かやづの戦い
お父さん…令和のあなたは強すぎた!まさか、これほどまでに自分が本物の戦えるだなんて!
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天文21年8月16日早朝、僕は信長さまと共に那古野城を出陣した。
僕は徒歩での移動である。
途中、連合している織田信光さまと合流し、僕は信光さまの陣営に組み入れられ、信光軍と共に庄内川を越え海津へと移動した。
だいぶ庄内川の渡河に手こずったが、なんとか全軍が無事に渡りきる事が出来た。一人の脱落者も出さずに渡河出来るということは信光の配下はきちんとした厳しい調練を受けているということだろう。
渡河を終えた後しばらく進軍すると、いよいよ敵陣は目の前だ!
兵たちはかたずをのんで信光さまの号令を待っていた。兵たちの心臓の鼓動がここまで聞こえてる様だ。
しばらくすると、信光さまの号令がかかり戦闘の火蓋が切られる。
殺到する信光軍の兵たち!のはずが。
味方が突撃をするのよりも圧倒的に速く僕は長槍を持ち、他にもいろんな暗器も仕込んで戦闘の最も激しく行われている場所へ身を投じた。敵も必死に応戦する中、僕は長槍を振り回し、敵の刀や槍を撃ち落とし次々とトドメを刺していく。
敵味方問わず槍術、剣術、格闘術を見て僕は心から思った。
期待はずれだと。
本当に弱いんですよ。
ほとんどみーんな小柄なんだもの。
と言うか父さんが強すぎるってことじゃないか?
僕は令和の記憶を思い出す、確か…歴史上での又左は初陣で首級を一つ上げるらしいけど、僕は遠慮せずに二十も指揮官クラスを撃ち取った。
そうしたら誰も近距離に来てくれなくなった。
えーい!つまらん!
せやけん、邪魔な防具は外して動きやすいコスチュームに変更。
遠距離から矢で狙えば死んじゃうよねーという見た目にしてみた。
擬態である。
願ったり叶ったりで無数の矢が僕にビュンビュン飛んでくる!
その矢をサッサっと手づかみで矢をとらえると、自らの弓でバンバン応戦してみた。
僕の腕力に合った強弓なので、一発の無駄もなく敵を撃ち抜いてみた。刺さるというより爆散する様に、更に敵兵も味方も顔面が青ざめている様子が伺える。また命中して首が跳んだ!
ここは生き死にのかかった戦場である。自制心など必要ない。
とにかく多くの敵兵を殺意と敬意をもって討ち取る!僕はその事に集中していた。
両親が僕の幼少のころから仕込んで来た…仕込まれて来た武術の少しを存分に開放する。
すると…。
『又左とまれー!』信光さまからご指名である。
『お主、何者なのだ!独壇場ではないか!』
『申し訳ございません。初陣で緊張していたもので』
『もうよい、手柄を上げ過ぎじゃ。後方で待機しておれ!』
『御意!』
そうして、僕は余る体力をもてあましながらも、仕方なく後方へ下がるのであった。
下がると水や干し飯が与えられ、ちょっと一息つけたのでした。
弱いなあ、つまらんなあ。そうだ!鉄砲伝来したら魔改造しまくろう!
そして、令和の僕の知る歴史とは違う流れで、戦は幕を閉じるのであった。
一言で言えば圧勝
又左の独壇場
信長さまもかなりの戦績を上げて…僕が暴れたから敵兵をこちらに寄せ付けられたこともあったのであるが。
あっけなく清洲城は明け渡された。
そして清洲織田家は滅亡したのである。
僕は与えられた場所で仮眠をとっていた。
『又左ー!又左はおるか!』勝家さまの大声で目を覚ました。
『ははっ!こちらに!』
『信長さまがお呼びである!すぐについてこい!』
どうも、急用みたいだ。
え?なんやろ?
