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お礼

「リリアノ!?」

 お父様は私の追加のお願いに目を瞬かせた。

「優秀な……は、わかるが、なんだって?」

「きびしい人がいいの!」

 私がぴょん、と跳び跳ねながらそういうと、お母様も、あらまあ、と驚いた。

「リリアノ、優しい人の方がいいのではなくて?」

「優しいのは、お母様とお父様で十分なの!」

 以前の私は──、その優しさに溺れてしまっていた。だから今度こそ、その優しさで溺死しないように、そして、自分を律することができるようになりたい。でも時には、自分に甘くなってしまう部分もあると思うから。


「ふむ……。わかったよ、でも、あとで泣きついても知らないぞ」

 お父様は考え込んだあと、私の頭を撫でた。

 私はそれに大きく頷く。


「うん、ありがとうお父様! それからね」


 アリーに目配せをして、包みを二つ持ってきてもらう。

「お父様、お母様、二人に贈り物があるの」


 包みは、青いリボンと赤いリボンがそれぞれ巻かれている。青い方をお父様に、赤い方をお母様に渡す。


 お父様もお母様も、最近私が寝不足だったことに気づいてなかったみたいで、驚いた顔をしていた。


 その顔が見られただけで、頑張った甲斐はあったわ!


 ううん、お母様とお父様が笑ってくれるところもみたいから、満足するのは早いわね。


「開けても良いのかい?」

 お父様の言葉にどきどきしながら、大きく頷く。二人はゆっくりとリボンをほどいた。包みのあけかたも丁寧だ。お父様もお母様も私からの贈り物を本当に大事にしていることがわかるほど丁寧なその仕草に、胸がくすぐったくなる。


「……まぁ! このクマのぬいぐるみ、とっても可愛いわ! お目目がぱっちり!」

「こっちのクマは、髭が生えてるぞ!」

 そう! 贈り物は、クマのぬいぐるみだ。

 二人がじっくりとクマを観察している間、顔がにやにやしないように我慢しつつ、尋ねる。


「ねぇ、お父様、お母様。そのクマたち、誰かに似ていると思わない?」

「誰か……? あら、あなたの持っているクマ、細い目があなたそっくり!」

「おや、君のほうこそ。クマの目の下の可愛いほくろが君そっくりだよ」


 気づいてくれた! すっごくうれしい!!

 私はぴょんぴょん跳び跳ねたいのを我慢しつつ、あのね、と切り出した。


「大正解だよ、お父様、お母様! お父様たちをイメージして作ったの!」

 縫い目が綺麗なところと不格好なところがあるのは、裁縫上手なアリーの手伝いがあるかないかの違いだ。


 そして、ここからがもっと大事なところ。

 私は息を深く吸い込んで、それからゆっくりと吐き出した。うん、ちょっとだけどきどきが落ち着いたかも。

「あのね、お父様、お母様。いつもありがとう。二人のお陰で、私、五歳になったよ!」

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