その5
この物語はフィクションです。
実在する人物・地名・組織・団体とは一切の関連性及び関係は有りません。
読んでくださっている、読者の方々へ
毎度評価・感想を頂き、誠にありがとうございます!感謝の念に絶えません。
そして更新が遅れてしまい、誠に申し訳ありませんでした・・・。
前話で書いてあった通り、夏バテでダウンしてしまい、職場にも迷惑を掛けてしまいました。
少しずつ書いてはいたのですが、夏バテで無気力になってしまい、中々進まず申し訳ありませんでした。
皆様も夏バテにはご注意を・・・。
遅れましたが、残暑お見舞い申し上げます。
糜芳邸私室
「う~ん、弱ったな・・・。」
季節は初夏に入り、だんだんと暑さが増している時期に入った今日この頃、糜芳は私室で唸っていた。
(順調に売れて儲かるのは良いんだけど、売却依頼が多過ぎて捌ききれないうえに、父上に相当な負担を掛けさせる状態になっちまってるぞ・・・どうしたもんかね~・・・ウ~ン)
色々と思考する糜芳。
当然糜芳自体は自前の部下を持っておらず、徐州から洛陽までの往来で得た金銭と、購入した穀物類を運んだ際は、往来の方々で宿泊先の家々から人夫と御者や荷馬車を借り、それに糜董から付けて貰った私兵団を分けて、護衛兼監視役に付けて運搬した為、問題なく無事に徐州に戻ってこれた。
(自分の護衛は、聞冬達州兵を抜け目なく利用した)
しかし現状、穀物売却の運搬を糜家商会一本に頼りきりな状態な為に、糜家商会の本来の業務に負担がモロに掛かり、事実上支障を来たし始めていたのである。
じゃあ持って帰った時の様に、人を借りてすれば良いのでは?と思えるかも知れないが、
(無理だよな~。今や金銭よりも穀物類の方が宝石や金隗並みに高価になっちまってるから、持ち逃げされたり横領されかねんし。
私的な売買だから、州兵の移動に便乗する事は出来ても、こっちの都合で動いてくれる筈もないし。
それに売買契約関連の交渉人や、護衛自体がそもそも足りないから、借りても意味ないか。
・・・後は余所の人を借りたら、実情がバレるリスクもあるしな)
はぁ、と溜息を吐く。
この時代には運送屋といった職種は無く(在っても県内ぐらいの限られた地域限定)、自前で御者・護衛・荷馬車を雇用して運用、もしくは自身で運搬するのが常識で、人夫はリーダー以外のある程度の数は、日雇いで雇うのが普通である。
一応公共機関として、「駅」又は「郵」と呼ばれる配達制度が在るには在るのだが、あくまで書簡等の手荷物程度しか扱ってなかった。
(馬や馬車も有るが、公共の理由が無ければ使用不可)
つまり、深刻な人手ではなく人材不足状態に陥ってしまい、糜家商会のリソースが無くなってしまったのである。
(この時代には基礎教育機関がないから、人材育成を1からする事になるから大変だし、雇用も信用問題が有るから、そうホイホイと雇えないしな~)
再び溜息を吐く。
基本的には近代以前は、世界的に縁故採用が標準であり、糜芳みたいに全く面識の無い、大蝉を雇用するのは結構非常識であり、先日糜香にシバかれた後に両親から苦言を呈された程であった。
(でもな~、親族でマトモな人は父上がキッチリ使ってるし、後は俺ぐらいの年の子供か、頭の中が子供の阿呆しか残ってなかったしな・・・。
だがらといって余所の紹介で来た奴も、五十歩百歩で大して変わらんかったし・・・はぁ)
今までに訪れた、自称有能な人材達を思い出して、ガックリと頭を垂れる。
新興官爵家なので、使用人すら1人しか居ない状態だったものだから、先ず親族(戸籍上は元親族)が多数糜董に談判、一応糜董の紹介という体で、下は10代後半から上は40代迄の親族が糜芳の下に訪れた。
とりあえず採用試験として、簡単な四則演算の問題を何問か出したのだが、ものの見事に一問も解けずじまいという惨憺たる有り様だった。
「こりゃ駄目だ・・・つーかよく考えたら四則演算出来るんだったら、とっくに父上が使ってるわな」と即座に不採用を決定、通知して御帰宅を願った。
どうやら縁故で簡単に、家令だの執事だのに成れると思い込んでいたらしく、悉くブーブー文句を垂れて来たので、
「これぐらいの演算が出来ないのに、どうやって収支出納をするつもりなのですか?
又、曲がりなりにも雇われる立場の人が、雇い主になる人に対してとる態度なのですか、それが?
そのような、一般的な礼儀作法も心得ていない人を雇う人がいるはずがないでしょう?
