり勘違いな話に、コクリと頷く。
「ほんでそれを踏まえて、大鴻臚(外務大臣)が泣きを入れて来とんるんや。」
「はぁ・・・大鴻臚がですか?」
「噂を聞きつけた諸外国の特使が、「仙術を観てみたい」とちょくちょく言って来て、どがいにもこがいにもならず、がいいに(結構)難儀しよるらしいわ。」
「それは又・・・堪らんですね~大鴻臚殿も。」
心底同情の念を覚える牛輔。
(似非)超常現象を見せた糜芳が州牧の為、呼び寄せる事も出来ず、国外の使者の無茶ぶりに右往左往するしかない、大鴻臚の立場を鑑みれば、当然の感情であった。
「其処でやな、いっそのこと糜芳殿を、大鴻臚にしてしまおうと考えとるんやが、どない思うぞ?」
「え?ほたら(それなら)州牧を離任させて、大鴻臚にするんですかい?」
「いいや、州牧と兼任やな。」
「う~ん・・・まぁ、国門の敦煌が有る、涼州牧と兼任やったら在京じゃなくとも、問題が無いっちゃあ無いですかね。」
腕を組んで唸りつつ、賛成の意を表した。
「ほうか!やっぱりお前もそう思うか!
良し、お前の推挙で大鴻臚に就任した旨を、糜芳殿に知らせるけんな!」
ヤーさんの親分面で目を輝かせ、いそいそと竹簡と筆を執って、推挙状を記そうとした瞬間、
ガシッ!
「ちょおっと待ちましょうか、オヤッサン~?
何で俺の名義で推挙するんスかね~?
三公のオヤッサンの方が、箔付けに最適でしょ?」
胡乱な物言いと共に、がっしりと腕を掴む。
「え、いやその、何だ、お前も出世してな、歴とした将軍位になったんやけん、ちょっとでも名を売っとっても良かろうモンと、思ってなぁうん。」
「ほほ~・・・それはありがたく?
念の為、「この推挙状は、オヤッサンが俺の名義を使って書きましたので、文句はオヤッサンに」と、添え書きを糜芳殿に出しておきますね?」
しどろもどろに答える主君に、半眼で予防線を張る副官。
「何でだよ?」
「そりゃあ当然、糜芳殿に恨みを買って、「魂魄を人形に入れられたくない」からですよ。」
「んなもん儂だって嫌じゃわい!・・・あ。」
「ああ!?やっぱり人形の噂を知っとって、ワザに言うたんですね!?なんちゅう汚い事を!?」
指差して非難する牛輔。
糜芳が異民族の代表団を、手品と腹話術で驚愕と畏怖させて以降、涼州勢と言うよりも涼州全体に、「糜芳に恨みを買うと、魂魄を抜き取られて人形に入れられ、魂魄ごと焼かれて殺される」という噂が流れて、畏れられていた。
ついでに噂に尾鰭が付いて、「故郷の徐州の館には、糜芳の恨みを買った人形が溢れており、夜な夜なすすり泣く声がする」といった某悪魔的閣下の、代表曲名の様な館に住んでいると、まことしやかに囁かれている。
それはさておき、
「只の噂やろうが噂!
もしも何ぞ事が有ったら、お前の嫁・子供の面倒は、儂がちゃんと看ちゃるけん!」
筆を持つ腕を掴む牛輔の、手を剥がそうと力を込めるも、
「只の噂だったら、それこそオヤッサンが我がの名前で、推挙したらええでしょうが!?
それに俺の嫁子供つったら、オヤッサンの娘と孫ですけん、なんぼカッコ良う言うても、只の里帰りですやんけ!?」
剥がされまいと、より力を込める牛輔。
そうしてお互いに、「人形に魂魄を入れられるのは嫌じゃあ!」と、押し問答をしていると、
「大変です閣下!
蟄居謹慎中の袁紹が自宅を脱走した上に、洛陽まで脱出して、行方知れずとの報が入りました!」
司空府の属官が飛び込んで来た。
「あん!?なにいぃぃ!!ボケ袁紹がぁ!?
詳しい事を問い質すけん、叔父の袁隗を呼べや!!
それと袁紹の地元に詰問の使者を送って、もし地元に帰っとったら、即座に引き渡す様に袁家の者共に通達せぇ牛輔!!
