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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
80/111

その5

読んでくださっている方々へ


いつもこの作品を読んでくださって、誠にありがとうございます!


いいね・感想・誤字脱字報告も誠にありがたく、感謝であります。


え~と、この作品はフィクションであり、当作品にどっかで聴いた事あるような、歌曲がちょくちょく有るかも知れませんが、読者様方の気のせいですので、お気になさらず。

        洛陽大将軍府周辺部


「モグモグ・・・はぁ・・・な~んか憂鬱(ゆううつ)だなあ。

後3日で嫁さん持ちかぁ・・・。」

マリッジブル一な溜め息を吐きながら、遅めの朝食をボソボソと食べている糜芳。


とある治世の能臣のお陰で、昨日の内にスピード婚約を成立させると、4日後には結婚式を挙げれる事を宣言され、今日は「結婚の挨拶まわりに行ってこい」との指図を受けたので、とりあえず大将軍府を訪れ、


「おはよーございまーす!

()()()()結婚する事になりましたよぅ!?ありがとうございます畜生ぉ!?」

再び何進に突撃したのであった。


「お、おう、おめでとうさん。

よ、良かったなぁ糜芳殿。

あ、はい、コレはお祝いだよ?」

木簡を取り出して、シュバババと数字を書いて大将軍の印章を押し、スッと糜芳に差し出した。


(この野郎~、タダでは済まさん!)

しっかりとお祝い金を懐に納めつつ、きっちり()()()をすべく、さも悲しい表情をしながら、


「今日はお別れを言いに参りました。」

しんみりと突然のお別れを告げる。


「はい?何言ってんの?」

「次に会う事は最早叶いますまい。

うう・・・閣下よ、さらばです。

私が最も尊敬した金づ・・・政治家よ。」

人生最大の金蔓(かねづる)との出会いに、感謝の意を現して深々と頭を下げる。


「いやホンマに何言ってんのちょっと!?」

「昨夜、()()()()を眺めた所、()()の死を告げる死兆の星が見えました。

恐らく来年を越す事は叶わぬでしょう。」

悠長(ゆうちょう)且つ曖昧(あいまい)な表現をしつつ、北斗(死神)のお告げを匂わせて、不安をこれでもかと(あお)る。


「ねぇどういう事!?どういう事なの!?」

黒山賊の蜂起を預言した実績を持つ糜芳の言に、オロオロと動揺している何進を尻目に、何処ぞの(あい)を知った伝説的暗殺拳伝承者の如く、すーっと部屋の出口まで滑らかに移動し、


「あ、()()殿()()()()()()()()()()

どうか結婚式の出席の程、宜しくお願いします!」

側に控えていた荀攸の生存は示唆しつつ、「失礼しました」と会釈して、すたこらと退出する。


「ねぇ儂は!?儂も大丈夫だよねちょっとぉ!?」

とある大将軍の、悲鳴めいた言葉を背にしながら。


そうしてとある大将軍に、()()()()()()()をした後に、隣接する練兵場に居た皇甫嵩・朱儁の両将軍に、結婚の報告と出席を要請して、(ようや)く一息入れたのであった。


「・・・いやあの・・・私の方が、よっぽど憂鬱なんですけど糜芳殿?

よく天下の大将軍閣下に、あんな不吉な事をズバズバ言えますね?」

もそもそと、鶏ガラの出汁(だし)が利いた麦粥を食べている糜芳の横で、顔面蒼白にしている少年が、麦粥に手も着けず愚痴る。


「うん?ああ、大将軍閣下は寛容なお方だから、大丈夫、大丈夫。

ほら、曹昂君、美味しい麦粥が冷めてしまうぞ?」

「はぁ・・・。」

曹操から付けられた連絡役であり付き人の、糜芳の1つ年下で曹操の嫡男である曹昂は、釈然(しゃくぜん)としない表情をしつつも、(うなが)されて熱い麦粥を食べ始めた。


(しかしながら、破格の人と呼ばれ破天荒な曹操も、ちゃんとした父親だったんだな~)

上品な所作(しょさ)で粥を食べる曹昂を尻目に、糜芳は思わず苦笑してしまう。


この曹昂君は、コ○ンから「いざという時の連絡役に最適」という理由で、父親の曹操に付けられた者であり、「後継ぎの曹昂に、お偉方との面識を得させたい」という、裏の意図を見抜いた糜芳は、()()()()()から受けた恩誼(おんぎ)を返す為、積極的に()()曹昂を何進達に紹介していた。


この頃の曹操と言うか曹家は、後年では信じられない程に影響力・権力が弱く、曹操自身も就職に難儀するぐらいであったので、少しでもそういった苦労はさせまいとする、親心が多分に含まれていた。


(しかし、此奴(こいつ)が後に張繍(ちょうしゅう)との(えん)城の戦いで、張繍側の参謀・賈詡(かく)の策略と自身の油断の所為で、絶体絶命になった父・曹操の為に、身代わりになって戦死しちまう、三国一の親孝行者・曹昂か・・・)

