その9
この物語はフィクションです。
実在する、した人物・地名・組織・団体とは無関係であります。
優しい感想といいねをしてくださり、誠にありがとうございます!
今話は分割した分の残りです。
何とか週内に書けましたので投稿しました。
それではどうぞ。
反乱軍本陣・韓遂幕舎
此処韓遂の幕舎では異民族達は参加しない、地方軍閥だけで現状確認を行う軍議が定期的に行われており、今現在その軍議の真っ最中であった。
「さて、相変わらず董卓軍は動きなし、膠着状態が続いている。
とりあえず我々も無理に動く状態でなく、悪党の尖兵たる官軍の将校がジレて暴発、此方にやってくるのを待つばかりだ。
お主等から何か連絡事項や報告はあるか?」
青年から中年に差し掛かるぐらいの男=韓遂が、軍駒が置かれたテーブルを囲む様に座っている、同じ地方軍閥の頭領で同志である面々を見渡す。
武勇一辺倒の脳筋タイプが殆どの涼州軍閥に於いて、韓遂は非常に貴重な知略タイプの頭領として一目置かれており、今回の反乱の発起人でもあった為、反乱軍のトップとして祭り上げられていた。
韓遂は反乱を計画する段階で、知り合いを通じて羌・匈奴にそれぞれ、
「涼州では略奪しても旨味があまりないだろう?
どうだ、司隷方面に略奪しに行ってみないか?
彼処なら食糧は掃いて捨てる程豊富で、煌びやかな武具、美しい女人を奪い放題だぞ?
良かったら私が案内するからどうだ?」
言葉巧みに甘言を弄して味方に引き入れ、1万弱しかいなかった反乱軍を、3万弱まで増強させたりとなかなかの知恵者であった。
因みにこの韓遂さん、若い頃学問を学ぶ為洛陽に遊学した事があり、その時に中央の腐敗政治とその原因である、名家・宦官の悪行を目の当たりにし、
「自分の父祖や今も涼州の同胞が、身命を賭して護国の任を全うしている影で、国家を壟断して私利私欲に走るとは腐れ者め・・・許せん!!」
激しく両派閥を憎悪して帰郷、年月を掛けて同志を募って今回の反乱を企てたのが後に判明。
※情報提供・浮屠教信者さんより。
つまり、反乱軍が立てた大義名分は掛け値なしのガチであり、韓遂は憂国の志を持つ革命戦士であった。
それはさておき、
「では俺から。
最近羌族や匈奴の離脱が相次いでいて、百人規模の中堅部族が1番多いな。
1つ1つは小さいが、数が多くて無視できん状態になっているぞ。」
「具体的な総数はどれくらいだ?」
「はっきりとは言えんが、大凡四~五千人規模ぐらいになっていると思う。」
「「「「なっ!?そんなにか!?」」」」
韓遂と頭領の話を聴いて、浮き足立つ他の頭領達。
「落ち着け皆。
最終的にはあやつらは、我々の身代わりにして始末する積もりなのだから、細かい手間が省けたと思えば何の問題もないだろう?」
バッと手を上げて、冷静に頭領達の動揺を鎮め、
「それに我らの数が減ったと知れば、腐れ者の狗達が益々吠えたかって、誘引し易くなるしな。」
ニヤリと獰猛な笑みを浮かべて鼓舞する。
「うむ、確かにな。」
「然り、然り。」
元々単純な性格の人間が多い為か、瞬く間に動揺が収まっていく。
(ふぅ、静まったか。
正直五千近くの離脱は痛いが、後々の事を考えれば一概に悪いとも言えん。まだ許容範囲内だ)
一息ついて、冷静沈着に分析していると、
ダダダダッッッッ!!
「申し上げます!!」
伝令が転がる様に駆け込んで来た。
「何事だ?」
「はっ!一大事に御座います!
突如として董卓軍の中に、敵軍総司令の皇甫嵩の将旗(○○都督とかの、将軍が其処に存在する証明の旗)と「皇甫」の軍旗が掲げられました!!
