その5
読んでくださっている方々へ
いつもこの作品を読んでくださって、誠にありがとうございます!
いいね・感想・誤字脱字報告も誠にありがたく、感謝であります。
え~と、この作品はフィクションであり、当作品にどっかで聴いた事あるような、歌曲がちょくちょく有るかも知れませんが、読者様方の気のせいですので、お気になさらず。
洛陽大将軍府周辺部
「モグモグ・・・はぁ・・・な~んか憂鬱だなあ。
後3日で嫁さん持ちかぁ・・・。」
マリッジブル一な溜め息を吐きながら、遅めの朝食をボソボソと食べている糜芳。
とある治世の能臣のお陰で、昨日の内にスピード婚約を成立させると、4日後には結婚式を挙げれる事を宣言され、今日は「結婚の挨拶まわりに行ってこい」との指図を受けたので、とりあえず大将軍府を訪れ、
「おはよーございまーす!
お陰様で結婚する事になりましたよぅ!?ありがとうございます畜生ぉ!?」
再び何進に突撃したのであった。
「お、おう、おめでとうさん。
よ、良かったなぁ糜芳殿。
あ、はい、コレはお祝いだよ?」
木簡を取り出して、シュバババと数字を書いて大将軍の印章を押し、スッと糜芳に差し出した。
(この野郎~、タダでは済まさん!)
しっかりとお祝い金を懐に納めつつ、きっちり怨返しをすべく、さも悲しい表情をしながら、
「今日はお別れを言いに参りました。」
しんみりと突然のお別れを告げる。
「はい?何言ってんの?」
「次に会う事は最早叶いますまい。
うう・・・閣下よ、さらばです。
私が最も尊敬した金づ・・・政治家よ。」
人生最大の金蔓との出会いに、感謝の意を現して深々と頭を下げる。
「いやホンマに何言ってんのちょっと!?」
「昨夜、北斗七星を眺めた所、誰かの死を告げる死兆の星が見えました。
恐らく来年を越す事は叶わぬでしょう。」
悠長且つ曖昧な表現をしつつ、北斗のお告げを匂わせて、不安をこれでもかと煽る。
「ねぇどういう事!?どういう事なの!?」
黒山賊の蜂起を預言した実績を持つ糜芳の言に、オロオロと動揺している何進を尻目に、何処ぞの哀を知った伝説的暗殺拳伝承者の如く、すーっと部屋の出口まで滑らかに移動し、
「あ、荀攸殿は大丈夫ですからね。
どうか結婚式の出席の程、宜しくお願いします!」
側に控えていた荀攸の生存は示唆しつつ、「失礼しました」と会釈して、すたこらと退出する。
「ねぇ儂は!?儂も大丈夫だよねちょっとぉ!?」
とある大将軍の、悲鳴めいた言葉を背にしながら。
そうしてとある大将軍に、積年のお礼参りをした後に、隣接する練兵場に居た皇甫嵩・朱儁の両将軍に、結婚の報告と出席を要請して、漸く一息入れたのであった。
「・・・いやあの・・・私の方が、よっぽど憂鬱なんですけど糜芳殿?
よく天下の大将軍閣下に、あんな不吉な事をズバズバ言えますね?」
もそもそと、鶏ガラの出汁が利いた麦粥を食べている糜芳の横で、顔面蒼白にしている少年が、麦粥に手も着けず愚痴る。
「うん?ああ、大将軍閣下は寛容なお方だから、大丈夫、大丈夫。
ほら、曹昂君、美味しい麦粥が冷めてしまうぞ?」
「はぁ・・・。」
曹操から付けられた連絡役であり付き人の、糜芳の1つ年下で曹操の嫡男である曹昂は、釈然としない表情をしつつも、促されて熱い麦粥を食べ始めた。
(しかしながら、破格の人と呼ばれ破天荒な曹操も、ちゃんとした父親だったんだな~)
上品な所作で粥を食べる曹昂を尻目に、糜芳は思わず苦笑してしまう。
この曹昂君は、コ○ンから「いざという時の連絡役に最適」という理由で、父親の曹操に付けられた者であり、「後継ぎの曹昂に、お偉方との面識を得させたい」という、裏の意図を見抜いた糜芳は、祖父の曹嵩から受けた恩誼を返す為、積極的に孫の曹昂を何進達に紹介していた。
この頃の曹操と言うか曹家は、後年では信じられない程に影響力・権力が弱く、曹操自身も就職に難儀するぐらいであったので、少しでもそういった苦労はさせまいとする、親心が多分に含まれていた。
(しかし、此奴が後に張繍との宛城の戦いで、張繍側の参謀・賈詡の策略と自身の油断の所為で、絶体絶命になった父・曹操の為に、身代わりになって戦死しちまう、三国一の親孝行者・曹昂か・・・)
彼の未来を知る糜芳は、悲しげに曹昂を見つめる。
三国一の※親不孝者・馬超と対極を為す人物であり、悲運の嫡男でもある三国志版、毛利元就の嫡男・毛利隆元ポジションの曹昂。
