前川家は騒がしい日々
入れ替わった利家さまは金沢でいったい何をしでかすのか?
父である前川上下の強烈な一撃で倒れる右左、上下は内心やりすぎたことを反省しながら右左に声をかける。
私は前川上下、右左の父だ。ちょっとつい本気になってしまった。
全くもって本当に大人気無い事をしたと猛反省中だ!
『右左起きろ!おい!』
先ほど、つい本気になってしまいみぞおちにクリーンヒットを受けた我が息子右左は…。
なんと!なんと!心臓が止まっていた!
これはまずいと大至急蘇生術をしたら運良く右左はすぐに息を吹き返した。
やばかった!
危なくママに殺されるところだった!
この事は絶対に秘密にしておこう。
板張りの道場に寝転ぶ右左が起き上がった!蘇生成功!
『げほっ!うおーいててて!』
『右左!しばらく横になってろ!』
『右左だと?怪しい奴め!わしは又左じゃ!』
何を言い出すのかと思ったが、相当打ち所が悪かったらしい。参ったな…。
『頭でも打ったのか?』
『ええい!前田利家であるぞ!そなたは誰じゃ!』
おいおい!どうなってるんだ?なりきりプレイなのか?
『病院行くか?』
あー、ママに殺されるフラグ100%立ったわ!
『そなたは、だ!れ!だ!と聞いておろうに』
ここは素直に右左に合わせてみよう。
『はじめまして、前川上下です』
『前川ともうすのか?ここは道場じゃな?よし!一手参ろうか!』
すっーと立ち上がり長槍を構える。
右左には微塵の隙もなく、ものすごい殺気に満ちている。
今までの右左とは別次元の殺気に私は武道家としての本能を刺激される。
自然と私も槍を構えた。
『なかなか様になっておるの、さすがは道場主じゃ、いくぞ!』
前田利家と語る右左の型。これは武道ではなく、殺人術の類いだ!
シュッ!
カーン!
シュッシュッ!カーン!
お互いに決め手が無く、ただ己の技と技をぶつけ合う。
おいおい、たのしいなあ又左とやら。
思わず私は刻を忘れた。
『パパー♪右左ちゃん♪ご飯出来たわよー♪』
『ママー♪今行くよー♪』
『お主の奥方か?』
『もうなんでもいいから、とりあえず飯にしましょう利家さま』
『苦しゅうない』
私は、おかしくなった右左を連れてリビングへ行く。
ママは普段通りだ。
うーんヤバいなあ、ママになんて説明しようか?
『パパ、右左、稽古お疲れさま。今夜はハンバーグよ!』
『やったー!ママ最高!愛してるぞ!』
ママはいつもいくつになっても可愛いのだ!
『ちょっと、右左の前ではやめてっていつもいってるでしょ?』
『そなたの名はママというのか、拙者は前田利家と申す、ちと前川殿との稽古が楽しすぎての!腹がへったわ!がははは!』
前田利家公を騙る右左は豪快な笑い声を上げる。
『ちょっと!パパ!大事な右左ちゃんに変ないたずら教えたでしょう!』
ママの背後に紫色のオーラがゆらめく。正直私は死がいつも身近に在る事を再認識させられる。
ヤバい!ヤバいヤバい!
『説明して!』
逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!
そう!ここで私は開き直る事に決めた!
『あー。こちらにおわすお方は槍の又左こと前田利家公である!ひかえよ!』
『ははーーーっ!』
ママはのりが良いのが可愛いんだよなあ。
『ぢゃないでしょ!パパ!』
やっぱり誤魔化しきれる訳もなく。
これで納得できる訳なんて無いですよねー。
『すまぬがちちくり合うのは茵でしてくれぬかの?わしは腹がへってかなわん』
結局ママも右左のイタズラと認識した様だ。
『右左ちゃんの成りきりゲームは可愛いから許しちゃう。さあ、食べましょ!』
『珍妙なものばかりじゃのう…この真っ白いものは米か?』
『そうでちゅよー。利家さま』
『そなた、わしのことを馬鹿にしておるであろう?』
『利家殿、さあさあ召し上がってください』
『うむ、どれどれ』
上品な手つきで食べ始める。
『なんと!これは!美味じゃ!』
『そうでちゅか?利家ちゃん♪おかわりいっぱいありますからねー♪』
『ママ殿よ、そなたは食の神のようであるな!おかわりを所望する!』
『はいはい♪』
利家さま、ママになついてるじゃん!この調子でうまくいいくるめればこの難局を乗り切る事が出来るかもしれない。
『ママ、話したいことがある』
『なんでちゅかー?パパ』
『実はの先ほど右左との立ち合い稽古で打ち所が悪くてなあ、気絶したんだ。活を入れて起こしたらな。前田利家であるぞ!というわけで、右左と利家さまは魂が入れ替わったみたいなんだ』
馬鹿正直に右左が打ち所悪く心停止したなんて絶対に言えない!
『パパ!すてき!なろう系の転生ものね?それじゃあ…右左ちゃんは戦国時代で大活躍してるわねー♪』
うわあママ!こんな重大事をさらっと聞き流せる君が好きだ!
『私も利家さまと立ち合い稽古をしたが、右左なら戦国時代でも後れをとることはないと思う』
『素敵じゃない!』
そうだった…ママは小説を読もうサイトの大ファンだった!
超絶的に理解の早いママは、どんどんおかわりのご飯を利家さまに供給している。
『いや!満腹じゃ!馳走になった!』
『利家さま?今度、片町にある三晃のチャーシュー麺食べに行きましょ!右左の大好物なの!だからね!絶対気に入ると思うのよー♪』
『ママ殿よ手前金子がないのだが?』
『利家さま御馳走しますよ』
『まことか!そなたはういやつよのう』
ういやつ?ちょっとカットインせねば!
『利家殿、ママは私の妻ですので、そこはひとつご配慮をお願いいたします』
『そうであったな!すまぬ、すまぬ』
『パパ、お風呂沸いてるけど。利家さま使い方わからないはずだから一緒に入ってあげて』
『わかったよママ』
そのあとお風呂場に行った利家は、驚きと満足感で上機嫌であった。背中をこすってあげたら、交代してこすってくれた。
右左の姿の前田利家公がボソッと呟く。
『信長さまが心配じゃ』
そうだった、史実では前田利家公は織田家でも筆頭の配下で織田信長の思想に心酔し尊敬し、戦さ場で命をかけて尽くしていたのだ、心配にならないはずはないのだ。私はその心中を察して言葉をかける。
『右左がついているから大丈夫ですよ』
『そうかのぉ』
私は色々と考えた。しばらく右左→利家を休学させる、休ませて現代社会のマナーや話し方。基礎的な勉強を教えなければいけないだろう。
それと、前田利家公には女の子との現代の距離感を厳しく伝えないと大変なことになりそうだ!
こうして、利家さまは右左のベッドへ。
私たち夫婦は今後のことを寝室で相談するのであった。
ママは自分が戦国時代へ行きたそうな様子だった。本気そのものだったので困ったものだと心配で私はその夜あまりよく眠ることができった。
右左よ生き残れよ!ただそれだけを念じて私は瞼を閉じるのであった。
こうして令和の右左と魂だけが入れ替わった戦国時代の前田利家公の令和での珍道中が始まったのであった!!
片町の食事処『三晃』のチャーシュー麺は本当に美味しいのです!ビシッ!(*^^*)
現代のシーンでは「リアルの金沢・石川県」を紹介していけたらと考えています。良いお店ばかり紹介しますので金沢観光の時にご活用くださいませ。
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依田cyber良治より
(校正二回目)




