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そして僕は空を見上げた。5


珍しい…更新してしまった。ストレスが貯まっているのか…?




「サバイバーが帰って来たぞ!」


「嘘だろ!?あいつ帰って来やがったのか!?」


「あの女め…運のいいやつめ…」


「しっ!聞こえるぞ!」


「おおおおお嬢様がかかかえってきたたたた」


「殺されるっ殺されるっ」


「わばばば」



「やっほーリュシー、帰ったよー。ついでにお嬢様も拾ってきた」


「私は落とし物かなにかですの…?」


「ウィリアムさん、お帰りなさい。よくご無事で…。この件については申し訳ありませんでした。本当は止めたかったのですが…」


「この受付嬢スルースキル高くありませんの!?」


「気にすんな。どうせ上から圧力掛かってきてたんだろ?しかもスポンサーの方から」


「お、お察しの通りで……」


「でさぁ、団長居る?」


「ひぅっ」


流石に今回の件は看過できない。本の少し殺気を込めて団長が居るか訪ねる。てかお嬢様?なぜ貴女までビビる?


「はぃ……ぃます………」


なんとか出したような声で返答が帰ってきた。ちと殺気が強すぎたかな?


「すまないねぇ、じゃあ呼んできて」


「その必要はねぇよぅ。あんま顔馴染みを怖がらせるんじゃぁねぇぞ?ウィル」


怯えた様子のリュシーの後ろから、厳ついじいさんが出てきた。


「出てきたかジジィ。ちとお話ししようぜぇ」


「おぅ、3番の部屋はぃんな。おらぁ後からいくけぇ」


「あいよ。も・ち・ろ・ん、お嬢様も一緒でいいんだよなぁ?」


「もちろんよぅ、寧ろ来てもらわにゃー困る話もあるけのぅ」


俺達とお嬢様は、クエストカウンター横の短い通路に向かい、ドアに3と書いてある右奥の部屋に入った。




「待たせたなぁ」


体感で20分ぐらいだろうか。なかなか来ない団長にイライラが爆発しそうになった頃、やっと入ってきた団長の後ろからもう1人人が入ってきた。


「失礼する」


「っ!お父様!?」


「………」


見た目から貴族かと思ったが、貴族は貴族でもその中の中でもちょっと会いたくない分類の貴族だった。


「…唐突で悪いが、君が殲滅の駒のウィリアム君かね」


「ええ、私がそのウィリアムですが、それがなにか?」


「この度は、私の娘を救出してくれとこと、誠に感謝する。ひいては、報酬の件だが、私のできる限りで君の要望に答えたい」


「なら、(きん)を貴方のお嬢さんの価値分、貴方が思う分頂きましょう」


「それだけで良いのか?」


「ええ、勿論」


「そうか、なら、1000モネだ」


「え………」


「……いいでしょう」


まぁ、数日前の話から、決して高くはないだろうと予想はしていた。


「それとは別で謝礼金は用意する。では、この件は終わりだ。さて、シャルロット」


「はい…」


「以前から貴様の行動と言動には目に余るものが多かったが、特にここ最近の貴様の行動は、我が家名に泥を塗りたくるようなものばかりだ。更にこの一件では、"殲滅の駒"という貴重な戦力を1人分失うところだった。これ以上はもう看過できない。故に、今をもって貴様をフェーヴルの家から勘当する。


そして貴様には、貴様が今までに消費した2億5千万モネを迷惑料として支払って貰う。既に貴様の舟と私物はすべて差し押さえた。期限は設けないが、必ず払って貰う。以上だ」


「……はい……………」


「…ガルンドルフ。私の要件は終わった。帰らせて貰う」


「あぁ、きぃつけて帰んなぁ」


そう言って、このお嬢さんの父親は帰っていった。


「ったく、きぃびしぃ親なこったぁ」


「で、じじい、今回の一件はそういうことか?」


「そぅいうこったぁ」


成る程、死ねば空団(パーティーメンバー)から慰謝料を、もし助かっても本人から迷惑料を、か。


どっちに転んでもよかったわけか。



胸糞悪いことには変わりないな。



「おめぇの怒りは最もだけどよぅ、貴族ってなぁ色々と面倒なんだわぁ。ここはよぅ、俺の顔に免じて怒り納めてやってくんねぇか?」


「っふぅ。なんだ、そんな大切なスポンサーなのか?」


「そうだなぁ。半分ってとこだぁ」


は?


