レオに惚れてる女
ここは 女性達の癒しの場
毎日 寂しい女性や 世間に疲れた女性達が 癒しを求めてやってくる
ほら今日も こんなに沢山の女性達が…
「おかえり~ 今日もお疲れ様」
そう言って俺は 癒しを求める女性の肩を抱く
「今日は 辛いこと無かった? 気分良く仕事できた?」
と優しく聞くと 大体彼女達の口か愚痴が溢れ出す
俺はその愚痴を しっかり聞いてあげる
そして 優しい言葉をかける
「そんな事があったんだ! それは大変だったね! じゃあ今日も僕が 癒してあげるね」
すると 怒っていた顔が 本来の彼女達らしい顔に変わっていく
俺はこの瞬間が好きだ
だから この仕事が辞められない
「Happy birthday レオ~!! 今日はレオの為に ドンペリ入れちゃいま~す!!」
「マジで~ 嬉しいな~ ありがと~」
今日は 店のNo.1 レオの誕生日だ
いつもレオの席は賑やかだが 今日は平日とは思えない程 沢山のレオファンが来ていて 店内はめちゃくちゃ賑わっている
今 俺の隣にいる子 桃花ちゃんも 本当はレオファンの1人
だけど この子は内気で奥手な人 だからレオを指名できず いつも俺を指名してくる
そのくせ 俺が話していても この子の目は俺じゃなく レオを見てる
こんなにあからさまにされたら 俺のちっぽけなプライドでも メラメラと燃え出すって~の!
俺はこの店の NO.2 レン
レオとは一卵性双生児で レオは俺の兄貴
一卵性だからか 顔 声 身長に体系 おまけに見える部分のホクロの位置まで全く一緒
違うのはたった一つ 右脇腹にある 500円玉くらいの大きさのアザだけ!
俺には右脇腹にアザがある でもレオには無い
服を脱がなきゃ判らない俺達だから 店で入れ換わってても気付かれない
だから いつ入れ換わっても大丈夫のように 俺達はよく話をする
でも俺は 1つだけレオに話してない事がある・・・
この店では 恋愛は自由 だが お客に手を出すのはNG
まぁ当然だよな! 色々問題が起こるからな!
女の嫉妬は怖い! マジで怖い!! つかみ合いの喧嘩ならまだ可愛い方だけど 最悪・・・!!!
この店は 定休日が日曜で この業界にしては 変わってる店だ
なぜ日曜が定休日かと言うと 俺達ホストが 【店外での接待をする日】 らしいが 本当はオーナーが家族サービスをする為だ オーナーの奥さん オーナーに対してはめちゃくちゃ怖いから・・・
賑わってる席から少し離れた席で レオを目で追える位置
いつもこの席に桃花ちゃんを案内する 俺からのささやかなプレゼント
でも今日は桃花ちゃんから俺にサプライズがあった
席に案内してすぐ
「レンくん 誕生日おめでとう これ 大した物じゃないけど プレゼント」
そう言って 四角い箱に 可愛くラッピングされてるプレゼントをくれた
まさかのサプライズに俺は驚き
「えっ!? 俺に? レオにじゃなくて?」
と 言ってしまった
「うん だって今日はレンくんの誕生日でもあるでしょう! だからレンくんに」
そう言って桃花ちゃんは 初めて真っ直ぐ俺を見た
「あっ ありがとう マジ嬉しい 開けていい?」
「うん もちろん でもレンくん どうしてレオくんにじゃなくってって言ったの?」
俺はプレゼントを開けながら 桃花ちゃんが言ってる意味を理解しようとしたが 分からない
だから 1つ質問をした
「どういう意味?」
すると桃花ちゃんは きょとんとした顔をして
「ん? 意味? ん? えっと・・・ あっ そうか! レンくんの為に持ってきたプレゼントなのに レオくんに持ってきたんじゃないかって レンくん勘違いしたから」
と言った 俺は心の中で
(もしかして桃花ちゃん・・・ 自分がいつも あからさまにレオを見てるって事 気付いてない!? この事 言うべきかな? いや 待て! この事言ったら もう俺の事を指名してくれなくなるかも・・・ それは困る それは嫌だ! なら どうする!? うん・・・ 気付いてないふりをしよう それが得策だ!)