万一でも匿ったり逃したら、容赦なく処断すると言い添えてのう!!」
「はは!!急ぎ使者を送り出します!」
降って湧いた事案に驚きつつも、お互いに機敏に反応して、動き始める主従。
こうして新たな案件が発生した為、糜芳の大鴻臚就任の件は、有耶無耶の内に立ち消えになり又、この袁紹脱走事件が後に後漢を揺るがして、三国時代突入の嚆矢となるのであった。
そうした中央の騒ぎをよそに、涼州では・・・
涼州漢陽郡隴県慰霊廟
「おいおいおい!?どんだけの軍閥達が、ヒョイヒョイと洛陽に行ってんだよ!?
幾ら何でも行き過ぎだろうがコレは?」
涼州牧である糜芳は、痛々しい生傷をこさえた頭を抱えて呻いていた。
しがない地方軍閥の長だった董卓が、一夜にして最上位の三公に就任した事で、涼州内では空前の「董卓フィーバー」が発生し、特に縁の深い涼州軍閥達は、我が事の様に熱狂して喜んだ。
そしてその董卓から、「手助けをして欲しい」と援軍要請が舞い込んだ途端、「オジキの手伝いに行くぞオドレら!?」と言って、軍閥達がゾロゾロ洛陽に向かって行ったのである。
その数約4万、涼州軍閥の約半数が洛陽に行ってしまい、文字通り涼州の戦力が半減してしまう。
先述の通り、騎馬での移動を主とする匈奴・羌・烏丸族の異民族に接する、涼・并・幽州は歩兵を主とする州軍では太刀打ち出来ず、あくまでも籠城戦を主体とする専守戦力に過ぎない。
なので実質的な異民族に対する主戦力である、軍閥達が居なくなった事で、州内の対異民族戦力がスカスカになっており、隙を突いてくる可能性がある異民族と、チラホラと蠢動している流賊の動向に、腐心する羽目に陥っていた。
皮肉にも、洛陽でしょうもない問題を起こす、涼州勢に頭を悩ます董卓とは正反対のベクトルで、居なくなった事で発生しかねない問題に、頭を悩ます事となった糜芳であった。
因みに頭部の生傷は、コクオー(仮)(牡)との戦いに於いて、頭部丸かじり振り子投げっぱなしに因る、決まり手に敗れた戦傷であった。
ついでに勝利の嘶きを上げるコクオー(仮)を観て、面倒を看きれないと判断した糜芳は、某劇場の某アライグマの如く、野生に返そうとするも、
「駄目ですよ州牧閣下!?
異民族にとって、これ程の名馬は貴重な財産であり、掛け替えのない宝物に等しいモノです。
それを捨てるのは、送った異民族の部族の面子を、丸潰しにするのと同義ですよ!
もしもバレたら問答無用で、即時戦争になりますので止めてください!」
顔を真っ赤にした蔡良に諭され、渋々諦めた糜芳。
「え~?・・・じゃあ食うしかねーかぁ。」
「そんな事をうんと言うとでも!?
捨てたら駄目って言ってるのに、食って良しなんて言う筈がないに、決まっているでしょうが!?」
益々ヒートアップしていく蔡良。
結局部下に下賜するのも、駄目と言われた糜芳は、上位者に贈るのはOKと言うことで、躊躇も遠慮もなしに董卓に贈る事を決め、特製馬運車で搬送して厄介者(馬)?を、押し付けたのである。
奇しくも糜芳・董卓もお互いに、与り知らぬ面倒事を、押し付け様と画策したのであった。
それはさておき、
董卓の援軍要請に因る、異民族対抗戦力の半減を憂慮した糜芳は、各郡県の太守・県令及び名代と、残った軍閥の長及び、留守居の代理人達を緊急で集めて、今後の対応策を話しあっていた。
「う~ん・・・敦煌郡と漢陽郡内は兎も角、他の郡は危ういか?コレは・・・。」
意見交換した後に、大雑把に話を纏める。
敦煌郡は土地柄的に、遠友の交易商隊が多く集まる地域な為、異民族に襲われ難く又、防犯上私兵を雇っている商家も多い為、流賊にも対応しているので、わりかし安全面ではしっかりとしているし、漢陽郡は州都がある地域なので、元々の滞在している兵数が多く、それこそ韓遂といった地元民の手引きが無ければ、侵入・侵攻自体が難しかった。
しかしながら2郡以外の郡は、ほぼ軍閥頼りなので異民族はもとより、流賊が跳梁跋扈する危険性も懸念されていた。
「う~んとりあえず、龐徳達の飛連隊を増強して、ある程度は防げるか?」
「恐れながら閣下。
飛連隊自体が、元々約3千騎程しかおりませぬ。
目一杯増強しても、5千に届くかどうかがやっと。
それだけでは、焼け石に水かと・・・。」
漢陽郡太守である、蓋勲の代理人・常林が、否定的な意見を述べる。
常林は厳格で依怙贔屓を嫌う蓋勲が、自分の死後の後任に推挙する程の清廉であり、寒門出身故の、謙虚さも持っている練れた人格者であり、今や実質的に蓋勲に漢陽郡の統治を委任されている、「一を知りて十を知る」という才人であった。
「ふむ・・・では常林、貴君ならどうする。」
「はっ、私としては各軍閥が抱えている予備兵力、成人前の若人を、臨時徴兵する事を提言します。」
拱手しつつ糜芳に告げる。
「「「「「なっ!?ヒヨッコを実戦配備せえやとぉ!?