それを目撃した兵達に動揺が走っております!」
「なにぃ!?と言うことは、今皇甫嵩が目の前に来ているのか!?」
「恐らくは・・・。」
韓遂の剣幕に、たじろぎながら予測を述べる伝令。
(どういう事だ?
皇甫嵩の将旗を使って、董卓が我々を挑発している?
いやしかし、虚報ではなく本当だったら?
何の為にそんな目立つ行動をするんだ?
・・・駄目じゃ、サッパリ判らんわ!)
ぐるぐると椅子の周りを回って、思考する。
「伝令!」
「はっ。」
「急ぎ董卓軍に潜らせている間蝶に繋ぎを取り、詳細な情報を漏らさず聴いて参れ!急げ!!」
「ははっ!」
指示を受けた伝令が走っていく。
(まともに情報が無い状態の予想・予測は危険だ。
皇甫嵩が例え目の前にいたとしても、我々の動きは変わらん。
とりあえず頭の隅に置いて、後報を待とう)
椅子に座って腕を組み、瞑目して後報を待つ姿勢をとり、頭領達の騒ぎをシャットアウトする。
約半刻後・・・
「申し上げます!」
「おう、待ちかねたぞ!どうであった!?」
「はっ、それが・・・。」
「それが?」
「はっ、皇甫嵩が董卓軍を接収!そのまま董卓軍の指揮をとり、董卓軍を本隊として本陣を定める旨を、諸将の前で宣言しました!!」
「「「「「はぁっっ!?」」」」」
余りにも荒唐無稽な情報に、その場にいた全員が絶叫の声を上げた。
糜芳の策謀その1・「官軍が本隊だと、足手纏いで不利になるんだったら、董卓軍を本隊にすれば良いじゃない」が発動。
この策謀により、韓遂が官軍を蹴散らしても無意味になり、反面董卓軍は足手纏いの制約から解放され、尚且つ自軍に有利な地形を選定して、現状対陣しているので、兵数差以外は優位に立つ事となった。
因みにこの提案をした時、皇甫嵩と孫堅が韓遂と同じリアクションをして、
「幾ら何でも無茶苦茶だ!官軍なら漢に所属する上司と部下の関係だから可能だが、董卓殿の軍は代々の董家の子飼い、つまり主君と家臣の間柄だから、自分の家臣団を、言わば統帥権を他人に移譲しろと言っているのと同義だぞ!?
そんな事させれば誰だって謀反を起こすし、董卓殿の家臣が反乱を起こすぞ!?正気か糜芳殿!!」
唾を飛ばして、糜芳に詰め寄った。
「糜芳殿、それは本当に言っているのか?名目上か?」
「無論、名目上です。
実際はそのまま董卓将軍が、軍の統率・指揮をする事になります。」
当事者である董卓は冷静に質問し、糜芳も冷静に説明を返す。
「なる程、そうすればウチの軍を本隊扱いに出来て、後方のボンボン達が分隊になるから、ボンボン達を気にせず、ウチの軍だけで決着を着けても良いって事だよなぁ?糜芳殿。」
ニッコリと、晴れやかな笑みを浮かべる董卓。
「ええ、その通りですね。
皇甫嵩将軍閣下自ら指揮を執って戦うわけですから、官軍の誰もケチを付けれないでしょうし。
それに後方の歩兵分隊が万一勝手な行動で全滅しても、局地的な敗北になるだけですから。」
糜芳もにっこりと微笑み返す。
「「あ!?」」
2人の会話を聞いて皇甫嵩と孫堅は、統帥権を除けば利点が多く有る事に気付き、声を上げた。
「確かにな。
皇甫嵩将軍、ワシは糜芳殿の策に賛成しますぞ。
遠慮無く我が軍の指揮を執って貰いたい。」
「しかし・・・名目上とは言え良いのか?」
「良いもクソも、このままだと官軍の敗北に巻き込まれて、我が軍も損害を被る事になり申す。
それに比べたら、遥かにマシでしょう。」
手を左右に振って、笑顔で答える董卓。
「・・・承知した。
遠慮無く貴軍を借り受け申す・・・忝い。」
「お願い申す。
部下達には、ワシから周知を徹底しますので。」
お互いに拱手して、作戦開始となったのであった。
しかし、そんな遠謀を知らない韓遂達は、
「信じられん!!自分の手持ちの軍勢を、他人に任せるなど狂気の沙汰だぞ!?」
「気でも触れたのか董卓は!?」
「もしや急病で倒れたのでは?」
「それなら筆頭家臣の者が、代理として軍を率いるのが本筋だろう。」
余りの横紙破りな話に、混乱を来していた。
「落ち着けやオドレ等!!