お引き取りください。」
笑顔で理路整然と言葉でフルボッコにして、念の為糜董が派遣していた私兵団に追い立てられ、ぶつくさ罵詈雑言を吐きながら、親族は屋敷から叩き出された。
当然の如く不採用になった親族とその家族が、糜董に抗議をしにいったが、抗議を受けた糜董の対応は、抗議してきた親族とその家族ごと、一族から絶縁+追放という実にエグい処置だった。
糜董から告げられた処置に、茫然自失となってへたり込んだ親族達を、容赦なく私兵団に指示を出して叩き出し、即座に近隣の親族を召集して絶縁した経緯を告げ、絶縁した連中とは親戚付き合いをしないよう通達、遠くにいる親族は書簡で早馬を飛ばして伝達した。
召集された親族の中には、「流石に厳しくしすぎ」とか、「いくら何でも非道なのでは?」といった意見が飛び交ったが、
「君たちは、とんでもない勘違いをしていないか?」
苦言を呈した親族に、厳しい目つきで睨む。
「「「「「勘違い?」」」」」
「ああ、そうだ。」
親族達の疑問符にコクリと頷く糜董。
「糜芳様は、離籍して今や私の次男ではなく、部屋住みでもない、主上より五大夫の官爵を賜った名実共に貴族(中央名家)に名を連ねる御方だ。
それは理解しているな?」
「「「「「ああ、それは無論。」」」」」
糜董の確認の問いに頷く親族達。
「その御貴族様に自身の無能をさらけ出して、半ば強引に紹介を迫った上で、糜芳様に紹介した私に恥を掻かせたばかりか、賤民の分際で親戚面して、暴言を面前で吐いたそうなのだが、そんな愚か者を擁護するのか?お前達は。」
「「「「「・・・・・・。」」」」」
思った以上の阿呆共のやらかしに、唖然とする。
「さて、叔父上。
このような所業を名士・名家の方達にすれば、どうなりましょうや?」
やらかし親族を擁護していた、亡父の弟・叔父に問い掛ける。
「・・・まず間違いなく死刑に処されて、我々一門一族の命脈は絶たれるな・・・。」
「ええ、私も同意見ですね。
それを踏まえて、私の処置に問題有りますか?」
「・・・いや、無い。
儂の早合点であった、スマン。」
処罰者に自分の子と孫が含まれている事に、ガックリと肩を落とす。
「左様ですか・・・ではお前は?」
「はい、叔父上と同じく・・・失礼しました。」
擁護していた従兄弟に問い掛けると、従兄弟も叔父と同じく、自分の兄弟一家が処罰される事実に落胆していた。
不満を顕わにしていた親族連中の抗議を封殺した糜董は、改めて親族連中を見渡した後、
「理解して貰ったようでなにより。
それと、糜芳様の非礼に対するお詫びとして、この度不始末を仕出かした者達に任せていた、田地(田畑)を献上する事とする。」
糜芳に対するお詫びの内容を発表した。
「「「「「えええぇぇぇ!!!???」」」」」
親族一同大声を上げて、
「それは流石に詫びとして、多過ぎでしょう!?」
「幾ら何でもそれは・・・。」
「もっと別の物にされるべきでは・・・?」
擁護の声より倍する抗議の声が上がった。
「君達は先程の叔父上の話を聞いていなかったのか?
一族一門が死罪に値する非礼を仕出かして起きながら、寛容にも赦して頂いているのだぞ?
少なくともやらかした当事者達から、助命の御礼と非礼のお詫びとして、財産を差し出すのは当然の事だろうに・・・それとも君達が連中の肩代わりするか?」
ピーチク騒ぐ親族連中に、半眼で尋ねる。
ブンブンと一斉に首を横に振ったのを観た糜董は、溜息を吐いた。
「とりあえず田地献上が、お詫びとして最低限の提示になると思う。
これ未満だと、「恩知らずの恥知らず」の誹りを世間から受けかねない。
まぁ、大概大丈夫だと思うけど、もしそれ以上の要求があったら、叔父上・従兄弟殿は覚悟して貰うよ。」
「「な、何の?」」
「糜芳様に上乗せ要求があったら、やらかした親族連中と直系の者の首をはねて差し出すから。」
淡々とした口調で、死刑宣告を告げる。
「「そんな馬鹿な!?」」
「馬鹿も何も、本来ならそれが一番手っ取り早くて、一族一門に損害が少ない方法なんだけど?
まだ糜芳様だからこそ、献上ぐらいで済むと思うけど、他の名士・名家だったら問答無用で族滅させられて、土地や財産も根刮ぎ奪われかねないのだよ?
