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グランドールフェスト  作者: 五月雨 拳人
第一章 グランドールフェスト
4/30

決意 巧真、就職せよ! 1/2

 巧真がヴァリアンテから降りると、リサたちが出迎えるようにして立っていた。

 ただ、彼女たちの表情は、その内に渦巻く感情のように複雑であった。

 巧真もまた、どういう顔をして彼女らの前に立てば良いのかわからなかった。

 理由は簡単である。


 ヴァリアンテだ。

 リサたちは、借金返済のためにグランドールフェストに出たい。だがそのためにはヴァリアンテの操縦士ドールマギスタが必要だ。

 そこに現れたのが巧真である。


 よくわからないが、ヴァリアンテに乗れるのは今のところ巧真しかいないらしい。となれば彼女たちは、是が非でも彼にヴァリアンテに乗ってグランドールフェストに出て欲しいだろう。

 だが、巧真はあくまで他人である。ギリガンやヴィルヘルミナのように、リサの経営する工房の従業員ではない。なので誰にも社運を背負わせる事などできないのだ。それにリサは他人を巻き込みたくないと言った。社長がそう言えば、社員がどう思おうとそれに従うしかないのを彼女は知っているのだろう。


 目の前にこの危機的状況を打破できるかもしれない鍵がぶら下がっているのに、それを手にする事ができないもどかしさ。

 それが彼女らの距離感や表情に如実に現れている。事実、借金取りを追い払った巧真を前にして、喜びも労いも無い。そういった感情が出る前に、理性が蓋をしてしまっているのだ。


 歯がゆいな、と巧真は思った。

 夜中に彼女ら話を聞いて事情を知っているので、彼女たちが巧真を勧誘できない事はわかっていた。

 だが、それでは困るのだ。

 行き場の無い巧真にとって、今やこの工房が生命線。グランドールフェストだか何だか知らないが、とにかく生きるためには衣食住を確保しなければならない。ここを追い出されたらもうおしまいなのだ。

 向こうが来ないのなら、


「あの……」


 巧真は一歩踏み出す。


「いきなりこういう事頼むのは迷惑かもしれないけど、俺、他にどこにも行く所がないし、それに他にできる事もないし、あの、えっと、とにかく……」


 今だ、言え。巧真は拳を握り、腹に力を入れる。


「グランドールフェストでも何でも出るんで、俺をヴァリアンテの操縦士としてここで雇ってください!」


 巧真の声が工房に響く。

 誰も何も言わなかった。

 沈黙が巧真を不安にさせる。

 最初に口を開いたのは、ギリガンだった。彼は快哉を叫びそうになるのを懸命に堪え、両の拳を握り締めて全身を震わせると大きく息を吐いた。


「……本当にいいのか?」

「うん。決めたんだ」

「言っとくが、グランドールフェストに出るからには狙うは優勝のみだ。そのためには生半可な特訓じゃあ済まねえぞ」

「わかってる。覚悟は、たぶん、できてる」

「――って言ってるがどうするよ、お嬢?」


 ギリガンの声に、巧真とヴィルヘルミナの視線が動く。その先では、リサが立ったまま固まっていた。


「……え? あ、ああ、えっと……本当にいいの?」

「それはさっきわしが訊いただろ」

「大丈夫? ギリガンは本当に容赦しないから、とんでもない特訓とかさせられちゃうよ?」

「それもさっきわしが訊いた」

「だったらえっと、えっと……」


 リサはおろおろと言葉を探すが、色んな感情が一度に起こって混乱しているのかさっぱり要領を得ない。結局、言葉にするのを諦めたのか、ゆっくりと巧真に歩み寄って彼の両手を握ると、