伝令!董卓はどがいなっとんじゃい?
接収された董卓軍の様子はどがいじゃ!?」
混乱している面々を、大声で叱り飛ばして董卓軍の様子を確認する。
(そがいな無茶な人事したら、混乱を起こすの必然。
こりゃあ先制攻撃の好機か!?)
思ってもみない好機に、胸躍らす韓遂だが、
「は、董卓はそのまま副将の位置になり、平静そのものとか。
又、董卓軍も混乱も動揺も観られず、普段と変わらない状態とのことです。」
「なに?それは本当か?」
「は、間違いありません。」
「・・・そうか、ご苦労。」
期待はずれな返答に、ガックリ座り込んだ。
「あ、後、皇甫嵩が後方の官軍に、此方に集結する様に伝令を飛ばした模様。」
そう言い残して伝令が退出していく。
「どうする韓遂?増援が来る前に董卓軍を叩くか?」
「いや、増援が合流するのを待とう。
正面から董卓軍を叩くより、合流した狗共を先に叩いて壊乱させれば、自然と恐怖が伝播して潰走するだろうから、そちらを狙う。」
実際にたった1隊が、敵軍の攻撃を受けて敗走しただけで、全軍に伝播して兵が逃げ散って、潰走した実例が在るように、韓遂はそれを目論んでいた。
(そちらの方が、我らの被害も少なくなるだろうしな)
脳内で損得勘定を弾く。
「では、狗共が到着次第やるのか?」
「ああ、此方から攻撃を仕掛ける。
狗共の配置次第で、此方も配置変更する必要が有るが、基本的な行動は変わらん。」
卓上に置いてある地形図に軍駒を置いていき、諸将に念押しをしていく。
「董卓軍を約半分で牽制・釘付けにし、残りで狗共を騎射と突撃で陣形をズタズタにして混乱状態に陥れて、董卓軍の方に逃げる様に追い立てれば・・・。」
「内部で渋滞・衝突して壊乱状態になる訳か。」
「その通り。
後は潰走する連中を追撃して、長安に雪崩れ込めば洛陽は目前だ。」
韓遂の言葉に、諸将から歓声が上がった。
(ふん、皇甫嵩め。まだ董卓軍単独の方が余程勝ち目があるだろうに・・・。
わざわざ足手纏いを呼んで、己の首を絞めるとは愚かな事を。
同郷故に気が引けるが、腐れ者共の手先になった以上は、覚悟して貰うぞ)
暗い決意を固める韓遂。
皇甫嵩自身は第3勢力の何進に所属していて、名家・宦官とは無関係なのだが、地方に居る為に情報伝達の遅れ・錯綜・偏見があり、思いっきり誤解されているのであった。
「とりあえずは無用な戦闘は避けて、後日やってくる狗共との戦に備えて、英気を養っていてくれ。
但し、警戒は怠らない様に頼むぞ。」
「「「「応!!」」」」
「俺の方は羌と匈奴にも伝達しておくぞ。」
「ああ、頼む。」
こうして軍議が終わり、来たるべき決戦に備えて各自が自陣に戻って、自軍にも伝達していったのだった。
そして2日後・・・
「どういう事だ!?何故いきなり撤退するんだ!?」
急いで陣払いをしている、大規模で参陣していた異民族達の中の大人(部族の部将クラス)を捕まえて、大声で猛抗議する韓遂。
「貴様ニハ貴様ノ都合ガアルヨウニ、我々ニモ我々ノ都合ガアルノダ。
看過デキヌ問題ガ、領地デ発生シテイル可能性ガアル為、撤退サセテ貰ウ。」
韓遂の猛抗議も意に介さず、淡々と告げる大人。
糜芳の策謀その2・「中規模の部族を丸め込んだ事を大規模の部族にワザとリーク、しかも大規模部族の領地・財産を襲撃・強奪を唆した事も添えて」が発動。