彼は父の曹操を逃す為に、自身の馬を渡して逃がし、張繍からの追撃を一身に背負って戦死した、中国史上でも稀な孝行息子であった。
※演義では父・馬騰が曹操に対する暗殺騒ぎに巻き込まれ、処刑されたのに怒り狂って、反乱を起こしたとされるが史実では、馬超の方が先に反乱を起こしており、その所為で馬騰を含めた一族一門が、謀反人の親族として悉く処刑されている。
曹操の下に、父親や親族がいるのを承知で反乱を起こした上に、事前に連絡して脱出を促した素振りも無く、自身の勝手な都合で親兄弟・親族を、見殺しの捨て殺しにした馬超は、史実に於いて最低最悪の悪逆・悪行を為した、中国史上でも稀な不孝息子であった。
・・・因みに唯一生き延びた従兄弟の馬岱さんは、馬(鹿)超の勝手な乱に巻き込まれて、自動的に謀反人の一族認定をされ、馬超と共に行動するしか生き延びる術がなく、ズルズルと蜀漢に属す事となり、諸葛亮の負の遺産=楊儀と魏延の諍いの後始末まで、年老いた後もさせられるという、三国志界でも上位に入る不運な人物である・・・合掌。
それはさておき、
付き人として同行する曹昂をみて一瞬だが、「賈詡さんをスカウトすれば、もしかしたら曹昂君を助けられるかも?」と考えた糜芳。
しかし現状で涼州のドン・董卓の、部下の部下である賈詡をスカウトして、軍閥という半民組織の下っ端から、正式な国家公務員幹部に出世させてしまうと、「董卓は人を見る目の無い節穴」という風に自然となってしまい、董卓の面子をこれでもかと潰してしまう事となる。
つまり最悪面子を潰された董卓と、その兄弟分・子分の涼州軍閥を敵に回すという、涼州経営に深刻な悪影響が発生して本末転倒になる為、自身の保身を維持するのを第一に、すっぱり諦めたのであった。
(まぁ、俺に出来る事は精一杯しておこう・・・)
悲運の孝行息子に、自分が出来る限りの事はしておこうと思考する。
「へぇ・・・坊ちゃん、結婚成さるので?」
「うん、まぁね・・・。」
何年か前に此処の飯屋の娘の嫁入りを手助けして以来、洛陽に行くと必ず立ち寄っている店長のおっちゃんが、親しげに話し掛けてきた。
「それはそれは、おめでとうございます!
あの未だ幼かった坊ちゃんが、結婚成さるとはいや目出度い・・・オイラも嬉しい限りでさぁ!」
にこやかに本当に喜んでくれている。
「ありがとう、そう言えば娘さんは元気なの?」
「へぇお陰様で。
もう一児の母になっておりやすよ、娘は。」
「ほへ~・・・じゃあおっちゃんは、お爺ちゃんになった訳だ。」
「へへ・・・その通りでさぁ。」
照れ笑いを浮かべて、後ろ手で頭を掻く。
(あ、そう言えばおっちゃんの娘婿さんて、結構な大手商会の当主か次期当主だったっけ?)
なんとなく思い出した糜芳は、
「あのさぁ、おっちゃん。
おっちゃんは無理でも娘婿さんに、俺の結婚式に出席して貰える様、頼んで貰えないかな?」
懐から結婚式の招待と場所を記した木簡を、おっちゃんに手渡した。
「へぇ・・・?それはお安い御用でようござんすが、どうして又一体?」
手渡された木簡を手に、首を傾げるおっちゃん。
「いやぁ俺って徐州出身でさぁ、いきなり3日後に結婚する仕儀に成っちまったもんで、洛陽で祝言を挙げるんだけど、全然知人友人がいないから、出席者がいなくて困ってるんだよ。」
「はぁ・・・そりゃ又性急ですな~。
解りやした、婿殿に伝えておきやしょう。」
「宜しくお願いね~。」
頼んだ後に、冷めない内に麦粥を食べ始める。
一頻りおっちゃんに愚痴ったら、幾分か気が紛れたので店を出て、当て所も無くぶらぶら歩き出した。
「え~と糜芳殿、次は何処に行かれます?」
「とりあえず今日の用事は終わったし、適当に観光がてら散歩しようか。」
「成る程、では僕が案内しますよ。」
糜芳に変わって先頭を歩き、糜芳と曹昂の護衛達が、影供として前後にさり気なく張り付く。
曹昂と雑談を交わしながら、北大路沿いを歩いていると、楽士の見習いと思しき者達が修行中なのか、ビミョーに調子外れな音程で演奏している。
(あ~こういうクサクサした時には、ちょいちょい1人カラオケで、気を紛らわせてたなぁ)
調子外れな演奏を聞きながら、前世を思い出す。
「拝聴ありがとうございました!」
まばらな声援と、少しの銭が籠に入れられた後、
「あの~、ちょっといいかな?」
それなりの金銭を籠に入れて、自分よりも若い楽士見習いに声を掛けた。
「はい、何でしょう?」
「いきなりで悪いんだけど、二胡を貸して貰っていいかな?
