目が覚めたらいきなり三国時代(その1)
え~と、この作品はフィクションです。
何処かで聞いた事ある団体・組織・個人とは全く関係在りません。
ホンマに関係在りませんからね!
「つ、疲れた・・・」
くたびれた声を出し、古ぼけたアパートのドアに鍵を差し込んで回す。
ガチャンと錠を開くとドアノブを回して引っ張るとキィィと耳障りな音を立ててドアが開き、玄関口にある照明のスイッチを押して靴を脱いで部屋に入る。
「ああ、ようやく休みだ。勤務時間は長く感じるよなぁ~。休憩時間や休日は短いのに・・・」
ぼやきながら部屋の照明をつけて服も脱がずにベットに倒れ込む。
年齢は二十八、高校を卒業して世間に揉まれて約十年、しがない建設会社に所属している一人親方と言う名の個人事業主の下で下っ端として働く、中肉中背、容姿平凡、頭脳ときどき・・・たまに明晰、という絵に描いた様な平平凡凡な快男子こそ俺=米田優人である。女性遍歴は聞かないで欲しい。
「あ、いけね。スマホの充電しなきゃ。」
スマホのバッテリーが切れかけだったのを思い出して充電器の端末を差し込む。
その拍子にスマホを覗くと午後七時前。
「お、ぼちぼちイベントの時間だな。」
最近たまたま見つけた三国志系のスマホゲームに俺はハマっている。
マニアというほど詳しい訳ではないが、元々歴史が好きではあったので、母方の叔父から貰った家庭用ゲーム機で歴史シュミレーションゲーム(信長の欲望シリーズ、散国志シリーズなど)を嗜んでおり、それなりの知識は持っていた。
「ヤベェ、眠くてたまらねー。・・ΖΖzz。」
仕事疲れから来る眠気に勝てず、イベントミッションをこなしている間に寝落ちしてしまった。
??????
「うっ、痛・・・うん?何処だ、ここ?」
目が覚めると同時に頭に鈍い痛みが走り、思わず顔をしかめる。
何気なく周囲を見回すと、見た事もない広く豪奢な部屋のベット?の上にいた。
「え、マジでここ何処?」
三十前にしては舌っ足らずな幼い声を上げ、思わず目に付いた自分の小さな手を見て驚く。
状況判断ができずに混乱していると、「失礼します、芳様」と七夕の織姫みたいなコスプレ(?)をした女性(恐らく二十前後)が、控えめな声とともに静かに入ってきた。
「「・・・・・・・・・・・・!?」」
関西風に言えば素が入った、関東風に言えば天使が通った状態でお互いに無言で見つめ合う。
「あの・・・」
「旦那様一!!芳様が目覚められましたー!旦那様一!!」
「待ってー・・・」くださーいと言う間も無く、入って来たのとは正反対に大声を上げて、お姉さんは、バタバタと走り去って行った。
話し掛ける間もなく出て行ったお姉さんを呆然と見送り、念のためキョロキョロ見回し、自分以外に誰もいないのを確認する。
「・・・俺のことを芳様て呼んでたな。ウッ!?アイタタタ!」
「芳」という名前を認識した途端に鋭い痛みが頭に走り、米田優人としての記憶や知識とは別の、全く知らない記憶と知識が脳内に入ってきた。
「ウウ・・・ウゲェ」
酷い偏頭痛に襲われ、視界がぐるぐる回り、意識が混濁する。
「ハァ、ハァ、・・・ふう」
時が経つにつれ、徐々に頭痛が収まり、意識も明瞭になっていく。
脳内意識の統合化がされたのか、自分以外の記憶や知識が自分の常識として認知される。
「え~と、ここは中国大陸の漢という国で、漢の国に幾つかある州の一つ、徐州で、東海郡てとこだな」
そして、頭の中に出てくる知識や記憶を確認していく。
「んでもって、俺んちの家名(名字)は「糜」で、俺の名前は「芳」だから、合わせて「糜芳」だな。んん?アレ?」
記憶の隅っこの方でナニかに引っ掛かり、言い知れぬ不安感に襲われる。
「(汗)・・・え、え~と、家族構成は、父ちゃんが董、母ちゃんが香で、兄貴が竺・・・アレレのレ??」
徐州出身で兄が麋竺で自分が麋芳・・・え~と、ハハハ・・・マッカーサーじゃない。まさかねぇ~偶然だよね?ね?!
石を振りかぶって投げれば中国人に当たる(錯乱中)って言われるぐらい人口が多い国だから、一千億人(多過ぎ)ぐらいいたら、たまたま同姓同名の兄弟がいたって不思議じゃないよね(願望)!?
漠然とした不安が、確信的なものに変わるのを自覚し、ダラダラと冷や汗が流れる。
「まだだ、まだ終わらんよ!」
何処かで聞いたことがある台詞を叫んで自分を叱咤激励していると、
ドスドスドス!!ドスドスドス!!
地響きのような重い足音が近づいてくる。
「ん?何だ?」
謎の音に首を傾げる。
「芳!大丈夫なのか!?芳!」
大きな声を上げて大柄な中年の男性が入って来た。
顔を見て父と判断すると同時に優人の認識で、ある人物が浮かび上がった。
「ええ~!?た、鷹○ブゥ!!?」
この物語は三国志のユダに転生したあげく、伝説のコメディアン(フィクションです)の一人、元祖デブキャラ(フィクションです)に瓜二つな父を持つという二重苦を背負う、悲しい男の物語である。
続く。
続けて投稿させて貰いました。
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