これにより、反乱軍に残っていた異民族達に動揺と不安感が走り、それと共に遠征な為に、自部族領地との連絡もマトモに取れないので、刻一刻と焦燥感が募り始めた所に、「後方の官軍到着まで待機」という伝達が来た為、見切りを付けて撤退を決断したのであった。
因みにこの裏工作を仕掛ける際に糜芳は、牛輔には変わらず董卓の名で帰順工作をさせ、別の人に皇甫嵩の名で離間工作を仕掛けさせている。
そうした理由としては、董卓の異民族に対するコネクション(人脈)はかなり広く深いモノを持ち、そのコネクションで異民族との戦闘が、回避された事も在るほどであったので、異民族達との関係性が破綻しない様に、配慮した為であった。
まぁ、実際はそうする事で牛輔を、「善意の第3者」に仕立て上げ、「偶々立場上、皇甫嵩の悪辣な離間策を知った」体で、交流の有る異民族にリークさせて、一定の信憑性を持たすことが真の狙いだったが。
二重の裏工作と牛輔の、「此処は危険だ!(悪辣なガキによって)どうなるか解らんぞ!?」という、真剣な表情で誠心誠意を込めた説得の結果、異民族達は次々と撤退。
韓遂が甘言を弄して集めた軍勢が、一夜にもならずに消失、元の木阿弥に戻ってしまったのであった。
「・・・・・・・・・。」
とある悪辣少年の策謀により、「兵共の夢の跡地」と化した異民族達の陣地跡を、茫然自失状態で見つめる韓遂。
しかし、彼の不幸は留まる事を知らなかった・・・
「殿~!大変です!!」
「今度は一体何なんだ!?」
伝令の明らかに悪い知らせに逆ギレする男、韓遂。
「はい、頭領の○△が敵軍に内応!
周辺の頭領達の陣屋に火矢を放って、離反しました!
現在あちこちに火が飛び火し、消火活動中です!!」
「なぁ~にい~!?」
伝令の報告を聞いて、少し離れた自軍の陣地が有る方角を見ると、幾筋かの狼煙の様な煙が上がっている。
糜芳の策謀その3・「敵内部に離間工作を仕掛ける時は、節操の無い奴よりも、安定を求める奴が狙い目だよね」が発動。
因みに糜芳がそう言うと、3将から「え、何で?」と問われたので、
「節操の無い奴って味方からも、鵜の目鷹の目で警戒されている事が多いので、何時でも対処出来る配置に置かれたりして、内応させても失敗に終わる可能性が高いですし、味方に付けても信用が出来ないから、対応に苦慮しますよね?」
至極一般論を述べる。
「「「まぁ、確かに。」」」
コクコクと頷く3将。
「その点安定を求める奴って、自勢力が敵勢力よりも優勢な場合は、ほぼ裏切らないから安心なんですけど、逆に劣勢になると安定・安泰を求めて、意外と寝返る奴が居るんすよ。」
自分自身がモロにそ~いうタイプなので、自信満々な表情で雄弁に語る、今現在切実に安定・安泰を求めている男、糜芳。
「それでですね、まぁ「安泰男」とでも呼びましょうか、その安泰男を離間工作をする時は、必ず「保険」を提示すると効果抜群です。」
「「「保険?」」」
「ええ、そうです保険です。
内容は、「自勢力が優位な時は内応しなくても良い、劣位になった時に内応してくれたので構わない」と言ったモノですね。」
「う~ん、そんなので良いのか?」
孫堅が半信半疑な表情で、首を傾げる。
「まぁ後は立場や地位の安泰を保証したり、何らかの見返りを提示すれば良しでしょうか。
トドメに、「他の奴にも言っているから、無理な強制はしない」と言っておけば猶良しですね。」