「いや だって今日は確かに俺の誕生日でもあるけど みんな レオにプレゼント渡してるから だから 桃花ちゃんもそうなのかと思って・・・」
レオに惚れてるこの人は 俺が惚れてる相手 だから余計なことを言ってこの人を失いたくないと咄嗟に思い 苦し紛れの言葉で誤魔化した
「そう言うことか! でも私は レオくんへのプレゼントは持ってきてないよ!」
と 桃花ちゃんが言った
まさかの言葉に 俺の思考回路はフリーズした
「・・・」
俺は 真っ直ぐ俺を見ながら 何らかの言葉を待ってる桃花ちゃんを見つめながら
(こんな時 どう言えばいいんだろう・・・
どうして? って聞いてもいいのかな・・・ いや! 違う 何だ!?
そうなんだ!? これも違う )
と 必死でいい言葉を探した だが
出てこない! 一言も出てこない!!
(どうした俺! 何動揺してる!! ってか 桃花ちゃん こんなことされたら俺 勘違いするし それに・・・ )
「レンくん? どうしたの?」
いつまでも何も言わない俺に 桃花ちゃんは不思議そうな顔で聞いてきた
「あっ ごめん 何か 感動してた・・・」
何だそれ!! 感動って・・・ 確かに感動はしたけど 動揺が隠せてないじゃんか!!
俺 カッコ悪っ!!
俺は 動揺を隠せてない事が恥ずかしくて あたふたしていると
「レンくん? 落ち着いて! どうしたの? 大丈夫だから」
と 俺に何がおこってるのか分かってないのに 桃花ちゃんは俺を落ち着かせようと必死に声をかけてくれた
俺がいつもやってる事を 桃花ちゃんが今 俺にしてくれてる
俺の心が ちゃんと桃花ちゃんに届いてた!!
そう感じた時 俺は何のためらいもなく桃花ちゃんの腕を掴み 自分の方へ引き寄せ 抱き締めていた
抱き締められた桃花ちゃんは
「ほぇ#※×」
と 意味不明な声を出した後 ふっ と肩の力を抜き そっと俺の背中に腕を回してきた
俺は感情が高ぶり このままキスしたくなって キスしようと桃花ちゃんから体を離した瞬間 高ぶる感情を理性が止めた
でもこの時俺は これ以上自分の気持ちを押さえることは出来ないと 感じていた
俺達の誕生日から3日後の事だった
「レン 今日換わってよ」
と レオが言ってきた
今日は平日だし 桃花ちゃんは来ないだろうと思い
「いいよ」
とOKした だが この日俺は初めて レオに嫉妬す出来事がおきた
日付も変わろうかとする時間 店内はそれなりに賑わっていて 俺もレオに為りきって接客していると
「レンくんご指名のお客様でーす」
とマネージャーが言った
俺は誰だろうと マネージャーの方を見た
するとマネージャーの後ろから現れたのは 桃花ちゃんだった!
俺は思わず
「えっ!?」
と声を漏らした
そして 俺に換わってるレオが 桃花ちゃんの所に迎えに行き 俺がいつもしているように 桃花ちゃんの肩を抱きながら席に連れてった
その様子を見て俺は 何とも言えない気持ちになった
「ねぇレオ どうしたの? 何急にテンション下がっちゃってんのよ!! レオってばぁ ねぇ どこ見てんの!?」
と レオの客がうるさく言う
だが 桃花ちゃんが来てから俺は 桃花ちゃんと俺に成り済ましてるレオの事が気になって 俺が接客してる子達が 何か話していても上の空で ただただ 換わるんじゃなかったと後悔ばかりしていた
そして1つ気付いた事がある
桃花ちゃん いつも俺が話しててもレオの方ばっか見てたはずなのに 今日は全くこっち見てくれない・・・ むしろ 俺に成り済ましてるレオの方をちゃんと見て話してる! ってか めちゃくちゃ楽しそうに話してるじゃん!!
それに レオのあの表情 ヤバイ! 桃花ちゃん 誘われるかも!!
レオは 気に入ったお客と プライベートでも会ったりしていて 店のルールを破って 内緒で何人ものお客と交際している 恋多き男だ
そのせいでデートの日と時間が重なってしまう事も多々あって その度に俺が対応するはめに・・・
そして すぐ飽きて捨てられる女性を何人も見てきた
それでも レオの事を嫌いになれず 健気に店に足を運んでくるレオファン達
俺はこの女性達の事を 今まで何とも思わなかった
だが 今回だけは別だ!