「……マジかよ」


なんも文句言えねぇじゃねぇか…。


「それよりもよぅ。そこのお嬢ちゃんはどぅすんだ?」


団長が指差す彼女は、勘当二億借金返済と涙に濡れた虚ろな目で呪詛のように繰返し嘆いていた。


「どうしよっか…」




「ぁ、ウィルさん終わったんですか?」


3人で部屋を出て団長と別れた後に、カウンター横を通り過ぎた所でクエストカウンターの方から声を掛けられた。


「リュシーか。さっきはごめんな?」


「大丈夫です。"ちょっっっと!"怖かったですけど」


ちょっとの部分が凄い強調されたんだけど、それぜったいちょっとじゃないよね。


「で、なんか用があったんじゃないの?」


「そうでした。フェーヴル公爵様から謝礼金とお手紙を預かってますので、その確認をお願いします」


「その謝礼金とやらは俺の口座に振り込んどいてくれ。それと、手紙?」


「はい、畏まりました。………では、こちらが謝礼金の明細とお手紙です」


「ありがとう」


「いえいえ、では、またのお越しをお待ちしておりまーす」



受け取った封筒をウェストポーチに直し、クエストカウンターを離れて、ただの少女となった彼女の元へ戻る。


「……一緒に来るか?」


「……いいんですの?(わたくし)、巨額の借金持ち女ですわよ?」


「だけどよ、行く宛ないだろ。そこら辺で野垂れ死ぬか、身売りでもしてもらっても助けたこっちが困るしな」


「付いて行きますわ…」


「よし、一旦宿に帰るか」


そうして、俺は彼女を連れ立ってギルドを出た。


幸い、俺が泊まっていた場所はギルドに近くて歩いて5分って所だ。その筈だ。その筈なんだ。


「「「申し訳ありませんでしたっ!」」」


シャルロット嬢の元取り巻き3人組に捕まり、かれこれ10分以上も立ち往生している。


しかも、謝ってる先がシャルロット嬢じゃなくて何故俺なんだ!?