それに比べたら、親族数人・十数人の犠牲で済むのなら、当主として私は躊躇なく実行する。」
「「・・・・・・。」」
糜董の非情とも言える決断に、言葉を失った親族達。
「漸く本当に理解して貰えたみたいだね。
とりあえずやらかした者達は、近日中に住んでいる家から出て行って貰う。
私的な財産は持ち出しを許すが、田地で働いている奴卑や小作人を連れ出すのは禁ずる。
あくまで我が糜家の者達だからね。
そして監視兼督促役を、親しい身内の者に命じ、怠った場合は同類・同罪とみなし、同じく処罰する。
・・・宜しいですね?叔父上・従兄弟殿?」
「「は、はは!」」
糜董の話に震え上がって返事する両名。
「改めて皆に通告するが、竺や糜芳様と違い我々一門は、周囲から名士・名家扱いされようとも、あくまで「賤民」に過ぎない。
今回の件のように、名士・名家と一悶着起こせばあっと言う間に我々は破滅するのだ。
今回はまだ糜芳様だからこそ寛容な内容で済んだが、次回同じように仕出かしたら、問答無用で真っ先に命で贖って貰うから、肝に銘じる様に。」
「「「「「は、はは!肝に銘じます。」」」」」
糜董の勧告・警告に、神妙な面持ちで返答する親族連中であった。
そのまま直ぐに糜芳の元を訪れた糜董は、事の顛末を糜芳に説明し、
「・・・という訳で、ゴメンね芳。
ウチの一族一門が迷惑かけちゃって・・・。」
ペコリと頭を下げる。
「はぁ、それはまぁいいんですけど・・・。
温厚な父上にしては、思い切った処置をなされましたね~、又。」
普段の温厚な父と思えない、非情な処置に驚いた糜芳。
「はぁ・・・まあね。
何も問題起こさず大人しくしていれば、私に談判して紹介を迫ったぐらいなら、見過ごしていたさ。
それなのに、官爵持ちの芳に暴言を吐くような輩を、見逃す事は流石に出来ないよ。」
溜息を付いて、辛そうな面持ちで独白する糜董。
「官爵持ちの芳に食ってかかる愚か者なら、竺相手にも迷惑・一悶着を起こすのは確実だからね。
家の当主として、「次代に後腐れが無いようにしておく」のも当主の務めだから、適切な処置だったとするしかないんだけどね。」
「父上・・・心中お察しします。
まさしく父上の処置は正しいと、僕が保証します。」
温厚篤実な人物に、此処までの処置をさせた阿呆親族共を、内心罵りつつ糜芳は糜董を慰める。
「ありがとう、芳。
君にそう言って貰えると少しは気軽になったよ。」
苦笑しながら、安堵の息を吐く糜董。
「ああ、それでね阿呆親族が管理していた田地を、奴卑や小作人ごと差し出す体で譲るから、キチンと管理して運営するようにね。」
「え~と、それって良いんですか?将来的な兄上の財産を奪う事になるのでは?」
糜董の土地の移譲話しに疑問を呈す。
「いや、逆に遠慮されると此方の立場が悪くなるから、遠慮せずに受け取って欲しい。
もし芳がどうしても気になると言うのなら、竺と裏で話し合って、金銭で買い取る形にすれば良いだろうしね。」
「成る程、左様ですね。」
糜董の答えに納得する。
「とりあえず芳に対する、非礼のお詫びとして土地を差し出す事で弁済したとし、筋を通した事にして、世間様の批評をかわしたいのだよ。
それに芳も官爵持ちになったのだから、土地の1つ2つは持っていないと、格好がつかないだろうし。」
糜芳に諭す様に説明する糜董。
「そんなものなんですか?名家とか名士って。」
「そんなものなんだよ芳。
土地を持って運営して、一家一族の当主として面子を保ち、養ってナンボの人達だから。
地方・中央問わず使用人・奴卑・小作人を抱えて一族を養う事で、甲斐性や財力を誇示して、自分の権力・能力を周囲に喧伝している人が多いからね~。」
しみじみと語る。
(いや、それって職務や立場的に当たり前に行う義務を、当たり前にやって自慢げにしてるだけの、イタイ人なんじゃないの、それ・・・?)
何処に誇示する要素があんの?と首を傾げる糜芳。
現代に例えれば、会社の社長が経営者として、会社の維持・存続に努めているのと同じで、経営者として当然の事をしているだけである。
これが身代を何倍にも大きくしたなら、自慢しても違和感ないし、有能な人物と言えるだろうが。
寧ろ立場ある人が、当たり前の事が出来ない人の事を現代では、「給料ドロボー」と呼んでいる。
(ジャムを塗ったパンのジャ○パンに似た国名の、政治家とか上級官僚とかetc)
それはさておき、
「その理屈で言うと、父上なんかは物凄い有能で、凄い権力者になるんですけど・・・。」
万近い使用人等を抱えて、キチンと維持・管理出来ている糜董を見つめる。
「まぁ、理屈としてはそうなるんだよね~。
私も名士・名家の思考が、イマイチ理解出来ないのだけども、そういう事らしいから。
名士・名家の人達の中には、糜家の百分の一以下の使用人等を抱えていて、満足に運営出来ず借銭塗れの人もいるからね。」
「それ、ホンマもんの給料ドロボーですやん。」
「言い得て妙だね、その単語。
借銭を補填する為に、不正や横領もする不届きな人物もちらほらいるしね。」
「普通にドロボーですやん!?それ・・・。」
呆れ声でツッコむ糜芳。
「本当にね・・・。
芳もそうならない様に気をつけなさい。」
「そりゃなりたくありませんよ、フツウに!!