正気かオドレは?何考えとんじゃ!?」」」」」
各軍閥の代表者・代理人が、色めき立って常林を睨み付ける。
(う~ん?・・・あ、なる程。
どっちみち、最悪の場合結果は同じになるのか。
一瞬でよ~考えるわ、この常林って奴は・・・)
脳内思考して、常林の考えを読んだ糜芳は、内心で感心しつつ、
「ふむ、なる程、もしも異民族にせよ流賊にせよ、飛連隊が対処不能になれば、否が応でも軍閥も出動しなければならない。
最悪は未成年者すら、臨時徴兵せねばならぬと有らば、事後になってからいきなり投入するよりも、場馴れさせる事で多少はマシだし、予め投入して兵力を誇示して、躊躇させる意味でも効果的だな。」
常林の提言を肯定する。
「はい、左様にございます。
兵力を惜しんで流賊達に、隙を見せて略奪を誘発するよりも、少しでも隙を見せない様にし、略奪行為を躊躇わせるのが肝要かと。」
「ふむ確かにその通りだ。
軍閥の諸君達もそう思わないか?」
軍閥の代表者達に水を向ける。
「・・・確かに一理有りますわ。」
「右に同じく。
被害が大きゅうなってから出しても、後の祭りになるだけですけん、出し惜しみは愚策ですわな。」
「ふーむ、モノは考え様ですわな。
精強な異民族よりも弱い流賊相手に、少し早めの実戦経験を積ますと考えれば、悪うないですわ。」
流石に軍事関係の利害には聡く、利と理になると判断し、賛成の意を表した。
「しかし閣下、流賊だけならまだしも、匈奴や羌族の異民族相手には、かなり厳しいと思われます。
その辺の状況はどうでしょうや、馬騰と韓遂殿?」
最大の懸念事を述べていない糜芳達に代わり、専門担当官の2人に問い質す蔡良。
「はっ?いやそりゃ羌族の方は、奥地に居る部族までは不詳ですが、国境付近にいる部族に関しては、少なくとも糜芳閣下が居る間は、襲撃を企む馬鹿はいないと思うので、よっぽどの変事がない限りはまず大丈夫かと。」
じと~と糜芳をみつめて馬騰が話し、
「匈奴族も同じく、あがいなモン見せられて、襲撃しに来るアホな族長は、幾ら何でも居らんでしょうけん、まず大丈夫です。」
韓遂も糜芳を見つめつつ、「んなアホが居ったら観てみたい」とばかりに、堂々と言い切る。
「・・・なる程、では目下の所は流賊対策を、主に考えるべきですか。」
「蔡別駕従事様に申し上げます。
ここは万一の事を想定して、異民族対策もキチンと講じて於くべきかと。」
蔡良の意見をやんわりと否定し、危険性がある以上、異民族対策もするべきと論じる。
「ふむ常林、貴君の具体策を聞かせて貰おうか?」
「ははっ!私の意見としましては、対抗戦力の騎兵の増強はこれ以上は難しいので、各郡の民衆の避難所になる、城砦を増やすべきと存じます。」
自分の案を、糜芳に対して滔々と語り出した。
「う~ん、悪くはないが・・・幾ら城砦を建てて増やしても、城砦を守る兵士が居らんと意味がない。
その兵士を一体何処から調達するのだ?」
常林の案の不備を指摘する。
「はい、兵士の調達に関しては、漢陽郡より兵力を抽出して、各城砦に配備する事を提案します。」
州都の兵力を放出する事を提言する。
「!?お待ちくださいス常林殿!
