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糜芳andあふた~  作者: いいいよかん
15/111

その4

この物語は演義(フィクション)です。


実在する、もしくはした人物・組織・団体・制度政策とは一切関係ありません。

         丁老師宅講堂


「諸君、今から糜芳君が言う事は、私も全面的に同意した事であり、彼の話は私が言ったと同じだと思って聞いて欲しい。

さぁ、糜芳君、説明を此処にいる諸君にしてくれるか?」

老師の話を聞いてザワザワと招待客の人達がざわめいた。


(オイ、ジジイ!これ以上持ち上げるのは止めろ!頼むから。

プレッシャーが半端ないから!・・・うう、胃が痛いよう、胃が・・・)


丁老師の紹介を受けた糜芳は、丁老師の新しい学問所の落成式に招待された、大勢のオッサン達(名士連中)の前に立ち、ナポレオンの如く、胃の辺りを手で押さえた状態で説明を始める。


「え~、私の考案した屯田制とは、端的に言うと田畑を新しく開拓、開墾しましょうという事何ですが・・・。」

糜芳が説明を始めると、「フッ」とか「なんだよそんな事か」と、失笑や落胆の声が密やかに流れる。


糜芳に提案されるまでもなく、豪族や地主達によって当たり前に行われている事で、わざわざ人に披露する様な話ではないからだ。


(まぁ、これを聞いただけだと大した事の無い、平凡な提案だけど、ここからが肝要かつ重大な話なんだよな・・・当たりであってくれよ頼むから!)


「それでですね、今回の政策に必要不可欠な事がありまして・・・。 

この中に軍部に属している方はいらっしゃいますか?いらっしゃれば私の前に集まって頂きたいのですが。」


糜芳に言われて、20~30人ぐらいの招待客の中から5人が麋芳の前にやってきて、そのまま着席した。


(う~ん、5人の内3人はガチムチの体格から見て、部隊を統率する武官だろう。

残りの2人は線が細いから参謀か、軍政官(食糧・武器等の軍需物資の調達、輸送を手配し、後方支援を主な任務とする軍属の人。また、軍の法律である軍法を司り、軍内部の犯罪者を裁く軍法官でもある)かな?

丁老師が狙って呼んだのか、たまたまなのかは分からんけども、こりゃあ都合がいいな)


「コホン、貴殿の要望通り、我ら5人は軍属の者だが何用かな?今の話を聞く限り我々にはあまり関係なさそうだが。」

じっと見ている糜芳に、居心地が悪そうに咳払いをして、5人の内、武官で一番年長者らしき人が代表して糜芳に話を促す。


「ああ、失礼しました。

私の提案する屯田制には、軍屯と民屯の大きく2つの策に分かれていまして、その内の軍屯は軍部の協力が不可欠でして・・・。」

「ほぉ、軍屯とな・・・まさか我々軍部に剣では無く、鋤や鍬を振って田畑を耕して欲しい、と言うのではあるまいな?」

糜芳の説明に何となく事情を察した代表者の武官が、剣呑な雰囲気を出して問い掛ける。


「おお、ご明察です。ご協力お願い出来ますか?」

「な、な、なにぃ!?貴様ぁ!」

「ふざけるな!我々軍人に百姓の真似事をしろとぬかすのかぁ!!」

あっけらかんと肯定する糜芳に、代表者の後ろに控えていた2人の若い武官が激昂し、立ち上がって剣の柄に手をかける。


「・・・落ち着け。

糜芳とやら、本気で言っているのか?冗談では済まされんぞ。」

激昂する若い武官を腕を伸ばして制し、殺気立った怒りの感情を見せて糜芳に問う。


「はい、本気です、といっても軍部に在籍する、もしくはしていた傷病兵や、その遺族の人達が主な対象と考えていますけどね。」

「「「「「傷病兵達だと!?」」」」」

糜芳の意外な提案に驚く軍属の人達。


傷病兵というのは、呼んで字の如く戦闘により負傷し、手足の欠損等の障害、精神的・後遺症による病気を抱えて、満足に軍務を果たせなくなった兵士の事である。


基本的に軍務を果たせなくなった傷病兵は、前線部隊から外れ、大概後方支援(補給)部隊に回されるのが普通である。

只、傷病兵自身に伝手やコネがある場合はその限りでは無く、退役して別の仕事に就く事も珍しく無い。


(まぁ、そういう人達は一応軍部に所属していて食っていけるし、伝手やコネがある人達も同様だから未だましだろうけどね。今回はそういう人達以外の人達が目的なんだけど)


「そうです。特に募集を掛けたいのは、現在軍部に所属している傷病兵の人達では無く、運悪く軍に残れなかった傷病兵の人達や、伝手やコネが無く、軍務で夫や親が亡くなり、困窮している遺族の人達です。」