桃花ちゃん 頼む レオの誘いに乗らないでくれ!!
なのに
俺の願いは むなしく散った・・・
「なぁ レン あの桃花ちゃんって 可愛い子だよな! あの無邪気さや 笑顔に仕草 全部俺好み!! 今度の日曜 デートすることになったんだ!! 今から日曜が楽しみだよ 俺 こんな気持ち初めてだ! マジで惚れたかも・・・」
レオがそう言ってきた
嫌な予感が当たってしまった・・・
俺は (桃花ちゃんは 俺が惚れてる人だから 手を出さないでくれ) と言えず
「俺に 成り済ましたまま会うのか?」
と 聞くのが精一杯だった
「う~ん とりあえず 成り済ましで会って タイミング見計らって 話すつもりだよ だって マジだから! マジで俺の人になって欲しいから」
「そっか・・・」
それ以上俺は 何も言えなかった
レオと桃花ちゃんのデートの日がやってきた
レオはいつにも増して 念入りに髪をセットしていた
おまけに 鼻歌まで出てきて 今までの子達とのデートとは違い ワクワクだとか ウキウキといった感情が伺える
そんな様子を見ていた俺は 益々自分の気持ちが言えなくなり 支度をしているレオを見ていられなくもなって 布団を被った 桃花ちゃんから誕プレでもらったブレスレットを握り締めながら・・・
知らないうちに寝てしまった俺が 目を覚ましたのは 夜の7時を過ぎた頃だった
体を起こして ぼーっとしていると 部屋の戸が開き レオが入ってきた
「レン まさか! あれからずっと寝てたのか!?」
と言った
俺は 居るはずないレオが居ることが不思議で 目を擦りながらレオを見ていると
「晩飯だぞ 早く起きてこい」
と言って レオは部屋を出ていった
暗くなった部屋で俺は
(何でレオが居るんだ? 桃花ちゃんとのデートに行ったんじゃなかったっけ? えっ? 今 7時過ぎだよな・・ あれ? 朝の7時ってこ事か? ん? でも今 晩飯っていったよ・・な?)
と 寝ぼけた脳で考えたが 分かる訳もなく とりあえずリビングに行くことにした
リビングに行くと レオはすでに食べ始めていて 母親が俺に
「やっと起きてきた レン 体調悪いの? お粥しようか?」
と聞いてきた
俺は 首を横に軽く振りながら
「ううん 大丈夫」
と言うと
「そう!? じゃあ 母の愛がこもったご飯をしっかり食べて 失恋の傷 癒しなさい!」
と お見通しの言葉を浴びせてきた
「何だよそれ! 失恋なんかしてないし!!」
と強く答えると レオが俺を見て
「どしたんだよレン らしくないじゃん」
と 箸に唐揚げを摘まんだまま 不思議そうな顔をして言った
俺は無言で椅子に腰掛け 唐揚げを手で掴み 口に運んだ
そして 気になっていたことをレオに聞いた
「レオ 何でこんな時間に家に居る訳?」
するとレオが
「居ちゃダメなのかよ!」
と返してきた
「ダメじゃないよ ただ デートだから 遅くなると思ってたから この時間に居るって 何かあったのかと・・・」
と言うと
「ああ なるほどね! それがさ 俺は今日決めるつもりだったんだよ けど ランチしてる時 この子は今までの子達とは違うと確信して 何もできなかったんだよね ランチして 少しショッピングして 5時過ぎに送ったよ」
と話していると 母親が割り込んできて
「何レオ 今日デートだったの!! しかもあんたが ランチしてショッピングしただけで送ったって!! ちょっと~ 季節外れの雪でも降るんじゃないないでしょうね!!」
と茶化した
それに対して 何だかんだ言ってるレオを見ながら 俺はほっとしていた
しかし直ぐに 不安要素が頭に浮かんだ
【次の約束をしているのではないか・・・】
俺は 勇気を出して聞いた
「でも ちゃっかり次の約束してるんだろ?」
『頼む頼む頼む! してないと言ってくれ!!』 と願いがら レオの返事に耳を傾けた
「次の約束はしてないけど 連絡先交換したから いつでも連絡取れるし 今日は楽しかったメール すでにもらってるも~ん」
