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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
62/111

その10

読んでくださっている皆様方へ


誤字脱字報告ありがとうございました!


そしていいね等評価して頂き、誠にありがとうございます!


なんとか後編が出来上がったので、早速投稿します。どうぞ・・・

       東海郡郯県郡兵練兵場


ザワザワ・・・ざわざわ・・・わいわい


あれから半月後、郯県に於いて公開裁判を行うお触れを出すと、郯県では大騒ぎになって話が(たちま)ち近隣まで広がり、裁判が行われる触れを出すと事件があった県民だけでなく、近隣の県民まで興味本位で事前に押し掛けて来る有り様となり、


「このまま広場でやられたら、郯県の市場が滞ってしまいます!勘弁してくださいよ太守様!?」

郯県の県令の苦情と言うより、真っ当な意見が出されて、急遽練兵場に変更になったのであった。


ボワ~ン・・・ボワ~ン・・・


「鎮まれい!鎮まれい!皆の者!!

今これより、公開裁判を行うとする!!」

銅鑼が鳴ると、進行役が開始を告げる。


わぁぁぁ・・・!!


「いよっ、待ってました!」

「早くたのんますぜ、お役人様!」

口々に娯楽気分で(はや)し立てる。


「ええい!鎮まれと言うに!!

では被告側は()でませい!!」

進行役が告げると獄吏(刑務官)に連れられて、縄を打たれた神妙な顔をした40絡みの男と、衛兵に連れられた10代前半の、殴打の(あと)が未だに痛々しい少年が出廷し、糜芳が座る予定の裁判長席から見て、右側の筵が敷かれた所にそれぞれ座る。


「次に原告側は出でませい!!」

被告側とは反対の入り口から、大勢の衛兵に連れられて、だらしなく着崩した装いの見るからに軽薄なチャラ男と、似た装いの取り巻き達5人と、事前に糜芳に()()に来たチャラ男の父親が、ニヤニヤと勝ち誇った表情で出廷し、左側の筵にドカリと座る。


ボワ~ン・・・ボワ~ン・・・ボワ~ン


「今よりこの公開裁判の裁判長を務められる、郡太守様が出座(しゅつざ)なされる!

皆の者!太守様が「良い」と申されるまで、拝礼してお迎えする様に!!

非礼をすれば容赦なく投獄になる故、覚悟せよ!!

・・・東海郡郡太守・糜芳様、御出座~。」

進行役がバカをすると牢屋にぶち込むぞ宣言をして、皆が拝礼したのを見届けた後、糜芳に「入場してください」と促した。


進行役に促されて糜芳はてくてくと入場し、そのままストンと裁判長席に座り、


「これより○○県で発生した、事件の裁判を執り行うとする。

皆の者、面を上げよ。」

正装に身を包んだ格好で、裁判の開廷を宣言する。


「「「「「ははっ・・・へ?」」」」」

顔を上げると裁判長席に、未だ成長期前の少年が座っているのを見て、被告・原告だけでなく観衆からも、一様に素っ頓狂な声と、ポカーンと唖然呆然とした表情をしていた。


ザワザワ・・・ひそひそ・・・


「おい、何で子供が裁判長席に座ってんだ?」

「お前知らねーのかよ、ウチらの郡太守様だよ。」

「いやいや!嘘だろ!?

幾ら何でもあんながきんちょに、マトモな裁判なんぞ無理だろが!?

つーかそもそも郡太守自体、やれんのかよ?」

糜芳の幼さに疑問を持つ者や、


「・・・糜家って何処の名家だったっけ?」

「うん?糜家は名家じゃなくて、ほら胊県の大店の糜家商会で、太守様は其処の商会長の次男坊だよ。」

「ああ!あの糜家商会か。

・・・あれ?じゃあどうやって商人の息子が、郡太守様なんぞになってんだ?」

「え~と確かお偉方に推挙されたとか、皇帝陛下の命令だとか?って聴いたけどなぁ。」

出自や出世に首を傾げる者が多く、ひそひそと周囲の人達と、糜芳に関しての意見と情報交換を行っており、驚きと不安が場内を渦巻いている。


「さて、事件の概要を尹旋従事、述べよ。」

「はは、では・・・。」

観衆のひそひそ話を馬耳東風に聞き流し、淡々と裁判を進行する糜芳。


「・・・・・・以上にございます、太守様。」

「ふむ・・・被告人・衛兵隊長、楊濱(ようひん)よ。

先程の概要に誤りはあるか?」

「はい、この少年・介がスリを働いたとする事以外は、相違有りません。」

あくまでも少年・介を庇う楊濱。


「では少年・介に問う。

お前は盗んでなどおらぬ、あくまでも原告人の落ちた財布を拾ったと申すのだな?」

「へ、へえ、その通りです。」

ビクビクしながら頷く。


「嘘付けスリ野郎が」と、チャラ男側から罵声が飛ぶのを、衛兵に抑えさせて、


「原告側が言っておるが、スリの常習犯だったのは誠であるのか?」

事実確認をする。


「確かにそうでした。

けど!楊のオッチャンに殴られて説教されて、親身になって優しくしてくれた事で改心したんです!

