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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
48/111

その8

この物語はフィクションです。


実際に実在する人物・地名・団体・組織とは一切の関係はありません。


読んでくださっている方々へ


え~、前話に於いて前後書きを書くのを忘れてしまい、申し訳ありませんでした。

平に御容赦を・・・。


誤字脱字報告及び感想ありがとうございます!


そして遅筆な事はごめんなさい。


長くなりすぎて、分割しました。


残りの話は出来れば、今週中に投稿したいと思っております。


         涼州董卓軍陣中幕舎


「あ~大儀(たいぎ)ぃ(面倒くさい)のお、なんでワシがこがいな(こんな)大儀ぃ事せにゃあならんのよ。

こがいな大儀ぃ事は、大概総大将の皇甫嵩殿がする事やろーに・・・。」

長年の戦場暮らしで鍛えられた、横にも縦にもがっしりとした固太りの中年男が、1人卓上に記された簡易版の地形図と、軍駒が置かれた戦地図を眺めながら、疲れの滲み出た声で呟いた。


その直後に、バッと幕舎の入り口の垂れ幕を捲って、


「董卓のオヤッさん、只今戻りましたぜ!って、うおっちゃあ!?」

30代前後の将校らしき男が無遠慮に入って来て、中年男を董卓のオヤッさんと呼んだ瞬間、将校の目の前にブンと竹簡が飛んできて、慌てて回避する。


牛輔(ぎゅうほ)・・・テメェ幾ら娘婿でも、公私の区別をキチンとつけろと、何遍(なんべん)も言っているよなぁオイコラ?」

「はっ、失礼致しました殿!