彼の未来を知る糜芳は、悲しげに曹昂を見つめる。


三国一の※親不孝者・馬超(ばちょう)と対極を為す人物であり、悲運の嫡男でもある三国志版、毛利元就の嫡男・毛利隆元(もうりたかもと)ポジションの曹昂。


彼は父の曹操を逃す為に、自身の馬を渡して逃がし、張繍からの追撃を一身に背負って戦死した、中国史上でも稀な孝行息子であった。


※演義では父・馬騰(ばとう)が曹操に対する暗殺騒ぎに巻き込まれ、処刑されたのに怒り狂って、反乱を起こしたとされるが史実では、()()()()()()()()()()()()()()()()、その所為で馬騰を含めた一族一門が、謀反人の親族として(ことごと)く処刑されている。


曹操の下に、父親や親族がいるのを承知で反乱を起こした上に、事前に連絡して脱出を促した素振(そぶ)りも無く、自身の勝手な都合で親兄弟・親族を、見殺しの捨て殺しにした馬超は、史実に於いて最低最悪の悪逆・悪行を為した、中国史上でも稀な不孝息子であった。


・・・因みに唯一生き延びた従兄弟の馬岱(ばたい)さんは、馬(鹿)超の勝手な乱に巻き込まれて、自動的に謀反人の一族認定をされ、馬超と共に行動するしか生き延びる(すべ)がなく、ズルズルと蜀漢に属す事となり、諸葛亮の負の遺産=楊儀(ようぎ)魏延(ぎえん)(いさか)いの後始末まで、年老いた後もさせられるという、三国志界でも上位に入る不運な人物である・・・合掌。


それはさておき、


付き人として同行する曹昂をみて一瞬だが、「賈詡(かく)さんをスカウトすれば、もしかしたら曹昂君を助けられるかも?」と考えた糜芳。


しかし現状で涼州のドン・董卓の、部下の部下である賈詡をスカウトして、軍閥という半民組織の下っ端から、正式な国家公務員幹部に出世させてしまうと、「董卓は人を見る目の無い節穴」という風に自然となってしまい、董卓の面子(メンツ)をこれでもかと潰してしまう事となる。


つまり最悪面子を潰された董卓と、その兄弟分・子分の涼州軍閥を敵に回すという、涼州経営に深刻な悪影響が発生して本末転倒になる為、自身の保身を維持するのを第一に、すっぱり諦めたのであった。


(まぁ、俺に出来る事は精一杯しておこう・・・)

悲運の孝行息子に、自分が出来る限りの事はしておこうと思考する。


「へぇ・・・坊ちゃん、結婚成さるので?」

「うん、まぁね・・・。」

何年か前に此処の飯屋の娘の嫁入りを手助けして以来、洛陽に行くと必ず立ち寄っている店長のおっちゃんが、親しげに話し掛けてきた。


「それはそれは、おめでとうございます!

あの未だ幼かった坊ちゃんが、結婚成さるとはいや目出度い・・・オイラも嬉しい限りでさぁ!」

にこやかに本当に喜んでくれている。


「ありがとう、そう言えば娘さんは元気なの?」

「へぇお陰様で。

もう一児の母になっておりやすよ、娘は。」

「ほへ~・・・じゃあおっちゃんは、お爺ちゃんになった訳だ。」

「へへ・・・その通りでさぁ。」

照れ笑いを浮かべて、後ろ手で頭を掻く。


(あ、そう言えばおっちゃんの娘婿さんて、結構な大手商会の当主か次期当主だったっけ?)

なんとなく思い出した糜芳は、


「あのさぁ、おっちゃん。

おっちゃんは無理でも娘婿さんに、俺の結婚式に出席して貰える様、頼んで貰えないかな?」

懐から結婚式の招待と場所を記した木簡を、おっちゃんに手渡した。


「へぇ・・・?それはお安い御用でようござんすが、どうして又一体?」

手渡された木簡を手に、首を傾げるおっちゃん。


「いやぁ俺って徐州出身でさぁ、いきなり3日後に結婚する仕儀(しぎ)に成っちまったもんで、洛陽(こっち)で祝言を挙げるんだけど、全然知人友人がいないから、出席者がいなくて困ってるんだよ。」

「はぁ・・・そりゃ又性急ですな~。

解りやした、婿殿に伝えておきやしょう。」

「宜しくお願いね~。」

頼んだ後に、冷めない内に麦粥を食べ始める。


一頻(ひとしき)りおっちゃんに愚痴ったら、幾分(いくぶん)か気が紛れたので店を出て、当て()も無くぶらぶら歩き出した。


「え~と糜芳殿、次は何処に行かれます?」

「とりあえず今日の用事は終わったし、適当に観光がてら散歩しようか。」

「成る程、では僕が案内しますよ。」

糜芳に変わって先頭を歩き、糜芳と曹昂の護衛達が、影供(かげとも)として前後にさり気なく張り付く。


曹昂と雑談を交わしながら、北大路沿いを歩いていると、楽士の見習いと思しき者達が修行中なのか、ビミョーに調子外れな音程で演奏している。


(あ~こういうクサクサした時には、ちょいちょい1人カラオケで、気を紛らわせてたなぁ)

調子外れな演奏を聞きながら、前世を思い出す。


「拝聴ありがとうございました!」

まばらな声援と、少しの銭が籠に入れられた後、


「あの~、ちょっといいかな?」

それなりの金銭を籠に入れて、自分よりも若い楽士見習いに声を掛けた。


「はい、何でしょう?」

「いきなりで悪いんだけど、二胡を貸して貰っていいかな?

ちょっと弾き語りをしたくて・・・。」

「はぁ、ちょっとそ・「!?、どうぞ!是非とも演奏をお願い致します!

