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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
23/111

その2

この物語はフィクションで演義(創作)です。


実在する人物・地名・組織団体とは一切関係在りません。


また、個人的見解は、一個人の考えであり、その見解を他人に強要したり、共感させる意図はありません。

          糜芳自室・夜


「ふぃ~、疲れた~。」

糜董の執務室で、昇天(気絶)していた糜香を介抱して、部屋に運び込んでベッドに寝かしつけ、一連のドタバタ(手伝い)から解放されて、漸く自室で寛ぐ事が出来た糜芳であった。


因みに糜董と尹幹は、糜香のドタバタの後も執務室に籠もって、婚姻の打ち合わせをしている。


2人の話を聞いていると、糜竺が時の人になった影響で、糜董の同業者や糜竺の上司から見合い・紹介の誘いが増えているらしく、下手なトラブルになる前に、早く結婚してしまおうと焦っているようだ。


つい最近迄は、商家・名家双方が糜竺の微妙な立場を考慮して敬遠気味(商家からすれば、格上として糜竺を遇しなければいけないが、名士としては格下で利益が薄い・名家からすれば糜竺の方が資産はあるが、新参者でバック(家柄・血筋・一族一門)が無いので、政略的に旨味が無い)だったのだが、一躍有名になり、出世しそうだとなるやいなや、積極的にプッシュしてくるのだから、現金なものである。


そういった有象無象の輩の横槍を排除する為、名士でも上位に位置する丁老師に、仲人役を依頼する算段のようだ。

(高位の名士が仲介役(仲人)を務める行事に横槍をすれば、高位の名士の面子に泥を塗る行為になり、敵と認識されて、大概社会的に死亡するから)


元々はもっと早く結婚する予定だったらしいのだが、直前に折り悪く尹幹の妻・尹玲の母が病死、急遽取り止めになってしまった。


その上、尹玲は母の喪に服す事になり、この時代の常識的期間である、凡そ3年(長!)もの間延期していた。


普通ならこの時点で、破談になるのが当たり前なのだが、利害や政略的な縁談で無く、元は親同士が、子供が生まれる前からの約束から始まっている話らしく、両親(りょうおや)が延期を容認し、子供同士も、


「「あの人と一緒になれるなら、待ちます・・・。」」

双方が待つことを選択、どうやら幼い頃からの付き合いの中、互いに意識していた様で、喪が明ける迄待ち続けていたのである。


(しっかし、竺兄はホントに(おとこ)で男前だわ。

そら尹玲さんも惚れてまうのも当然だわな)

糜竺に改めて尊敬の念を覚える。


何故ならこの時代の結婚適齢期的に、糜竺はレッドゾーンに突入しているのにもかかわらず、律儀に尹玲を待ち続けているからである。


この時代の結婚適齢期は男子が20歳未満、女子が18歳未満であり、其れ迄に結婚するのが一般常識で、尹玲は聞いた話だと、現時点で16歳でまぁセーフなのだが、糜竺は丁度20歳。ギリギリアウトである。


この時代に限らず、適齢期を過ぎた人に対する世間の風当たりは強く、 


「身体的な欠陥・素行や人格的な問題があるんじゃないの?」

と疑われ、根も葉もない誹謗中傷を受ける事になる。


(因みにキ○グボンビーこと劉備は、根も葉もある処か花まで咲いている程、ガチで素行に非常に問題があり、地元で結婚出来ずに徐州に入った後に、実態を知らない余所者(陶謙)の仲介で結婚している)


そんな誹謗中傷を表裏に渡って言われても耐え忍び、少なからずあった他の縁談を断り、尹玲を、尹玲だけを一心に見続けているのだ。

まさしく漢で男前と言えよう。


それはさておき、


(う~ん、竺兄や尹玲さんの結婚祝いに贈るプレゼントが思い浮かばね~。どないしょー)

自室に戻った糜芳は、糜竺達新郎新婦に何かプレゼントをしたいと思い、悩んでいた。


親同士が望み、子同士も望んで待ち続けた今回の縁談話を聞いて感動し、何かしらのお祝いをしてあげたい気持ちが大いに湧いたからである。


(う~ん、う~ん・・・駄目だ。

スマホが有れば検索して探せるのに・・・。

ていうか、今の時代にどんな物が現存しているのかも分からんし、有っても意味ないか・・・。

となると、自身で出来るモノになるな・・・う~ん)