そうなる前に、土地を売り払います。」
「そういう風に損切り出来れば好いんだけど。
なかなか難しいみたいだから、まぁ頑張って。」
優しく忠告する。
「とりあえずちょっと異常な経緯だけど、生前の財産分与だと思って受け取って欲しい。
万一の時は、香の面倒を頼む事になるしね。」
「父上・・・。」
糜董の思い遣りに感動する糜芳。
「うう、ありがとう御座います父上。
立派な墓所を建てて孝行しますからね!」
「いや、あのさ・・・孝行は生前にするもんなんだけど・・・生きている間にしてくれるかな?」
縁起でもないと、頬をヒクつかせる糜董だった。
こうして実家の糜家から、上級使用人を得る事が出来なかった糜芳だった。
しかし今度は、何処からか聞きつけて他の商家から、郡や州のお偉いさんの紹介状を持って雇用を求めて何人か来たのだが、親族並みか以下の学習力であったのと、バックの実家の力を過信して、舐めた態度を取る阿呆共だった為、纏めて屋敷から叩き出した。
叩き出されたバカ坊達は、己の無能さを棚に上げて泣きつく某主人公の如く、ドラ親父に泣きついたが、ドラ親父はドラ親父で、紹介状を書いてくれた推薦人の名家・名士から「よくも私に恥を掻かせてくれたな、貴様等!」と怒りを買い、取引停止や絶縁をされて経営の危機に陥り、それどころじゃなかった。
結果、何故か糜芳に雇用を求めて来たバカ坊達が、ほぼ同時期に悉く病死、場合によってはドラ親父も一緒に病死したケースも有り、ごくごく限られた範囲で疫病が発生したようである。
そして何故だか、ドラ親若しくは跡を継いだ新商会長が、大金を持参して糜芳に詫びを入れに来て、推薦人との和解の仲立ちを懇願してきた。
糜芳もバカ坊達には含む所があったが、その親兄弟には隔意はなかった為、大金を懐に収めて仲介役を引き受けて執り成しを行い、何故か平身低頭な名士と商家の確執を、鶴の一声で事態を丸く納めたのであった。
こうして騒動を納めた糜芳だったのだが、「糜芳に敵対・不興を買うと破滅(死亡)する」という噂がまことしやかに徐州一帯に広まり、後年揚州(呉)に於いて、悪戯する悪ガキに対して親が「悪さをすると、魏の張遼がやってくるぞ」と脅して戒めたように、徐州に於いて若い子弟(バカ坊)に「阿呆や不孝をしていると、鬼糜芳に推薦状を書くぞ」と脅すと効果覿面、矯正して真面目になる者が続出したそうな。
本人が全く意図せず、預かり知らない所でリアルデスノ○ト扱いをされたのであった。
それはさておき、
親族と商家のバカ坊連中を、無自覚に破滅に追いやった糜芳は、自身がリアルデス○ート扱いされているとは露知らず、バカ坊以降パッタリと雇用希望が来なくなったので、公私共に人材不足に頭を悩ませていた。
(う~ん、何か急に雇用希望者が来なくなったな。
どうせなら即戦力が欲しかったから、ちょっと厳し目にしすぎたか?
かといって最低限の教養と礼儀作法は必須だし。
あれ以上緩くしたなら、その辺の子供を1から教育した方がマシだしなぁ・・・。
いっそのこと三国志の登場人物で、影響が殆ど無さそうな、どマイナーキャラをスカウトするべきか?)
脳内思考をする糜芳。
「あの、旦那様宜しいでしょうか?」
「うん?大蝉どうしたの。」
「旦那様に雇用希望の方が面会に来られたのですが、如何なさいましょう?」
思考していた糜芳に、おずおずと話し掛ける大蝉。
「え!本当に!?」
「はい、恐らく30代前後の方が、複数の添え状(推薦状)を持って、見えられておられます。
今までの方々と違って物腰も丁寧で、礼儀を弁えておられるようです。」
渡された添え状を糜芳に提出しつつ、前々回・前回と違って、わりかし好意的な評価を示す。
「へ~そうなんだ、それは期待出来るね。
じゃあ此方に案内・・・いや、俺自身が出迎えるべきか?う~ん、よし!ヤッパリ俺自身が出迎えようか。
何処にいるの?」
「はい、旦那様の返答を伺うまではと、屋敷の門扉前でお待ちになっておられます。」
「え~と、要するに玄関先だね!じゃあ行こうか。」
「は、はい。あ、その・・・。」
何か言いたげな大蝉を通り越して、期待に胸を膨らませ、スタスタと玄関先に向かう糜芳であった。
糜芳邸玄関先
大蝉の話を聞き期待に胸を膨らませた糜芳は、玄関先に辿り着くと、此方に背を向けた自分よりも頭1つ2つ分背の高い男性と、凡庸な顔立ちの付き人らしき男性を確認する。
「コホン、失礼、貴方が雇用希望の方ですか?
僕がこの屋敷の主で、糜芳家当主・糜芳です。」
まだ雇用関係と言うか主従関係が成立していない為、年長者に対する非礼にならない様、丁寧な言葉遣いで尋ねる。
因みに糜芳家と名乗ったのは、父の糜董と同姓で丸被りするので、区別する為に糜芳は糜芳家、糜董は糜董家と名乗る様にした為である。
(糜竺の場合、糜董家嫡男・糜竺になる)
それはさておき、
糜芳に声を掛けられた件の男性は、クルリと振り向き笑顔を浮かべながら、
「は!左様に御座います!
某、白馬寺の方からの使者を兼ねて参りました笮・「間に合ってます。」
挨拶返しをする男の口上を遮り、バタンと門扉を閉めようとする糜芳。
(オイオイオイ!?ヤバいやん、顔付きがモロにヤーさんor暗殺者やんけ!?