おい、これ何をしている!!早くこのお方に二胡をお渡しせぬか!」

困惑した顔で断ろうとした少年を遮り、(いぶか)しげに糜芳を観ていた、引率者と思しき年嵩の男が突然弾かれたかの様に直立し、奪い取るかの如く二胡を取って糜芳に渡した。


「ちょっ!?爺様!?」

「ささ、どうぞどうぞ!存分に演奏なされよ。」

二胡演奏者を引っ張って立たせて退かすと、少年の抗議をお構いなしに、椅子に着席を勧める。


「すいません、無理を言っちゃって・・・。」

頭を下げつつ着席する。


「おっ?飛び入り参加か坊ちゃん?」

「いいぞいいぞぉ、楽しませてくれや。」

飛び入り参加の糜芳に抗議する事なく、退屈しのぎに聴いていたギャラリーが(はや)し立てる。


「ど~も~、では地方から都会に出た、若者の悲哀を歌います・・・スゥ・・・♪~~~♪~~♪」

前奏を弾きつつ、歌い始めた。


糜芳が歌っているのは、(おとこ)にブチ強な人気のある人が歌っていると思われる、「グランドの土を(なら)すアレ」に良く似た名前なヤツである。


憧れの都会での栄華を夢見る若者が、辛い現実に打ちのめされて夢やぶれても、悪態を吐きつつ生活していく悲哀を歌った歌曲である。


因みに糜芳がこの歌曲をチョイスした理由は、「洛陽(都会)に行く度に碌でもない目に遭い、その都度悲哀を味わうから」であった。


「~~~♪~~~♪・・・フゥ、ご静聴ありがとうございました。」

ぺこりと頭を下げる。


「・・・うう・・・心に()みるなぁ。」

「俺も若い頃は、夢見てたなぁ・・・。」

中年から若年層までの広い年齢層の人達が、しんみりとした雰囲気で感想を述べ、次々と籠に銭を放り込んだ。


「え~それでは次は、先程の歌曲と対を為す曲を歌います・・・スゥ・・・~~♪~~~♪」

続けて歌い始めた。


糜芳が歌っているのは、「夢を持って故郷を出て行く親しい者に、(くじ)けずに一生懸命頑張ってね、そんな君が大好きだから」という感じの、旅立ちを応援するっぽい歌曲である。


地元に残った自分は、遠くで貴方の成功を祈っているから、諦めずに夢を叶えて欲しいという、残された者の心境を歌ったと思われるモノであった。


「~~~♪~~♪~~♪・・・フゥ、ご静聴ありがとうございました。」

ぺこりと頭を下げる。


「うお~ん!・・・母ちゃん・・・正直挫けかけてたけど、オレ頑張ってみるよ!」

「まだまだ俺も頑張らないと!田舎のお袋に顔向けができねーわ!

しかし坊ちゃん、良い歌曲を歌うなぁ・・・。」

初期より数倍にギャラリーが増え、鼻を(すす)って涙を浮かべながら銭を投げ入れていき、先程の倍以上の銭が籠に放り込まれた。


「あ、ど~もありがとうございます。」

籠に銭を入れた人達に挨拶をしていると、


「すいません!もし良かったら、歌う歌曲の要望をしてもええですか!?」

ギャラリーを掻き分けて先頭に躍り出た、目の覚める様な美少年が、揚州方面っぽい(なま)りで、リクエストを要求してきた。


「オイ!待てや公瑾(こうきん)!急に観衆に飛び込んだと思うたら、お前は何を無茶ぶりな事言うとんのや!?

ゴメンやで奏者さん、此奴は歌曲に目がのうて、ちょっと見境がのうなる奴なんで・・・。」

美少年よりも容姿は一枚劣るが、何処か人を惹きつける様な、魅力に溢れる風貌(ふうぼう)をした別の少年が、公瑾と呼んだ美少年の袖を引っ張って制止すると、ペコペコと糜芳に頭を下げた。


「いえ、お気になさらず。

え~と、どんな要望がお有りで?出来る限りは、お応えしますよ。」

「ほなら、「天馬夢翔」って曲を、演奏者さんは知っとりますか!?」

「ええまぁ、よ~く知ってますけども・・・。

こんな感じの歌曲でしょう?」

自分が広めた歌曲を尋ねられて、引きつった笑みを浮かべ、格好いい冒頭のフレーズを弾いて、1番の部分を歌う。


「え!?そんな序曲で始まるん?それ知らへんかったけど、歌は間違いなしにそれや!

ホンマに!?なら天馬夢翔と同じ様な、格好いい歌曲を歌って貰えんやろか?

なんや知らんけど、地方の筈の徐州の方が、首都の洛陽よりもようけええ歌曲が有る様で、コッチの歌曲はイマイチおもんないねん。」

ブツブツ愚痴る美少年。


(公瑾で美少年で音楽に五月蠅(うるさ)い・・・間違い無しに周瑜(しゅうゆ)やろな~此奴。

つーことは、隣の少年は孫策か?何で此奴等が洛陽でウロウロしてんだよ?)