「なんと・・・本気なのか?何故その様な事をするのだ?」

糜芳の話に、軍部の代表者が呆けた表情で質問する。


(そりゃあなぁ、そういう後が無い人達だと死に物狂いで働いてくれるだろうし、帰る所も無いから脱走したり、悪さをしたら罪人になるか、追放されて野垂れ死にが確定するから乱暴狼藉もしないだろうし、下手にその辺の農家の次男や三男より安パイだからです!とは流石に言えないよな~)

かなりゲスな考えを脳内で思考する糜芳。

まぁ、慈善事業ではないので、打算有りきなのは当然なのだが・・・。


「何故ってそれは・・・。」

「それは?」

「それは、余りにも彼ら達が報われて無いからです。

漢という国家に剣を捧げ、命懸けで戦ったのに、負傷した本人や戦死した人の遺族が職や収入を失い困窮し、物乞いや犯罪を犯して生きていかなければならないなんて、酷いと思いませんか?彼ら達こそ報われるべき人達なのに・・・。」

「・・・・・・・・・。」


(あれ?反応が無いな・・・しくったか?)

背中にじっとりと冷や汗をかきながら続ける。


「え~、そういった人達をまず最優先で募集して、開拓団を形成して土地を開墾、村落を作って定住して貰い、生計をたてて貰おう、というのが私の考えている軍屯の内容です。

そこで、あの~、軍部の方々に軍屯のご協力を是非ともお願いしたいのですが・・・。」

さも悲しげに見せる為、俯きながらそれらしい理由を述べたのだが、反応が無いのでチラッと上目遣いに武官達を見てみると、


「うう、グスッ・・・うおお・・・。」

涙を流して泣いていた。


(うお、泣いてるやん・・・軍人さんは連帯感が強いって聞いたこと有ったけど、本当なんだな~。

明日は我が身と考えてるんだろうな・・・何とか上手く説得出来たかな?)


「うう、糜芳殿、先程の無礼な振る舞い、平にご容赦を。

・・・軍屯が上手くいけば、傷ついた同胞や遺族の悲惨な状況を改善する事が出来るのですな?」

激昂して立ち上がっていた、若い武官の人達が、姿勢を正して泣きながら謝罪し、問い掛ける。


「はい、年数はかかりますが間違い無く。

贅沢は無理でも人並みの生活を送れる様になると思います。

又、将来的に同じ様な境遇の人達が出ても、この制度を早ければ早いほど整えれば、その分多くの方々を救済する事が出来るようになります。」

「「「「「おおおおおぉぉ!!」」」」」

糜芳の答えに、叫び声の様な感嘆した声をあげる軍部連中達。


「この曹豹、貴殿の考えに感服し申した!

我が身命に賭けて必ずや、軍上層部に軍屯に対する協力を取り付ける事を約束する。

その為にもどうすればよいか教授願いたいのだが?」


(うん?そうひょう?何か聞いた事が有るような気が・・・)

糜芳が気になるキーワードを聞いて、脳内知識を検索していると、


「お待ち頂きたい!軍屯に対する事で糜芳殿に質問が有るのですが?」

軍部の軍政官とおぼしき人が手を挙げて質問してきた。


「はい、何でしょうか?」

「確かに屯田制、軍屯は素晴らしい案だと両手を挙げて賛成します。

しかしながらその軍屯を実施するにあたって、何処から予算・運転資金を引っ張り出して来られるつもりなのですかな?

・・・我ら軍部には軍屯を援助する程の余剰はありませんぞ。」

「ぬぅ、確かにその懸念があったか。」

軍政官の的確な指摘に、代表者の曹豹が呻き声をあげて顔をしかめる。

他の招待客からも「確かに・・・」「どうするつもりなんだ?」の声があがる。


如何に優れた制度・政策でも、必ずついて回るのが資金=お金である。

お金が無ければ何も出来ないのは当たり前の常識であり、世の常である。

ボランティアでさえ完全に元手ゼロでは無いのだから。

しかも今回の屯田制については、年単位の予算・運転資金が必要であり、かなりの金額が予測される。


どうするんだ?只の絵に描いた餅か?という疑問や疑念の視線が麋芳に注がれる。


(フッフッフッフ。

そりゃあ当たり前の質問だろうな。

安心したまえ、ちゃんと解決策はきちんと講じて有るから)


「はい、それに関しては、言い出しっぺである、我が糜家がある程度の援助を行うつもりです。」

「ほう!それで、糜家はどれぐらいの援助を行うつもりなのかね、糜竺君?」


糜芳の発言に、今まで黙って聞いていた丁老師が合いの手を入れて、糜竺に話を振る。


「はい老師。我が糜家では取り敢えず凡そ100人程を受け入れ、我が家が所有する未開地を開拓・開墾して貰い、それに必要な物資を無償で援助する予定です。」

丁老師に話を振られた糜竺が、拱手して答える。


「おお、なんと奇特な・・・。」

「流石は糜家だな。

100人もの人数を抱えるとは、資金も馬鹿になるまいに・・・。」

糜竺の発言に周囲から、感心・感嘆する声がちらほらと聞こえる。


(まぁ、最初は赤字だけど、開拓に成功して税を取れるようになれば、何年かすればペイに出来るし、それ以降はウチの丸儲けになるしな。

それに・・・元手は武官連中の袖の下に使ってたお金をそっくり転用しただけだから、必要経費内に収まっているし、万一失敗に終わっても対費用効果を考えれば圧倒的に儲けだしな~ククク)