「もういいって、お願いだからもう帰ってくんない?」


「帰る場所が無いです!」


「宿に泊まるお金も無いです!」


「そこの人に付いていってたら私達も評判悪くなってどこも入れません!」


「なぁ、お前ら。自業自得って言葉知ってるか?」


「「「グフゥ」」」


よし、無視だ無視。


「行くぞ、シャルロット嬢」


「ええ…」


「なんでその薄汚れた女はいいんですかぁ!?」


「そもそもの現況そいつですよぅ!私達は悪くないですぅ」


「私達の方が顔も愛嬌もいいですよぅ!おっぱいだっておっきいですよぅ!」


なんか意味のわからんアピールまでし始めた。


「はぁ…ほれ。ムーカッチ金貨だ。それを売れば多少の額にはなるだろ。それやるからもう着いてくんな」


一番前にいた娘にウエストポーチから出した金貨を3枚放り投げてやる。


「「「あざまーす!じゃっ!」」」


そう言うと、3人は1枚づつ片手に握り締めて走り去っていった。


「……お前、よくあんなのとつるんでたな」


「私もそう思いますわ…。でも良かったんですの?」


シャルロット嬢が不安そうな顔でこちらを見てくる。


「ん?金貨のことか?」


「ええ、相当な値打ちものだったんじゃないんですの?」


「ムーカッチ金貨は混ざりものが多くてな。そのせいで1個1万モネぐらいしかせん」


「なんでそんなもの拾ってたんですの?」


「そんなものって言うなよ…一応金になるんだし。ムーカッチ金貨はコレクターが多くてな。しかるべき人に売れば2~3十万にはなるんだ」


「えっ…」


「ただ、換金所だとさっき言った1万ぐらいだから。彼女達そういうの知らなさそうだし、まぁいいっかなって。まとわりつかれるのも嫌だしな」


「なんか…申し訳ないですわ……」


「まぁ、気にすんな…ほら、そこの宿だ」


「………ぼ…何でもないですわ」


「よく我慢したな。実際外見はボロいぞ」


「せっかく!我慢!しましたのに!」


「わりぃわりぃ。まぁ外見だけだ。中は上の下くらいあるぞ?」


「本当ですの?」


「本当だって!ほれ、入った入った」


「ちょ、ちょっと!押さないで下さいませんこと!?」


「ねぇーちゃーん!ただいまー!」


扉を開け、いつも通り帰宅の挨拶をすると、カウンターの所にいた20代前半のお姉さんが出迎えてくれた。


「あ、ウィルお帰り」


「え…?ウィルのお姉様ですの?」


「姉つっても血は繋がってねぇぞ。孤児院の時の沢山いる姉さんの一人だ」


「やっほー。ウィルの新しい彼女?」


「いや、彼女ではない。それで部屋空いてる?」


「空いてないわよー。あ、空いてる所あったわ」


「お、そこにこいつ住まわせてやってくんねぇか?」


「いいわよー。1名追加っと。名前は?」


「シャルロット、でいいな?」


「構いませんわ」


「料金は一緒に払う?」


「ああ、一緒で」


「はいはいっと。ええと、はいこれ。11番の鍵ね」


「はいどうも。…あれ?こいつの部屋の鍵は?」


「ん?それ」


「へっ?」


「んっ?」


空いてる…空いてる…?数日、空けていた、俺の部屋。


「…………空いてるって俺の部屋かいっっ!?」


「空いてるでしょ?」


「そうだけど…そうだけど……っ!」


な、納得いかない…!それに現在進行形って誰も思わないじゃん!?


「あ、もう変えれないからね」


そんなぁ!?横暴ですぅ!詐欺ですぅ!アネハラですぅ!