只今任務を終え、帰還した次第であります!」

姿勢を正し、「相変わらず、妙な所が細かいよなぁ、オヤッさんは」と内心愚痴りつつも、主君兼義父の董卓に拱手する牛輔。


「おう、ご苦労。・・・で、首尾はどうだった?」

「残念ながら・・・(かんば)しく有りません。

此方の帰順の提案に応じるのは、少数かつ小部族の者のみでした。」

肩を(すく)め、消沈した声で答えた。


「チッ、駄目か。

あ~あ、涼州の董卓の名も堕ちたもんだな。」

「いや、堕ちたのは名声では無く、今回の討伐に於ける立場ですから、やむなしかと。

過去の総大将だった時と今の1指揮官では、信用保証の度合いが段違いですので、これ以上は難しく今が限度でしょうな。」

自嘲気味に嘆く董卓を慰めつつも、これ以上の裏工作は無駄だと釘を刺す牛輔。


「そうか・・・。」

「一応伺うのですが、皇甫嵩将軍閣下に相談は?」

「出来る分けねーだろが。

そんな事してみろよ、皇甫嵩殿が必死になって抑えている、中央のボンボン将校共がいきり立って、青臭え大義を掲げて暴走するのがオチだろうな。」

「あ~それで、「正義は我に~」とか、「国家万民の為~」とか言って、ノコノコ鈍亀が巣穴から出ていって、狼に徹底的に食い散らかされる訳ですか。」

董卓の話を聞いて、牛輔はさもありなんと理解した。


「ああ、国家万民の我々をしっかり巻き込んでな。」

「良い迷惑ですね。」

「全くだ。我がの勝手で身を滅ぼすのは、それこそ勝手だが、人の勝手で犠牲になるこっちゃは、たまったもんじゃねーよ。」

グシグシと頭を掻き愚痴る。


「それに、韓遂共を討伐したらハイお終い、万事解決と本気で思ってんのか?ボンボン共は。」

「思っているから、積極策を唱えているのでしょう?地方の事情を理解していないボンボン達は、気楽極楽で羨ましい限りですなぁ。」

「本当になぁ。」

両者共に中央(官軍)将校をディスりながら、ため息をついた。


そして会話が途切れた時に、


「申し上げます。」

伝令が幕舎に入って来る。


「おう、どうした?何ぞ緊急事態が出来(しゅったい)したか?」

「は、いえ。孫堅軍に派遣している軍監から、連絡が来まして・・・。」

「うん?江東の青瓢箪が、何ぞ事を起こしたのか?」

遥か遠方からやって来た、赤い巾を被った若僧を思い浮かべる。


「いえ、そうではなく・・・。

どうやら極秘裏に、孫堅陣営に皇甫嵩将軍閣下が訪れているらしく。」

「なに!?皇甫嵩将軍が?ワシに先触れもせずに、極秘裏に孫堅の下を訪れているだと。

詳細は聞いておらんのか?」

「はっ、訪れた理由も一切不明で、いきなり来たといった体の模様です。」

「ふ~む・・・。」

伝令の報告を聞き、顎に指を当ててアレコレと、脳内であらゆる事情を考察する董卓。


まさか軍監も董卓も孫堅が連れて来た子供が結構なⅤⅠРで、洛陽で誘拐事件の騒ぎになっており、詰問の使者が皇甫嵩の下に来て、自分の部下がやらかした事情を聞いて、びっくり仰天した皇甫嵩が慌てて飛んで来たとは、夢にも思わないのであった。


それはさておき、


「おい、皇甫嵩将軍閣下は、大勢部下を引き連れて来ているのか?」

「いえ、1~2名の側近と50名程の親衛隊程とか。」

「そうか・・・殿、皇甫嵩将軍閣下が来たのなら、相談する絶好の機会なのでは?」

牛輔が横から口を挟み、提案する。


「う~む、そうだな。

大勢のボンボン達の前で言うよりも、よっぽど話がしやすいか。

せめて黙認でも得られれば、御の字だしな。」

「では早速、お供します。」

「ああ、頼む。

伝令!ワシ等は少し陣を離れる故、華雄(かゆう)をワシの陣代に任じ、徐栄(じょえい)を副将に任ずる旨を各自に伝えよ。」

「はは!承知しました!」

伝令に必要事項を伝えると董卓は、牛輔と親衛隊を供に引き連れ、馬を駆って孫堅陣営に急ぐのであった。


         孫堅軍陣中幕舎


「貴公は最早1部隊の隊長に非ず、小と(いえど)も1軍の将なのだから、自覚を以て行動すべし。

貴公の一挙手一投足に、将兵の命・人生が掛かっているのだから、軽挙を慎みなさい。」

「は、申し訳有りません。」

孫堅は孫静の機転なのか、本気でシバいたのか判断に苦しむ勧進帳擬きによって窮地を脱し、実質上無罪放免を得ていたが、流石に全くの何もナシとはいかず、皇甫嵩から厳重注意を受けていた。


(まぁ、良い意味ではフットワークが軽い・機を見るに敏と言えるけど、1歩間違えればご覧の有り様だし、実際に軽率な行動で史実で流れ矢に当たって戦死しちまってるんだから、洒落になんねーよなぁ)

何故か同席させられている糜芳は、皇甫嵩の説教を聞き流しながら、ぼんやりと脳内思考をしていた。


因みに孫静達は孫堅の後ろに控え、「もっと、もっと遠慮無く言ってやって下さい!」とばかりに皇甫嵩に向けて、キラキラした目で訴えている。


どうやら主君の自由奔放な行動に、孫静達部下も手を焼いているようだ。


あーだこーだと皇甫嵩が説教をしていると、


「皇甫嵩将軍閣下失礼します。

申し上げます、董卓将軍がお越しになられました。」 

伝令が董卓来訪を告げる。


「うん?董卓将軍がか?」

「はっ、皇甫嵩将軍閣下が此方に居られるのを知り、挨拶にみえられたとの事です。」

「ふむ、そうか。

では此方に来るように案内してくれ。」

「ははっ、承知しました。」

拱手して、立ち去っていく。


(おお、「後漢の魔王」と呼ばれて、稀代の悪党と悪名を残した、「後漢書」最大の被害者の董卓が来たのか・・・。

観てみたいけど此処に留まる理由もないし、サッサと辞去するか)

皇甫嵩に挨拶して、幕舎からでようとすると、


「いや、糜芳殿は残って貰いたい。

是非とも董卓将軍に紹介をしたいので。」

皇甫嵩に言われ、留め置かれる。


そうして到着を待っていると、外から「失礼する」と渋い声が掛かり、中年のゴツいオッサンと副官らしき青年の男が入って来た。


(ほぇ~、コイツが後漢の魔王か~。

なんかゲームキャラ観たく、ブクブク肥えているんじゃなくて、筋肉で固太りしてる感じだな。

ナニワのヤーさんの親分って雰囲気だわ)