ちょっと弾き語りをしたくて・・・。」
「はぁ、ちょっとそ・「!?、どうぞ!是非とも演奏をお願い致します!
おい、これ何をしている!!早くこのお方に二胡をお渡しせぬか!」
困惑した顔で断ろうとした少年を遮り、訝しげに糜芳を観ていた、引率者と思しき年嵩の男が突然弾かれたかの様に直立し、奪い取るかの如く二胡を取って糜芳に渡した。
「ちょっ!?爺様!?」
「ささ、どうぞどうぞ!存分に演奏なされよ。」
二胡演奏者を引っ張って立たせて退かすと、少年の抗議をお構いなしに、椅子に着席を勧める。
「すいません、無理を言っちゃって・・・。」
頭を下げつつ着席する。
「おっ?飛び入り参加か坊ちゃん?」
「いいぞいいぞぉ、楽しませてくれや。」
飛び入り参加の糜芳に抗議する事なく、退屈しのぎに聴いていたギャラリーが囃し立てる。
「ど~も~、では地方から都会に出た、若者の悲哀を歌います・・・スゥ・・・♪~~~♪~~♪」
前奏を弾きつつ、歌い始めた。
糜芳が歌っているのは、漢にブチ強な人気のある人が歌っていると思われる、「グランドの土を均すアレ」に良く似た名前なヤツである。
憧れの都会での栄華を夢見る若者が、辛い現実に打ちのめされて夢やぶれても、悪態を吐きつつ生活していく悲哀を歌った歌曲である。
因みに糜芳がこの歌曲をチョイスした理由は、「洛陽に行く度に碌でもない目に遭い、その都度悲哀を味わうから」であった。
「~~~♪~~~♪・・・フゥ、ご静聴ありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げる。
「・・・うう・・・心に沁みるなぁ。」
「俺も若い頃は、夢見てたなぁ・・・。」
中年から若年層までの広い年齢層の人達が、しんみりとした雰囲気で感想を述べ、次々と籠に銭を放り込んだ。
「え~それでは次は、先程の歌曲と対を為す曲を歌います・・・スゥ・・・~~♪~~~♪」
続けて歌い始めた。
糜芳が歌っているのは、「夢を持って故郷を出て行く親しい者に、挫けずに一生懸命頑張ってね、そんな君が大好きだから」という感じの、旅立ちを応援するっぽい歌曲である。
地元に残った自分は、遠くで貴方の成功を祈っているから、諦めずに夢を叶えて欲しいという、残された者の心境を歌ったと思われるモノであった。
「~~~♪~~♪~~♪・・・フゥ、ご静聴ありがとうございました。」
ぺこりと頭を下げる。
「うお~ん!・・・母ちゃん・・・正直挫けかけてたけど、オレ頑張ってみるよ!」
「まだまだ俺も頑張らないと!田舎のお袋に顔向けができねーわ!
しかし坊ちゃん、良い歌曲を歌うなぁ・・・。」
初期より数倍にギャラリーが増え、鼻を啜って涙を浮かべながら銭を投げ入れていき、先程の倍以上の銭が籠に放り込まれた。
「あ、ど~もありがとうございます。」
籠に銭を入れた人達に挨拶をしていると、
「すいません!もし良かったら、歌う歌曲の要望をしてもええですか!?」
ギャラリーを掻き分けて先頭に躍り出た、目の覚める様な美少年が、揚州方面っぽい訛りで、リクエストを要求してきた。
「オイ!待てや公瑾!急に観衆に飛び込んだと思うたら、お前は何を無茶ぶりな事言うとんのや!?
ゴメンやで奏者さん、此奴は歌曲に目がのうて、ちょっと見境がのうなる奴なんで・・・。」
美少年よりも容姿は一枚劣るが、何処か人を惹きつける様な、魅力に溢れる風貌をした別の少年が、公瑾と呼んだ美少年の袖を引っ張って制止すると、ペコペコと糜芳に頭を下げた。
「いえ、お気になさらず。
え~と、どんな要望がお有りで?出来る限りは、お応えしますよ。」
「ほなら、「天馬夢翔」って曲を、演奏者さんは知っとりますか!?」
「ええまぁ、よ~く知ってますけども・・・。
こんな感じの歌曲でしょう?」
自分が広めた歌曲を尋ねられて、引きつった笑みを浮かべ、格好いい冒頭のフレーズを弾いて、1番の部分を歌う。
「え!?そんな序曲で始まるん?それ知らへんかったけど、歌は間違いなしにそれや!
ホンマに!?なら天馬夢翔と同じ様な、格好いい歌曲を歌って貰えんやろか?
なんや知らんけど、地方の筈の徐州の方が、首都の洛陽よりもようけええ歌曲が有る様で、コッチの歌曲はイマイチおもんないねん。」
ブツブツ愚痴る美少年。
(公瑾で美少年で音楽に五月蠅い・・・間違い無しに周瑜やろな~此奴。
つーことは、隣の少年は孫策か?何で此奴等が洛陽でウロウロしてんだよ?)