食糧売買の怨恨か?それとも州内の滅亡した元他軍閥の奴らか?
俺自身に辿り着かない様に、気をつけていたんだけど手繰られたか!?急いで私兵団を呼ばないと!!)
必死に門扉を押さえつけながら、策謀・暗躍がバレた事に焦る。
しかし閉め切る寸前で、一昔前の新聞の勧誘員の如く門扉の間に足を挟まれた為、閉め切れなかった。
「ち、ちょっと、いきなり何をなさいますので!?
某の話を聞いて頂きたく!お願いしますから!!」
クレヨンな幼稚園児が通う幼稚園の某園長、或いは「立て、立つんだ!!」の名言を遺したボクシングジムの某会長に似た凶相(顔立ち)を、門扉の隙間に顔を潜り込ませて、懇願する笮何某。
「話もクソも俺を殺りに来たんだろうが!?
大蝉!急いで私兵団を呼んで来て、早く!!」
「いえ、あの・・・どうやって?」
糜芳が必死に閉めようとしている、唯一の出入り口である門扉を指差して、困惑の声を上げる。
「え、殺る?・・・ちち違います!誤解です!
某は白馬寺の使者を兼ねて、雇用希望をしただけですから!!そんな物騒な役目は負ってません!」
ブンブンと門扉に頭を挟まれた状態で、必死に首を横に振って否定する笮何某。
しかし端から観れば、怪獣が身悶えしてブンブンと首を振って暴れている様にしか観えず、より深刻な誤解を招いた。
「白馬寺って洛陽の?浮屠の宗教が何で!?
・・・あ、お経を唱えた事で不興を買ったの俺!?
大蝉、木によじ登って助けを呼んで来てくれ!」
「あの、すいません・・・。
私木登りした事がなくて、出来ません。」
「なんで貧民街で逞しく生きていたのに、妙な所でモヤシっ子なんだよ!?」
「そうです!そのお経の事で住持(住職)が、深く興味関心を示されまして・・・。」
「やっぱり!?ヤバい、ホンマもんの殺し屋だぁ!!助けて~!誰か~!殺される~!?」
「ええ!?だ、旦那様ぁどうしましょう!?」
三者三様でカオス状態に陥り、騒ぎを聞きつけた私兵団が事態の収拾・沈静化するまで、混乱状態が続いたのであった。
糜芳邸客間
「え~と、大変失礼致しました、申し訳ない。」
「いえ、お気になさらず・・・慣れております故。」
糜芳の謝罪に、半泣き状態(多分)で許す笮融。
あれから落ち着いた糜芳は、自ら客間に笮融達を案内して、話を聞くこととなった。
「それで笮融殿と申されましたか?して、浮屠教の使者とは?
後、雇用希望と伺ったのですが?」
「はい最前も申しましたが、本山の白馬寺の指示で糜芳様から、お釈迦様の教えを読経された事の詳細を聞くように仰せつかりまして。」
真っ直ぐに澄んだ目と、厳つい凶相で糜芳を見つめる笮融。
「実は某揚州から徐州にかけて、浮屠布教の教区長を
務めておりまして、それで某に白羽の矢が立って、浮屠教の名代として参りました次第です。」
「成る程、左様でしたか・・・。」
理解したフリをして、適当に頷く糜芳。
(ふつーに般若心経を唱えただけで、何でそんなに気にするんだ白馬寺の坊さん達は?
普段散々読経してんだろうに・・・)
自身のやらかしに全く気づいていない糜芳は、内心首を傾げる。
「え~と、僕は「ゴータマ=シッダールタ」の教えの、基礎的な部分しか知りませんよ?
僕よりも白馬寺の方が、余程詳しいでしょうに。」
「はい?剛玉って誰です?」
「誰って・・・お釈迦様の本名でしょうが。」
「えええぇぇ!?釈迦が本名じゃ無いのですか!?」
素っ頓狂な声を上げて驚いている笮融。
観れば付き人の男性も、目を見開いて驚いていた。
(おいおいこのおっちゃん大丈夫か?
こんな初歩的な俄知識も知らなくて、よく教区長とやらが務まるなぁ。
布教の営業(?)をしている人と、真剣に修行している人との差なのかね~?)
信仰している神様に対する無知さに、内心呆れる。
「釈迦は部族名で、ゴータマは釈迦族の出身ですので、其処からお釈迦様と呼ばれる様になったとか。」
「な、なんとそんな由来が・・・。」
絶句する笮融。
「釈迦こと仏陀は、あ、仏陀と言うのは「目覚めた人・悟りを開いた人」という意味ですね。
話を戻して、仏陀は釈迦族の王子として・・・。」
「ち、ちょっとお待ち下さい!
竹簡と筆をお貸し願えませんでしょうか!?
後で必ず対価をお支払いしますので、何卒!」
「はぁ、其処の棚にあるのでどうぞ。」
現状表向きはプーさんな為、インテリアと化している竹簡と筆を譲る。
「有り難う御座います!