思ってもいない人物に、思ってもいない場所で邂逅(かいこう)した事に、内心ビックリする糜芳。


「どないやろか?出来るかいな?」

「え?ああ、大丈夫ですよ。

それじゃあ、この紅顔の少年さんのご要望にお応えして、歌わせて頂きます。」

動揺しつつ、リクエストを了承する糜芳。


「ちょっと!?天馬夢翔はウチのムグぅ!?」

「?では・・・スゥ・・・~~♪~~~♪~~♪」

楽士見習いの少年が何事か言おうとするも、年嵩の引率者が口を塞いで黙らせると、ニッコリ糜芳に微笑んで、「どうぞ歌ってください」と言ったので、首を傾げた後に、朗々と歌い始めた。


糜芳が歌っているのは、星座をモチーフにした聖戦士物語らしき歌曲で、「戦士の夢想」な感じを歌ったぽい歌曲である。


戦士の勇ましさと気高さを歌った歌曲であり、勝利・友情・勇気といった、何処ぞの少年誌みたいな、思春期の少年が好みそうなワードが、散りばめられたと思われる曲調となっている。


「~~~♪~~♪~~~♪・・・フゥ、ご静聴ありがとうございました。

え~と、こんなモンでいいかな?」

美少年=周瑜に確認する。


「・・・す、凄い、凄すぎるわ先生!!」

「はい?先生?」

「要望を受けてから即座に、そんな完成度の高い歌曲を歌えるなんて、そら尊敬するて!!」

「ホントに凄い・・・。」

美少年の周瑜とショタ楽士見習いから、キラキラとしたお目めで見つめられる。


残念ながらその手の高尚な事柄には、全く興味が無いので困惑するしかなかったが。


そうこうしている内に2方向から、ギャラリーを掻き分けて集団が寄ってくる。


「ちょいとゴメンよ~・・・あ、()った居った!

何しよんねん策!瑜君!勝手にほっつき歩いたら、アカンて言うてたやろコラ!?」

「あ、孫静殿、お久しぶりですね。」

見覚えの有る孫呉随一の苦労人、孫静に糜芳はフレンドリーに挨拶する。


「・・・うん?うげゲ!?厄び・じゃなくて!

え~糜芳州牧様、一別以来にございます。

東海郡太守就任及び、涼州牧就任と立て続けに出世の段、祝着至極(しゅうちゃくしごく)(たてまつ)ります。」

糸目を驚愕(きょうがく)で限界まで見開いた後、慌てて取り繕う様に拝礼する孫静。


「ちょっと君達、勝手放題は困るな~。

楽士ならキチンと仁義を通して・・・え?ええ!?

何してるんですか義弟殿!?あ、しかも()家の奴等じゃないですかちょっとぉ!?」

「あ、義兄殿、こんちは~。」

これ又見覚えの有る人物に、ぺこりと挨拶をする。


「こんちは、じゃなくてね義弟殿!?

ウチの好敵手(ライバル)を、手助けするのは止めてくださいよ、お願いですから!?

筋的(すじてき)に言えば、縁戚になるウチに協力してくださるのが、妥当でしょうに。」

同業者が仁義破りをしていると、抗議しに来た蔡琰の長姉(ちょうし)(あん)の夫で楽士の歩謡(ほよう)が、糜芳の顔を観て困り顔から、哀願する顔に変えて言い募って来た。


「う、うそ!?糜芳殿ってあ、ああの・・・ホ、ホンマもんの楽聖様?

お会い出来て光栄であります楽聖様!!

わ、私は周瑜と申しまして、音楽を嗜む者として、密かに私淑(リスペクト)しておる次第です!!」

益々お目めをキラキラさせて、孫静と同じく拝礼を糜芳に向かって行う。


「ああ!?糜芳って言うたら、ウチのオトンをぶちのめした猛者やんけ!?

ワイの名は長沙郡太守・孫堅が一子、孫策と申す!

オト・・・父の汚名を子の俺が晴らさして貰うで!

いざ尋常にぃオゴぉう!?」

「「止めんかぁボケェ!!己と相手の立場をようけ考えてせんかい!?」」

孫策が好戦的な笑みを浮かべ、剣を抜きかけた瞬間に、孫静と周瑜に左右から同時に殴られた衝撃で、脳震盪(のうしんとう)を起こしたのか、白眼をむいてアッサリ昏倒したのであった。


そんな混沌(カオス)なドタバタ劇があった3日後・・・


         洛陽曹嵩邸玄関先


「ゴホッゴホッ・・・ゥンン!

でで、ではでは参ろうかぁ、糜芳殿!?」

「は、宜しくお願いします。」

日暮れ時となり、糜芳は拱手しつつ返事して豪勢に着飾った曹嵩と共に、2両ある馬車の内の1つに一緒に乗り込み、姻家に居る花嫁を迎えに向かう。


因みに空いているもう1両は、花嫁とその父が乗る為の馬車である。


初の仲人役を務める、極度の緊張状態の為か呂律(ろれつ)が回らずに、ロボットの如くギクシャクとした動きを見せる曹嵩を尻目に、比較的落ち着きを糜芳は見せていた。


(・・・遂にこの時が来たか・・・。

しっかし、曹嵩のおっちゃんには呆れ半分、感謝半分と言うか・・・。

まぁ、彼処(あそこ)まで取り乱す醜態(しゅうたい)(さら)してくれたお陰で、却って冷静になれたから、感謝するべきなんだけど)

