瞳をとじて
利家は心のなかへと
利家は遠く本能寺で火災に見舞われ天寿を全うした主君、織田信長の姿をありありと思い描く。祈るように…願うように…。
自分のためにだけ塗り残した大地である加賀を無血…鼻血くらいは出したが。
降伏させた報告を我が主君に届けたい!!
熱く静かに自分の内側へ内側へと利家は潜って行った。
すると…。
(本当にあなたはよくここに来れますね…。)
(天照大神さまではございませんか!?)
(なにを驚いているのですか?)
(いや、某は御館さまのお姿を願う一心で…。)
(で、あるか)
(ひゃ!おやがだざまーーーーーーー!!!!)
(きゃ!ちょっと大声禁止しますよ!)
(そなたはどこでも騒がしいやつよのお)
(ははーーっ!!御館さまにはご健勝あられましてなりよりでございまするぅぅぅぅ)
(天照大神さま…このうつけをここで切れるかの?)
(織田殿それは叶いません。彼は不老不死の身ですから)
(なんじゃと!!不老不死じゃと!!なんと不憫な!!)
(織田殿、じきにあなたさまもそれに近しい存在に昇華しようとしておりますよ)
(なんじゃと!!酒の飲み過ぎと煙草の火の不始末で頓死したうつけがどの顔して戻れば良いというのじゃ!!恥ずかしゅうて御免こうむるわい!!)
(ご安心くださいませ、織田殿。そのような形にはなりませんよ)
(ちょっと、ちょっとお待ちくだされ御館さま!!この利家!!見事!加賀の地を平定してきましたぞ!!)
(で、あるか)
(御館さま…ちと…誉めてくだされ)
(あのな、利家!お主気がついておらぬが、右左が未来へ還ったあとも!わしはそなたの描いた絵図面に乗って立ち回ったに過ぎん!加賀平定など赤子の手を捻るようなものじゃわい!誰が誉めるか!?)
(まあまあ、お二人さんここは静かに過ごす場所ですよ、よーく耳を傾けてごらんなさい。世界中から織田殿への弔いの念が祈りのように聞こえてくるでしょ?)
利家は本能的に足元を見た。
大地に蝋燭の火が灯り広がりを見せていた。
それはとどまることを知らずに世界中を覆い尽くさんとする勢いであった!!
(天照大神さま!御館さま!大地が輝いておりまする!!)
(で、あるか)
(織田殿。で、あるか。では御座いませんよ!この祈りの力は崇拝、尊敬、感謝、お悔やみ色々な色で充たされていますが…。織田殿を神格化へと誘う無限の力でもあります)
(で、あるか)
(御館さま!神に成られるのですね?またお会いできますね?)
(なに!?わしが神にだと!先ほども申したとおり!酒を…)
(はいはーい!織田殿はそこまで!神格化される側に選択権はございません)
(御館さまの負けですな!)
(又左!うぬをこれほど小憎らしく思うたことはないぞ!)
(御館さまじきになれまするぞ)
(織田殿、ここの時空間は自由自在ですから、右左さんと入れ替わってた時の利家さまも見に行けますよ♪うふふ♪)
(で、あるか!さっそく見に行こう!)
(ちょ、ちょ、ちょ、待ってくだされー!)
(待たぬ!お主こそ帰って働かぬか!)
(利家さまもここに長居は無用ですよ、時々いらっしゃいな)
(という訳じゃ利家!また来るが良い!がははは!)
『おやがだざまーーーーーーー!!!!ハッ!』
『叔父き!うるさいわい!』
『利家!騒がしいぞ!!』
武将とは声が大きいものらしいが、利家のそれは人よりも大きかったようで、せっまーい戦車の中ではさぞかしうるさかったそうな。
柴田勝家は悲しみにくれていたが、利家は何故かすっきりしていた。あれは本物だと不可思議に確信出来たからだ。
『柴田殿、慶次郎。都が混乱せぬように加賀の治安を守れるだけの最低限の兵を残して、京へ残りを向かわせたい。わしは加賀平定に全精力を傾ける!』
『叔父きがそう言うなら俺は残るぜ』
『ならばその兵はこの柴田勝家が預かろう。首相の伊達殿も内乱を喜びはしまい』
『うむ!御館様逝去のことは内々にし混乱を起こさぬよう徐々に伝えるのだ!勝家殿それでよろしいか?』
『利家殿、さもあらん!』
『それでは仕事にかかろうではないか!御館様に恥じぬように!』
『『おおーー!!』』
こうして、それぞれがそれぞれの役目を果たすために戦車の蓋を開けてお天道さまの下へ飛び出していくのでありました。
このあと信長からいじられ続ける人生をこの時利家は、微塵たりとも想像していませんでした。