それでは、お釈迦・・・いえゴータマ様関連の、御高説を教授願います。」
文字通り、拝む様に手を合わせて懇願する笮融達。
「御高説って・・・それは良いんですけど、本当に初歩的な話しか知りませんよ?僕は。」
予防線をキチンと張った後、前世で読んだ、マンガの神様が書いた神作品の内容を、うろ覚えの記憶を元に笮融達に話す。
ブッダの生い立ちや出家してからの苦行、悟ってから涅槃(亡くなる)に入るまでといった内容を、かなり大雑把に話していく。
「おお、おおおぉぉぉ・・・・・・。」
大雑把な話に歓喜の声と涙を流しながら、付き人と共に糜芳の話を竹簡に記していく笮融達。
「・・・というぐらいですね、僕が知っているのは。」
「では、糜芳様が読経していたのは・・・。」
「ええ、600巻に及ぶ教えを端折った極一部を抜粋して、節を付けて読んでいるだけです。」
伝えるだけ伝えた糜芳は、漸く解放される事に一息吐いた。
「糜芳様・・・有り難う御座います。
我等浮屠教の失われた教えや、歴史を幾分か取り戻す事が出来そうです。」
「え?失われた教え・歴史?」
涙を流して拝む笮融を尻目に、謎の単語に首を傾げる。
笮融に聞く所に依ると、元々浮屠教は「月氏」(現代読みでは「げっし」と読み、昔の日本で「天竺」と呼ばれる前のインドの呼称)から中国に伝来していく過程で、ブッダの教えや歴史などが、時代の経過と共に伝道者が少なくなりドンドン失伝。
実際に創始者というか、崇めている神様の尊名(本名)すら失伝し、尊称しか残っていない有り様だった。
結果的に遺された古い経典・口伝を基に、補填・補完していく事となったのだが、それが正しいのかどうかも判らず困惑しているのが現状の様だ。
「その様な折りに、失伝した筈のブッダ様の教えを唱える少年が現れた事で、洛陽の白馬寺は大騒ぎとなり、血眼になって捜索した結果、糜芳様を探り当てたのです。
お蔭でブッダ様の正しい教えに近づけました。」
これぞ御仏の導きです、と目を閉じて拝む笮融。
「へ、へ~・・・それはそれは・・・。」
目を逸らし、全身から冷や汗と脂汗を流す糜芳。
(や、ヤベエ・・・やっちまった・・・。
笮融のおっちゃんが知識に疎いんじゃなくて、この時代の浮屠教自体が、失伝して知らなかったんだ。
そら~俺が失伝した教えを知っていたら、坊さん達もビックリ仰天するわいな)
何で此処まで浮屠教が大騒ぎするのか、漸く理解が追いついた糜芳であった。
しかも無意識・無自覚に三蔵法師の功績を、半ば掠め穫ってしまっている。
そもそも糜芳は、物語「西遊記」を字面のまま三蔵法師が、西の天竺に聖地巡礼に(遊びに)行く話と勘違いして覚えていた為、600巻に及ぶ経典が在ることを、日本の名刀「大般若長光」の銘の由来で知ってはいたが、三蔵法師が持ち帰った事は知らなかった・・・質の悪い事に。
「それで糜芳様。
その~・・・何処で我等が失伝していたその教えや、知識を身に付けられたのでしょうか?」
「へ?ああ、え~と、その~、あのですね・・・。」
前世の記憶で知りました!とは言えない糜芳は、しどろもどろになりながら頭をフル回転させ、
「え~と、実はブッダが夢に現れまして、色々と教えてくれたのですが、憶え切れなくてそれを察したブッダが、省略して教えてくれたんです・・・。」
罰当たりかつ、適当な言い訳で誤魔化しに入る。
「なんと、それは誠ですか?
・・・ではブッダ様の御尊顔を拝されたと?」
凶相に疑惑の視線加えて、糜芳を見つめる。
「え、ええそうですけど・・・。」
「ふ~む、ではブッダ様の御尊顔を描けますか?」
「まぁ、それぐらいなら・・・。」
「それでは、描いて頂けませんでしょうか。
一応、某も白馬寺に奉られている、ブッダ様の姿絵を拝した事が有りますから、糜芳様が本当にブッダ様を拝されたのかが判りますので。」
嘘・偽りは許さないとばかりに、目に力を入れる。
笮融に半ば強制的に描かされる羽目になった糜芳だが、前世の記憶を頼りに客間の壁に、大蝉に持ってこさせた木炭で、ブッダというか仏像の絵をちょっと角度を付けて、立体的に見える様に描く。
「ふぅ、出来た。
如何でしょうか笮融殿、これが僕の(前世)記憶にあるブッダの姿絵なんですが・・・。」
「・・・・・・・・・。」
糜芳が問い掛けるも返事は無く、笮融達はただただ滂沱の涙を流しているのみであった・・・暫くすると、
バタァァァン!!
笮融達は急に五体投地(土下座の上位版)を糜芳に対して行い、
「疑う様な言動、誠に申し訳ありません!!
貴方様が夢で会われたのは、正しくブッダ様に相違御座いません!
白馬寺で見た、秘奥の姿絵に瓜二つで御座います。」
五体投地のまま、糜芳の嘘・偽りを肯定する。
・・・体は痛くないのだろうか?
とりあえず五体投地をやめてもらい、元の座った状態に戻って貰ったのだが、
「貴方様こそ正しくブッダ様より遣わされた、我等浮屠教の導き手に相違有りません!!