うんうん唸り、埒もない事を考えながら、結論に辿り着いた糜芳だったが、自身で出来る事をあれこれ脳内で検索して再び悩む。


(う~ん・・・あ!これならいけるか?え~と、必要な物はと・・・あれとあれを代用すればいけるかな?まぁ、最悪子供のやる事だからでどうにかなるか。

そうなると、母上に協力して貰うのが最適だな。

とりあえず明日お願いしてみるか・・・ファ~ア、安心したら眠たくなっちまった・・・寝よう)

あれこれ思案して、漸く答えを得た糜芳は、安堵して眠りにつくのであった。


           糜香自室


「失礼します、母上。御加減はどうですか?」

朝食時の家族会議で、糜香に話をしようとした糜芳だったが、糜香が出席せずに寝込んでいるのを知って、暇そうにブラブラ屋敷周りをほっつき歩いていた非番の李軻と、糜芳付きの田観を伴って、用事がてら見舞いに糜香の部屋を訪れていた。


因みに糜董と糜竺は丁老師に仲人を頼む為に、2人で丁老師宅に赴いている。


「ブツブツ・・・私のじっくんが・・・私のじっくんが・・・私のじっくんが・・・ブツブツ。」

糜芳のかけ声処か、入室したのにも気付いておらず、壊れた再生機器の様に、繰り返し同じ独り言を虚ろな眼をして、寝台の上で上半身を起こした状態で呟いていた。

・・・正直、ホラーである。


側に付き人の如くはべ)っている徐歌も、どうしたらいいのか分からない様で、困惑している。


同行している李軻、田観もドン引きしていた。


(うわぁおぅ・・・。

熱狂的なファンが、推しアイドルが結婚したらこうなるんかいな?)

普段の快活な母を観ている糜芳は、母の変貌ぶりに驚いたと同時に、


(う~ん、此処まで魅了する、竺兄のイケメン度合いにおのの)くべきか、此処まで熱狂的に入れ込む母上に呆れるべきか・・・悩ましい)

埒もない事を、内心考えていた。


「ブツブツ・・・そうだ、尹玲ちゃんがいなければ・・・そうだ、尹玲ちゃんがいなければ・・・。」

糜芳が脳内思考していた間に、どんどん独り言の内容がデンジャーになり、闇落ちしていっている。


流石にヤバい、と感じた糜芳は慌てて糜香の肩を掴んで揺さぶり、


「ちょっと!?母上、しっかりして下さい!」

自分の方に意識を向けさせる。


「あら?芳、来ていたの?駄目よ、如何に親子と言えど、きちんと一声かけてから入らないと。

ごめんなさいね、今私は尹玲ちゃんを始末する方法を考えるのに忙しいの。

用事が有るなら後で又来てくれる?」

台詞の前半は至極真っ当な事を言っているのに、後半は至極物騒な事を言っている。


「何物騒な事をブツブツ言っているんですか!?

大事な兄上の目出度い慶事でしょ!?義理でも親なんですから、喜んで祝ってあげましょうよ!ね、ね。」

「うう、けど・・・親として祝う気持ちはあるけど、個人的には何か納得がいかないような・・・。」

どうやら親としての感情と、個人的なファンとしての感情がせめぎあっている様だ。


(よし、それなら・・・)


「母上、兄上が義姉上と結婚して、子供が誕生したら、さぞや「兄上にそっくり」の容姿端麗な可愛らしい、兄上がそのまま幼くなった様な子供から、「義祖母おばあ)様~」と笑顔で慕ってくれるでしょうねぇ~。」

糜香にショタ糜竺が見れるぞ、とそそのか)す。

糜竺の面だけを強調し、尹玲の方は敢えて言わない事で、糜香の負の感情を刺激しない様、細心の注意を払っている。


「ハッ!?幼いじっくん?・・・有りね、イケルわ!

あら?私ったらなんて事を・・・。

・・・そうね、そうよね、竺殿の慶事を喜んで祝ってあげなきゃね、親として。

そして尹玲ちゃんには、元気で愛らしいじっくんそっくりの跡継ぎを、産んで貰わなきゃいけないわね。」

「そうですとも、そうですとも。」

多少怪しいが、目に理性の光が戻り、普段の状態に戻りつつある糜香を観て追従する。


(ふぃ~、危ね~危ね~。

危うく陰惨な嫁姑戦争というより、白雪姫の継母以上のモンスターが生まれる所だった)

内心で呟きながら汗を拭い、安堵の息を洩らす。


(う~ん、何か竺兄Jr.に謂われのない迷惑を掛けている気がするけど・・・ま、いいか、竺兄達がどうにかすんだろ、多分)