だから落ちた財布をちょろまかさず、落とした彼奴に渡したんです!

信じてください!お願いします!お願いします!

それとどうか楊のオッチャンを減刑してやってください!お願いします!お願いします!」

平伏して無実と恩人の減刑を訴える。


楊濱の少年・介を庇う姿と、必死に恩人を助けようとする少年の姿に心打たれて、観衆達は罪を犯した容疑のある被告側にも関わらず同情の視線を両者に投げ、ちょくちょく罵声を両者に浴びせるチャラ男達には、被害者である原告側にも関わらず、嫌悪と不快感の入り混じった視線を送っていた。


(おーおー・・・いい感じに温まって来ましたよ~。

後が楽しみだわこれは)

内心ほくそ笑んだ。


「ふむ、相解った。

では原告人・○○県在、田畢(でんお)と一党よ。

お前達は先程の概要に誤りはあると申すか?」

「い~え、一切ございませ~ん。

間違いなく其処のガキが私の財布をスリ盗って、理不尽にも私は悪くないのに、衛兵隊長さんに殴られて怪我をしました~。な~皆?」

「「「「「はい、その通りです。」」」」」

見た目に違わず軽薄な物言いのチャラ男こと田畢が、ヘラヘラとした態度で糜芳に返答し、取り巻き達も田畢の主張に同調する。


その後も幾つかの質疑応答をして、終始ヘラヘラとした態度をとる田畢に対して、ますます嫌悪と不快感を露わにする観衆。


順調に田畢達に対する、ヘイトが煮立っているのを確認した糜芳は、適当に質疑応答を打ち切った。


「さて、では判決を言い渡す。」

次の段階の為に、サッサと結審に入る。


「被告人・楊濱。

如何なる理由が有れども、本来守るべき対象に暴力を振るうのは、職務上不適切と言わざるを得ない。

又、お前が田畢を殴り倒した事は、大勢の者が目撃しており、覆しようのない事実である。

依って有罪とし、今これよりを以て衛兵隊長を解任し、(なが)の労役(長期間の強制労働)を命ずる。」

「はは、御迷惑をお掛けしました。」

楊濱に有罪判決を下して、


「次に少年・介よ。

今回の件に関しては、疑わしい節が無きにしもあらずであるが、「スリ盗った財布を、わざわざ渡しに行く間抜け」が居るとは考え難く、又証言自体も原告側に非常に近い者達であることで、信憑性に乏しい事を考慮し、不問(無罪)と致す。

但し、大赦のあった2月以降に行っている、スリ行為に関しては不問にはならない。

依って介にも労役を命じる。」

「へ、へへぇ・・・。」

少年・介にも有罪判決を下した。


「最後に田畢よ。

お前も疑わしいからといって、少年・介に対して暴力を振るった事も又事実である。

介に対して不問とした以上、お前には介に治療費の支払いを命じる。

・・・不服とするなら、お前達も傷害の罪に問うことになるのだが、どうだ?」

「・・・いえ、ございませんよ。

払えばいいんでしょ?払えば。」

あからさまに不貞腐(ふてくさ)れた表情をしながらも、しぶしぶ頷く田畢。


「宜しい。これを以て今回の事件を結審する。」

傷害事件の裁判終了を告げた。


サワサワ・・・ヒソヒソ・・・


「おいおい、公平ちゃあ公平だけどよ・・・。」

「な~んかスッキリしねーな~。」

「これじゃあどっちが罪人か分からねーよ。」

「だよなぁ、もうちっとあのくそったれボンボンを、締め上げてくれると良かったんだけどなぁ。」

「結局、裁判の沙汰も金次第、ってか?

あーあ・・・ちょっとは期待したのにな。」

観衆は糜芳の裁決に公平性が有ると、一定の評価をしつつも、釈然としない表情を浮かべている。


判決内容に対しての不満と、田畢達に対するヘイトが溜まっている状況を聞いた糜芳は、


(う~ん、ぼちぼちこんなモンかな?

さぁ~て皆様お待ちかね、イッツ・ア・ショータイムの始まり始まり~)

ニタリとどす黒い笑みを浮かべて、尹旋に手を挙げて合図を送る。


「さて、次に()()()・田畢とその一党の裁判を行う!おい、衛兵達!」

「「「「「ははっ!!」」」」」

糜芳の意を受けて、大声で裁判第2ラウンド開始を宣言し、衛兵達に合図を送って、これまた意を受けた衛兵達が忽ちの内に田畢達を縛り上げた。


「なにすんだよコラ!?」

「聞こえてないのかお前は?

今から田畢、お前達を裁く裁判をすると言っているのだが理解したか?」

未だに状況を理解していない阿呆に、ゆっくりと大きな声で告げる。


顔をしかめながら立ち去ろうとした観衆達が、ギュルンと物凄い勢いで振り返って、衛兵達が張っている防衛ラインギリギリまで詰め寄って、これから起こる事に興味津々に聞き入る。


「さてさてお前達。

地元でなかなかの悪事を成しておるようだなぁ?