手足を同時に出しながら移動する、曹嵩を観て何とも言えずに苦笑する。


なにせ式が近付くにつれ、自分が結婚する訳でもないのに、オロオロうろうろと狼狽(うろた)えて、どんどん情緒(じょうちょ)不安定になっていき、


「儂、仲人役を全う出来るだろうか?」

何故か糜芳に泣き言を、言い始める始末だった。


・・・正直、「コッチが泣き言を言いたいわい!」と思う糜芳であった。


余りの落ち着きの無さに、一抹の不安を覚えたらしい息子の曹操が、「父上、予行(よこう)練習を行って、段取りを復習しましょう!」と提案。


自宅の玄関先を姻家(蔡家)の玄関先と見立てて、姻家に向かっての文言(もんごん)からやり取りまで、曹操が蔡家側役を務めて監修し、日に何度となく練習を繰り返したのである。


お陰で糜芳もばっちり巻き込まれ、近隣から奇異の目で観られて羞恥心(しゅうちしん)(さいな)まれつつも、曹嵩と共に作法を学んだのであった。


(まぁ、色々と勉強にはなったけど・・・) 

ブツブツと文言の復習を繰り返している、同乗者の曹嵩を横目に、ガラガラと音を立てて、ゆっくりと蔡家に向かっている馬車の中で、脳内思考をする。


ふと明かり取り用の窓から、周囲を覗いてみると、


「・・・うぷ、飲み過ぎだオロロロぉ・・・。」

「オイ、兄者!こんな所でゲェオェぇ・・・小生(しょうせい)まで気持ち悪く・・・オロロロ~。」

「オロロロォ!オゲェ・・・備兄や羽兄の吐く所観てたら、俺までえづきが・・・オロロロ・・・。」

直ぐ脇の路上で、やたら福耳で長身の着崩したチンピラ紛いの男と、我の強そうな面相をして目つきもキツい、赤ら顔の長髭(ながひげ)の偉丈夫と、横にも縦にもがっしりとした、粗野なゴリマッチョ風な虎髭男が、3人仲良く連れションならぬ連れゲ○をしているのが、窓越しに脇目から見えた。


(うん?何か見覚えがないのに、妙な既視感が?

つーかあんな如何にもな破落戸(ごろつき)共が、何で貴族街に相当する南側でウロウロしてんだよ?

仕事しろよ衛兵)

不思議な感覚と治安維持意識の低さにとらわれ、首を傾げていると、


「蔡家邸に到着しました!」

馬車を運転している御者(ぎょしゃ)が、糜芳達に目的地到着を告げる。


(早えーよ・・・まぁ、曹家も蔡家も同じ洛陽の南側に、お互い家を構えているんだから、当たり前ちゃあ当たり前なんだけど)

感慨(かんがい)(ふけ)る間もなく到着した事に、なんだかなぁとやるせなさを感じる糜芳。


歩いても20分足らず=約1.5キロぐらいしか離れておらず、そんな近距離でわざわざ豪奢(ごうしゃ)な馬車を使うのは、只単(ただたん)見栄(みえ)見栄(みば)えという外聞を(はばか)った面子の為である。


現代風に例えれば「婿さんはこんな凄い高級車を持っている金持ちなんだぞ」アピールと、「嫁さんはこんな金持ちの家に(とつ)げて良いな~」という、世間体と虚栄心を満たす為のモノであり、庶民感覚の糜芳からしたら、理解不能な領域の話であった。


実際に四世三公の袁家と、四世太尉の楊家の婚姻の時など、お互いにド近所だったので、絢爛豪華(けんらんごうか)な花嫁行列を見せつける為に、わざわざ南側の貴族街を、グルリと周回してパレードしたそうだ。


(まぁ、俺がくだらないと思っても、嫁さんになる蔡琰にとっては、一生に一度の晴れ舞台。

見栄えを良くする事で、少しでも蔡琰の為になると思えば、必要性は解るんだけどね・・・)

そう脳内思考していると、同乗していた曹嵩が(おもむろ)に馬車から降りて、


「蔡家の方々に申し上げる!

某、此度(こたび)の糜家・蔡家の婚儀に於いて、仲人役を務めさせて貰う曹嵩と申す!

婿殿と共に花嫁御寮(はなよめごりょう)を迎えに参った事を、御当主・蔡邕殿にお伝え願いたい!!」

若干(じゃっかん)上擦(うわず)った声で玄関先で待ち構えていた、家令と(おぼ)しき年長者に来訪を告げる。


曹嵩の言を受けた家令が、蔡邕に伝える為に屋敷に引っ込むと、今度は糜芳も礼儀作法として馬車から降りて、岳父(がくふ)(義父)となる蔡邕に挨拶をする為、曹嵩と共に玄関先で待ち構える。


ゆったりとした歩調で現れた、蔡邕に向けて拱手しつつ、


「この度は、貴殿の御息女を(めと)る事が叶い、光栄至極(こうえいしごく)に存じます。

必ずや御息女を幸せにする事を誓いまする。」

定型句(ていけいく)を述べる。


「・・・此方(こちら)こそ貴殿の様な、前途洋々(ぜんとようよう)若人(わこうど)に娘を娶って貰えありがたい。

くれぐれも宜しくお頼み申す。」

言葉とは裏腹にギロリと睨み付け、「ウチの阿琰泣かしたら、判っているよな?ああん!?」と目線でありありと告げる蔡邕。


お互いに定型的な(?)挨拶を交わした後、糜芳は馬車に乗って待機し、曹嵩は仲人役として蔡琰に挨拶する為に、そのまま玄関先で待機する。

 