思ってもいない人物に、思ってもいない場所で邂逅した事に、内心ビックリする糜芳。
「どないやろか?出来るかいな?」
「え?ああ、大丈夫ですよ。
それじゃあ、この紅顔の少年さんのご要望にお応えして、歌わせて頂きます。」
動揺しつつ、リクエストを了承する糜芳。
「ちょっと!?天馬夢翔はウチのムグぅ!?」
「?では・・・スゥ・・・~~♪~~~♪~~♪」
楽士見習いの少年が何事か言おうとするも、年嵩の引率者が口を塞いで黙らせると、ニッコリ糜芳に微笑んで、「どうぞ歌ってください」と言ったので、首を傾げた後に、朗々と歌い始めた。
糜芳が歌っているのは、星座をモチーフにした聖戦士物語らしき歌曲で、「戦士の夢想」な感じを歌ったぽい歌曲である。
戦士の勇ましさと気高さを歌った歌曲であり、勝利・友情・勇気といった、何処ぞの少年誌みたいな、思春期の少年が好みそうなワードが、散りばめられたと思われる曲調となっている。
「~~~♪~~♪~~~♪・・・フゥ、ご静聴ありがとうございました。
え~と、こんなモンでいいかな?」
美少年=周瑜に確認する。
「・・・す、凄い、凄すぎるわ先生!!」
「はい?先生?」
「要望を受けてから即座に、そんな完成度の高い歌曲を歌えるなんて、そら尊敬するて!!」
「ホントに凄い・・・。」
美少年の周瑜とショタ楽士見習いから、キラキラとしたお目めで見つめられる。
残念ながらその手の高尚な事柄には、全く興味が無いので困惑するしかなかったが。
そうこうしている内に2方向から、ギャラリーを掻き分けて集団が寄ってくる。
「ちょいとゴメンよ~・・・あ、居った居った!
何しよんねん策!瑜君!勝手にほっつき歩いたら、アカンて言うてたやろコラ!?」
「あ、孫静殿、お久しぶりですね。」
見覚えの有る孫呉随一の苦労人、孫静に糜芳はフレンドリーに挨拶する。
「・・・うん?うげゲ!?厄び・じゃなくて!
え~糜芳州牧様、一別以来にございます。
東海郡太守就任及び、涼州牧就任と立て続けに出世の段、祝着至極に奉ります。」
糸目を驚愕で限界まで見開いた後、慌てて取り繕う様に拝礼する孫静。
「ちょっと君達、勝手放題は困るな~。
楽士ならキチンと仁義を通して・・・え?ええ!?
何してるんですか義弟殿!?あ、しかも士家の奴等じゃないですかちょっとぉ!?」
「あ、義兄殿、こんちは~。」
これ又見覚えの有る人物に、ぺこりと挨拶をする。
「こんちは、じゃなくてね義弟殿!?
ウチの好敵手を、手助けするのは止めてくださいよ、お願いですから!?
筋的に言えば、縁戚になるウチに協力してくださるのが、妥当でしょうに。」
同業者が仁義破りをしていると、抗議しに来た蔡琰の長姉・杏の夫で楽士の歩謡が、糜芳の顔を観て困り顔から、哀願する顔に変えて言い募って来た。
「う、うそ!?糜芳殿ってあ、ああの・・・ホ、ホンマもんの楽聖様?
お会い出来て光栄であります楽聖様!!
わ、私は周瑜と申しまして、音楽を嗜む者として、密かに私淑しておる次第です!!」
益々お目めをキラキラさせて、孫静と同じく拝礼を糜芳に向かって行う。
「ああ!?糜芳って言うたら、ウチのオトンをぶちのめした猛者やんけ!?
ワイの名は長沙郡太守・孫堅が一子、孫策と申す!
オト・・・父の汚名を子の俺が晴らさして貰うで!
いざ尋常にぃオゴぉう!?」
「「止めんかぁボケェ!!己と相手の立場をようけ考えてせんかい!?」」
孫策が好戦的な笑みを浮かべ、剣を抜きかけた瞬間に、孫静と周瑜に左右から同時に殴られた衝撃で、脳震盪を起こしたのか、白眼をむいてアッサリ昏倒したのであった。
そんな混沌なドタバタ劇があった3日後・・・
洛陽曹嵩邸玄関先
「ゴホッゴホッ・・・ゥンン!