大赦から半年で両手に余る程に。」

某司令官スタイルで、縄で縛られた状態でジタバタもがいている、阿呆共を見据える。


糜芳が喋っている間にも、「離せ」だのなんだのとピーチクパーチク騒ぐので、「おーい衛兵ー」と声を掛け、「はは、おい黙れ!不埒者共が!」と容赦なく殴る蹴るの()()()制裁を、衛兵達は清しい笑顔で行い、静まったのと少年・介ぐらいになったかなー、といったタイミングで止める。


因みに制裁している間、庇護者の田畢父が悲鳴を上げていたかも知れないが、観衆達の歓声に紛れて聞こえない気がしたので、無視した糜芳。


そして糜芳がスッと手を挙げると、糜芳が魅せるエンターテイメントに支配された観衆達は、不思議と統率された軍隊の如く静まった。


「田畢よ此処は神聖な裁きの場であり、お前達は裁かれる身で有るのを忘れたのか?

以降、求められた事以外に喋ったり騒いだら、その度に繰り返すから気をつける様に。」

呻き声を上げる田畢達に、キッチリ釘を差して、


「では早速原告側を出廷させよ。」

真打ちの裁判を開廷する。


「はは、では()()()()出でませい!!」

進行役が告げると、ぞろぞろと老若男女が現れた。


そして原告側達の告発が始まり、まぁ出るわ出るわの悪行の数々といった体で、告発される度に観衆達の怒りと憎悪のボルテージが上がり、罵詈雑言が田畢達に浴びせられ、証人・証言・証拠が出て有罪判決が下る毎に歓声が上がる。


さながら中世ヨーロッパに於ける、魔女裁判の如き様相であった。


「う~ん、法務官。

コレはちょっと多過ぎるので、獄吏に後は取り調べ(拷問付き)を頼もうと思うのだが。」

「はぁ、確かに・・・。

しかしこやつ等、よくもまぁたったの半年で、やるにもやったりと言った所ですなぁ・・・。」

罪状が多過ぎて段々面倒くさくなった糜芳は、獄吏に丸投げを補助役の法務官に相談し、法務官も糜芳の意見に同調する。


そう2人で相談していると、


「お待ちください!太守様!?

先程貴方様に金品をお渡しした際に、「任せておけ」と仰っていたではありませんか!?

私から賄賂を受け取っておきながら、余りにも無体が過ぎませんか!?」

被告側になった中で、唯一縄を打たれていない田畢父が立ち上がり、激昂して指差して非難し始めた。


「うん?金品って・・・おーい持って来てくれ。」

そう言って部下に裁判前に挨拶に来た、田畢父から貰った箱を持って来させて、


「お前の言っている金品とは、コレの事か?」

部下に開けさせると、箱の中には幾つかの金塊と銀塊が入っていた。


「そうです、それですよ!

どうだ?皆の衆、この太守様も観ての通り、賄賂を受け取っているんだぞ?

そんな人物が裁く裁判なんぞに、なんの正当性が有るというのだ?こんな裁判など無効だ!」

逆ギレして無効と騒ぎ出した。


「お~い、皆の者。

こやつが私に「賄賂を送った」と言ったのを、皆の者も聞こえたよな~?」

「「「「「ははっ、しかと両耳で!!」」」」」

「衛兵達、其処な者は()()()()()()()()()()()()()である!引っ捕らえよ!」

「「「「「ははっ!!」」」」」

「なっ!?」

糜芳の指示で衛兵達は機敏に動き、呆気にとられる田畢父を拘束した。


「・・・なぁ、彼奴(あいつ)馬鹿なのか?

普通これだけ大勢の面前で、堂々と贈賄(ぞうわい)(のたま)うなんて信じられんのだが。」

「間違い無く馬鹿ですなぁ・・・。

下手をすると、漢帝国始まって以来の珍事かも。」

呆れながら聞くと、法務官も失笑して頷く。


「この場合、どうするべきか?法務官。」

「曲がりなりにも太守様を、不届きにも買収しようと企んだ訳ですから、家財没収が妥当かと。」

(よこしま)な事が出来ない様、財産没収が適当と判断して提言する。


「あ~では現行犯なので即時裁判を行う。

公職にある私に、金品を公衆の面前で贈賄しようとした事は不届き千万、許し難し!

依ってこれ以上罪を重ねぬ様、家財没収と致す。

梅里筆頭官!急ぎ○○県に軍を派遣し、キチンと余すことなく回収するように。」

「ははっ、しかと承知しました!」

にこやかに拱手する。


「あ、それと○○県の原告側達。

スマンが回収に赴く軍の道案内を頼めるか?