少し経った後、蔡琰が蔡邕に手を引かれてやってきて、これ又蔡琰と曹嵩が定型に沿って挨拶を交わして、蔡親子は空いている馬車に乗り込み、曹嵩は糜芳と再び同乗して粛々と出発し始めた。


そしてあっという間に式場となっている、曹嵩邸に到着すると、玄関先で馬車2両が横並びに付けられて両家が降り立ち、向かって左側の外側後ろに曹嵩で内側前に糜芳、右側の外側後ろに蔡邕で内側前に蔡琰と、「ハ」の字の如くな配列で、先に到着済みの曹家・蔡家の親族からの祝福を受けつつ、式場へ向かう。


因みに本来なら、糜芳側・蔡邕側共に式場までの間の道のりは、地元有力者達を同伴して家格の高さを喧伝しつつ、式場に入るのが通例なのだが、


蔡家側→皇甫嵩・朱儁・盧植・荀攸(何進の名代(みょうだい))といった、当代を代表する名士がズラリ。


糜家側→曹操・夏侯惇・夏侯淵・曹仁といった曹嵩の関係者達や、孫静・孫策・周瑜(孫一家は孫策の非を責め立て、強制出席させた。侘び料込みのお祝い金徴収済み。周瑜は喜んで出席)といった、次代の英傑がズラリ。


であり、糜家側は後世では誰もが(うらや)む絢爛豪華な顔触れでも、現状では殆どの者が無位無官の下っ端で、只の「枯れ木も山の(にぎ)わい」要員という状態なので、余りの深刻な格差になってしまい、省略されていた。


それはさておき、


そのまま後は糜竺の時と同じく、式場に入場して出席者から「おめでとうございます!」と祝福を受けた後、曹嵩が曹操から貰ったカンペをチラチラ見つつ祝辞を述べて、三三九度の杯(水)を交わして、漸く正式に夫婦となったのであった。


「それでは若き2人の前途を祝して・・・乾杯!」

「「「「「乾杯!!」」」」」

夫婦の杯を交わした後、曹嵩の音頭で宴が始まる。


宴が始まると糜芳に夏侯惇達が、笑顔で個別に「おめでとうございます」と祝辞を、代わる代わる述べてきたので、「ありがとうございます、わざわざ駆け付けてくれて、感謝の言葉もありません」と、1人1人に丁寧に返礼をする。


宴の前半は義兄になる歩謡の一門が、演奏と踊りを受け持ち、後半は北大路でバッタリ出くわした、友人の士嬰の本家である士家一門が、交代で受け持つ手筈になっていた。

(一応両家とも歩謡は身内だから、士家は糜芳の歌った歌曲の演奏の自由を条件に、ロハ(無料)でやってくれている)


そうこうする内に、宴もたけなわになったと判断した糜芳は、


(もうぼちぼち良いかな?サプラ~イズ開始っと)

スッと余興開始の合図を、後ろに従僕として控えているイーに送る。


「皆様方!これより主人・糜芳より、奥方様への心よりの贈り物を贈ります故、どうか笑容(しょうよう)(笑って許してね)くださいますよう!」

そう宣言して手をパンパンと打ち鳴らした。


突然のサプライズにざわめく出席者をよそに、中央に布で覆われた縦1mX横40㎝程の四角い物体が置かれ、サッと布が外される。


オオオオオォォォ!!!???

蔡琰を成長させたかの様な人物画を観て、主に蔡家側から驚声が上がる。


「!!・・・なっ、(えい)!?

そ、そんな馬鹿な・・・まるで生き写しじゃ。」

蔡邕は娘の琰に似た人物画を観て驚愕し、フラフラと人物画に近付き、


「琰や。」

「はい、何でしょう?お父様?」

「この絵の人はな、お前の母親の瑩じゃ。」

「ええ!?お母様!?」

「ああ、お前を産んで直ぐに亡くなったので、憶えてはおらんじゃろうが・・・。」

蔡琰に人物画に描かれている人を説明する。


「・・・そうですか。」

蔡琰はてくてくと人物画の下まで近付くと、


「初めまして?いえ、お久しぶりですねお母様。

お母様が命がけで私を産んでくださったお陰で、今こうして私は幸せに過ごしています・・・グス。」

感謝の言葉と涙を浮かべて拝礼する。


蔡琰の健気な姿に心打たれた出席者達は、涙を浮かべて蔡琰を観ている。


(え~と、なんか琰に喜んで貰えたらな~と思って描いたんだけど、まぁ、出席者に琰の健気さが伝わって、琰に好印象を持ったみたいだし、良し!)

結果オーライと判断する糜芳。


その後は一目絵画を観ようと、蔡家側や孫一家が絵画に群がって、皆が感嘆の溜め息を吐く。


「ほえ~ホンマもんに生きとるみたいやな~。」 

「音楽だけやなくて、絵まで凄いとは・・・。」

「何でこんな綺麗な絵ぇを描くのに、あんなに腹黒いんやろかな~?」

3者3様の反応を示す。


一頻(ひとしき)りの騒ぎの後、丁度歩家と士家が交代するタイミングになったので、


「え~次に蔡琰奥方様の為に、糜芳様が歌曲を贈ります。」

サプライズ第2弾、「嫁さんに歌曲をプレゼント」を発表する。


ワアアアアァァァァ!?!!??