でで、ではでは参ろうかぁ、糜芳殿!?」
「は、宜しくお願いします。」
日暮れ時となり、糜芳は拱手しつつ返事して豪勢に着飾った曹嵩と共に、2両ある馬車の内の1つに一緒に乗り込み、姻家に居る花嫁を迎えに向かう。
因みに空いているもう1両は、花嫁とその父が乗る為の馬車である。
初の仲人役を務める、極度の緊張状態の為か呂律が回らずに、ロボットの如くギクシャクとした動きを見せる曹嵩を尻目に、比較的落ち着きを糜芳は見せていた。
(・・・遂にこの時が来たか・・・。
しっかし、曹嵩のおっちゃんには呆れ半分、感謝半分と言うか・・・。
まぁ、彼処まで取り乱す醜態を晒してくれたお陰で、却って冷静になれたから、感謝するべきなんだけど)
手足を同時に出しながら移動する、曹嵩を観て何とも言えずに苦笑する。
なにせ式が近付くにつれ、自分が結婚する訳でもないのに、オロオロうろうろと狼狽えて、どんどん情緒不安定になっていき、
「儂、仲人役を全う出来るだろうか?」
何故か糜芳に泣き言を、言い始める始末だった。
・・・正直、「コッチが泣き言を言いたいわい!」と思う糜芳であった。
余りの落ち着きの無さに、一抹の不安を覚えたらしい息子の曹操が、「父上、予行練習を行って、段取りを復習しましょう!」と提案。
自宅の玄関先を姻家(蔡家)の玄関先と見立てて、姻家に向かっての文言からやり取りまで、曹操が蔡家側役を務めて監修し、日に何度となく練習を繰り返したのである。
お陰で糜芳もばっちり巻き込まれ、近隣から奇異の目で観られて羞恥心に苛まれつつも、曹嵩と共に作法を学んだのであった。
(まぁ、色々と勉強にはなったけど・・・)
ブツブツと文言の復習を繰り返している、同乗者の曹嵩を横目に、ガラガラと音を立てて、ゆっくりと蔡家に向かっている馬車の中で、脳内思考をする。
ふと明かり取り用の窓から、周囲を覗いてみると、
「・・・うぷ、飲み過ぎだオロロロぉ・・・。」
「オイ、兄者!こんな所でゲェオェぇ・・・小生まで気持ち悪く・・・オロロロ~。」
「オロロロォ!オゲェ・・・備兄や羽兄の吐く所観てたら、俺までえづきが・・・オロロロ・・・。」
直ぐ脇の路上で、やたら福耳で長身の着崩したチンピラ紛いの男と、我の強そうな面相をして目つきもキツい、赤ら顔の長髭の偉丈夫と、横にも縦にもがっしりとした、粗野なゴリマッチョ風な虎髭男が、3人仲良く連れションならぬ連れゲ○をしているのが、窓越しに脇目から見えた。
(うん?何か見覚えがないのに、妙な既視感が?
つーかあんな如何にもな破落戸共が、何で貴族街に相当する南側でウロウロしてんだよ?
仕事しろよ衛兵)
不思議な感覚と治安維持意識の低さにとらわれ、首を傾げていると、
「蔡家邸に到着しました!」
馬車を運転している御者が、糜芳達に目的地到着を告げる。
(早えーよ・・・まぁ、曹家も蔡家も同じ洛陽の南側に、お互い家を構えているんだから、当たり前ちゃあ当たり前なんだけど)
感慨に耽る間もなく到着した事に、なんだかなぁとやるせなさを感じる糜芳。
歩いても20分足らず=約1.5キロぐらいしか離れておらず、そんな近距離でわざわざ豪奢な馬車を使うのは、只単に見栄や見栄えという外聞を憚った面子の為である。
現代風に例えれば「婿さんはこんな凄い高級車を持っている金持ちなんだぞ」アピールと、「嫁さんはこんな金持ちの家に嫁げて良いな~」という、世間体と虚栄心を満たす為のモノであり、庶民感覚の糜芳からしたら、理解不能な領域の話であった。
実際に四世三公の袁家と、四世太尉の楊家の婚姻の時など、お互いにド近所だったので、絢爛豪華な花嫁行列を見せつける為に、わざわざ南側の貴族街を、グルリと周回してパレードしたそうだ。
(まぁ、俺がくだらないと思っても、嫁さんになる蔡琰にとっては、一生に一度の晴れ舞台。
見栄えを良くする事で、少しでも蔡琰の為になると思えば、必要性は解るんだけどね・・・)
そう脳内思考していると、同乗していた曹嵩が徐に馬車から降りて、
「蔡家の方々に申し上げる!
某、此度の糜家・蔡家の婚儀に於いて、仲人役を務めさせて貰う曹嵩と申す!