「ありがとう」


 笑ってるのか困ってるのか泣いてるのかわからない顔で礼を言った。

 女の子に手を握られ、巧真が顔を赤くしていると、


「よっしゃあ、それじゃあ早速特訓を始めるか!」


 ギリガンに襟首を掴まれ、もの凄い力でリサから引き剥がされた。そのままヴァリアンテが収まっている移動式足場に向かう。


「え? 今から? あの、俺まだ朝飯が終わって――」

「食うだけ無駄だ! 今から吐くまでしごいてやるからな!」

「え~……?」


 どうやらリサの言うギリガンの「とんでもない特訓」はもう始まっているようだ。さっきまで赤かった巧真の顔が、あっという間に青くなる。

 ギリガンは左足を引きずってるくせに、もの凄い力で巧真を引っ張って歩く。だがその太短い足が足場の階段に届く前に、


「ちょっと待ちなさい!」


 リサが一喝した。ギリガンが足を空中で止めたまま振り向くと、腕を組んで仁王立ちしたリサがこちらを睨んでいる。


「いきなり馬鹿みたいな特訓始めたら、タクマくん壊れちゃうでしょ! ちょっとは加減しなさいよ、バカ!」

「し、しかしなあお嬢、グランドールフェストまでにこいつを仕込まないと――」

「それでも、物には順序ってものがあるでしょ。いきなりヴァリアンテで特訓を始める前に、工房うちの案内や説明をするのが先でしょ。彼はもううちの一員なのよ」


 リサの言葉に、ギリガンはぐうの音も出ない。しばらく抵抗するように唸ったが、結局は正論と社長命令の前に屈した。


「……それは、まあ、そうだな」

「わかったら、タクマくんを案内してあげて。あたしは冷めたスープを温め直してるから、案内が終わったら朝ごはんの続きにしましょ」


 そう言うとリサは、ヴィルヘルミナを連れて二階へと戻っていった。抜き打ちのような特訓を免れ、巧真はこっそりと胸を撫で下ろす。

 ギリガンは二人の姿が完全に消えるのを待って、巧真にだけ聞こえる声でぽつりと言った。


「気をつけろよ。お嬢はああ見えて、そこらの男より気が強いからな」

「へえ……」


 何をどう気をつければ良いのかわからなかったが、とにかく気をつけようと巧真は思った。


     †     †


「それじゃあ言われた通り案内するが、どこか見たい所はあるか?」


 ギリガンにそう訊かれて、巧真の頭に真っ先に浮かんだのは、当然、目の前にそびえ立つ巨大な銀の巨人である。


「もちろんこいつからで」

「まあそうだろうな」


 目をきらきらさせる巧真の視線を追って、ギリガンは呆れたような鼻息を吐く。


「で、何から訊きたい」


 見蕩れる巧真に、ギリガンは少し自慢げな声で問う。すると巧真は「そうだな……」と顎に指を当てる。

思案の時間は、そう長くなかった。


「ヴァリアンテって何ですか?」

「そこからかよ……」


 予想を超える初歩的な質問に、ギリガンはがっくり肩を落として項垂れる。だが講釈を垂れるのは好きなのか、すぐに気を取り直すと淀みのない口調で語り始めた。


「ヴァリアンテは魔銀巨人ミスリルゴーレムだ。世界にグランドールは無数にあれど、ミスリルを基材にしたゴーレムはこいつだけだ。つまり、ヴァリアンテは今のところ世界で唯一のミスリルゴーレムって事になる。

 おまけにこいつに搭載されている魔導石。これがまた特別なんだ。大きさで通常のグランドールの三倍以上、魔力量となると十倍近い。これだけの容量と出力を持つグランドールは恐らくヴァリアンテだけだろう。まさにオンリーワンの機体だ」

「ミスリルゴーレム……? ゴーレムなの? ミスリルの?」

「お前そんな事も知らないのかよ……。ったく、どうしてこんな奴が適正持ちなんだろうなあ。世の中どうかしてるぜ」

「適正って、こいつを動かすのにそういうのが必要なの?」

「当たり前だろ。誰でもグランドールが動かせたら苦労はしねえやい」


 そこで巧真は、ヴァリアンテの前で涙していた少女の言葉を思い出す。


 ――悔しい。

 ――あたしがヴァリアンテに乗れたなら。


 あれは、そういう事だったのか。


「魔導石は数あれど、グランドールに搭載された魔導石の適合者となるとそうはいねえ。千人に一人……いや下手をしたらもっとかもしれねえな」

「そんなに」


 それになあ、とギリガンはそう言って溜息をつく。


「こいつに合う操縦士ドールマギスタがいなくなってもう百年は経つ。これ以上乗り手のいねえグランドールを置いとくほど工房うちの財布はあったかくはねえんだが、こればっかりはおいそれと手放せるもんじゃねえからなあ」


 まるで親から受け継いだ中古車の処分に困るような物言いでギリガンは言う。

 それはともかく、今までの話を総合するに、この巨大な彫像はグランドールと言って人が乗って動かす。ゴーレムと呼ばれてはいるが、これじゃあまるで――。巧真は思わずうっとりと呟く。


「巨大ロボじゃないか……」

「え? 何だって?」

「あ、いや、何でもない。それより、こいつは何で動いてるの?」

「お前本当になんにも知らねえんだな……」


 ギリガンは心底呆れた顔をする。だが訊かれれば答えたくなる性分なのか、面倒臭そうにしながらも何かを探すように周囲を見回すと、


「おう、あれだ」


 ぶっとい指で指差した。その先には、ドラム缶みたいな円筒形の鉄の入れ物があった。その中には、ガラスのかけらのようなものが半分くらいまで入っている。


「あれは?」

「光系のクズ魔導石さ。小さすぎて使い道の無いクズ魔導石はあんなふうに一山いくらで叩き売りしてるんだ。で、そっから魔力を抽出し、グランドールの中の魔導石に充填するのさ」