要らぬ騒動を起こしたくないのでな。」

「「「「「はい、喜んで!!」」」」」

諸悪の根源が消滅する事に、晴れ晴れとした笑顔で応じる被害者達。


「良し、これにて被告人・田畢とその一党の罪状は明らかにより、獄に落として余罪を厳しく追及するものとする。

それに伴い一族一門も連座に依って、罪を免れる事は無いと見なし、田畢達の罪状が(つまび)らかになるまでは一所(ひとところ)に留め、罪科が確定次第改めて裁定を下すものとする。

それでは被告人共を引っ立てよ!」

「ははっ、それ立たぬか!」

糜芳の命に従い、急転直下で罪人となって茫然自失となっている田畢一党を、衛兵達が半ば引き摺りながら引っ張っていく。


遠退いていく田畢一党を見届けた後、余りの急展開に唖然としている楊濱の方を向き直して、


「え~、楊濱よ。

郡を預かる身として、貴君に謝らして欲しい。」

ペコリと頭を下げた。


「は、ははっ!?」

突然の謝罪に、目を白黒させる楊濱。


「本来なら私がせねばならぬ浮浪児達の面倒を、貴君が私財を投じて賄っていたと聞き及んでいる。

私が至らぬばかりに貴君に負担を掛けさせてしまったのを、許して貰いたい。」

「いえいえとんでもございません!

私の方こそご迷惑をお掛けしましたのに!?」

顔を左右に振って恐縮する。


「只、だからといって、貴君の罪を無くす事は出来ないので、すまないが労役をしてくれ。」

「それは無論、太守様の判決に異議はありませぬ。」

楊濱が深々と頭を下げる。


「其処でなんだが遅らせばながら、私も給与を投じて浮浪児達の為の、職業養成所を作ろうと思っているのだが、如何せん浮浪児達の面倒を見るといった、()()()()()()()()()をこなせる者が私の周りに居なくてな。

正直困難で労役よりも厳しい事となると思うのだが・・・すまないが楊濱よ。

貴君に養成所の代表者を頼みたいのだが、了承してくれまいか?」

労役よりもキツいと強調しつつ、楊濱が私的にやっていた事を、公的に援助するから労役代わりにやって欲しいと頼み込む糜芳。


「た、太守様・・・ありがとうございまする。

喜んで受けさせ・・・うう、頂きます。」

自分がやりたかった事を、仕事として職場として紹介してくれる糜芳の温情に、涙して感謝する楊濱。


「うむ、宜しく頼んだぞ。次に少年・介よ。」

「へ、へい?」

「お主にも労役として、楊濱の手伝いを頼みたい。」

「へ?俺に?」

「ああ、そうだ。

楊濱だけでは手が回らぬだろうし、なによりお主が各地に居る浮浪児達を養成所に入る様に、説得する説得役として適任で有ろうからな。」

「へ、へい俺で良ければ喜んで。」

「宜しく頼む。」

介にも頼んで了承を得る。


「良し!皆の者も聞いての通り、孤児達の生活手段を獲得させる施設・養成所を作る事を、今此処に於いて明言する。

何も皆に銭を出せだの、寄付しろとは言わない。

無論、出してくれるのは大歓迎だが。

まぁ、財源は()()()()()()()()()()()()当分は大丈夫だろうしな。」

さり気なくブラックな台詞を吐きつつ、浮浪児達の職業養成所建設を宣言する。


「これにて公開裁判を閉廷とする。

皆の者、大儀であった。」

そう締めくくると、てくてくと会場の練兵場を去っていく後ろから、


わぁぁぁぁああ!!

賞賛の歓声が轟いたのであった。


        東海郡郡治所内裁判所


(ふぃ~なんとか丸く収まったか・・・。

後々の事を考えれば、ある程度の名声と賞賛を貰っておかないと、職業養成所の中身の充実に困る事になりかねんし・・・忙しい忙しいなぁ~。

かと言って次の案件も、1日でも早く始末しとかないと、要らん案件が増えかねねーし・・・頑張ろう)

己自身を叱咤激励し、気合いを入れる糜芳。


公開裁判を終えて一息ついた糜芳は、それから直ぐに2つ目の案件である、孝行青年の横領事件を裁く為、郡治所に戻って内部にある、関係者以外立ち入り禁止の、非公開の裁判所にいた。


「では始めようか。」

「ははっ、被告人出でませい!」

尹旋に代わって金敦が従事を勤めている。


金敦の呼び出しに応じて、閉じられていた扉が開き、衛兵と共に縄も打たれていない状態で、糜竺と変わらないぐらいの青年が着座し、弁護人なのか上司っぽい人物が脇に控える。


そして金敦が事件の概要を述べて、内容の事実確認をすると、「間違いありません」と返答をした。


「さて△△県・経理官、杜中(とちゅう)よ。」

「ははっ。」

「先に判決を下す前に言っておくが、お前は間違っても皆が言うような孝行者でない、寧ろ()()()()()()()()()()()()。」

はっきりと言い切る糜芳。


「「なっ!?」」

「お待ちください太守様!