婿殿と共に花嫁御寮を迎えに参った事を、御当主・蔡邕殿にお伝え願いたい!!」
若干上擦った声で玄関先で待ち構えていた、家令と思しき年長者に来訪を告げる。
曹嵩の言を受けた家令が、蔡邕に伝える為に屋敷に引っ込むと、今度は糜芳も礼儀作法として馬車から降りて、岳父(義父)となる蔡邕に挨拶をする為、曹嵩と共に玄関先で待ち構える。
ゆったりとした歩調で現れた、蔡邕に向けて拱手しつつ、
「この度は、貴殿の御息女を娶る事が叶い、光栄至極に存じます。
必ずや御息女を幸せにする事を誓いまする。」
定型句を述べる。
「・・・此方こそ貴殿の様な、前途洋々な若人に娘を娶って貰えありがたい。
くれぐれも宜しくお頼み申す。」
言葉とは裏腹にギロリと睨み付け、「ウチの阿琰泣かしたら、判っているよな?ああん!?」と目線でありありと告げる蔡邕。
お互いに定型的な(?)挨拶を交わした後、糜芳は馬車に乗って待機し、曹嵩は仲人役として蔡琰に挨拶する為に、そのまま玄関先で待機する。
少し経った後、蔡琰が蔡邕に手を引かれてやってきて、これ又蔡琰と曹嵩が定型に沿って挨拶を交わして、蔡親子は空いている馬車に乗り込み、曹嵩は糜芳と再び同乗して粛々と出発し始めた。
そしてあっという間に式場となっている、曹嵩邸に到着すると、玄関先で馬車2両が横並びに付けられて両家が降り立ち、向かって左側の外側後ろに曹嵩で内側前に糜芳、右側の外側後ろに蔡邕で内側前に蔡琰と、「ハ」の字の如くな配列で、先に到着済みの曹家・蔡家の親族からの祝福を受けつつ、式場へ向かう。
因みに本来なら、糜芳側・蔡邕側共に式場までの間の道のりは、地元有力者達を同伴して家格の高さを喧伝しつつ、式場に入るのが通例なのだが、
蔡家側→皇甫嵩・朱儁・盧植・荀攸(何進の名代)といった、当代を代表する名士がズラリ。
糜家側→曹操・夏侯惇・夏侯淵・曹仁といった曹嵩の関係者達や、孫静・孫策・周瑜(孫一家は孫策の非を責め立て、強制出席させた。侘び料込みのお祝い金徴収済み。周瑜は喜んで出席)といった、次代の英傑がズラリ。
であり、糜家側は後世では誰もが羨む絢爛豪華な顔触れでも、現状では殆どの者が無位無官の下っ端で、只の「枯れ木も山の賑わい」要員という状態なので、余りの深刻な格差になってしまい、省略されていた。
それはさておき、
そのまま後は糜竺の時と同じく、式場に入場して出席者から「おめでとうございます!」と祝福を受けた後、曹嵩が曹操から貰ったカンペをチラチラ見つつ祝辞を述べて、三三九度の杯(水)を交わして、漸く正式に夫婦となったのであった。
「それでは若き2人の前途を祝して・・・乾杯!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
夫婦の杯を交わした後、曹嵩の音頭で宴が始まる。
宴が始まると糜芳に夏侯惇達が、笑顔で個別に「おめでとうございます」と祝辞を、代わる代わる述べてきたので、「ありがとうございます、わざわざ駆け付けてくれて、感謝の言葉もありません」と、1人1人に丁寧に返礼をする。
宴の前半は義兄になる歩謡の一門が、演奏と踊りを受け持ち、後半は北大路でバッタリ出くわした、友人の士嬰の本家である士家一門が、交代で受け持つ手筈になっていた。
(一応両家とも歩謡は身内だから、士家は糜芳の歌った歌曲の演奏の自由を条件に、ロハ(無料)でやってくれている)
そうこうする内に、宴もたけなわになったと判断した糜芳は、
(もうぼちぼち良いかな?サプラ~イズ開始っと)
スッと余興開始の合図を、後ろに従僕として控えているイーに送る。
「皆様方!これより主人・糜芳より、奥方様への心よりの贈り物を贈ります故、どうか笑容(笑って許してね)くださいますよう!」
そう宣言して手をパンパンと打ち鳴らした。
突然のサプライズにざわめく出席者をよそに、中央に布で覆われた縦1mX横40㎝程の四角い物体が置かれ、サッと布が外される。
オオオオオォォォ!!!???
蔡琰を成長させたかの様な人物画を観て、主に蔡家側から驚声が上がる。
「!!・・・なっ、瑩!?
そ、そんな馬鹿な・・・まるで生き写しじゃ。」
蔡邕は娘の琰に似た人物画を観て驚愕し、フラフラと人物画に近付き、
「琰や。」
「はい、何でしょう?お父様?」
「この絵の人はな、お前の母親の瑩じゃ。」
「ええ!?お母様!?」
「ああ、お前を産んで直ぐに亡くなったので、憶えてはおらんじゃろうが・・・。」
蔡琰に人物画に描かれている人を説明する。
「・・・そうですか。」
蔡琰はてくてくと人物画の下まで近付くと、
「初めまして?いえ、お久しぶりですねお母様。
お母様が命がけで私を産んでくださったお陰で、今こうして私は幸せに過ごしています・・・グス。」
感謝の言葉と涙を浮かべて拝礼する。
蔡琰の健気な姿に心打たれた出席者達は、涙を浮かべて蔡琰を観ている。
(え~と、なんか琰に喜んで貰えたらな~と思って描いたんだけど、まぁ、出席者に琰の健気さが伝わって、琰に好印象を持ったみたいだし、良し!)
結果オーライと判断する糜芳。
その後は一目絵画を観ようと、蔡家側や孫一家が絵画に群がって、皆が感嘆の溜め息を吐く。
「ほえ~ホンマもんに生きとるみたいやな~。」
「音楽だけやなくて、絵まで凄いとは・・・。」
「何でこんな綺麗な絵ぇを描くのに、あんなに腹黒いんやろかな~?」
3者3様の反応を示す。
一頻りの騒ぎの後、丁度歩家と士家が交代するタイミングになったので、
「え~次に蔡琰奥方様の為に、糜芳様が歌曲を贈ります。」
サプライズ第2弾、「嫁さんに歌曲をプレゼント」を発表する。
ワアアアアァァァァ!?!!??