ド派手な意匠のスーツが似合わなそうで似合いそうな、そんなイメージを浮かべる糜芳。


「おお、よくぞ参った董卓将軍。

ささ、此方に座られよ。」

「は、有り難く。え~と・・・其処に居るのは孫堅?か?それと将軍閣下の横に居る童は一体?」

顔が変形している為、孫堅なのか自信が持てずに疑問符を浮かべて首を傾げ、糜芳の存在に至っては純粋に何で子供が居るんだ?と困惑している。


「そうそうそれそれ、董卓将軍、此方は黄巾賊の乱に於いて、私財を売り払って我ら官軍に供出し、又俸禄を全て軍部に寄付した、義人の糜芳殿だ。」

物凄く好意的な紹介をする皇甫嵩。


後ろに控えている孫堅達が、「おお・・・なんと」と声を上げて驚嘆していた。


「ほう!これはこれは・・・噂はかねがね。

お目にかかれて光栄にござる、某は董卓と申す。

以後見知りおきを。」

ドスの利いた笑顔で拱手し、ついでに「プフッ」と忍び笑いをした、牛輔の足をダンッと踏み抜く。


「これはご丁寧に。

皇甫嵩将軍閣下から紹介を受けました、徐州在の糜芳に御座います。

此方こそ、「涼州に董卓在り」と謂われた猛将にお会い出来て光栄で御座います。」

董卓の背後で声無き悲鳴を上げて、片足でケンケンしている牛輔をスルーして、にこやかに拱手を返す。


お互いに好意的な挨拶(?)を交わした後、


「皇甫嵩将軍に御相談したき議が有って、まかり越した次第。聴いて頂けようか?」

単刀直入に切り出した。


「ふむ、用件を聴こう。」

「されば、某が異民族達に帰順工作をする事を、承認してくれとは申さぬ、黙認して貰いたい。」

「いや、それは・・・。」

董卓の話に、渋い顔をして否定的な態度を見せる。


「皇甫嵩将軍の官軍総大将として、面子や立場的に容認し難いのは百も承知。

しかしながら、敵の数が減れば減る程、此方の損害も減るのも道理として、お分かりでしょう。」

「董卓将軍、分かっているのだ儂も。

分かっているのだが・・・察してくれ。」

「察しているからこそ、こうして内密に話せる状況で話しているのです。

無論将軍の名が残らないように致します。」

「しかしな、敵を見逃す行為は・・・。」

「いやいや、物は考えもので・・・。」

董卓と皇甫嵩が、異民族対策についての算段を、丁々発止是か非かで、議論を始めた。


(う~ん、皇甫嵩将軍も個人的には認めたいのだろうけど、()()工作だと利敵行為スレスレだから、立場的にリスクがデカいか・・・)

皇甫嵩の現状を察した糜芳だったが、立場的に助言出来る身分ではないので、そのままやり取りを傍観する事となった筈だったのだが、


「ん?」

気がつくと袖口を孫堅が引っ張り、不思議そうな顔付きで、


「ふむ~糜芳君。両将軍の意見を聴いていると、我ら官軍が反乱軍相手に勝てない、と言っている様に聞こえるのだが、気のせいだろうか?」

思い浮かんだ疑問を、尋ねて来た。


「ええ、その通りですよ?

官軍が反乱軍と正面から対峙した場合、万一にも勝ち目が無いでしょうね。」

「「「「「ええ~~!?」」」」」

あっさりと肯定した糜芳の発言に、孫堅陣営達は悲鳴の様な驚嘆の声を上げた。


ガシッ!!


「ん?」

「「ほう、糜芳殿面白い意見だなぁ?

是非とも我々にも聞かして貰えるかな?」」

にっこりと微笑む両将軍に肩を掴まれた糜芳だった。


そして・・・


「え~、あくまでも個人的な私見を述べさせて頂きますが、あくまでも!私見!!ですからね!?」

軍のツートップの眼前で、うっかり本音をだだ漏れしてしまった結果、何故か講義する羽目になった。


「では、反乱軍有利とする根拠ですが、双方の戦略目的を比較した場合、圧倒的に官軍が不利だからです。

これは両将軍も、認識されておられるところでしょう。」

だよね?と糜芳の問い掛けに、コクリと頷く両名。


先述したが、双方の戦略目的はそれぞれ、


反乱軍・・・異民族グループは、食糧の略奪目的。

韓遂等地方軍閥は、中央名家と宦官誅殺が目的。


官軍・・・異民族及び反乱地方軍閥の討滅が目的。


といった風に、お互いの戦略目的が噛み合っておらず、官軍は最低限一度は戦闘に勝利して、漢帝国健在をアピールする必要が有るのに対し、韓遂等は官軍と戦闘する必要性が、全くと言って良い程無く、官軍が戦闘しようとすれば、韓遂等騎兵主体の反乱軍が有利な地形・条件でなければ、まず戦闘が成立しない状況、つまり常に反乱軍が戦闘の主導権を握る形になる為、かなり不利な条件での戦闘を強いられる事となるのだ。