楽聖である糜芳の生演奏を聞けると判ると、出席者から嬌声(きょうせい)が上がる。


「え~それでは、今の私の心情を歌にします。

スゥ・・・♪~~~♪~~♪・・・♪~~~♪。」

訥々と歌い始める。


糜芳が歌っているのは、「今現在確実な事」な感じの歌曲であり、空を見ながら自分が蔡琰に出来る事を、自問自答しているっぽい曲調である。


どんな時も、一緒に頑張って生きて行こうと言いつつ、さり気なく愛の告白をしている、結構正面きって歌うのに、こっぱずかしい歌曲であった。


蔡琰も最初は赤面して聞いていたが、愛の告白部分になると、目を潤まして嬉し涙を流し始める。


周囲の反応も、主に踊り子達や蔡琰の姉達女性陣が、「良いな~こんな歌曲を贈られるなんて」といった感じで、蔡琰に羨望の眼差しを送っている。


「~~~♪~~♪・・・フゥ。

え~と、どうかな琰?」

「グスン・・・ありがとうございます旦那様。

私の為に、素晴らしい曲を贈ってくださって・・・本当に・・・うう。」

涙を拭いながら感謝する。


「何か要望があったら歌うけど、何かある?」

一方的に歌うだけでなく、要望も聞く糜芳。


「・・・はい・・・あ、あの尹玲義姉様が仰っておられた、糜竺義兄様の婚儀の際に歌われたという、「老若男女がむせび泣いた、空前絶後の歌曲」を、是非とも聴いてみとうございます・・・。」

恐る恐る要望を述べる。


「「なにいぃぃ!?そんな凄い歌曲が!?

是非ともお願い致す!!・・・アタッ!?」」

何処ぞのコ○ンと出○杉君が、異口同音に叫んで身を乗り出し、それぞれ従兄弟と義兄弟に頭をシバかれた後、引っ張られて着席する。


(え~と竺兄の時につったら、アレかぁ・・・。

他人事だから歌えたけど、自身の場合で歌うとなると、かなり歌い難いなぁ・・・要望された以上はしゃあないけど)

結構な羞恥を覚えながら、


「え~では、要望にお応えして歌います。

・・・スゥ・・・~~~♪~~♪~~♪~~♪。」

切々(せつせつ)と「雪を花に見立てた」っぽい歌曲を歌う。


歌いながらチラッと周囲を見渡すと、女性陣はグッサリと心に刺さったのか、涙と嗚咽(おえつ)を出し続け、コ○ンと出○杉君は瞑目(めいもく)しつつ涙を流しており、他の人達も(おおむ)ね似たり寄ったりな様相(ようそう)を呈していた。


「~~~~♪・・・フゥ、こんなモンだけど、どうだった琰?」

「うう~グスッウッウ・・・ひゃい、素晴らしい曲をありがとうごじゃいます。」

嗚咽でつっかえつっかえ(しゃべ)りながら、ぺこりと頭を下げて感謝する蔡琰。


(フゥ・・・まぁ、とりあえず歌曲のプレゼントはこんなモンかな?

後は士家一門にお任せしてっと・・・)

蔡琰が泣いて喜んでくれた事に満足し、後半演奏担当の士家一門に目線を送る。


すると、 


「も、申し訳ありません楽聖様!!

我々一門の(つたな)き技量では、楽聖様の後の演奏なぞ到底務まりません!

平にお許し下さいませ!と、とても我々では無理にございまする!!」

一門の代表者が土下座して、演奏は不可能だと涙ながらに訴え出て来た。


「え~と、じゃあ歩謡義兄殿?」

「無理無理無理!!楽聖殿の後に演奏なんか出来る訳ないでしょうが!?

先程の歌曲を聴けばなおのこと、技量差がモロに露呈(ろてい)しますから無理です!」

手と首をブンブン振って拒絶される。


(え~?どうしよう?つーか士家一門って竺兄の時も、似たような事言ってなかったか?)

皮肉な事に自身のサプライズで、式の進行に支障を(きた)してしまった糜芳。


「ふむ、糜芳殿、こうなっては致し方なし。

糜芳殿自身が演奏を担当するしか、他に善処策はあるまいよ。」

ニタァとあくどい笑みを浮かべ、自分の願望を上乗せしてくるコ○ン。


ウオオオォォォ!?

糜芳の演奏会の開催に、歓声を上げる出席者達。


「うう・・・え~と、何か要望があれば、お聞きします皆様方。」

「で、では主上に奏でられた、「覇王組曲」を今一度、今一度お願い致す!!

あの演奏が頭から離れぬのだ糜芳殿!」

「あ、じゃあ・・・。」

「あの~・・・。」

朱儁がリクエストすると、次々とリクエストをしてくる出席者達。


(ひ~ん、俺が主役の式なのに~!?)

自業自得で演奏をする羽目になった糜芳であった。


約1時間後・・・


何人もの出席者達からのリクエストに応え、疲れ果てた糜芳に、無事仲人役を務め上げて安堵している曹嵩から、「そろそろお開きに」と宴終了のお言葉が発せられ、(ようや)く解放されたのであった。


(や、やった・・・終わった・・・サプライズなんかやるんじゃなかった・・・シクシク。

次で最後や、もうコレだけやってしまったら、後はベッドインして寝れる!!) 