「いや、それじゃあ結局内応しないのでは?」
意味ねーだろ、と董卓が半眼で糜芳を見つめる。
「ところがどっこい、無論優位な時には無視されますけど、劣位になった途端その言葉が鎌首をもたげて来て、「他の奴に先んじて内応した方が恩恵が大きいのでは?」と率先して動くんですよコレが。」
「フ~ム、儂には理解が出来ん・・・。」
理解不能と頭を振る皇甫嵩。
「まぁまぁ、騙されたと思って試してみてください。
駄目で元々、上手くいけば御の字なんですから。」
「確かにそりゃそーだが・・・。
まぁ、やるだけやってみるか・・・。」
糜芳の離間策を全く信用していない、と言った態度の董卓は、ダメ元で工作を仕掛けるのであった。
そして韓遂が、伝令から敵に内応した頭領の話を聴いて、伝令の襟首を掴んでガックンガックンしていた少し後に、董卓に糜芳の条件に当てはまり、工作を施した頭領が此方に寝返った一報を聴くなり、猛ダッシュをかまして本陣に転がみ込む様に辿り着くと、
「○△が内応した!糜芳殿の条件で工作した○△が此方に寝返ったぁ!!」
大声で叫び、
「「・・・嘘だろ、神算鬼謀かよ・・・。」」
皇甫嵩・孫堅は、「ヤッパリそうだよな」とウンウン頷いている糜芳の方に目線を向け、怖れ戦くのであった。
それはさておき、
慌てて自陣に戻った韓遂は、火災による混乱を収める為に、精力的に彼方此方を駆けずり回って慰撫に努め、東奔西走していたが、
「申し上げます!」
「今度はなんじゃい!?」
「敵軍が攻め込んで来ましたぁ!!」
「そりゃそうだわな畜生!!俺でもこの状態だったらそうするわいなクソッタレ!!」
怒鳴りながら、そりゃそうだと納得する。
「・・・・・・コレまでか・・・各頭領に伝令!
再起を期して撤退せよと伝えよ!急げぇ!!
撤退じゃあ!!皆の者引けー!引けー!!」
最早立て直しは不可能と即座に判断した韓遂は、大声で撤退命令を告げた後、一目散に駆け出したのであった。
撤退していく反乱軍を観た董卓軍は、当然追撃を開始し、異民族達が逃げたと思しきルートに1隊と、韓遂を追撃する1隊の、2手に別れて追撃を行う。
糜芳の策謀その4・「涼州特有の面倒くささは、余所者の孫堅に押し付ける」が発動。
これにより、孫堅は自軍五百人程の将から、一時的に万を越す一軍の将軍に出世、韓遂を追撃する1隊を率いる事になった。(99%が董卓軍)
そんな孫堅に課せられた任務は・・・韓遂達反乱を起こした地方軍閥を、出来るだけ無傷で逃がす事、である。
何故そうなったかと言うと・・・
「え~、次に董卓将軍の離間工作が成功して、反乱軍が敗走した場合の話をしたいと思います。」
「「「うむ。」」」
頷く3将。
「え~、僕としては、異民族追撃については、「皇甫」の軍旗を掲げた、異民族に面が割れていない董卓軍の部将にして貰い徹底的に追撃、後々の災いを減らす為にも出来る限り討ち取るべきだと思います。」
「「「異議なし。」」」
これも頷く3将。
「え~、そして韓遂達の追撃については、「孫」の軍旗を掲げて孫堅将軍自らド派手な格好で、自分の存在をこれでもかと誇示して貰いながら、てきと~に追撃。
後々の災いを減らす為にも、絶対に韓遂達を討ち取らない様にして貰います。」
「「異議なし!」」
「有るに決まってんでしょうが!?