「と、この様に反乱軍達は、官軍が有利になる条件下では、まず戦闘を避けるでしょう。

しかし官軍側は、城塞に立て篭もって見過ごす訳にもいかず、否が応でも不利な地形と解っていても戦わざるをえず、コレが官軍不利とする根拠の1つです。」

糜芳の説明に、その場に居る全員が頷いた。


「次に不利とする根拠は、まぁ、純粋に双方の兵科の相性が最悪に悪い事です。

いざ戦になれば相手は、騎兵が有利な平坦かつ広域な地形を選択するでしょうから、なおのこと難しいでしょう。」

「う~む、しかし糜芳君。確かに不利な条件下での戦になるかもしれんが、例えば方円の陣形を組んで、先頭は槍や戟で(ふすま)を作って突進を防ぎ、後方から弓や弩で応戦すれば、勝ちの目が有るんじゃないのか?」

糜芳の説明に、孫堅が異見を述べた。


「確かに、並の騎兵なら通じるでしょうけども、反乱軍達は末端の兵士でも、普通に騎射(馬上から矢を射る技術=後漢中央ではかなりの高等技術)が出来ますから、先頭を騎射で崩されてその綻びを突かれると、総崩れになる可能性が高いでしょうね。」

「ふむ~確かに・・・。」

密集陣形故に、綻びると脆い欠点を指摘する。


「最後に3つ目、最前に少し述べましたが、反乱軍達の練度・質が、官軍に比べて桁違いです。

異民族達は部族間の抗争、韓遂等は異民族達の戦闘を年中繰り返している為、戦闘経験も豊富です。」

思考すればする程、あまりの味方の不利さに、ため息が出そうになる糜芳。


「それに比べて官軍は、マトモな騎馬軍団相手の経験は皆無に等しく、実戦経験も非戦闘員で在った農民主体の黄巾賊ぐらいでしょう。

・・・正直、皇甫嵩将軍閣下には申し上げ難いですが、籠城戦ならともかく不利な野戦では、例え3倍の兵力差が有っても、鎧袖一触されるのがオチかと。

ついでに一回の戦闘で決着を着けないと、例え勝っても三々五々に逃げ散られて、機動力の差で再捕捉は不可能になり、討伐失敗になりますし・・・。」

「む、無茶苦茶だ・・・こんな悪条件が幾重にも重なった条件下で、勝てる筈が無い・・・。」

厳しすぎる勝利条件に、程普が愕然と声を震わせた。


ダァァァンッッ!!


糜芳の説明を聴いていた皇甫嵩が、いきなり拳を振り下ろして机を強く叩き、肩を落として俯いた。


「皇甫嵩殿!?」

「口惜しい・・・糜芳殿の説明を聴いても、否定が出来ん!反論が出来ん!

・・・糜芳殿の申す通りだ。ついでに董卓将軍の涼州兵が居なければ、今頃は血気に逸った部下達が、韓遂に釣られて誘引された挙げ句、大敗していた事であろうな。」

「皇甫嵩将軍・・・。」

自嘲気味に呟く皇甫嵩を観て、同情の念を抱く董卓。


「儂とて涼州出身故に、異民族共と韓遂等の精強さは身に沁みて理解しておる。

それと同時に我が軍兵の脆弱さもな・・・。

しかし、しかしな、かと言って部下可愛さに、反乱軍を放置するわけにはいかんのだ。

放って置けば国威が失墜し、益々異民族共が跳梁跋扈し無辜の民衆の被害が拡大してしまう。

例え負けると解っていても、わが国にちょっかいを掛けると痛い目を見る、と知らしめねばならんのだ!