この者の亡くなった母君への孝行振りは、県内で知らぬ者は居ないぐらいのモノですぞ!?私自身も実際に知見しております!

それなのに、見ず知らずの太守様がその様な事を言われるとは、心外にございます!」

泡を食って猛抗議する弁護人。


「ふむ、では杜中に問う。

お前の母君はお前が敬って止まない、それはそれは立派な母君であったので有ろうな?」

「それは勿論にございます!」

強く肯定する。


「そうかそうか・・・。

では改めて問うが、お前の母君は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、寧ろ子の犯した罪を恥じて、自死を選ぶ親も居ると思うがどうだろか?」

お前自分がしでかした事、解ってんの?そんな事して亡くなった母親が喜ぶのかと問い掛ける。


(ふつ~に考えたら、此奴のやっている事って独善的な行動で、却ってお袋さんを泣かしているんだよなぁ、俺的常識では。

何処の世界に自分の子供が、自分のせいで犯罪者になるのを喜ぶ親がいるんだよ)

何処が孝行青年やねんと、首を傾げる。


糜芳の概念では、如何にそれまで孝行を重ねても、横領一発で全てを無にしているのである。


「「「「「あっ!?」」」」」

糜芳の指摘に、声を上げる周囲。


「改めて弁護人に問う。

この杜中は心ならずと言えども、立派な母君を「罪人の母」と貶め、父祖や家名を「罪人を生んだ先祖・家系」と辱めているのだが、それでもこの者を「孝行者」と言えるのか貴君は?」

「・・・いえ、言えません。」

糜芳の言に、意気消沈する。


「しかしながら、ではどうすれば・・・。」

「例えば其処にいる弁護人に相談する。

若しくは恥を偲んで借銭をして、周囲に助けて貰って母君の治療をして貰う。

等々(などなど)幾らかの手段があった筈だろう?

お前の人間性・人間関係を考えたら、誰かしら助けてくれた者は必ずいた筈だ。

少なくとも、大概の手段は罪人になるよりは、遥かにマシな事だろうしな。」

どうすれば良かったのか問い掛ける杜中に、幾つかの普通の手段を提示する。


「・・・確かにそうですね。

・・・母上ぇ!!お許しください!私の短慮で貴方様を貶めてしまいました!お許しをぉぉぉ・・・。」

地面に突っ伏して、泣き崩れる杜中。


暫く泣き止まず、漸く泣き止んだ所を見計らって、


「さて、それでは判決を下す。」

結審に入った。


「ははっ。」

「△△県・経理官、杜中。

お前のした事は、例え孝行から考えた事であっても、独善であり罪を犯して良い事にはならない。

また、横領をする事に依って被害を被る者の事を、考慮せずに行ったのも又短慮である。

これらの事を考えれば、親不孝も加えて刑罰も自然と重くせざるを得ない。

依って、并州送りを命ずる。」

公職での犯罪行為と模倣犯防止の観点を加味して、重罪を言い渡すが、


「ははっ、謹んでお受けします。」

「うむ、宜しい。

但し、お前の普段の勤務態度、周囲の嘆願、今までの孝行を考慮して、永年ではなく、2年程の短期刑に処するとする。」

周りの嘆願に、一定の配慮を示して軽減する。


「杜中に問うが、お前が今1番するべき孝行は何だか解るか?」

「はっ、罪を償う事かと。」

「そうだ。では2番は?」

「・・・分かりません。」

「必ず生きて帰って、母君の墓前に参る事。

次の并州送りには少し時間が有るから、母君の墓前に誓ってから行くように。」

「・・・ご配慮痛み入りますぅぅ・・・。」

再び嗚咽を洩らす杜中。


(まぁ、并州送りつっても、今までの連中と違って前線じゃなくて、手を回して後方支援に配属になるから、余程の不運に遭わなければ大丈夫だけどね)

一応生きて帰れる様に配慮する。


「あ、そうだ弁護人。」

「はっ、何でしょうか?」

「私の名に於いて、杜中が并州から帰って来るまでの間、県役場の籍を残して置くように命じる。」

「太守様・・・ははっ!!ありがたきご配慮、痛み入りまする。

必ずや残して置きます。」

糜芳の気遣いに感動の面持ちな弁護人。


「そして杜中の如く、心ならずも身内の怪我や病気が原因で罪を犯す者が出ぬ様に、東海郡内の各県に施療院(せりょういん)(病院)を設置したいので、△△県でも早く検討して欲しい。」

「施療院、ですか?」

「そうだ。施療院を作って方士(医者)を常駐させて、怪我や病気の治療を役人関係者は無料とする。」

「は?無料ですか!?」

弁護人がびっくりした表情で、確認する。


「但し基本的に軍部は、軍屯に既に1割給与から出しているので、1割増しの定期治療費を毎月払って貰う代わりに、本人だけでなく近親者=親子兄弟も無料で何時でも受けれるとし、民部は給与の2割を定期治療費に払い、他は軍部と同様だ。」