楽聖である糜芳の生演奏を聞けると判ると、出席者から嬌声が上がる。
「え~それでは、今の私の心情を歌にします。
スゥ・・・♪~~~♪~~♪・・・♪~~~♪。」
訥々と歌い始める。
糜芳が歌っているのは、「今現在確実な事」な感じの歌曲であり、空を見ながら自分が蔡琰に出来る事を、自問自答しているっぽい曲調である。
どんな時も、一緒に頑張って生きて行こうと言いつつ、さり気なく愛の告白をしている、結構正面きって歌うのに、こっぱずかしい歌曲であった。
蔡琰も最初は赤面して聞いていたが、愛の告白部分になると、目を潤まして嬉し涙を流し始める。
周囲の反応も、主に踊り子達や蔡琰の姉達女性陣が、「良いな~こんな歌曲を贈られるなんて」といった感じで、蔡琰に羨望の眼差しを送っている。
「~~~♪~~♪・・・フゥ。
え~と、どうかな琰?」
「グスン・・・ありがとうございます旦那様。
私の為に、素晴らしい曲を贈ってくださって・・・本当に・・・うう。」
涙を拭いながら感謝する。
「何か要望があったら歌うけど、何かある?」
一方的に歌うだけでなく、要望も聞く糜芳。
「・・・はい・・・あ、あの尹玲義姉様が仰っておられた、糜竺義兄様の婚儀の際に歌われたという、「老若男女がむせび泣いた、空前絶後の歌曲」を、是非とも聴いてみとうございます・・・。」
恐る恐る要望を述べる。
「「なにいぃぃ!?そんな凄い歌曲が!?
是非ともお願い致す!!・・・アタッ!?」」
何処ぞのコ○ンと出○杉君が、異口同音に叫んで身を乗り出し、それぞれ従兄弟と義兄弟に頭をシバかれた後、引っ張られて着席する。
(え~と竺兄の時につったら、アレかぁ・・・。
他人事だから歌えたけど、自身の場合で歌うとなると、かなり歌い難いなぁ・・・要望された以上はしゃあないけど)
結構な羞恥を覚えながら、
「え~では、要望にお応えして歌います。
・・・スゥ・・・~~~♪~~♪~~♪~~♪。」
切々と「雪を花に見立てた」っぽい歌曲を歌う。
歌いながらチラッと周囲を見渡すと、女性陣はグッサリと心に刺さったのか、涙と嗚咽を出し続け、コ○ンと出○杉君は瞑目しつつ涙を流しており、他の人達も概ね似たり寄ったりな様相を呈していた。
「~~~~♪・・・フゥ、こんなモンだけど、どうだった琰?」
「うう~グスッウッウ・・・ひゃい、素晴らしい曲をありがとうごじゃいます。」
嗚咽でつっかえつっかえ喋りながら、ぺこりと頭を下げて感謝する蔡琰。
(フゥ・・・まぁ、とりあえず歌曲のプレゼントはこんなモンかな?
後は士家一門にお任せしてっと・・・)
蔡琰が泣いて喜んでくれた事に満足し、後半演奏担当の士家一門に目線を送る。
すると、
「も、申し訳ありません楽聖様!!
我々一門の拙き技量では、楽聖様の後の演奏なぞ到底務まりません!
平にお許し下さいませ!と、とても我々では無理にございまする!!」
一門の代表者が土下座して、演奏は不可能だと涙ながらに訴え出て来た。
「え~と、じゃあ歩謡義兄殿?」
「無理無理無理!!楽聖殿の後に演奏なんか出来る訳ないでしょうが!?
先程の歌曲を聴けばなおのこと、技量差がモロに露呈しますから無理です!」
手と首をブンブン振って拒絶される。
(え~?どうしよう?つーか士家一門って竺兄の時も、似たような事言ってなかったか?)
皮肉な事に自身のサプライズで、式の進行に支障を来してしまった糜芳。
「ふむ、糜芳殿、こうなっては致し方なし。
糜芳殿自身が演奏を担当するしか、他に善処策はあるまいよ。」
ニタァとあくどい笑みを浮かべ、自分の願望を上乗せしてくるコ○ン。
ウオオオォォォ!?
糜芳の演奏会の開催に、歓声を上げる出席者達。
「うう・・・え~と、何か要望があれば、お聞きします皆様方。」
「で、では主上に奏でられた、「覇王組曲」を今一度、今一度お願い致す!!
あの演奏が頭から離れぬのだ糜芳殿!」
「あ、じゃあ・・・。」
「あの~・・・。」
朱儁がリクエストすると、次々とリクエストをしてくる出席者達。
(ひ~ん、俺が主役の式なのに~!?)
自業自得で演奏をする羽目になった糜芳であった。
約1時間後・・・
何人もの出席者達からのリクエストに応え、疲れ果てた糜芳に、無事仲人役を務め上げて安堵している曹嵩から、「そろそろお開きに」と宴終了のお言葉が発せられ、漸く解放されたのであった。
(や、やった・・・終わった・・・サプライズなんかやるんじゃなかった・・・シクシク。
次で最後や、もうコレだけやってしまったら、後はベッドインして寝れる!!)