目先の問題の為に、生まれてもいない糜竺Jr.に糜竺そっくりに生まれて来い、という無茶な要望をかけ、糜香に執着されるという謂われの無い負担を強いる、無責任かつ鬼畜な叔父、糜芳。


「コホン。無事正常(?)に戻られて良かったです。

それで早速ですが、母上に協力をお願いしたい事がありまして・・・是非とも頼みたいのですが。」

「まぁ、私に出来る事なら協力するけど・・・。

それと李軻の持ってる3枚の木盾?と、田観が持ってる木炭みたいな物は、貴方が言っている頼みたい事に関係があるのかしら?」

とんと関連性が結びつかないのか、首を傾げる。


「ええ、大いに。

実は、この度結婚する兄上と尹玲義姉上に、お祝いに絵を描いて贈ろうと思いまして・・・。」

「絵って絵画の事よね?絵を描くのに木盾と木炭で、どうするつもりなの?

と言うか貴方、絵心なんてあったの?」

「はぁ、まぁ多少は・・・嗜む程度ですけど。」

曖昧な返事で糜香の質問に答える。


糜芳の前世である米田優人は、何気に絵が上手く、美術部員でも無いのに美術の成績が結構良かった。

それに加えてガキ馴染みの友人が、不思議と絵心のある奴らばかりで、学生時代の折には暇潰しに漫画の模写をしたり、それぞれが変顔をして写生したりと、わりかし絵を描いていた。


それを昨夜に唸りながら思い出し、「そうだ、絵を描いてプレゼントしよう」と思い付いたのである。


しかし、その為に絵を描く為の画材である紙(画用紙)が、現代では二束三文の代物だが、この時代は超が付くほどの高級品(庶民だと、へたすると生涯目や手に触れる機会が無いくらい)なので、とても糜芳のポケットマネーで買える物ではなかった。


そこで備品倉庫にある、習練や稽古で使用する何の装飾も無い、素っ気ない板状の木盾を、画用紙の代用品として絵を描く事を考えたのである。


そして、前世で絵を描くのに使っていた、シャーペン・鉛筆などといった代物は、完全なオーパーツなので存在自体が無く、代用品として炊事場(台所)にあった、程良く炭化した薪を適度な大きさに削り、鉛筆代わりにしたのであった。


尚、前世やオーパーツ云々の話は端折(はしょ)り、適当に思い付いたと誤魔化しながら説明したが。


「へ~、成る程ね~。

そんなので絵って描けるのね~・・・けど芳、いくら竺殿達に結婚祝いに贈答したいと言っても、落書きみたいな代物を贈るのは承服しかねるわよ?」

糜芳のアイデアに感心しつつも親として、いい加減な作品を贈るのは、認められないと釘を刺す。


「はい、それは無論の事です。

とりあえず、見本を描いてみたので確認して貰い、問題が無ければ兄上達に贈答する事をお許し頂ければ、と思っています。

李軻さん、見本を母上に渡してください。」

「承知しました、芳坊ちゃん。」

糜芳の指示に従い、3枚持っていた木盾の1枚を、糜香に渡す。


普段はなぁなぁ口調で糜芳に接している李軻も、流石にTPOをわきま)えているようで、糜香の前では丁寧口調で接している。


「私の審美眼は厳しいわよ~。

フフ、どれどれ・・・は?何これナニコレェェ!?

で、田観の生き写しが描かれてるじゃないのコレ!?

嘘でしょ?ほ、ほ、芳、貴方が本当に描いたの!?」

渡された木盾に描かれた、田観の人物画のスケッチを観て、糜香は衝撃を受け、ちょっとした言語障害が起こっていた。


(あ~、まぁ、この時代の審美眼なら、さもありなんだよな~)

糜香の驚き振りに、ウンウンと納得する。


この時代の画風(人物画)を分かり易く例えると、ルネッサンス(文芸復興)が興る前の宗教画よりも、ぶさい・・・もとい、へたく・・・じゃなくて、え~と、え~と、そう、抽象的!非常に抽象的な画風なのである。(個人的な感想です)


正直な話、糜董の持っている人物画を観て、


「え?コレ何て名前の妖怪なんだ?