周囲の視線や注意が糜竺に集まっているなかで、ニヤリと悪い笑みを浮かべる糜芳。


糜芳が、糜竺の為に糜董を説得する判断材料として提案したのが、糜董が武官連中に渡している賄賂=山吹色のお菓子を、そっくりそのまま屯田制の運転資金に転用すべしという案であった。


糜芳の考えとしては、賄賂を渡しても所詮はその武官個人の裏の繋がりにしか過ぎず、退役したりして居なくなれば縁の切れる間柄であり、渡したお金は、捨て銭・死に銭になるだけで、対費用効果は一時的なモノで殆ど残らない。


それに対して、今回の屯田制に資金を転用すればどうなるか。 

堂々と表立って援助します、と大々的に発表する事で周囲の評判を買えるし、傷病兵や遺族という軍部にとってある意味、失礼ながら厄介者を引き受ける事で、軍部から感謝されて恩を売る事になり、「軍部全体」にダイレクトな伝手・コネが出来る事になるのである。


対費用効果としては、将来糜竺の子供や孫達にも効果が期待できるし、武官を目指した時には両手を挙げて歓迎されるだろう。


しかも、先述の通り最初は初期投資が掛かるし、赤字確定だが、いずれは回収出来るし、開拓に成功して自立すれば、次の傷病兵や遺族を、受け入れ→開拓・開墾→自立→受け入れをループする事で糜家の領地開発が進み、将来的に莫大な儲けになる。


それに加えて、元軍人で形成された集団だから、盗賊対策に高い期待が持てる、という側面もあった。(万一襲撃されても、同胞を襲われて激怒した軍が、血眼になって討伐してくれる)


それに関しては大いに賛同した糜董だったが、賄賂を渡さない事で、今まで渡していた武官連中に横槍や妨害されないか、という懸念を示されたが、糜芳は全く問題ないと断言した。


何故ならそんな阿呆な所業をすれば、軍の一般兵士達ほぼ全員の恨みを買い、非常に高い(というより間違い無く)確率で不幸な事故(暗殺及び意図的に仕組まれた事故死)に遭うからである。


今まで賄賂を渡していても黙認されたのは、兵士達からすれば所詮は他人事であり、無関係だから無関心だったのだが、しかし今回の屯田制については、兵士達にとって当事者である。


自分達の将来(老後や傷病時)を保障してくれる、ありがたい制度を妨害・邪魔する輩が現れたとしたらどう思うだろうか?

彼ら達兵士からすれば、盗賊よりも質の悪い賊であり、最早怨敵に等しい感情を抱くのは想像に難くない。


そんな自分達の将来を奪うゲス・外道な輩をどうするかというと、一致団結して排除するに決まっている。


つまり、軍兵士達ほぼ全員が、輩を排除するヒットマン(暗殺者)=必殺○事人に、自動的にジョブチェンジする訳である。


如何にその輩(武官)が武勇に優れていようとも防ぎようが無いのは、ヤクザ面のス○夫こと張飛が歴史的証明をしている。

(部下に寝込みを襲われ、呆気なく首をはねられて暗殺されるという、惨めな最期を遂げている)


だからもしそんな阿呆が現れたら、兵士達にはある阿呆が妨害するから、制度の成立が難しくなると吹き込めば、「許せねえ」とばかりにチャララ~な勇ましいラッパ音と共に出陣して自動的に始末してくれるだろう。


上層部には、

「ある阿呆が、制度成立を妨害している為に兵士達に大変な恨みを買っていまして、このままだと貴方達も巻き込まれ(暗殺)ますよ。」

そう警告して危機感を煽り、


「いっそのこと貴方達が抱えている厄介事(犯罪行為)を阿呆に押し付けて(濡れ衣)始末した方が、厄介事が無くなってすっきりするし、兵士達からは大変喜ばれて英雄視されますよ。」

そう吹き込めば喜々として始末してくれますから大丈夫ですよ。

と、糜芳は理由と阿呆の対処法を説明した。


(・・・何故か2人共引きつった顔で頷いてたけど、常識的な対処法だと思うけどなあ。

ま、それはそれとして、屯田制の細部を説明しないと・・・まだだ、未だ終わらんよ!)


どこぞの赤がシンボルカラーの人物みたいな台詞を脳内で考える糜芳であった。


                    続く

え~と、前話の後書きに書いたとおり、説明回であります。


まだまだ屯田制について続きますので、引き続き楽しんで読んで頂ける様、頑張ります。


楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。


優しい評価をお願いします。

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