最後のサプライズを発動させるべく、イーに再び合図を送る。


「え~旦那様より奥方様へ、摩訶(まか)可思議な贈り物をされます。

皆様方どうかよ~くご覧くださいませ。」

糜芳の意を受けたイーが、声を張り上げて出席者達を注目させる。


何事が有るのかと、今までのサプライズを見聞きしていた面々は、ワクワクとした表情で、糜芳の挙動を見守る。


「え~では、曹操殿?」

「うん?何かな?」

「ちょっとその立派な冠を、少しの間拝借したいのですが宜しいですか?」

「??ああ、良いぞ・・・ほら。」

突然の振りに首を傾げながらも、素直に冠を外して糜芳に渡す。


「はい、どうも・・・では、曹操殿よりお借りした冠に布を被せましてぇ・・・ちちんぷいぷいのぷい!・・・はい、一輪の水仙(すいせん)が出てきました~。」

古代中国時代から、「幸せを運ぶ花」と謂われている水仙を、コッソリ懐に忍ばせて、宴会芸で覚えたコテコテの手品で出し、蔡琰に手渡した。


「「「「「は!?」」」」」

目が点となり、唖然呆然とする出席者達。


「わぁ、凄い凄い!ありがとうございます!」

「どういたしまして・・・う~ん。

一輪じゃ淋しいな、ヨシ!・・・ちちんぷいぷいのぷい!・・・は~い、沢山の水仙を出しました。」

明らかに冠の容量を越えた数の、大量の水仙を手品で出して、キザったらしく渡す。


「凄い凄い!こんなに大量の水仙を!?

お父様観てください!旦那様からこんなに一杯の水仙を貰いました!」

(いや~こんなチャチな手品で、喜んでくれるなんて、嬉しいね~)

キャッキャッと年相応に、はしゃいで喜ぶ蔡琰にホッコリする糜芳。


・・・カターン・・・シーン・・・

蔡琰に問われた蔡邕は、口を半開きにしたまま、持っていた杯を落とし、茫然自失としていた。


観れば他の出席者達も、蔡邕と同じ表情をしており、耳に痛いくらいの沈黙が式場に降りる。


(ありゃ~あんまりにチャチな手品なんで、呆れられたかな?

まぁ琰が喜んでくれたからヨシ!

・・・サッサと寝床に就こう)

手品がスベったと思い、


「はい、曹操殿ご協力ありがとうございました~。

皆様方ご多忙の中、今日は私達の婚儀にご出席の程、誠にありがとうございました!

それではこれにて左様ならば、失礼します。

さて・・・行こうか琰。」

「あっ・・・は、はい旦那様。」

サッと茫然自失としている曹操に冠を返却し、定型的な辞令を述べると、そそくさと蔡琰の手を引いて、とっとと式場を後にして逃げ出した。


そうして糜芳達が式場を後にした直後・・・


「「「「「せ、せせ仙術だあぁぁぁ!!!???」」」」」

怒号とも悲鳴とも付かない叫声(きょうせい)が、式場に響き渡ったのであった。


糜芳の前世では、子供でも知っているチャチな手品でも、「十分に発達した技術は、魔法と区別がつかない」という格言に有るように、古代中国では手品は未知の技術であり、知らない人達=出席者達には手品=仙術(魔法)に見えたのである。


つまり、出席者達は糜芳が仙術という、「奇跡・神秘の秘術」を目の前で披露したと勘違いし、茫然自失となっていたのである。


そんな事とは露知らず、サッサと寝室に入った糜芳は、蔡琰と()()()(蔡琰さん御歳()()()です)をして、床に就いたのであった。


そして、本来は大体3日間に掛けてやる結婚式を1日に省略し、翌日には涼州は危険過ぎるので、蔡琰を徐州の自宅に送り出すと、自身はサッサと任地の涼州に、単身赴任をしに戻ったのであった。


因みに、とある少年が仙術を使ったと瞬く間に広まり、少年の故郷である徐州は、元々蓬莱山(ほうらいさん)(神仙が住んでいるとされる山)伝説が有ることから、謎の信憑性(しんぴょうせい)を得てしまい、全国から道教の道師が押し寄せて来て大騒ぎになり、大層困り果てたそうな。


最も被害を(こうむ)ったのは、東海郡に住む糜董という、商会を営む中年男だったとか。


無論、当事者のとある少年にも、神仙信仰の篤い筍2号等、沢山の弟子入り希望者が殺到し、涼州まで追いかけて来る強者まで現れ、対応に苦慮したのは、言うまでもない事である。


                    続く

え~と、今話で結婚パートは終了して今まで通り、普通の話に戻っていきます。


今話は結構何処かで、聴いた事有るような無いような歌曲っぽいモノが、登場しておりますが無論フィクションであり、実在する歌曲とは全くの無関係であります。


まぁ、エスパーな方ではない限り、結構判りづ・・・ゲフン、ゲフン・・・気のせいです。


長々とすみません。


楽しんで読んで頂けたら、嬉しいです。


優しい評価を、宜しくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 洛陽の上位層も式に出席してるみたいだけど 冠って人前でホイホイ取って大丈夫なの?
[一言] 仙術で出した水仙とかとても縁起がよさそうだよね。 いろいろ話が盛られて大変なことになりそう。ついでに曹操は冠を死守できるんだろうか?
[一言] アッチャー、これは洛陽案件ですね。 毎度の事だけど…
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