「ふ~む、2割ですか・・・。」

糜芳の説明に、腕を組んで考え込む。


「ああ、一見すると高く感じるかも知れんが、身内の誰かが長患いした時や、大怪我をした時の様に、中~長期の治療が必要な場合は断然得であり、急な病気や怪我での入り用も無くなるので、家計を圧迫する可能性が激減するぞ。」

「確かにいざという時の保険として、有益ですな。

承知しました。直ぐにでも県令様に報告し、早期開設を我が県でも目指します。」

利害得失を考え、利益が大きいと判断した弁護人は、直ぐに県で検討する事を請け負った。


「ああ、宜しく頼む。さて、これにて閉廷と致す。

杜中よ、必ず生きて帰って来る様に。

身体を大事に達者でな。」

「ははっ、ご恩情感謝します!」

拝礼して感謝を述べる杜中。


こうして2つの面倒な案件を解決すると同時に、便乗して浮浪児対策の職業養成所と、役人の福利厚生として病院の開設を行ったのであった。


       東海郡郡治所太守執務室


11月、先々月に郡練兵場に於ける公開裁判で糜芳は非は非、是は是と理路整然と裁き、同時に給与を投じて浮浪児対策の職業養成所開設を宣言した事で、「幼少にして、公平且つ寛厳(かんげん)(優しさと厳しさが両立)の仁」として県・郡内のみならず、徐州全体でも庶民を中心に名声を博し、施療院を開設する事で軍部のみならず、郡内の民部にも支持を受ける事となったのであった。


先ずは職業養成所の質をある程度確保する為、郡内の工人(こうじん)(工業系職人)で隠居した元親方連中を、郡治所に呼んでいた。


「郡太守様にはご機嫌麗しく・・・え~と・・・。」

「ああ、良いよ良いよ親方。

使い慣れない言葉遣いをせんでも。」

「そうですかい?いや~やっぱ駄目ですわ、畏まった言い方しようとしても、舌噛みそうになっちまう。」

「「「「「ちげえねえ、ちげえねえ。」」」」」

ガハハハと代表と同調する隠居達。


「そんで太守様、(せがれ)や弟子達じゃなくて儂等を呼んだのは、いってえどういう訳で?」

「それなんだが、私が浮浪児対策で職業養成所を、開設する事は知っているだろうか?」

「へぇ、耳に挟んではおりやすが・・・。

箱物(はこもの)(建築物)の見積もりやらでしたら、儂等は隠居の身ですんでお門違いですぜ?」

「いやいやそっちじゃなくて。

爺さん達には開設する養成所の、各業種の教官役を頼みたいんだが。

一応賃金もそれなりに払うから。」

手をブンブン左右に振って、本題を告げる。


「お断りいたしやす。」

間を置かず即答し、同時に先程までにこやかだった隠居連中が、厳しい職人と経営者の顔付きに変わっていたというより、戻っていた。


「ああ、別段爺さん達の所の、秘伝(秘匿技術)だの(たくみ)の技(名人芸)を教授しろって訳じゃないから。

精々見習いがやる「材料出し・運び」と、その少し先ぐらいまで教えて貰えれば、十分なんだけど。」

説明不足だったかなと思って、詳しい授業内容を告げる糜芳。


因みに「材料出し・運び」とは、工業系職人見習いが大概経験する、先輩から「あの道具持ってこい、この材料を運べ」と言われて走り回る、一見すると先輩にパシらされている作業である。


偶に「パシらされて嫌だ」と愚痴る新人さんがいらっしゃるが、実際には結構キチンとした教育の一環であり、道具・材料を持って来させる事で道具名・保管場所・どういった工程で、使用するのかを学習させ、運ばせる事でどういった段取りで、作業を進めているのかを教えている。


しかも見習いが最初にする事なのに、コレだけで見習いの段階で出来・不出来が大概判ってしまう、恐ろしいぐらい効率的な作業でもあった。


出来る新人さん=要領の良い人は、道具・材料名を覚えたら、


あ、ここの工程ではこの道具と、この材料をいくつ使用してたな→先に道具を段取りして、材料を必要数配って置こう→段取りを先々済まして開いた時間に、先輩がある工程作業のやり方を教えてくれるぞ→教えてくれたのでその工程作業を任された→又別の工程作業を教えてくれた→見習い卒業→一端の職人へとドンドン上がっていき、20代で職長になったり起業して親方になる人も少なくない。


逆に不出来な新人さん=要領の悪い人は、なんとか道具・材料名を覚えても、工程で必要な道具・材料を覚えていない=作業内容を理解していないので、トンチンカンな事をして怒られたり、どうすれば良いのか判らず、他人の指示待ち人間になってしまう人が多い。


因みの因みに糜芳の前世に於ける、雇い主である「自尊(自損)」の親方に、「おやっさん、要領の悪いペーペーってどうなるんスか?」と聴いたら、「10年ぐらいしたら、同期にバカにされもって顎で使われよるか、遊んどる(無職)かのどっちかやろな」と言われ、背筋がゾッとしたものであった。


