そして僕は空を見上げた。
『サバイバー』
何時からかそう呼ばれるようになった。
理由?よく置いていかれるにも関わらず、きっちり街まで生還して来るからだ。
別に影が薄い訳じゃない。何故か置いていかれるのだ。それにタイミングも悪い。ハザード級モンスターの出現、毒霧の発生、時間的な事情その他諸々。
人間、繰り返し同じような経験をすれば対応力と適応力が身に付くと思っている。
今日も置いていかれた。これで5回連続である。
今日は、マイケル草の採集で来ていたんだが、1人で規定数集めたところでふと空を見上げると、臨時でパーティーを組んでいたメンバーの浮石艇が頭上を通り過ぎたんだ。
時間も余裕あるし、マイケル草自体見付けにくい薬草だから、慣れてない他のメンバー達はもっと時間かかると思ったんだが。
『グガァァァアアアア』
ああ、これはモンスターのせいで置いていかれたタイプだ。
咆哮のする方へ行くと、既に2人犠牲になってしまったようだ。7人いたメンバーは俺も含めて3人減って4人か。依頼失敗で罰金でかつ3人分プラスか。かなり痛いな。
モンスターはトカゲ型の肉食タイプか。匂いとかでいずれ俺もバレるだろう。その前に殺してしまうか。
モンスターと言っても生物だ。故にしっかり弱点は存在する。こいつは確かカモアギリス。体色を周囲に合わせて獲物を狙うハンターだ。
体皮は硬くしなやかで、防具として重宝されるのだが、なにせ討伐が難しい為になかなか出回って来ない。防具は欲しいところだが、命の方が惜しいので逃げることにする。
今しがた殺した獲物に気を取られている間に、背中に背負っていたショートボウを構え、鏃が鉄製の矢をつがえる。
狙うのは目。一番無防備で軟らかい場所を狙い、射る。
『ギキャァァァアアアアアアアアア』
命中!すかさず匂い玉を投げ、自分の匂いを認識させないようにする。
匂い玉は、地面に当たって弾けると煙となり霧散する。未だにカモアギリスはのたうち回っているが、そのうち冷静になり俺を探すだろう。
そうなる前に、犠牲となった2人の胸元からドッグタグを引きちぎり、匂い玉の効果が切れる前に逃げ切る。
2人とも好青年で将来が楽しみだったんだが、仕方ない。かく言う俺もまだ20代前半だが、キャリアはもう10年近くなるのか?確か12か13の頃だったか、そのくらいの歳にこの業界に入ったからそれぐらいになるはずだ。
『シァアアアアアアアア』
だいぶ後ろの方で、かなり怒ったような気配を感じたが気のせいだろう。
コンパスを出して方位を確認し、我らが街へと向かう。来た時間を考えれば2日ほどで着くだろうか。
まぁ、いつものことかと諦めて、俺は止めていた足を動かし走り出す。
ああ、たまには帰りも浮石艇で帰りたいものだ。
鬱蒼とした深林地帯にモンスターと動物達の喧騒が響くなか、人の足音は消えていった。