・・・万の兵を犠牲にしたとしてもな・・・。」

皇甫嵩は悲痛な声を上げて、頭を机にゆっくりと載せる。


「それでは皇甫嵩将軍閣下、野戦は董卓将軍の涼州兵に任せて打ち破って貰い、韓遂達が逃げ込んだ城塞を官軍が攻略する、といった役割分担をすれば、宜しいのではないでしょうか?」

孫堅が名案を思い付いたとばかりに提言するが、


「「・・・・・・。」」

董卓・皇甫嵩両名から、「何言ってんだコイツ?」と呆れ顔をされる。


「え~と孫堅将軍、あの~異民族達や韓遂達相手に、「攻城戦」は有り得ません。」

糜芳がやんわりと指摘する。


「へ!?何で??」

「何でって、北方異民族達はそもそも民族生活上、簡易型の幕舎に住居し、季節に応じて移動しながら生活しているので、そもそも「築城」の概念が無く、戦に敗れた場合は四方八方に逃げ散ります。

韓遂等の場合も、自分達騎兵の特性を殺してしまう籠城戦を選ばずに、荒野や草原や砂漠を越えて、ほとぼりが冷めるまで逃走するでしょうね。」

糜芳の解説に、董卓・皇甫嵩と牛輔達副官も、「正しくその通り」とコクコクと頷いていた。


「え?では我ら官軍は、何しに来たのだ?」

「いや~孫堅将軍、その台詞は涼州民ほぼ全員の心情を現した的確な言葉ですねぇ。」

上手い表現をした孫堅を褒め称える。


董卓達涼州民から観れば、適材適所というか適地適兵を無視し、地元軍閥の足を引っ張り、わざわざ負ける為にやって来た足手纏いの厄介者(アホ)であった。


「ついでに言うと足手纏いになるくらいなら、来なくて良いから官軍が消費というか、浪費する分の軍需物資を地方軍閥にくれ、といった所でしょうかねぇ。」

容赦のない追撃を加える糜芳。


「ほんと~にその通り!

いや~糜芳殿は、ワシ等涼州人の事よぉわかっとんのお!余所者と思えんわ。」

「ホントですねぇオヤ・・・え~殿。

こがいにウチ等の心内(こころうち)を理解してくれる余所者なんぞ、そうがいい(そんな滅多(めった))に居らせんですわ。」

董卓・牛輔が喜色満面に「よぉ言ってくれた!」と喝采し、皇甫嵩の年配の副官も涼州出身なのか、「然り、然り」と頷いている。


「・・・オノレ等なぁ。

儂も涼州出身じゃけん(だから)、そりゃあ気持ちもよお解るがのう?

仮にもその官軍総大将の面前で堂々と言うなや!!

気が参ってまう(滅入る)やろが!ちぃと(ちょっと)は遠慮せーやボケが!?」

同郷の面子に囲まれているせいか、額に手を当てながら、方言丸出しで注意する皇甫嵩。

(注意しているだけで、怒っている訳ではありません)


「そがいなもん(そんな事)言われても、ほんまもんの話やけん、しゃあないやん皇甫嵩将軍閣下。」

「公私の分別と、本音と建て前をよおに考え一や言うとんじゃが(言っているだよ)!」

あ~だこ~だと言い合う両将軍を、ポカーンとした表情で見つめる江南の余所者ズ。


(何か俺そっちのけで、言い合い始めちまったみたいだし、しれっとおわらせよう・・・)


「え~これで僕の私見的な意見を終わります。」

両将軍が言い合うのに託けて、サッサと終わりを告げてそそくさと席に戻ろうとすると、


「「ちょい待てや。」」

ガシッと両肩をそれぞれ片方ずつ両将軍に掴まれた。


「いや~糜芳殿、素晴らしい見識をお持ちですな~。

この皇甫嵩驚嘆しましたぞ。」

「左様左様、それ程の分析が出来るとは驚きですな。

それだけの見識・分析が出来るのなら、韓遂共を倒す策謀をお持ちなのではないですかな?」

ガッシリと肩を掴まれたまま、「おうコラ、出し惜しみしてないでサッサと唄わん(喋れ)かいや」と、良い年をしたオッサンズに、笑顔で促(脅)される哀れな少年(?)糜芳。


「ええと、その・・・。」

「何を躊躇しておられるのだ糜芳殿。

今こそ我々に教授した「離間策」を献策する時でありましょうぞ!」

ここぞという所でいらんこと言いの孫堅が、アン○ンマン面で両将軍の面前で言い放った。


(このクソアン○ンマン、いらんこと言いやがって!

後でシバいてジャムを垂れ流しにしてやる!)

