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13 夜なべ

 いやーーー焦った。そりゃ、もう焦ったさ。


 いやね、本当に終わったと思ったよ。この世界も十進数だと確認出来たときは『よっしゃーー!!』って喜んだけど、次に手渡された紙には、この世界と文字と数字が書かれてて、何書いてあるのかまったく読めないんだもんっっ。


 そりゃそうだ。元の世界だって国が違えば文字も違うもん。異世界なんてそれこそ未知の文字なわけで。


 そして村娘のニーネちゃんは文字が読めなくて。


 オワタって思ったよ、うん。


 破れかぶれで、ニーネちゃんに1から10までの足し算を喋ってもらって、商人たちの気を引かせる作戦を強行して、なんとか注意を向けることに成功。商人から出された問題を解くことによって、ニーネちゃんに計算能力があると勘違いさせることにも、なんとか成功。


 こうしたセコい作戦を駆使したことでニーネちゃんの有用性をこれでもかとアピールし、それが功を奏したのか、どうにか売り飛ばすことを回避してみせた。


 いしょっしゃーー!! 鬱エンド回避したぞオラァッ!!!


 如何わしい店に売られるというエロゲー展開をなんとか回避し、どうにか場を繋ぐことに成功した。


 だが、現状を楽観視するわけにはいかない。ここは血も涙もないクソッタレ異世界なのだから。気を抜けばすぐに急降下してしまうだろう。なんとしてもニーネちゃんを守らなければならないのだ。


 


――――――――――――――――――



 夜が更け、街はしんと静まり、あたりは暗闇につつまれている。発展した街とはいえ、この世界に電気のような設備は存在していない。なので夜になると人々は早くに寝静まるのだ。一部の家などはランタンなどを灯しているが、それもごく一部である。


 そんな街のとある一室にて、ニーネちゃんがベッドで気持ちよさそうに寝息を立てている。


 その純粋な汚れない少女の寝顔を側で見るという特等席を堪能しつつ、清く正しく、純粋な精霊さんこと、消しゴムなおっさんは、現在進行系で頭をフル回転させていた。





『ぐぬぬ……まさかこの歳になってお勉強をする羽目になるとは……っ!!』




 ベッドの上。見上げると、そこには何枚もの紙が貼り付けられていた。そしてその紙には、この国で使用されている文字と数字がびっしりと書き込まれていた。


 睡眠学習ならぬ寝転び学習。ニーネちゃんに抱きかかえられながら小さな消しゴムは必死になって勉強中なのであった。


 何故、おっさんがこんな事をしなければならないのかというと、それもこれも愛しい天使ことニーネちゃんのためである。


 計算が出来ることを証明するまではよかった。だが「読み書き出来ません!」では話にならない。だからそんな状況を改善するべく、一夜漬けならぬ精霊漬けを決行するにいたったのだ。


 ニーネちゃんが文字や数字を読めないと知った商人が、執事に命令して、これをよこしてきたのだ。これを見て学ぶようにと。


 ある紙には、数字が1から順に書きならべてある。読めなくても数字の順番は分かっているので、丸暗記すれば問題ない。


 そして別の紙には、この国の文字が上から順番に書き並べてある。これも丸暗記すれば問題ないのだが、これは数字よりも圧倒的に数が多いので、暗記するのに時間を要するだろう。だが、幸か不幸か、この国の文字体系は、音節文字に近い体系のようで、ヒアリングさえ出来れば習得するのにそこまで難関というわけではなさそうであった。


 難関ではない。というだけで、簡単というわけではない。難しいことには変わりないのだ。だがやらなければニーネちゃんの未来はない。


 だから心やさしい精霊さんである俺は、ニーネちゃんの為に身を粉にして勉強しているのであった。


『頑張って数を覚えなきゃ。1,2,3』


 計算に必要な数字を必死になって覚えていく。


『―――ろくひき……ひつじがななひき……ひつじがはっぴき……ひつじが……』


 すぴぃ…… すぴぃ…… すぴ……




 はっ!!!?




 あぶねっ! 寝落ちするところだったっ!!


 勉強なんて崇高なことをしたもんだから、思わず脳がシャットダウンしてしまった。


 このボディは消しゴムだから、生物学的にいえば睡眠を必要としない。だが、ただのおっさんである精神が、それを拒否して惰眠を貪れと命令してくるのだ。


 ぐぬぬ……! なんて巧妙な罠なんだ! だが俺は負けん! ニーネちゃんの為に、俺が頑張らなければならないのだ!!


 気合入れろ俺!!







 すぴぃ…… すぴぃ…… すぴぃ  ぃぃぃいい!!??




 危ねぇ!! 三途の川でばあちゃんが膝枕しながら手招きしてたっ!!


 ゴメンばあちゃん!! 俺まだそっちに行けないよ。だってニーネちゃんには、俺が必要だからさ。だからね。見守っててよ。俺頑張るからっ!!













 すぴぃ……












――――――――――――――――――――








 おじさんは理解した。


 無理は駄目だよね、うん。



 毎夜毎回徹夜なんて無理に決まってるもん。無理はよくないよ、うん。


 虚弱な精神を棚にあげ、おっさんは自己弁護しながら開き直る。徹夜は無理でも、ある程度ならば机に向かうことはできる。実際は机には向かっていない。寝転がっているだけなのだが。


 とりあえず寝落ちするまで適度に頑張るという、なんともゆるい方法で勉強をすることに決めた消しゴムおっさんは、ここ数日、毎夜ニーネちゃんが寝静まった後にこうして夜な勉をしているのであった。


 おかげで数字だけならば、問題なく読むことが出来るようになった。文字のほうは……まぁ、その、なんだ。これからに期待とだけ言っておこうかな、うん。


 寝息を立てているニーネちゃんの可愛いお顔を見ながら、消しゴムおっさんは決意を胸に秘めるのであった。



 消しゴムだから胸とかないけどね。



 さて、今日も頑張りますかねっ!











 すぴぃ…… すぴぃ……


後ほど続きを投稿いたします。

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