郡より兵力を抽出するという事はッス、漢陽郡内の各県の防衛戦力も、減らすという事でしょう!?
流石にそれは無茶ッス!そんな余所に回す余裕なんて何処にも無いッス!!」
下っ端口調ではあるが、常林の案に抗議する、糜芳の推挙で一足飛びに県令になった張既。
同じ県令の楊阜や趙昂等も、コクコクと頷いて張既に同調している。
「張既の意見は最もだ。
貴君はその辺の対策をどうするつもりだ?」
「はっ、それに関しては、糜芳閣下のご協力をお願いしたく・・・。」
「うん?私に協力とは?」
首を傾げて、何じゃらほい?と疑問符を浮かべる。
「はっ、口幅ったい事ですが・・・手薄になった漢陽郡に万一危険が差し迫った時に、閣下から長安へ援軍要請をして頂ければ、と思いまして。」
躊躇いがちに、糜芳に告げる。
「なんと常林殿正気か!?
閣下に他州に援軍要請をさせるような、州牧として面子を潰す事をせよと申すのか!」
剛直者として知られている楊阜が、激昂して常林を非難する。
涼州牧である糜芳が、司隷管轄である長安に援軍要請をすれば、「自分の領分で処理出来ない、無能者」の烙印を押されてしまうので、常林の提案は結果的には糜芳に、恥を掻かす事が前提になっていた。
普通の名家出身者なら、激怒する話しだが、
(一応恥になる行為らしいけど・・・ま、いっか。
これだって、最悪にっちもさっちもいかなくなったら、ど~せ援軍要請するんは一緒だし。
万一それで不適任と謂われれば、州牧を辞任する大義名分を得て堂々と辞めれるし、もし解任の処分を受けても、サッサと徐州に帰れるし)
脳内思考で常林の提案を演算して、出た結論に歓喜するのであった。
名家ばりの自尊心など、欠片もクソもない糜芳は、周囲の予想の斜め上の皮算用を計算し、内心「コレってもしかして好機?」とほくそ笑む。
「うむ、分かった常林、貴君の提案を採用する。」
「はい!?糜芳閣下、正気ですか!?
1州を預かる州牧の閣下にとっては、恥となる行為を認められるので!?」
茫然とした表情で素っ頓狂な声を上げ、今度は糜芳に食ってかかる楊阜。
「無論正気だとも。
それに州牧の私にとって恥なのは、無辜の涼州民が流賊共の犠牲になる事である。
それに比べたら、長安へ援軍要請をする事なぞ、恥でも何でもない。」
それらしく、テキトーな理由を述べる。
「閣下・・・其処まで我ら涼州民の事を、慮ってくださるとは・・・うう。」
一転して涙を拭う。
「まぁ、そういう訳で常林。
後々の事は私が受け持つから、速やかに他郡に住む、涼州民の安全を図る様に手配を頼む。」
「はは!急ぎ手配致します!」
拱手して笑顔で頷く。
「張既を始めとする貴君等も、各々の管理区域を重要視するのは理解出来るが、私は州全体を観なければならない立場なのだ。
それ故に、どうしても無理を言わねばならん事が、今の様にこれからも多々あると思う。
すまないが今回は無理を言わして貰うぞ。」
ペコリと頭を下げて、張既達に協力を要請する。
「と、とととんでも無いッス!
此方も我が身の事だけでモノを言って、大変失礼を致しましたッス!
喜んで涼州民の為に、協力をするッス!」
ブンブンと両手を振った後、拝礼をする張既達。
こうして常林の提案・提言を取り入れて、大まかな対策を講じた糜芳達は、予算の確保や場所の選定、人夫の割り当て等を話し合って内容を詰め、半減した涼州の防衛に奔走したのであった。
因みに糜芳の会議中の発言や、異民族からの貢ぎ物を処分して、建造予算に注ぎ込んだ事で、益々涼州民の畏怖と支持を意図せず得た糜芳であった。
続く