最後のサプライズを発動させるべく、イーに再び合図を送る。
「え~旦那様より奥方様へ、摩訶可思議な贈り物をされます。
皆様方どうかよ~くご覧くださいませ。」
糜芳の意を受けたイーが、声を張り上げて出席者達を注目させる。
何事が有るのかと、今までのサプライズを見聞きしていた面々は、ワクワクとした表情で、糜芳の挙動を見守る。
「え~では、曹操殿?」
「うん?何かな?」
「ちょっとその立派な冠を、少しの間拝借したいのですが宜しいですか?」
「??ああ、良いぞ・・・ほら。」
突然の振りに首を傾げながらも、素直に冠を外して糜芳に渡す。
「はい、どうも・・・では、曹操殿よりお借りした冠に布を被せましてぇ・・・ちちんぷいぷいのぷい!・・・はい、一輪の水仙が出てきました~。」
古代中国時代から、「幸せを運ぶ花」と謂われている水仙を、コッソリ懐に忍ばせて、宴会芸で覚えたコテコテの手品で出し、蔡琰に手渡した。
「「「「「は!?」」」」」
目が点となり、唖然呆然とする出席者達。
「わぁ、凄い凄い!ありがとうございます!」
「どういたしまして・・・う~ん。
一輪じゃ淋しいな、ヨシ!・・・ちちんぷいぷいのぷい!・・・は~い、沢山の水仙を出しました。」
明らかに冠の容量を越えた数の、大量の水仙を手品で出して、キザったらしく渡す。
「凄い凄い!こんなに大量の水仙を!?
お父様観てください!旦那様からこんなに一杯の水仙を貰いました!」
(いや~こんなチャチな手品で、喜んでくれるなんて、嬉しいね~)
キャッキャッと年相応に、はしゃいで喜ぶ蔡琰にホッコリする糜芳。
・・・カターン・・・シーン・・・
蔡琰に問われた蔡邕は、口を半開きにしたまま、持っていた杯を落とし、茫然自失としていた。
観れば他の出席者達も、蔡邕と同じ表情をしており、耳に痛いくらいの沈黙が式場に降りる。
(ありゃ~あんまりにチャチな手品なんで、呆れられたかな?
まぁ琰が喜んでくれたからヨシ!
・・・サッサと寝床に就こう)
手品がスベったと思い、
「はい、曹操殿ご協力ありがとうございました~。
皆様方ご多忙の中、今日は私達の婚儀にご出席の程、誠にありがとうございました!
それではこれにて左様ならば、失礼します。
さて・・・行こうか琰。」
「あっ・・・は、はい旦那様。」
サッと茫然自失としている曹操に冠を返却し、定型的な辞令を述べると、そそくさと蔡琰の手を引いて、とっとと式場を後にして逃げ出した。
そうして糜芳達が式場を後にした直後・・・
「「「「「せ、せせ仙術だあぁぁぁ!!!???」」」」」
怒号とも悲鳴とも付かない叫声が、式場に響き渡ったのであった。
糜芳の前世では、子供でも知っているチャチな手品でも、「十分に発達した技術は、魔法と区別がつかない」という格言に有るように、古代中国では手品は未知の技術であり、知らない人達=出席者達には手品=仙術(魔法)に見えたのである。
つまり、出席者達は糜芳が仙術という、「奇跡・神秘の秘術」を目の前で披露したと勘違いし、茫然自失となっていたのである。
そんな事とは露知らず、サッサと寝室に入った糜芳は、蔡琰と添い寝(蔡琰さん御歳12歳です)をして、床に就いたのであった。
そして、本来は大体3日間に掛けてやる結婚式を1日に省略し、翌日には涼州は危険過ぎるので、蔡琰を徐州の自宅に送り出すと、自身はサッサと任地の涼州に、単身赴任をしに戻ったのであった。
因みに、とある少年が仙術を使ったと瞬く間に広まり、少年の故郷である徐州は、元々蓬莱山(神仙が住んでいるとされる山)伝説が有ることから、謎の信憑性を得てしまい、全国から道教の道師が押し寄せて来て大騒ぎになり、大層困り果てたそうな。
最も被害を被ったのは、東海郡に住む糜董という、商会を営む中年男だったとか。
無論、当事者のとある少年にも、神仙信仰の篤い筍2号等、沢山の弟子入り希望者が殺到し、涼州まで追いかけて来る強者まで現れ、対応に苦慮したのは、言うまでもない事である。
続く
え~と、今話で結婚パートは終了して今まで通り、普通の話に戻っていきます。
今話は結構何処かで、聴いた事有るような無いような歌曲っぽいモノが、登場しておりますが無論フィクションであり、実在する歌曲とは全くの無関係であります。
まぁ、エスパーな方ではない限り、結構判りづ・・・ゲフン、ゲフン・・・気のせいです。
長々とすみません。
楽しんで読んで頂けたら、嬉しいです。
優しい評価を、宜しくお願いします。