この様に最初期で、その人の明暗(将来)がハッキリ分かれる、わりかし洒落にならないモノであった。


それはさておき、


「まぁ・・・そんぐらいやったら、儂等の所に害になりやせんから、構やしませんが。」

他の元親方連中も、そんぐらいならと頷いている。


「おいおい爺さん達構わない処か、爺さん達の所にも利益のある事だぞ?」

「「「「「利益?」」」」」

「この養成所で生徒になる浮浪児達に基礎を仕込んで置けば、繁忙期や人手の要る時に、ズブの素人よりも使い勝手の良い作業員を確保出来るんだぞ?」

「「「「「なる程。」」」」」

自分達の利になるぞと諭し、元親方達も頷く。


(まぁ、コッチとしてもそうしてくれれば、浮浪児達の就職先になる可能性が大きくなるから、コッチにも利になるんだけどね)

ペロッと内心舌を出す。


「それに海の物とも山の物とも判らない奴を徒弟(とてい)(弟子)にして、出来・不出来で一喜一憂せんでも、金を貰いながら出来の良い生徒を、自分の所に引っ張る事も可能だしな。」

「「「「「そりゃ良いな!」」」」」

「そうだろう?

あ、因みにその場合は寄付してくれる所か、薄給で協力してくれる、爺さんの所に優先権が有るから。」

「「「「「汚ねーぞ!それはおい!?」」」」」

総突っ込みをする爺さん達だった。


結局、糜芳側は就職先の斡旋に繋がる利があり、元親方側も作業員と有望株を、ノ一リスクで確保出来る利があるといった、双方に利益になる事を確認して合意し、ちょっと大人の事情(主に金銭面)で揉めたが、正式に契約を締結して、両者ほくほく顔で会談を終えたのであった。


それから数日後・・・


残る施療院の方士(医者)確保の為、幹部会を開いて協議した所、尹幹が意外にも「神医」華陀(かだ)と繋がりがあり、出身は曹操と同郷の豫州沛国だが、現在は此処徐州に移住して活動している事を知り、狂喜乱舞した糜芳は、早速招聘したのであった。


「申し上げます。

方士の華陀先生が見えられました。」


「おお、参られたか!丁重にお迎えする様に!」

東洋医学の偉人に会える事に、霊帝に謁見する時よりも数倍緊張している糜芳。


(おお・・・生きた神医に会える!

来た来た~・・・ん?あれ?なんか遠近感がおかしくなってんのか俺?)

ゴシゴシと目をこすっていると、


「失礼致す。

今を時めく太守様のお召しにより参上仕った、華陀にございます。

以後お見知りおきを。」

()()()()()()()()()()()()()()()が、糜芳の面前で拱手していた。


糜芳感覚で例えれば、中国の有名某山賊グループ名を冠した、才能の欠片も無い強いお弟子さんがいる、日本在住の格闘家超人グループのトップか、鉄分不足なのか、ナイフをペロペロキャンディーの様に舐めるモヒカンがいらっしゃる、世紀末な時代に存在してそうな人物が、目の前に立っている。


某暗殺拳伝承者風に言えば、「お前みたいな爺がいてたまるか!!」であった。


それはさておき、


「こここれはようこそお越しくださいました。

私も貴君の様な偉人に会えて、光栄の極みでございますです、はい。」

想像よりもトリプルアクセル程の食い違いに焦り、鶏の様な返事をしてしまう糜芳。


「丁重な挨拶痛み入りまする。

其処な尹幹殿から大まかな事は伺いましたが、施療院を開設して方士を常駐させたいとか。」

「あ、はい、その通りです。

その為にも、是非とも華陀殿のお力添えを頂きたく、ご協力願えませんでしょうか?」

座っても猶見上げる高さの為、首が痛くなる。


「・・・ふ~む。」

顎髭を扱いて考え込む長ろ・・・華陀。


(そう言やこのマッチョ爺さん、何気に結構名誉欲が強くて、名士扱いしてくれない曹操に嫌気が差して、逃げ出したんだっけ?

その辺を突けば、上手く丸め込めるかな?)

前世の記憶を検索し、対策を練る。


「施療院に華陀殿のお弟子さんを常駐させて頂き、治療を施して貰えれば、徐州の軍部・民部の者達が忽ち感謝し、その師である華陀殿を褒め称え敬いましょうね、特に父母を治療して貰った者達は。」

「ふむふむ。」

チラッと華陀の様子を見上げると、先程の難しい顔から、自分が褒め称えられ敬われる姿を想像したのか、かなり緩い顔になっている。


「それにより、華陀殿の名声は徐州を越えて、もしかしたら首都・洛陽におわす、主上の耳にまで入るかも知れませんねぇ。

私如きでさえ、主上の耳に入ってお召しを受けたぐらいですから。」

「ほうほう!」

生きた実例が目の前に居るのと、本人からそれっぽい事を言われ、前のめりに興奮気味の華陀。


「拙い音楽を演奏しただけで、五大夫の官爵をポンとくださった豪気で太っ腹なお方ですから、神医と呼ばれる神技を披露されれば、いとも簡単に五大夫以上の官爵を下賜されるかも知れません。」

「フハハハハ!お任せください太守様!

