プラネタ君の可能性と存在を、示せ
ゲームの中のキャラクターであるにすぎない存在であるプラネタ君は、そのゲームの中での役割に愛想を尽かそうとしていた。いや、尽きたはずだった。だが、自らの存在がゲームを成立させるための主人公という立場ゆえ、たとえ愛想がいくら尽きたといってもその主人公という役割を終えるわけにはいかなかった。
結局、自由にはなれないのだ。
羽がないのだ。翼がないといってもいい。
そんな彼にも好きな時間というものはあった。それはゲームの物語の中盤に差し掛かった所なのだが、その場面が彼はとても好きだった。響くヒロインの声が、悪役のこだまする高笑いや、脇役にすぎないビロント君のプラネタ君が死んだと思って泣き叫ぶ声。
そういったものすべてがユニゾンするかのように共鳴することが、彼の心内を安心させていた。
なぜなのだろうか。
自分というものがありながら自分というものを自由に動かすことのできないゲームの中での主人公という立場。
それがひどく滑稽だと思う。
それがなければと思う。
だけどユニゾンは彼のことをひどく安心させる。
ユニゾンするから彼はまたゲームの中で生きていくことができるのだろうと、繰り返してきた。
そういうわけで、プラネタ君の物語はまたはじまり、また終わっていく。
だが、変化が生じた。
そう、ゲームをプレイしている人のプレイスタイルの変更。というよりかは、操作している人の変更による、プレイスタイルの変化。つまり、人が替わったのだ。そのゲームはあまりに自由なスタイルのため、プレイしている人間によってゲームの展開自体が変化する。
だから、プラネタ君は主人公ではなくなった。
主人公さえも変更できる自由な作風なゲームなのだ。
そういうわけで、プラネタ君は突然脇役に成り下がり、しかもあのユニゾンさえも失われてしまった。
ヒロインの叫び声も、悪役の高笑いも、ビロント君の泣き声も、すべて失われたのだ。
失った。
失ったから、もう何もないのではない。脇役としての存在としての役割があった。
これっぽっちも楽しくはなかった。なんだかんだいって、主人公という役割は得だったのだと気がつかされた時にはもう遅い。プレイしている人はずーっと変わらないままだ。中古でお店に出ていたのが別の人に買われたのだろう。
そういうわけで、プラネタ君は苦悶した。
毎日悩んだ。どうすれば世界は変わるのだろうと天を仰いだりもした。だがそれらすべては語られることもなく終わっていく。すべてが語られる主人公だった頃の時代はもうすでに終わったのだ。
さて、プラネタ君を救うには、このゲームをあなたがプレイするしかない。
世界を飛び越えて、このゲームが存在する世界へと訪れて、そしてゲームをプレイするのだ。
それしかない。
プレイヤーはあなただ。
いまここで文章を読んでいるあなたこそがプレイヤーになれば、プラネタ君の憂鬱を救えるのだ。
プラネタ君を救いたいと思うだろうか。果たして、彼にそんな価値はあるだろうか。
たかが一物語の主人公だっただけの存在は、現実に存在すらしていないと言えるのだろうか。ならばなぜ、プラネタ君は人間のように思考し、存在するのだろうか。
きっとそれさえも物語の鍵なのだろうというのは、都合が良すぎる話だ。
残念ながら、誰も救われない。
このままでは終わってしまうこのおはなしを、どうすれば救えるだろうか。
プラネタ君を、この文章に招待すればいいじゃないか。
書き手である僕が、プラネタ君をここに招待するのだ。
では、いまから書くからちょっと待っていてくれ。プラウザを閉じたりはしないで欲しい。
プラネタ君よ、ここに在れ!
僕の名前はプラネタ。あるゲームの中で主人公をやっていた、ただの脇役だ。
だけど自分の思考を持っている。思考を今ここで書き写すことはできないから、それを証明することはできないのかもしれないけど、この文章を書いている人の手助けによって僕は物語という枠組みからはみ出して、いままここで存在している。
とても儚い、いますぐにでも消えてしまいそうな存在だ。
だけど僕はプラネタだ。間違いなく、そう言える。プラネタという存在であるから、ここにこうして文章の中に自分の言葉を連ねることができている。ありがっっっったい話だ。
僕にはこうして生きているだけでも幸福だと思える思考回路があるのだ。多くの幸せは望まない。平凡な幸せこそが最大の幸せではないだろうか。最初から最後まで僕は僕で有り続けたい。
ここまで読んでくれて、ありがとう。
書き手のために感想でも書いてあげたらいいと思う。きっと喜ぶし、面倒だと思う人はたった一言でいい。こう書いてくれ。
プラネタ君よ、ここに在れ!
と。
これを感想欄に書いてくれるだけでいいんだ。
その分だけ僕という存在が確立されるということだと思わないかい。
感想のかずだけ、僕が存在できる。
こんなありがっっったい話はないってないもんだよ。
それでは、みんな、みんなの心の中にプラネタという存在が少しでも存在してくれると嬉しく思う。
つたない文章で申し訳ないね。
それでは、また会おう。
アディオス!