「さて、一悶着あったがそれは置いといて、ほんとにお前は俺と一緒の部屋で良かったのか?」


階段を上がってすぐ右にある部屋の鍵を空け、二人して急々と中に入るなり一旦椅子とベッドに腰掛け、一息付いた後俺はそう切り出した。


「勿論良いですわよ」


こいつ、言い切りやがった…。


「……もっとこう、男と住むって事に疑問を持とう?」


「ウィルだからいいですの!と、いうか今更ではありませんの?」


「いや、さっきまでは護衛対象だったから手を出せなかった訳でー」


「それくらい…分かってますわよ………」


「………………」


「………………」


どうしよう。この空気。というか顔が熱い。


「一旦、お前は風呂に入ってさっぱりしてこい。そうすれば多少気持ちも落ち着くだろ。俺は食堂から飯取ってくる。風呂はその右側の奥の扉だ」


「分かりましたわ…」


取り敢えず次の問題は置いておくとして、俺は部屋のドアを閉めてすぐ横の階段を降りた。


「あら?早かったわね」


「飯取りに来た」


「あーね。そこ座っててー。そろそろうちの亭主が戻ってくる筈だから」


「兄さんは買い出し?」


「んにゃ。ナンパ」


毎回思うがやっぱりバカなんじゃないのかあのバカ兄。


「ただいまー。今日マッジあちいわー」


裏口の方から軽い感じの声が聞こえる。


「噂をすればバカね」


「お帰りバカ兄」


「うおぃ!なんだいきなり!」


金髪爽やかイケメン。またの名を美少女アングラー。一度、顔を一発殴りたい男No.1(ギルド調べ)。が、吹き抜けとなっている厨房に姿を表した。


「今日はどんな子が釣れたの?」


「誰も女の子釣りに行ったとか言ってねぇよ!?……あ」


「"魚"釣りに行ったんじゃなかったの?」


「あははは~!………はい、ごめんなさい」


「魚定食3人前テイクアウト」


「はい、心を込めて作らせて頂きます」


ここまでがいつものパターン。最早ルーチンとも言える。


「…姉ちゃん。前々から思ってたけど、よくあんなのと結婚したね」


「腹立だしい事に、あれで料理の腕前と女の扱いは一級品なのよねぇ~。まぁいいのよ。他の女には渡さないし、私が死ぬまで逃がさないから」


姉ちゃんってこんな感じだったっけ。バカ兄、あんた釣った挙げ句噛みつかれてるやん。しかもなかなか離れないヤツァ。


「私らの事よりあんたの方が心配なんだけど。いい加減嫁とんなさいよ。私らの一個下だからあんたもう22でしょ」


「そうは言うがなぁ…職業?柄いつ帰って来れるか分かんないしなぁ」


「さっき連れてきた子はどうなのよ。しかもかなりいいご身分"だった"子よね?強いて言うなら元公爵家令嬢」


「…相変わらず情報が早いなぁ。どっから仕入れてんの?」


「ひ・み・つ。って話し逸らさない。で、どうなのよ」


「……はぁ、まだ出会って数日だぞ?恋愛もクソもあるかいね」


「そこに教本があるわよ」


「それは偽の教本だよ」


「グハッ」


なんか厨房の奥からダメージを追った声がしたが気にしない。


「全く、じゃあルナちゃんはどうなのよ」


「どう…どうなんだろうねぇ…?」


「聞いてるのこっちなんだけど」


「好意を向けられてるのは分かるんだけどな、何て言うか、どう接していいかわからないんだ」


「だからそこに教本があるじゃない」


「だからそれは悪の教典だってイケメン死ね」


「ガハッ」


「呪詛が混じってるわよ」


おっと、つい心の声が。


「まぁ、ウィルは顔もハッキリしなければ答えもハッキリしないもんな」


ボソッと言ったつもりだろうがしっかり聞こえたぞバカ兄。


「よし、バカ兄ちょっと外でよう?顔一発殴らせろ」


「なに!?その話俺も乗った!」


「よし!みんな外に出るぞ!」


「ヤツを厨房から引きずりだせ!」


そこら辺で聞き耳立てていたモブ男達がやいのやいの言い出した。


「あ、まだテイクアウト分出来てないからあと三分待って」


おっとぅ!ここで姉ちゃん公認で殴れるとあってみんなテンション上がってきている!?


「せめてそこは庇おう!?」


いや、"ルクス"兄さん、あんたを殴れんのは"殲滅の駒"のメンバーだけだと思うぞ。


そして、なんか参加者が増えていた。5人くらいだったのが10人くらいになっている。外の連中も呼んだのか?ふむ。



「はーい、1時間内にヤツの顔を殴れたヤツには賞金10万モネプレゼント!参加料はたったの200モネ!はいはいどうぞどうぞ」


「はいできた。ウィルもってっていいわよー」


参加料を募っていたら料理が出来てしまった。


「あいよ。はーい受付はこれまでー。残りは観戦ねー」


「「「ええー!」」」


「増えてる!?」


いい小遣いになった。半分を"アリゼ"姉ちゃんに渡しとこ。


集めた料金を半分ずつに纏めて、その片方を姉ちゃんに渡した後、俺はお盆をもって部屋に戻った。




ー 1時間後 ー


「ふぅ、30人は流石にきつかったわー」


「「「「くっそぉぉおおおう殴りてぇぇえええ!」」」」



きっとそう。

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