その3
この物語はフィクションですので実在する人物・団体・組織とは一切合切無関係です。
感想を書いてくださった方へ
大変申し訳ありません!感想を頂いていたのに今まで気付かず失礼致しました。
平にご容赦を。
改めて・・・感想を書いて頂き誠にありがとうございます!本当に感謝です。
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「何でこーなんの?」
周囲に大勢のむつけきオッサン連中に囲まれ、じ一と注目されている糜芳は、人知れず呟いて嘆いた。
何故いきなりこんな展開に成ったかというと、丁老師からの手紙が発端だった・・・。
糜家邸居間
丁老師の講義兼愚痴から凡そ3ヶ月程経った頃、現代に比べたら暑さが違うとはいえ、暑い盛りの季節になり、自室で身も心もぐったりしていた糜芳は、父糜董から呼び出しを受けて、家族の共用スペースである居間を訪れていた。
「え~と、何の用でしょうか?父上。
あれ?母上と兄上もおられたのですね。」
まだ昼間だというのに、他の家族が一緒の部屋に居ることに驚く。
「ああ、私が香と竺を呼んだんだよ。
ちょっと皆で話し合いをしたいと思ってね。」
「何か事件や問題でも起きたんですか?」
「う~ん、問題と言えば問題なんだけど。
ウチ宛てに、丁老師から手紙が届いたんだけどね。
芳、君は老師が新しい学問所を開く事を知っていたのかい?」
糜董から問われた糜芳は、丁老師が何かそんな事を言っていた(積極的に自分が唆した)のを思い出して、曖昧に頷く。
「はい、何でも管仲を倣って儒教だけで無く、政治学中心の塾を開くと仰っていましたね。
それが何か?」
やべえ、何かやらかしたか?と思い、平静を保ちつつ、顔は糜董に向きながらも、目線はこっそりと糜香の顔色を窺う。
「うん、手紙には、その塾が完成したから落成式に竺と芳を招待したいと書いて有るんだけれどもね?芳をね、賓客(ⅤⅠР)として招きたいとの事なんだけど・・・どゆこと?」
「はぁ!?兄上じゃなくて、おれ、じゃないくて僕をですか?
それこそ僕が聞きたいんですが・・・。」
え?何でと驚く糜芳。
「貴方、丁老師に何をしたの?追従やおべっかが大嫌いな方で、わりかし礼儀に厳しいと有名な人物に、此処まで丁重な扱いをされるなんて・・・素直に吐きなさい?」
「イヤイヤイヤイヤ!!ちょっと待って!?何も悪い事してないですから!?普通に講義を聴いて管仲の話をしただけですから!ブートキャンプはイヤー!」
糜香の疑う様子に、涙目で必死に手と首を、光速でブンブンと残像が見えそうな勢いで左右に振り、弁解する糜芳。
「ブゥとキャンプ?なんだいそれ・・・?まぁ、それはともかく。
手紙には芳が提唱した屯田制?の政策を大絶賛していてね、我が家に全面的な協力と支援を願いたいと書いてあるんだけど・・・屯田制て何?」
「あ、それは私も気になるんだけど。私にも教えて貰えないかい?芳。」
糜董が疑問を投げかけ、それに便乗して糜竺も尋ねる。
(え~と、魏の曹操バージョンや日本の北海道バージョンは、戦時体制の時のヤツだから、もうちょっとソフトにしたほうが良さそうだな)
「はい、屯田制と言うのはですね・・・。」
糜芳は、何となく覚えている屯田制に多少の改良を加えて、糜董達に説明する。
糜芳の説明に、糜香は理解出来ていないのか首を傾げ、糜董はフムフムと頷いて商人の性か、損得勘定を頭の中で弾いているようだ。
糜竺はというと、ツカツカと糜芳に近づいてガシッとの肩を掴んで、
「凄い、いや、素晴らしいよ芳!そんな政策を思い付くなんて・・・君は天才だ!」
キラキラと目を輝かせて、興奮気味に糜芳を絶賛する。
「はぁ、どうも・・・。」
前世の記憶からのパクリです。とは言えず、曖昧に返答する。
(何処かにいらっしゃる韓浩さんゴメンナサイ!しれっとパクっちゃいました!)
屯田制は元々、魏の「盲夏候」と呼ばれた夏候惇の部下だった韓浩という武将が提案した制度で、それを聞いた夏候惇が曹操に報告、絶賛され即時採用、魏の厳しい食糧事情(特に兵糧)を大幅に改善した画期的な政策であり、日本でも近代の明治時代に、北海道を開拓する為に採用される程優れた制度(兵役の義務付き)なのである。
(そら~近代でも採用された制度なんだから、政治知識のある人なら普通に絶賛するわな)
他人事の様に客観的に思考している糜芳を尻目に、糜竺は興奮状態のまま今度は糜董に詰め寄り、
「父上!芳の考案した政策を是非とも実現しましょう。いえ、必ずするべきです!