何考えているんですか?アンタ等は!!」
糜芳達の会話を聴いて、猛然と反対する孫堅。
3人から、「これだから余所者は・・・解ってね~な~」といった表情をされる。
「ちょい待ち、糜芳君も余所者やん!?
何で涼州民側に平然と居るんよ!?
君もこっち側やろがな!」
「いえ、僕は理解しているので・・・。」
「え?理解していないの俺だけ?」
衝撃の事実に愕然とする。
「え~と、物凄く端折って言うと、「中央」から派遣されて来た人達を涼州民は、物凄く嫌悪するんです。」
「端折り過ぎて意味分からん!もっと詳しく!」
頭の周りに、クエスチョンマークを幾つも浮かべて糜芳に詳細を強請る。
「え~、後漢が成立して初代州刺史が就任してから、2代目以降今に至るまで、搾取・横領・横暴・狼藉の悪行の限りを尽くした悪徳刺史が代々就任し続けた結果、涼州民は中央から派遣された人達を、非常に嫌悪する様になったのです。」
「それはならない方がおかしいな。」
至極当然と頷く。
「そうですね。
そしてそんなクズが刺史だった為に、マトモな州軍も形成されず、異民族の脅威に晒されている時に、涼州で有力地主だった人達が立ち上がり、自主的に武装化して異民族に対抗し、護国鎮守・地元愛を掲げて戦い続けたのが、今日の涼州軍閥の祖になっているのです。」
「「うむ、けだしその通り。」」
糜芳の解説に、深く感動して頷く2将。
「そういった経緯から、涼州軍閥は涼州民にとって守護者として人気が高いのです。
それを踏まえて、涼州民に人気のある韓遂達涼州軍閥を、嫌悪されている中央軍が討ち取ったとしたら、どうなるでしょうか?」
「ますます中央に嫌悪と怨みが募るな。」
「その通りです。最悪涼州民が、暴動を起こす危険性を助長しかねません。」
韓遂達を討ち取った場合の、問題点を説明する。
「つまり韓遂達は、涼州民の中央に対する怒りや不満の「代弁者」であり、韓遂らを涼州民が支持・援助する事で、涼州民の暴動を抑えている「必要悪」な存在なのです。」
「ふ~む、韓遂達を応援する事で自己満足を満たしているのに、それを排除してしまうと涼州民の怒り・不満の解消先が無くなり、却って大きな騒乱を招きかねない、ということか・・・。」
腕を組んで、首を傾げて分析した孫堅。
(まあ、半分は当て推量だけどね。
けどそうじゃないと、今から馬超の乱まで30年近くにも渡って、ちょいちょい反乱を起こして後漢王朝に指名手配されながらも、生き延びた説明が付かんからな~。
「代弁者」のスタンスをとり続けてたから、韓遂は涼州民に受け入れられて、「私戦」で乱を起こした馬超は、結局涼州民に拒絶され、石を持って追われた訳だ)
脳内思考する。
「う~ん、なる程なぁ・・・ん?じゃあ韓遂と戦っている、董卓将軍は涼州民に非難されるのでは?」
「それが涼州のややこしい所でして。
心情的には韓遂を支持しつつも、常に異民族の脅威に晒される環境から尚武、つまり武人気質な性質を涼州民は持っているので、愚直なまでに後漢に忠義を貫く董卓将軍も、理性的に認められているんですよ。
董卓将軍はね。」
糜芳の発言を聞いて、頭を掻きながら照れ笑いをする董卓。
「おいおい何や、やんちゃい(面倒くさい)こっちゃなぁ・・・ホンマにや。
ちゅうことは、反乱を起こす程中央に恨み辛みを持っとりつつ、中央に一定の忠義心も持っとるちゅうこっちゃなんか?」
「そうなりますねぇ。」
相反する2つの性質を持つ涼州民気質を知って、「やんちゃいな!ホンマに!」と地元方言で、ガリガリ頭を掻いていた。
実際に、長年の悪政の積み重ねで熟成された涼州民気質には、曹操も非常に手こずったらしく、190年代後半には長安を制圧し、涼州軍閥との関わりが深かった鍾繇を常駐させて、涼州支配を目指したが中々進まず、211~212年に発生した馬超の乱を平定して、漸く実行支配に至ったのであった。
袁家を倒して、河北四州(并・青・冀・幽)を実行支配するのに、約5年で成功しているのに対し、涼州一州に10年以上も掛かっているのを比べると、どれだけ涼州がややこしい所か良く解る。
それはさておき、
「・・・と言うわけで、韓遂達涼州軍閥を討ち取っちゃうと、どれだけ厄介かご理解頂けましたか?」
「ああ、クソ厄介なのは理解した。
・・・しかし、それなら別に皇甫嵩将軍が、韓遂達を追撃しても問題ないのでは無いか?