と 俺の思いが粉々になる言葉が出てきた
だよな・・・
この日から 桃花ちゃんが店に来る日 俺はレオと入れ換わる事に・・・
【楽しそうだなぁ あの2人 桃花ちゃんって あんなに笑う人だったんだ・・・ レオも やっぱ本気なのかな 俺に成り済ましてるとは言え いつもと違う それに何より 愛おしそうに桃花ちゃんを見るレオの眼差しが・・・ 諦めるしかないのかな・・・】
と 楽しそうな2人を見る度に 失恋感が深まっていき 諦めると決めた日から 俺は体調を崩してしまい 店を1週間休んでしまった
どうやら俺も 本気だったようだ・・・
俺が休んでる間 桃花ちゃんが来た日もあって レオが接客したのではなく 店のNO3が接客して 俺の事を凄く心配していたと 桃花ちゃんが帰った後 レオに言ったらしい その話を聞いた日 俺はやっと ぐっすり眠れた・・・
1週間ぶりの店 俺が俺のお客達を癒さなきゃならないのに 今日は逆に俺が癒され 今まで感じた事がない 優しい気持ちに浸っていると
「レンくんご指名のお客様でーす」
とマネージャーが言った
俺はすぐ席を立ち 指名してくれた子を迎えに行った
マネージャーの後ろから ひょこんと顔を出したのは桃花ちゃんで
「レンくん もう大丈夫? よかった 元気になって」
と 少し目を潤ませて言った
俺は桃花ちゃんの潤んだ目を見て 胸にズキッと痛みを感じた
この人のこの瞳も 優しさも 俺の物じゃないんだな・・・
ごめんね 今日はレオじゃなくて・・
と 寂しい気持ちのまま俺は いつものように桃花ちゃんの肩を抱いて いつもの席に案内し 座らせた
そして俺は いつもなら桃花ちゃんの隣に座っていたのを レオに遠慮?したのか 向かいの丸椅子に座った
そんな俺の行動に桃花ちゃんは
「レンくん? どうして今日は隣に座ってくれないの?」
と 不安そうな眼差しで言ってきた
俺は そんな眼差しで俺を見る桃花ちゃんをちゃんと見れなくて 自分の靴を見ながら
「病み上がりで まだ菌を持ってるといけないからね」
と 答えた
そんな俺の嘘を桃花ちゃんは
「そっか! ありがとうレンくん 気を遣ってくれて」
と言った
胸が痛い・・・
苦しい・・・
辛い・・・
この日から 桃花ちゃんは店に来なくなった
休日時々 レオが俺に何も言わず出かける事がある
きっと 桃花ちゃんとデートだろう
まだ 2人の事が気になってしまう
俺の気持ちは まだ前に進んでない・・・
桃花ちゃんが店に来なくなって 3ヶ月程たった頃 レオがまた デート重なりになってしまったらしく 代わりに行ってきてと頼んできた
俺は仕方なくOKして 待ち合わせ場所のカフェに向かった
約束の時間の10分前にカフェに着いた俺は 今回の相手の子の情報を確認しながら どんな話をするか考えていた
今回は 雅美ちゃんか・・
この子は俺的に ちょっと苦手なんだけどな・・・
レオは何でこの子と付き合ってるんだろ・・
そんな事を考えていると 店の扉が開く音がした
雅美ちゃんかな? と思った俺は 入り口の方を見て驚いた
俺は思わず 顔を伏せ
「嘘だろ・・・ マジか・・・」
と焦りながら 雅美ちゃんに場所変更の連絡をしようと携帯を手にした時
「レンくん お久しぶり」
と 桃花ちゃんが俺の前に座り ニッコリ笑った
俺はドキッとし 思った
(桃花ちゃんには 俺がレオに見えないのかな・・・ だよな レオと付き合ってるんだし いつも凄い観察してたから 分かるんだろうな・・・)
そして俺は
「久しぶりだね 元気だった?」
と聞くと
「レオくんから 雅美ちゃんって聞きてたでしょう? 本当は私なんだよ!」
と 桃花ちゃんが言った
俺は訳が分からず 桃花ちゃんをじっと見て
「えっ? どういう事?」
と聞くと 桃花ちゃんが
「実は レオくんに私が頼んだの ちゃんと話したいから レンくんに会えるようにしてって レンくん 今からする話を 何も言わず最後まで聞いてね」