周囲だけで無く、我が家にも後々に多大な利益を確実にもたらしますぞ!」
普段の温厚な糜竺と思えない勢いで、糜董に談判する。
「まぁまぁ、落ち着きなさい竺。確かに将来的に観て、利益をもたらすものであるのは間違い無いと私も思う。
だが・・・それなりの年月と、かなりの費用が掛かるのも又間違い無いだろう?規模によっては莫大になりかねないし。
私の立場では即決は出来ない案件だよコレは。」
「何故ですか!?」
「それはだね・・・。」
興奮している糜竺と違って冷静な判断を下し、自分の意見を説明する糜董。
糜董の立場からすれば、慎重になるのは当然の判断である。
何故ならば糜董は、一家の当主として、商会の会頭として、又近隣でも有数の大地主(元々地主で、何代か前から商売を始めて財を成した)として、大勢の従業員・小作人に利益をもたらすのが義務であり、責務だからである。
屯田制については、糜芳から聞いた限りでは良くできた政策であり、素晴らしい制度なのは糜董も理解出来る。
しかし、この制度は最低でも県(町・村)、郡(市・郡)規模で行う(古代中国では県よりも郡の方が大きい地域を指す)ものであり、間違っても個人的規模で行う代物でも無いのも理解出来るのである。
それに、多少なりとも地主の立場として農業の知識がある糜董からすれば、一から開墾・開拓をして成功しても、いきなり初年度から作物が出来る事は無いのも理解している。
開墾・開拓に掛かる年数プラス作物がキチンと実るまで間の面倒(食糧・その他諸々)を保障しないといけない事になるし、天災や災害が発生すれば、余計に費用が嵩むのは自明の理である。
糜董からすれば、リスク&リターンを考えて、今ある利益を屯田制に突っ込むのに慎重姿勢になるのは当然と言えよう。
「・・・そういう理由で私の立場上そう判断せざる得ない。
竺、お前も当主になれば嫌でも理解出来る様になるさ」
「はい・・・。」
糜董が諭す様に慎重な意見を述べると、糜竺は肩を落として無念そうな顔をして俯いた。
「まぁ、ウチで出来る事は多少の資金や物資の援助をするぐらいだね。」
ふぅ、と一息付いて結論を述べる糜董。
(何か竺兄があそこまで熱心に意見を言うなんて驚いたな。
・・・しかし、俯いた竺兄を見ると可哀想だな、何かしてあげれないかな・・・う~ん、あ、そういえば)
落胆している糜竺を見かねて、糜芳は助け舟を出す事にした。
「あの~、父上。」
「何だい、芳?」
「はい、チラッと母上から聞いたのですが、今でも武官の人達に根回し(賄賂)をしているんですか?」
非常に聞きづらい内容を糜董に尋ねる。
ガタッと音がした方を見れば、糜竺が先程よりも暗く沈んでいた。
自分の為に後ろ暗い事をしている現状に、忸怩たる思いが有るのだろう。
「おいおい、何て事を芳に教えてるんだ香。
・・・ああ、今でも続けているよ、伝手が多いに越した事は無いからね。
・・・それがどうしたんだい?」
若干咎める様な口調で糜董は答える。
「それ、そっくり屯田用の運転資金に使いません?」
「「ヘ?」」
糜竺と糜董が異口同音に驚き、間抜けな声を上げる。
「ですから・・・・・・。」
「「成る程、確かに・・・。」」
理由は後述するが、糜芳の奇想天外なアイデアに糜竺・糜董も納得、そのまま決定し、資金・物資援助だけで無く、屯田の開墾・開拓を直接行う事になった。
そして、そのまま予算編成の話になり、うっかり計算が出来る事を披露してしまった(父兄よりも数倍速く)糜芳は、きっちり招待日の前日まで巻き込まれ、前日に老師の屋敷に糜竺に連行されて、糜竺の話を聞いた老師が、狂喜乱舞してリアルに朝まで討論を繰り広げて、殆ど睡眠時間も無い、超絶ブラックな状況で当日に至るのである。
現在・・・丁老師宅講堂
「何でこーなんの?」
(あ~、くっそ眠い。ふざけんなよ。竺兄が説明するんじゃねーのかよ、何で俺が)
ブツブツと呪詛の様に呟いて嘆く糜芳。
今、糜芳は老師のサプライズと言う名の、いじめや拷問に等しい状況にあい、ヒクヒクと顔をひきつらせていた。
散々賞賛された挙げ句に、徐州でも名の知れた人達に紹介され、麋芳が考案した事を暴露され、説明する羽目になったからである。
(畜生、こうなったら自棄だ!人間五十年やるだけやってやろうじゃないか・・・未だ十才なんだけどな~)
「え~、老師よりご紹介を受けた糜芳と申します。私の考案した屯田制とは・・・。」
むつけきオッサン連中との戦い(?)が今始まる!多分・・・。
続く
え~と、前書きで書いている様に、大変失礼をしてしまい申し訳ありませんでした。
読んでくださっている方々へ
その上でご理解とご協力をお願いしたいのですが、感想などに対する御礼の返信はしないつもりです。
何故なら私としては、返信する間に、その分少しでも早く物語を書いて、楽しんで読んで頂く様にするのが、何よりも感謝と御礼の返信だと思うからです。
個人的な理屈かもしれませんが、悪しからずご了承下さいます様お願いします。
あ、すみません、次話は屯田制の説明回になる予定です。
長々とすみません。
楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。
優しい評価をお願いします。