この華陀、部下を慈しむ太守様の尊い志に、いたく感動致しました!

喜んでご協力しましょうぞ!」

世紀末覇者の如く豪快な笑い声を上げると、バッチリ欲にまみれた目で、協力を受諾する。


(う~ん、悲しいぐらい能力と人間性が反比例している爺さんだなぁ。

まぁ、人間性はともかく腕は確かなんだし、利用出来るモノは徹底的に利用するべし、だしね)

脳内思考をし、


(・・・冷静に考えれば、霊帝の好む才能と全くマッチしてないし、代々皇室に仕えた家でも無く、ポっと出の医者に皇帝が召して命を預ける事など、有り得ないのに気付くだろうに・・・)

神医と呼ばれながらも、未だに主上からのお召しが無い理由に気づいていない事と、未来に曹操がそのポっと出の医者爺さんに命を預ける度量の広さと、そうした事でその辺の士大夫(名士)よりも、余程厚遇していた事に理解が及ばない事に憐れみを覚えつつ、容赦なく使い倒す気満々の糜芳。


「おお、ありがとうございます!華陀殿。

あ、そうそう、私に万一主上のお召しがあった場合、華陀殿の事を()()()()()()お話しようと思うのですが、良かったら治療風景を見せて貰えませんでしょうか?」

「フハハハ!お安いご用ですぞ。

ふ~む・・・其処なご老体、我が輩が貴殿の体の疲れを取って進ぜよう。」

「え?某ですかな?・・・宜しくお願い申す。」

自分以上の爺さんに、爺さん呼ばわりされ指名された梅里軍政官は、釈然としない面持ちで了承する。


「では今より我が輩の施術をご覧あれ。」

ゴキゴキと両指の関節を鳴らす。


「ふむふむ、貴殿は肩凝りと目の疲れが酷いのではないかな?」

「はぁ、年を取って悪くなる一方ですな。」

ペタペタと触診された後、華陀の問診に頷く梅里。


「では早速・・・フン!!」

ゴキリ!!


気合い一閃躊躇無く、梅里軍政官の首を捻る。


「ぐぇ!!?」

短い悲鳴を上げ、力無くドサッと椅子から地面に転がり落ちる。


「ヒィィィ!?梅里軍政官が狼顧(ろうこ)の相(顔が180度背中側に向いている事)になっとるうぅぅぅ!?」

必殺的な按摩屋の如き状態に、悲鳴を上げる糜芳。


そんな糜芳の悲鳴を意に介さず、懐から針を取り出すと、


「肩凝りは終了フン!、次は目じゃな・・・ホイ。」

「・・・!?・・・!!・・・!・・・。」

強制狼顧の相状態をゴキリと戻し、白目を向いて痙攣している梅里軍政官を横に転がして、後頭部を探る様に撫でると右手の拳を握り、拳状のまま中指と薬指の間に針を挟んで、ブスッと躊躇無く静岡県内の都市名の針医の如く刺す。


「梅里軍政官?梅里軍政官!?(おこり)の様に痙攣してないで、返事してくれ!!

梅里軍政官の動きが緩慢になっていっとる・・・。」

恐怖が一周して却って妙に腹が据わり、冷静に現状分析する糜芳。


「ふぅ、如何ですかな我が輩の施術は?」

「・・・・・・。」

にこやかに微笑む世紀末爺と、力無く白目で痙攣して横たわっている、梅里軍政官を無言で見比べ、


「者共、出合え出合えぇぇ!!

梅里軍政官が殺られたぞ!?出合えぇぇ!!」

至極当然の対応を取った糜芳であった。


約15分後、すわ殺人事件と大騒ぎになったが、スッキリした表情で梅里軍政官が復活した為、「紛らわしい行動をするな!」と釘を刺して事は収まった。


そして当たり前の如く、


(絶対に絶対にこの世紀末爺には、外科的な治療は頼まねー!シャレにならんわい!!)

そう固く心に誓ったそうな。

        

                    続く

え~と、作中の裁判に於ける刑罰は、個人的な想像ですので、悪しからず。


これで後は閑話を書いて、この章は終わりにしたいと思います。


とりあえずボ○ビーを前の閑話で書いたので、今度はコ○ンの現状を書こうと思っています。



楽しんで読んで頂ければ嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 華佗が筋骨隆々とは中々の新解釈。 そういえば、史実だと妹が疫病神(劉備)と婚姻するまで残り10年… もう、生まれて5歳くらいなのかな?(輿入れが15歳と仮定)
[一言] 華陀があんな風体だったなんて… 糜芳の今までの逸話と合わせて、本当に『北の柄杓』の名を冠した体操みたいなものが出来そう…
[一言] 医聖 張機さんよんだ方がよくないですかw
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