心中で孫堅の顔面を赤く染める事を誓う。


「ほう、離間策とな・・・。」

「さぁて糜芳殿、素直に唄ってくれますかいのう?」

董卓がこれ見よがしに、剣の柄を叩く。


「はい!お任せください!それはもうカナリアの如く、インコの如く明朗軽快に(さえず)らせて頂きます!」

鳥並に光り物に弱い糜芳は、即答で唄う事を宣言。


そして孫堅達に話した離間策を、ペラペラと両将軍に説明して、少し改良を加える。


「・・・というわけで離間を仕掛けるのは、中規模の部族が狙い目ですね。」

「ほう、理由は?」

顎に手を当てて、値踏みする様な目つきで皇甫嵩が続きを促した。


「小規模は敵勢力への影響が低いので、対費用効果が薄く、かといって大規模は費用が高くつく割には動きが鈍かったり、渡した食糧を元手に他部族と戦争を起こし、下手すると近隣の勢力を合併して、大勢力になってしまう危険性が高くなるからです。」

「ふ~むなる程、それなりの影響力が有って動きやすく、尚且つ勢力拡大の野心を持ちやすい、半端な勢力を狙い撃ちして悪くとも内輪もめ、良くて共倒れを狙う訳か・・・悪くないな、大規模な部族を丸め込むよりも安上がりだしな。」

コクコク頷いて、ニタリと悪代官の様な笑みを浮かべる董卓。


「このように帰順では無く、離間策とすれば、「謀が多い者は勝ち、少なき者は負ける」と兵法に在るように、立派な謀略・武略ですので、周りから非難される事は無いと思われるのですが、如何でしょうか皇甫嵩将軍閣下?」

「うむ、それなら確かに軍事作戦の一環と言える故、問題無かろう。

・・・良し、董卓将軍。儂の名を使ってどしどし離間策を仕掛けてくれ。

掛かった費用は後で長安から補填する。」

糜芳の策謀を聞いた皇甫嵩は、熟慮した後に利が在ると判断、董卓にゴーサインを出した。


「承知仕った。総大将のお墨付きにたっぷりの食糧、それにあわよくば、領地まで手に入れる好機が在ると言われれば、応じぬ奴の方が珍しかろうな。」

あくどい笑みを浮かべて拱手し、振り返って牛輔に顎をしゃくって「疾くやれ」と指示を出す。


「はは!では早速。失礼します!」

喜び勇んで駆け出して幕舎から、退出していく牛輔を見送りながら、


「さて、これで反乱軍対策の大凡(おおよそ)の目処は立ったな。

最後に離間策で削減した反乱軍を、何処で撃破するのかが問題だな。」

皇甫嵩が問題提起を起こした。


「正しくその通り。

しかしながら官軍の性質上、受け身且つ流動的になるので、此方から場所を選定するのは不可能かと。」

「確かに・・・この難問さえ越えれば、十分勝ち目が有るというのにのう。」

董卓の容赦ない指摘に、溜め息を零して答える。


そして口裏を合わせたかの様に、


「「何か良い作戦有るよな?」」

糜芳に振り向いて、「有ると言え!無かった承知しねえぞ?オイコラ!?」とばかりに、凄みの有る笑顔で圧力を掛けるオッサンズ。


(う~ん、有るには有るんだけど、軍法上どうなんだろう?って代物だからな~。

まっ、駄目なら駄目でオッサン達が判断すんだろうから、言うだけ言ってみっか)

脳内思考して結論を着ける。


「え~と、かなり横紙破りになると思うのですけども・・・。」

自信なさそうに、自分が考えた策謀を説明していく。


「「「なる程、それなら十分勝てるし、我らにも利があるな!」」」

糜芳の策謀を聴いて最終的に3者共が賛同、大まかな所は糜芳の策を採用し、実行される事となったのであった。


                    続く


え~と、本作の涼州事情は、多分こうだったんじゃないかな~という、私の予想と想像ですので悪しからず。


まぁ、歩兵の官軍が、騎兵の涼州軍閥と異民族連合軍に、平地で勝てるとは到底思えないので、結構クソミソに書いていますが・・・。


現代だとだだっ広い平地で、大型バイク集団に徒歩で追いかけて、ケンカするようなモノでしょうし・・・無理だろう!?


某世紀末暗殺拳伝承者か、怪盗紳士3世の運転する車に、走って追い付く某鉄人警部でもない限り無理でしょうねぇ。


長々とすみません。


楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。


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[一言] オッサンたちにモテモテの主人公……… いや~、人気者はおつらいですの~
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