糜芳様・・・いえ、導師様!」
キラキラと純粋な眼差しで、糜芳に尊崇の念を送る笮融達・・・凶悪な地顔とのギャップが凄まじい。
「ちょっと導師様は大袈裟過ぎるよ・・・。」
「では尊・「オイ、ヤメロ。それはヤバいからマジでやめろ・・・!」
危険な敬称を言いかけた笮融に、真顔でドスの利いた声で制止する糜芳。
「えっと、じゃあ・・・。」
「もう導師で良いですから、さっきのは絶対駄目ですよ?・・・ワカッテイマスヨネ?・・・。」
「はは、承知しました導師様!」
異様な圧力に戦く笮融。
「あの~旦那様?」
客間に入ってから一言も発しなかった大蝉が、恐る恐る糜芳に話しかける。
「うん?何。」
「壁に姿絵?かどうか知りませんけど、落書きしたままだと、大奥様に怒られますよ?」
「あ!確かに・・・大蝉、手当を出すから消しといて貰えるかな?」
「はい、承知しました。」
大蝉の指摘で、糜香にシバかれる未来に背筋を震わせた糜芳は、姿絵の消去を大蝉に依頼する。
シュババババ!!
「お待ち下さい!この浮屠教の秘宝とも云える姿絵を消されると!?何卒、何卒堪忍して下さい!」
糜芳主従の話を聞いた途端素早く姿絵を背にし、両手を広げてバスケの「ディーフェンス」の構えを取り、「この絵を消すのなら、俺達から消せ!」とばかりに必死の形相で抵抗する笮融達。
「いや、それぐらいなら、また描きます・・・。」
「お止め下さい!何卒、何卒!」
「ですから・・・。」
「何卒、何卒!」
「あのね、俺が母上にシバかれるんだよ!?」
「何卒堪忍して下さい!お願いですから!!」
「俺が堪忍して欲しいわい!人の話を聞かんかいや!?オドレらは、コラ!」
頑として聞かない笮融達に、糜芳は容赦のない言葉遣いになっていくのであった。
結局笮融達の必死の嘆願に根負けして残す事になり、ほぼ確実に糜香にシバかれるのが確定した糜芳は、せめてもの腹いせに、
「現在起こっている、黄巾の乱の詳細が知りたい。
その情報が満足いくものだったら残すけど、いかなかったら消去します。」
交換条件を提示して、笮融にもリスクを背負わせた。
とりあえずこれで、浮屠教関連の直接的な話は一区切りつき、今度は雇用に移行する。
「え~では、笮融殿。
当家に雇用を志望するとのことですが、動機は?」
会社の面接官の如く、某司令官スタイル(偏見)で面接を行う糜芳。
「は、実はこれも本山から「浮屠に益になる人物なら身近に侍り、御身を守り助けつつ、教えを乞うべし」と指示が有って志望したのですが、今は導師様こそ仕えるべき御方と確信して、熱望している次第です!」
キラキラと輝いた目で、糜芳を見つめる。
「お、おおう・・・。」
狂信者の目で見られて、たじろぐ糜芳。
(こりゃ~1歩間違えたら、テロリストになるタイプだろうな。
ちょっと危険だけど、俺が浮屠教に反目や教義を余程蔑ろにしない限り、宗教的観念で俺を裏切る事はないだろう・・・多分。
下手に口先で忠義や義理だの言っている連中よりは、余程信用出来そうだな)
脳内で利害得失を計算し、得になると判断する。
「え~では、笮融殿は四則演算は出来ますか?」
「はぁ、それは無論出来ますが・・・。
揚州にある某の実家はそこそこの商家でして、一応跡を継いで商会長になっておりますので。
まぁ、この面構えなので基本的に家人に任せて、表には殆ど出ませんが。」
「採用。執事候補からお願いします。」
笮融の話を聞いて、速断する。
(うぉぉおしゃ~!公私共にピンポイントで適任な人物じゃん、ラッキー!
公的には田地の管理を一任して、私的にはおっちゃんの商会を利用して、裏金作りが出来るぞぉ!)
容赦なく笮融をこき使う積もりの外道、糜芳。
「へ?いきなりそのような厚遇、宜しいので?」
「ええ、それは無論。
いやはや貴殿が僕の下を訪れたのも、正しく御仏の導きですね~。」
「御仏の導き、ですか?」
「ええ、実は・・・。」
笮融に近づき、こそこそ内緒話を装い話し始める。
史実に於いて徐州で起こる虐殺事件を、夢に出てきたブッダから教えて貰った体で、サクセスストーリーを捏造して笮融の信仰心を煽り、天命的な言い方で使命感を奮い立たせ、自分に協力する事が浮屠教にとっても良き事と吹き込んで判断させる、鬼畜で罰当たりな事を平然とする男、糜芳。
(まぁ、仏の嘘は方便って誰かが言ってたし、これで数十万人の命が救われるなら、仏さんも怒ったり文句を言ってくるこたぁねーだろ・・・)
達観した思考をする。
「な、なんと約十年後に・・・?」
「はい、此処徐州で途轍もない災厄が訪れるとの事。
どうか僕と共にその災厄を防ぐのを、手伝って頂きたく・・・お願い出来ますでしょうか?」
浮屠教徒の如く、合掌して懇願する。
「うぉぉおお!!お任せ下さい!