正直俺は少勢しか持っていないし、正規軍と言えない立場の者だぞ?」
孫堅が糜芳に疑問をぶつける。
「いや、あのですね、皇甫嵩将軍閣下が韓遂達を追撃しちゃうと、非っ常~に不味いんですよ・・・。」
「何が不味いんだ?」
「皇甫嵩将軍、と言うよりは、皇甫家が涼州に於いて社会的に死にます。わりかしマジで。」
「はぁ!?何でやねん?」
思ってもみなかった解答に、驚愕する。
「先述しましたけど、董卓将軍は未だ良いんですよ。
涼州軍閥の一員として戦っておりますから。
けど、皇甫嵩将軍閣下の立場は何でしたっけ?」
「ナニってそりゃあ、中央軍である官軍の総司令官って・・・ああ!?」
皇甫嵩の立場を思い出し、素っ頓狂な声を上げて漸く理解に至った孫堅。
「解りましたか?
涼州民からすれば皇甫嵩将軍は、「腐れ者の飼い犬に成り下がった同郷の恥曝しで、しかも自分達の代弁者の韓遂達を殺そうとする、同郷人の風上にも置けないクソ野郎」と誤解されているんです。
その上で、韓遂達を追撃なんぞしたら・・・。」
「うわぁ・・・シャレにならんわそれ・・・。」
自分の身に置き換えて想像し、顔を青くしてブルリと背筋を震わせる。
糜芳達の会話を聴いていた皇甫嵩は、ガバッと熊面をゴツい両手で覆い、
「うう・・・何で儂がこんな目に・・・。
一族からは非難囂々やわ、部下達からは突き上げを喰うし、同郷人は冷たい視線で見よるし・・・。
儂はただただ、漢朝に尽くしているだけなんやけどなぁ。」
自分の取り巻く現状に耐えきれなくなったのか、めそめそと泣き始めた。
(どう考えても、今回の討伐騒ぎの最大の被害者だよな~、皇甫嵩将軍。可哀想に・・・)
流石の糜芳も同情を禁じ得なかった。
「そ~いう訳ですので、皇甫嵩将軍直属でなく、外部かつ余所者の孫堅将軍が、適任者な訳です。」
「それはそうかも知れんが、それって俺が涼州民の恨みを買うよな?それはちょっと・・・。」
尚も逡巡する孫堅だったが、
ガシッ、
「オウ、孫堅。
オドレ洛陽の件(貴人(糜芳)誘拐事件=死刑相当)は、儂の胸三寸で決まるのは、よぉ~に判っとるよのう?」
涙を流しながら血走った目で、「承知せえへんかったら、オノレも道連れにしたる」と、皇甫嵩にギリギリと万力の力で、肩を握られながら鞭を提示され、
ガシッ、
「そがい(そんな)な心配せんでもええやろが。
適当に殺った異民族の首(手柄)を、ちゃ~んとなんぼか都合つけちゃるけんな?安心してお勤めせいや。」
タダ働きではなく手柄を譲ると、優しくもう片方の肩を揉まれながら、董卓に飴を提示され、
ゲシッ、
「おい、兄やん?「はい」か「承知」か「了解」しか選択肢ないん、よぉ~に解っとるよなぁ?」
背後からは孫静の殺意と蹴りに晒された孫堅は、
「・・・謹んでお受け致します。」
そう答えるしか、術はなかった・・・。
こうして、韓遂達涼州軍閥の追撃任務を喜んで(?)請け負った孫堅は、
董卓軍プロデュースに依る、「僕達涼州民が考えた、中央のクソ野郎が身に着けてそうな軍袍(軍装)」といったコンセプトの、一昔前に年末の紅白で、ド派手な衣装をしていた某歌手の如く、ゴテゴテと装飾品を身に着けて、
「我こそは江東の孫堅文台なり!!