『信長さま!又左を連れて参りました!』
『うむ!又左よ、ちこうよれ!』
『ははっ!』
信長は興味津々な目付きで、僕のことをじろじろと見回す。
『そなたの此度の働き天晴れであったぞ!敵将首級二十、打ち取った兵は数えられなんだ。よって褒美としてこの朱槍を褒美としよう。刀も業物を用意するので、楽しみに待っておれ、報償金はうーん、存外な額になるのぉ。しばし待たれよ! 尚、近くそなたの元服の儀を吉日を選び行うこととする!よいな?』
『ははっ!ありがたき幸せにございます!これからも信長さまのために存分に働く所存でございます!』
『うむ!そなたの功績が存外に際立ち過ぎておるゆえ、おって更なる沙汰を下すであろう!下がって身体を休めよ』
『ははっー!』
何日間か普段の暮らしをしていると、勝家さまが立派な馬を連れて来た。
『勝家殿、これは素晴らしい馬ですね!』
『ほぅ、又左にもこの馬の良さがわかるか』
父さんとクレインで馬上訓練したなあ。
クレインとは金沢に在る乗馬クラブである。
僕は懐かしい家族のことを思い出す。
『又左!驚くなよ!この名馬は信長さまからそなたへの褒美じゃ!』
『ふぁ!僕は小姓ですよ!流石にそれは無理がありませんか?』
『又左が小姓だと?馬鹿め!今日からお主は馬大将じゃ!ガハハハハハ‼️』
『馬に名を付けてもよろしいですか?』
『駄目じゃ!赤兎馬という名が与えられておる!』
『え?それって呂布と関羽の名馬の名前じゃないですか?』
『それだけ、そなたに信長さまが期待しておるという事じゃ!馬大将!』
馬大将?それって偉いんかや?ようわからんて。
しかし僕は臨機応変に対応する。
『私が馬大将ですと!なんともったいない!元服もまだなのですよ!』
『そうじゃの、これはまだ内密じゃが、決まったことである。元服の儀は近く吉日に執り行われるぞ!なんと烏帽子親は信長さまが直々にされるそうじゃ』
マジか~?
『なんと、恐れ多いい』
『なになに!そなたのこれからを見込んでのことであろう。日々鍛練に励めよ!』
『ははっ!』
そうして、勝家さまは赤兎馬を連れて帰っていった。
そしてちょうど七日後、清洲城内において元服の儀が執り行われた。
とうとう又左は、前田又左衛門利家になったのだ!
よしよし、金沢に帰れるように頑張るぞ!
『利家よ、少しわしと話をせぬか』突然の信長からの申し出であった。
『ははっ!ありがたき幸せ』
信長は人払いをし僕の前にどかりと腰を下ろした。
『利家よ、初陣はいかがであったか?』
『信長さま、まったく手応えのある武士がおらず、とても退屈でした』
『末恐ろしい男よの』
『これも、今まで数々の武術を教えてくださった師匠たちのお陰でございます』
『で、あるか。そなたはこれからの戦場でどのように、戦う所存か?遠慮なく聞かせよ』
『ははっ!それでは、先ずは種子島に伝来している火縄銃を、改良して連発できるようにします。その銃の先端に銃剣をつけ、弾丸が切れたら白兵戦にも用いられるようにします。
なお、蒸気を用いた車を作成し大筒を乗せ、城攻めに使います。
あとは、そうですね。金属の楯と鎧で重装歩兵隊も欲しいですね。それらを用いるために道の整備は、絶対に欠かせません。あと…』
『待て待て利家!意味がわからん!』
『ですよねー。研究所を頂ければ実物をお見せすることはできるでしょう』
『これは面妖な…必ず役に立つのじゃろうな?』
『きっと信長さまのめんめが飛び出すとおもいますよ』
『わしの目が飛び出すほどのものか、よかろう金銭に目処はつけぬ!期間はそうじゃのう2年あれば足りるか?』
『材料である鉄鋼、鍛冶師、花火職人、そしてベースモデルになる種子島があれば大丈夫です!』
『ベースモデル?なんのことやら?まあ良い!戦にも呼ぶからの、研究所とやらに籠りすぎぬように厳命する』
『ははっ!』
こうして、自制心を完全にとっぱずした僕はまんまと研究所所長兼馬大将になりました。そして令和の記憶を頼りに数多くの新兵器を開発することになるのであった。
このささやかな一歩が全世界の歴史を塗り替える事になるとも知らずに。
僕は生き残るために、金沢へ帰るために自制心を投げ捨てます。(校正済み)(二度目の校正済み)【三度目の正直なるか?】