と言った
俺は頷き 桃花ちゃんがしようとしている話がどんな話なのか 不安な思いで桃花ちゃんを見つめた
「あのねレンくん 私 いつもレンくんを指名してたのに レンくんが話してても違う所を見てたでしょう だから 嫌な思いさせてたと思うの ごめんね 実は私って 好きな人の顔をまともに見れないタイプで・・・ でも このままじゃダメだと思って レンくんの誕生日の日に 勇気を出して ちゃんとレンくんを見て話して 凄く楽しくて 直ぐ会いたくなって いつもなら行かない平日に行った時 まさかレンくんとレオくんが入れ替わってるなんて思いもしなくて デートに誘ってくれたのが嬉しくて・・・ でも デートの日にレオくんからカミングアウトされて 凄く驚いた だけど ホッともしたの なぜなら 私がレンくんにプレゼントしたブレスレットを レンくんに成り済ましてたレオくんは 着けてなかったから 気に入ってもらえなかったんだと思って 少し落ち込んでた レオくんに付き合おうって言われたけど ちゃんと断ったの 私は レンくんが好きだからって そしたらレオくん 悔しいけど 仕方ない 分かったって それならキューピッドになってあげるって言ってくれて それで 色々作戦を考えてくれて・・・ 焼きもち焼かせてやろうってレオくん だけど それがこん事態になってしまうなんて・・・」
桃花ちゃんの目に うっすら涙が・・・ 俺は 唇を噛んだ
少し鳴き声になりながら 桃花ちゃんは続けた
「レンくんが体調不良で休んでた時 本気で心配してた レオくんから様子を聞いてはいたけど この時はっきり分かったの こんなことしてたら レンくんに嫌われるって だから レンくんが復帰したら ちゃんと自分の気持ちを伝えようって思ったの でも 久しぶりのレンくんはよそよそしくて もう 手遅れなんだって感じた・・・ だから 店に行かなくなったの レオくんから 時々 大丈夫だから 店おいで って連絡あったけど またレンくんに冷たくされたらって思うと 怖くて行けなかった この数ヵ月 レンくんを忘れようと頑張ってたんだけど・・・」
そう言って桃花ちゃんが下を向いた時 ポタポタと涙が 桃花ちゃんの膝に落ちていった
桃花ちゃんはバックからハンカチを取り出し 目元を押さえながら続けた
「もう どうしようもないって分かってるけど このままなんて こんな失恋なんて嫌だったから ちゃんと気持ちを伝えて ちゃんと振ってもらおうと思って・・・」
俺は もう黙っていられなくなった
このままだと もう 告られてるも同然だけど 俺からちゃんと言いたい と 強く思った そして
「レンくん あのね」
の言葉に被せて
「桃花ちゃん 俺 桃花ちゃんの事 好きだよ 本気で好きだよ だから 諦められたら困る! 俺に 桃花ちゃんの隣にいさせてよ ずっと俺の隣で笑っててよ 俺と 付き合ってください」
と言うと 桃花ちゃんは声をあげて泣き出した
(まったくこの人は・・・ そんなに泣いたらみんな見るでしょ?)
そう思いながら俺は
「返事は?」
と聞くと 桃花ちゃんはわんわん泣きながら
「よっ・・ クッ よろっ・・ クッ よろしく ヒックヒック お願いッ しッますッ」
と言って 頭を下げた
そんな姿がめちゃくちゃ可愛くて 俺は席を立ち 桃花ちゃんを後ろから抱き締めた
パチパチパチパチと 拍手の音がして ふと辺りを見ると カフェにいたお客さん達が よかったね おめでとう といった顔をして こっちを見ていた
俺達は顔を見合わせて 照れ困りな顔をして 2人でペコリとお辞儀をした
(それなしてもレオのやつ 桃花ちゃんとの事 ちゃんと話してくれてたら 俺達こんなにこじれたり 遠回りする事もなかったのに!
って レオも桃花ちゃんに 本気で惚れてたんだな・・・
レオ ありがとな・・・ )
- 完 -