あ、もしかして、鳥獣戯画の元祖というか、元ネタになった奴なのか!?スゲー、鳥獣戯画の元ネタは古代中国が原産なのか!!」

と、真剣に人物画を妖怪画と勘違いし、鳥獣戯画の原画と考えたぐらい、糜香とは正反対のベクトルで衝撃を受けたのであった。(あくまで個人的な感想です)


それはさておき、


「如何でしょうか母上?」

「如何も何も・・・合格だけど、この画風の絵を竺殿達に贈ったら、確実に仰天するわね。

貴方、間違いなく商人じゃなくて、絵師になった方が善いわよ。」

「いえ、絵師の様な博打な職業はちょっと・・・。」

糜香の勧めを、やんわりと断った。


糜芳が絵師=芸術家を博打な職業と思っているのは、前世で前述の通り美術の成績が良かった為、当時厨二病をちょっとわずら)っていたのもあって、芸術家になって有名人に成れるかもと思い込み、ゲーム機をくれたりと、親戚の中で一番仲の良かった母方の伯父さんに、自信満々に話した処、


「ピカソを夢見て、ゴッホを忘れるんじゃない。」

と言われ、存命中の私生活についての両者の対比を懇々と教えられた。


ピカソは芸術家として理想的とも言える、恵まれた円満な生活を送ったのに反比例して、ゴッホは存命中は全く評価されず、身内の仕送りやアルバイトで食いつなぎ、不遇な生涯だった事を指摘した上で、


「芸術家を目指す人達は、大概の人は多分ピカソみたいな、恵まれた人生を夢想するんだろうけど、大概の人はゴッホみたいに、不遇な生活を多分に送る羽目になる事が圧倒的に多いのだから、マジで止めとけ。」

真剣な顔で諭されたからである。


伯父の説教に大いに納得し、厨二病から醒めるきっかけになったのであった。


(芸術家みたいに、実力があっても運や理解者に恵まれなかったり、時代の風潮に合わなくて売れなかったりと、不確定要素がくっそ多い、デッドオアライブな職業に就くのは流石に嫌だ)

根が小心者の糜芳は心中で呟く。


「まぁ、売れるか売れないか、両極端な博打的職業ではあるわね、確かに。」

糜芳の発言に納得して頷き、


「それはともかく、竺殿達にそれぞれの肖像画を描いて贈るのね?」

糜芳に確認を取る。


「いえ、本人ではなくて、両人の亡くなられた母君の肖像画を描こうと思いまして・・・。」

「え、奥様と尹夫人の?」

「はい、両人の母君の顔立ちをご存知であろう母上に聞いた後、結婚式までに描き上げて、式の当日に贈って喜んで貰おうと思い、見舞いがてら母上を訪ねて来たのです。ご協力お願いします。」

ペコリと糜香に頭を下げて、お願いする。


「成る程ね。分かったわ。

竺殿達も喜ぶでしょうから、奥様と尹夫人の肖像画作製に協力しましょう。」

「ありがとうございます!

では、早速兄上の母君の目鼻立ちを云々・・・。」

了承を得た糜芳は、李軻と田観からそれぞれ木盾と木炭を受け取り、顔のパーツを聞きつつ木盾に描き、確認を取りながら肖像画作製をするのであった。


こうして、糜竺達に結婚祝いに贈る贈答品の目処が立ち、良かった良かったと製作作業をしながら喜んでいたのだが、翌日、丁老師に仲人役を頼みに行っていた糜董親子が、糜芳に面倒事を持ち帰って来て、頭を抱える事となるのであった。


                      続く





























                           














え~と、個人的見解の補足をさせて頂きます。


まず、劉備の素行に問題があって、地元で結婚出来なかったについては、地元でヤーさんorギャンさん(ギャング)だったから。(蒼天○路参照)


現代でもヤーさんやギャンさんをお勤め(?)の方に、娘を嫁がせたい親御さんはまず殆ど居ない様に、現代以上に礼法・倫理観・世間体が厳しく、親が結婚相手を決めるのが常識だった古代中国では直のこと居ませんので、劉備が結婚出来なかったのは当然の事ですね。


古代中国の人物画については、昔三国志の人物の中で知名度の高い、数人の人物伝の解説をしている本を読んだ時(タイトルは忘れた)に、その人物毎に古代中国風(多分)の人物のイラストが記載されていたのですが・・・ねぇ。


「え?コレが周瑜??コレじゃあ美周郎じゃなくて、微醜郎やんけ!?」

思わずツッコミを入れてしまう程、そのう・・・あの・・・抽象的なアレだったので・・・。


コホン、長々とすみません。


楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。


優しい評価をお願いします。



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