 またこいつが大食いでな、とギリガンが苦笑いする。出力が大きいという事はそれだけ燃料を食うという事だ。大容量、高燃費で大出力というとロケットみたいだな、と巧真は思う。

 それにしても、燃料が魔力と来たか。しかも光系と言うからには他にも色々とあるのだろう。だんだんとこの世界の仕組みがわかってきたような気がする。


「ちなみにクズじゃない魔導石ってのはあれな」


 ギリガンが上を指差す。見上げると、天井には黒い傘のようなものを被った透明な球体が等間隔に設置され、それが発光して照明になっている。電球かと思ったら、あれが光系の魔導石らしい。


「光系って事は、他にも魔導石があるの?」

「火水風と色々あるぞ。だが真っ当な魔導石は値が張る上に、起動呪符がないと適正が無い奴は使えないときたもんだ」


 起動呪符……魔導石を誰でも使えるようにするためのおふだみたいなものだろうと巧真は推察する。


「グランドールみたいに、誰でも使えるわけじゃないんだ」

「ああ。だが魔導石を使えるってだけならそう珍しい話じゃない。ここみたいなでかい街なら百人以上いるし、魔導石技師の組合だってある」

「なるほど」


 感心して腕を組み、巧真は頭の中でこれまでの情報を整理する。今自分がいるのは、魔導石というものが普通に存在し、それは日用品としてだけではなくグランドールという巨大ロボみたいなやつの動力源にもなっていて、それらを扱うには適正のようなものがある、と。


 整理完了。巧真は綺麗に整理できた事に満足してうんうん、と頷き、

 そして驚愕する。


 やべえここ日本じゃねえ。


 そもそも地球じゃないかもしれない。


 何がどうしてなのかはさっぱりわからないが、どうやら自分は別の世界にいるらしい。しかも相当ファンタジーな世界に。

 だが今は起こってしまった超常現象より、目の前の疑問である。元の世界に戻るにしてもしばらく滞在するにしても、まずはこの世界の事を知らなければ困るのは自分だ。それに何だかんだ言っても、巧真はまだガキである。明日の心配よりも目先の興味や好奇心のほうが勝つ。


「そのグランドール? ってのに乗れると凄いの?」

「そりゃおめえ、グランドール乗りっちゃあ男の憧れよ」

「ギリガン、さんもそう?」

「もうわしとお前は同僚だから、さんはいらねえよ」

「わかった。じゃあギリガンも?」

「俺は……」


 ギリガンは一瞬だけ自分の左足に視線を向ける。それから少し遠い目をすると、ドラム缶に似たクズ魔導石入れに手を突っ込んで中から一握りの魔導石を掴み出す。


「俺も昔は操縦士ドールマギスタだった。とは言ってもこいつじゃなく、そこらにある普通のグランドールだったがな。まあこればっかりは生まれつきの適正だからどうしようもねえ」

「そうなんだ……」


 だった、と過去形で話すギリガンの言葉に、巧真は言い切れない寂しさを感じた。


「だが乗るだけが全てじゃねえぞ。例え今はグランドールに乗れなくても、俺にゃあこうして技術者としての知識や経験がある。こいつを最高の状態にしてやれるのは俺だけだって自信は、誰にも負けやしねえ」


 そう言ってにやりと笑うギリガンの顔は、決して負け惜しみや言い訳などを言っているのではなく、心の底から自分の仕事に誇りを持つ職人の顔だった。


「カッコいいいなあ」


 思わず口に出た巧真の言葉に、ギリガンは照れ臭そうに鼻を指でこすった。その時クズ魔導石が掌からこぼれ落ち、巧真の足元に落ちた。

 明かり取りの窓から入る陽の光を受け、クズ魔導石がきらきらと光る。ぱっと見ただけだとただのガラスか透明なプラスチックにしか見えない。一体どんな触感なのだろうと、巧真は手を伸ばして地面に落ちたクズ魔導石を拾おうとする。

 そして彼の指がクズ魔導石に触れた瞬間、


 しゅばっと花火が着火したような音とともに目がくらむほどの閃光が走った。


「うわっ!」


 一瞬で魔力を出し尽くし、魔導石が霧散する。不意にスタングレネードのような強烈な光を受け、巧真は両目を押さえて仰け反る。勢い余って後ろに倒れそうになるのを、ギリガンに学ランの裾を引っ張られてどうにか倒れずに済んだ。


「この馬鹿野郎! 魔導石を発動させやがったな!」


 目がくらんだ真っ白い視界の中で、巧真はギリガンにぽかりと頭を殴られた。


「ったく、お前はもう余計な物に触るな!」


 大声で文句を言いながら、ギリガンは「もうここはいい。次に行くぞ」と巧真を引っ張って歩く。まだ目の見えない巧真は自分がどこをどう歩いているのかまったくわからないまま、ギリガンに引かれて歩かされた。