中央に刃向かう鼠族共め!皇甫嵩将軍閣下は謀反人とはいえ、同郷人の貴様等を討つ事に躊躇なさっておいでたが、俺は余所者故容赦せんぞ!?覚悟せよ!!」
さり気なく皇甫嵩をフォローしつつ、「自分は腐れ者共の飼い犬で御座い」と大声でアピールし、順調に涼州民のヘイトを買い、皇甫嵩に向けてのヘイトを逸らす事に成功。
とりあえず皇甫嵩及び皇甫家は、最悪の事態(故郷から夜逃げ)からは避けられたのだった。
そして、てきと~に追撃して、ほぼ無傷で韓遂達を逃す任務も、当たり前に全うしたのであった。
こうして韓遂達が起こした、一連の反乱騒ぎはひとまず鎮静化し、何時でも再起可能な韓遂達を放っておいて、任務完了としたのであった。
糜芳の策謀その5・「3者3様ならぬ、3恨3報の計」が発動。
これにより、皇甫嵩は異民族から恨みを買いつつ、韓遂達を討ち取れなかった為、任務失敗を問う進退伺いを上奏し、今までの功績を勘案されたのと何進の擁護も有って、討伐任務から外されただけの、実質無罪と涼州から離れる事に成功。
皇甫嵩にとってこの上のない、報奨を得たのであった。
そして董卓は、手柄をかっさらわれた中央軍に恨みを買いつつ、多数の異民族の大人を討ち取った事が、皇甫嵩から上奏され、新たな官爵と将軍位を報奨として得た。
最後に孫堅も、涼州民から恨みを買いつつ、韓遂の部下武将数人と、数人の異民族の大人を討ち取った事を、皇甫嵩と董卓の連名で上奏され、民爵から官爵に格上げされたのと、官位を得て名実共に名士となる名誉を得たのであった。
3者共が活動拠点から離れた人達に恨みを買ったが、離れ過ぎて全く実害がなく、それでいてしっかりと報奨は貰っていて、3者共がハッピーな結末だった。
その策謀を聴いた3将軍は、震え上がっていたが。
「いや~、漸く洛陽に戻れるわ・・・ううホントに。
都会にいくと碌な事がねぇ、サッサと徐州に帰ろ。」
半泣きで帰京するのを喜ぶ糜芳。
こうして、とある悪辣な少年の策謀に拠って、反乱騒ぎが沈静化し、表面上弱体化した韓遂達の面倒くさい後始末を、手柄・功績に貪欲なアホ共に押し付けて皇甫嵩と共に帰京する、とある悪辣な少年であった。
因みにだが、アホ共の討伐軍にしっかりと組み込まれた孫堅は、
「あ、あの紅い巾はアイツだ!
おのれ~、腐れ者の威を借る狐めが許せん!!」
しっかりと韓遂達涼州軍閥に覚えられ、「紅狐」となんとなくお湯を注ぎたくなるような渾名を付けられ、目の敵にされて集中攻撃を受ける羽目になったそうな。
そのおかげで孫堅軍は、江南ではずば抜けた騎馬技術と、対騎馬戦の経験と実戦経験を豊富に積んだ、精鋭集団と変貌を遂げたのは、余談である。
続く
え~と、とりあえず後1~2話でこの話を終えて、徐州の日常パートに戻る予定でおります。
補足ですが、韓遂達涼州軍閥が涼州民の代弁者云々は、私の予想でありますので悪しからず。
そう言う風にしないと、個人的に韓遂が生き延びた事に説明がつかないので・・・。
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