その4
この物語はフィクションです。
何処かで聞いた事ある団体・場所・人物とは一切関係在りません。
考えるな!感じるんだ!!
・・・あっ、台詞もです。
麋芳の自室
「芳、入りますよ。」
涼やかな声がすると、母の糜香が部屋に入って来た。
色々と将来について考えていたら、それなりに時間が経って居た様で、心配して様子を見に来てくれたようだ。
(うわ、凄い美人!前世でもなかなかお目にかからないレベルじゃん。・・・チッ、あのオークめ羨ましい、妬ましい!)
謂われの無い嫉妬の念をオーク(実父)に送りつつ、今世の母にみとれる。
麋芳の記憶によれば、母の麋香は父の第2夫人で、第1夫人亡き後(兄麋竺の実母で、どうやら自分とは異母兄弟の様だ)、麋家の奥を取り仕切っている女性で、年齢は前世の自分より少し若いぐらい、切れ長な面差しに艶やかなストレートの黒髪、そして何より出る所は出て、引っ込んで要る所は引っ込んでいるナイスなばでーであり、服の上からでもはっきりと分かる大きな胸が自己主張している。
「芳、貴方は木登りをしていて、足を滑らせて墜ちた時に、頭を打って意識を失って気絶していたのだけど、大丈夫?」
心配げに近づくと糜芳のすぐ横に腰掛けて、ペタペタと無遠慮に糜芳の手足を触る。
「どう?何処か痛い所はない?手の指や足の指はちゃんと動く?」
Гひ、ひゃい大丈夫だぁ、です、母上。」
母と頭では分かっていても、中身は前世の優人の意識のままであり、成熟した美女の無遠慮なボディタッチにどぎまぎしてしまい、往年のバ〇殿様が十八番の芸人みたいな返事をしてしまう。
「?、そう。それなら良いんだけど・・・。
芳、貴方には色々言わなくてはならない事があります。
寝ころんでないで、ちゃんと座って聞く姿勢になりなさい。」
先程までの心配げにしていた母親の表情から打って変わって、眉間に皺を寄せて厳しい教育ママさんの表情になる。
「ア、はい母上。」
何故か非常に逆らい難い思いに駆られて、無意識にビシッと正座してしまう。
「よろしい。
さて芳、貴方ももうすぐ10歳になります。
いい加減やんちゃを控えて、もう少し落ち着きを持ちなさい云々・・・。」
(うへ~、何時の時代も何処の国でも母親ってもんは変わらねーんだなぁ。
前世のがきんちょの時も面倒くさかったけど、大人になっても同じなんだな~。
しかし、今9歳か・・・後何年ぐらい執行猶予(劉備と関わる時間)があるんだ?それによって大分予定が変化するな)
神妙な顔で母親の有り難い説教を左右に聞き流して、必要な情報を1つ得ることが出来て内心で喜ぶ。
糜香の説教という名の愚痴を適当に聞き流していると、どうやら元の糜芳は余り勉強が好きでは無かった様で、ちょくちょくすっぽかしてサボっていたみたいだ。
それに加えて兄糜竺に比べて出来が悪いことで余計に心配している様だ。
(まぁ、ゲームのステータス通りの能力値なら、凡人クラスの武力に天才バカ○ン以下の最悪のその他の能力値だからなぁ、そら心配になるわな、ハハ・・・泣きたい・・・)
自身がそのバカ○ン以下の最悪のステータスを持つ人物になっている事を思い出し、泣きそうになる。
「ちょっと聞いているの?芳!さっきから上の空で生返事ばかりじゃないの!?」
(ア、やべ・・・)
適当に聞き流しているのがバレてしまい、糜香の眉間にますます皺が寄り危険域に達する。
「貴方という人は!」
「失礼します。奥様、芳様。」
激高して怒鳴ろうとした絶妙なタイミングで中年の使用人が部屋の外から声を掛けて来た。
「何用ですか!」
「はい、奥様。
竺様が芳様の見舞いをしたいとおっしゃっておりまして、伺っても良いかどうかを確認しにきた次第です。」
糜香の怒声にびくともせずに、淡々と用件を告げる。中々の胆力の持ち主である。
「え、竺殿が・・・い、何時でも良いと伝えなさい。」
「承知しました。」
糜香の返事を聞いて退出する中年の使用人。
その直後糜香は、
シュババババッッッ!!!
という擬音が聞こえてきそうな速さで、身支度を素早く調える。
(うぉ、速!流石に手慣れたモンだなって・・・あの~、母上?口紅をつけるのは解るんだけど、ナンカ胸元が開いてません?さっきまでぴったり閉まっていたよね。
ママさん?胸のメロンがこぼれ落ちそうなんですけど、ねぇちょっと。
お~い、ママン?何故にそんなにソワソワしてんの?義理の息子が来るだけだろ?)
貞淑な母から、色気ムンムンの女性にという実母の変貌ぶりに戸惑っていると、
「失礼します義母上。
大丈夫かい?見舞いに来たよ、芳。」
涼やかな声がして優しげな眼差しをした、キラキラと後光が差しているような、ジャニー○系の美男子=糜竺が部屋に入って来た。
(うぉぉぉ、イケメンだ!って親父に全然似てねぇ!遺伝子がストライキ(?)をしたのか、突然変異かなんかか?まさかあのオーク父のツラと図体で、劣性遺伝子な訳ないだろうし・・・。
髪の色ぐらいしか共通点が見当たらないんだけど?)
兄糜竺と父糜董のツラを比べて余りの似て無さに、世の神秘を観た思いの糜芳。
「まぁ、よく来て下さいました、竺殿。」
浮かれたような声音で、糜竺に微笑む母に糜芳はもしかして実母と異母兄の昼ドラか?嘘だろ!?と疑ったが、糜竺にそんな素振りも無く、母が一方的に熱を上げているだけの様だ。
(う~ん。母上もなんて言うか、推しのアイドルを前に浮かれてはしゃいでいる、熱心なファンみたいな感じだな。
良かった~、目の前で母と兄の昼ドラ展開は洒落にならねーから)
思わず気がぬけてポツリと呟いた。
「全く、いい歳をしてナアブラァァァ!?」
瞬間、右頬に激しい衝撃と鋭い痛みが走り、思わずのけぞった。
「うん?どうしたの芳。
いくら竺殿が見舞いに来てくれて嬉しいのは解るんだけど、はしゃぎすぎよ。・・・滅。」
糜芳の方に顔を向けて殺意の波動を出しながら微笑む母、糜香。
Гも、申し訳ありません!お許しを母上様!!」
震えながら土下座する糜芳であった。
この物語は、女性へのタブーを犯して制裁を受ける、愚かな男の物語である。
続く。
え~と、母糜香、兄糜竺の登場回です。
一応ですが、糜香は異性として糜竺を意識している訳では無く、あくまで一生懸命頑張る弟分的アイドルの糜竺の大ファンなだけですので・・・。
長々とすみません。
楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。
優しい評価をお願いします。