導師様だけでなく、ブッダ様の御告げの手助けが出来ようとは・・・ううぅ・・・。
浮屠教徒冥利に尽きまする・・・うっう。」
捏造話に泣きながら拝礼して、
「糜芳導師様、この笮融身命を賭して、導師様の崇高なる目的の為に手伝う事を、御仏の前で誓います!」
使命感に燃える視線で答えた。
流石に此処まで煽って、命懸けにしてしまった糜芳は少し罪悪感を覚えて、
「穀物売買で得た利益で余剰が有れば、色々な場所の寺院建設費用に流用しても良いですからね?」
浮屠教にも実利が有る様にする。
「なんと其処までお考えとは・・・。
それなら全土に散らばる浮屠教徒の者達も、喜んで導師様の目的に賛同し、某と同じく身命を賭して協力を惜しむ事はないでしょう。」
益々尊崇の念を送る笮融。
結果的に狂信者を増やす事になった糜芳であった。
糜芳邸客間
それから時間が過ぎて10月、執事候補として糜芳に採用された笮融は、身辺整理や黄巾の乱の情報収集、糜家商会から引き継いで、ブッダの御告げの名目で行っている、裏商売の売買ルートの開拓・整備・調整に東奔西走し、暫く姿を見せなかったのだが、漸く黄巾の乱の情報を携えて戻って来た。
「如何ですかな?糜芳導師。
我々浮屠の情報網は、糜芳導師のお役に立てると思うのですが?」
「いや、マジで凄い。怖いぐらい。
マジでお宅等と関わりたくないんだけど・・・。」
真剣に恐怖心を覚える程、まるで観てきたかの様に精密な情報内容に、舌を巻く。
「本当に凄いな浮屠の情報網。
こんな詳細に収集出来るとは思わなかったよ。」
「ええ、まぁ、月氏からこの国に辿り着くまでの間、部族・信仰の迫害や武力的排斥も度々有ったとか。
此処後漢でも少なからず有るので、自然と生き残る為に、周囲・周辺の情報収集・伝達・共有が必須となり、そういう分野に特化した集団が発生した結果ですね。」
驚く糜芳を観て、少し自慢気に種明かしをする笮融。
(ああ、なる程。ユダヤの生存戦略に近いもんか。
情報網を構築する事で、未然に災いを避けたり逃げたりして防ぐ事が出来やすくなるわけか。
イス○エルの情報機関・猛者度も、元々はそういった生存の為の情報網が、母体になってんだろうし)
前世の知識と照らし合わせて、納得する。
「素晴らしいな笮融。
これからも宜しく頼むよ。」
「は、導師に喜んで貰えて恐悦至極。
機関の者もさぞや喜びましょう・・・それでは、満足された様なので約束通り?」
「ああ、姿絵をこのまま残す事にするよ。」
「おお!有り難き幸せ。」
喜色満面に喜ぶ笮融。
「それと此処を客間じゃなくて、「仏間」にして外側に出入り口を設けて、他の浮屠教徒が参拝出来る様に改築するから、他の浮屠教徒さんにも伝えて上げて。後、この仏間の管理一式は笮融に一任するから、防犯とかも宜しくね。」
「おお!おお!其処までして頂けるのですか!?
一切承知しました!お任せ下さい。
早速近隣の教徒達に知らせまする。さぞや喜びましょうぞ!」
目に涙を浮かべて感謝する。
(まぁ、部屋1つで忠誠心や協力を得れるのなら、安いもんだしな、実際)
感謝する笮融を横目に、内心ドス黒い打算を思考する糜芳。
こうして糜芳は、史実では熱心な浮屠教徒では在ったが、主君・陶謙の物資・資産を横流しして得た金で寺院建設を行い、尚且つ立身出世をしながら、裏切り・背信・謀殺の悪逆を繰り返し、「後漢のカンダタ」と呼ばれた笮融を知らずに部下にし、この時代の猛者度と云える国家機関並みの情報網を、無自覚に手に入れたのであった。
そして年末に勅使が訪れて、「年始の挨拶に参内するように」とのお達しを受け1月、留守を笮融に任せて大蝉と糜董から借りて来た李軻をお供に、スッゴく嫌々ながら洛陽に赴いて参内した後、
「誰か~!た~す~け~て~!?」
とある人物に拉致られたのであった。
続く
え~と、補足?です。
次話は洛陽と、書ければ糜芳の初戦場体験を書きたいと思います。
後、拉致ったのは、劉備、曹操とくれば・・・。
(まぁ、キングボ○ビーが本作に登場するのは大分先程ですが)
笮融に於ける「後漢のカンダタ」は、私個人の感想ですので悪しからず。
三国志に出てくるモブキャラの中でも、かなりの凶悪な人物だった様で、初木さんで調べてびっくりしました。
もし興味が有れば調べて見てください・・・ドン引きしますよ、大概の方は。
長々とすみません。
楽しんで読んで頂けたら、本当に嬉しいです。
最後に、優しい評価・感想をお願い致します。