     †     †


 それからギリガンは巧真を連れて、工房の中を案内してまわった。

 工房「銀の星」は、グランドールの修理や整備調整をするのが主業務である。全長十メートルのグランドールを扱っているため、工房内は天井がやたら高い。体育館のような広さと高さを持っており、数台の巨人を整列させて同時に整備ができる空間を有しているのだが、今工房の中にあるのはヴァリアンテ一体だけなので閑散としているように感じる。


 そして工房の横には、プレハブ小屋のような小さな建物がおまけのようについている。これはリサたちが寝食や事務仕事をするためのものだ。二階建てで錆びた鉄の階段が外についていて、上の階に上がるのに一度外に出なければならない面倒なタイプだ。工事現場でよく見る仮設事務所のようだと巧真は思った。

 一通りの案内と説明を終えたギリガンと巧真は、リサに言われた通り食堂に戻ってきた。


「ちょっとギリガン、さっきの音と大声なに?」


 食堂に二人が入ると同時に、リサがしかめっ面で問いかける。


「何でもねえよ。それより朝飯はどうなってんだ?」


 見れば、テーブルの上にはまだ何も置かれていない。


「それがね、スープを温めてる途中でかまどの魔導石が切れちゃって」

「何だよそりゃ。冷めたスープを飲めってのかよ」

「それは大丈夫。今ヴィルが――」


 リサがると、部屋のドアががちゃりと開き、ヴィルヘルミナがひょっこり顔を覗かせた。


「リサ、さっきの音――」


 ヴィルヘルミナは食堂にギリガンたちが帰ってきているのを見て、言葉を止めた。大方こいつらが何かしでかしたんだろうと察したのかもしれない。


「あ、ヴィル。終わった?」

「あ、うん、えっとね」


 ヴィルヘルミナはツナギのポケットを探る。


「はい、かまどの魔導石。魔力を充填しといたから」


 そう言って取り出したのは、透明な球体だった。


「ありがとー。いやあ、ヴィルが火系の魔導石の適正があって助かるよ」


 火水光の魔導石は生活必需品だけあって、魔力充填の料金は安い。だが常に安定した需要があるので、その適正を持つ者はそれだけで食いっぱぐれる事がないと言われるほどだ。


「本当は組合から、知り合いでも無料充填は駄目って言われてるんだけどね……。でも今のリサからお金なんて取れないわよ」

「あはは、ごめんねー。溜まってるお給料は必ずなんとかするから……」


 リサは苦笑いしながら手を伸ばし、ヴィルヘルミナから魔導石を受け取ろうとする。が、


「あ、」


 手が滑り、魔導石がリサの手から転がり落ちる。


「危ない!」


 魔導石の見た目がガラスっぽいため、落ちたら割れると思った巧真は、咄嗟に魔導石に飛びつくようにして手を伸ばした。

 必死に飛びついたおかげで、どうにか地面に落ちるぎりぎりのところでキャッチする。すると、巧真が握った瞬間に魔導石が火を噴いた。


「あっちゃああああああっ!」


 いきなり魔導石が燃え出し、巧真は慌てて放り投げる。投げてから気づく。


「しまった!」


 せっかく受け止めた魔導石であったが、無残にも硬い音を立てて床に落ちた。

 割れる、と思って巧真は目を閉じるが、予想に反して魔導石は割れも欠けもしなかった。意外と頑丈である。


「良かった。割れなかった……」


 ほっと息をつく巧真の横で、リサが魔導石を拾い上げた。


「魔導石は中の魔力を使い切らない限り、割れも欠けもしないわよ。知らないの?」

「何だ、そうだったのか。焦って損した」

「……で、ギリガンは何でそんな面白い顔してるの?」


 リサの声に視線を動かすと、ギリガンは信じられないものを見たといった感じで目と口を大きく開けて震えていた。


「こ、」

「こ?」

「こいつ、火系の魔導石を発動させやがった」

「そうね。さっき起動呪符なしで発動させてたから、火系の適正があるんでしょうね」

「そんなはずはねえ」

「でも今――」

「こいつはさっき、光系のクズ魔導石を触っただけで発動させやがったんだぞ」

「え……!?」


 ギリガンの声に、リサのみならずヴィルヘルミナも驚きの声を上げる。


「え? なに? どういう事?」


 わけがわからなくてきょろきょろする巧真。


「ヴィルヘルミナ、こいつなんにも知らねえようだからイチから説明してやれ」

 ギリガンに言われ、ヴィルヘルミナは一瞬どうして自分が? という顔をするが、律儀にも説明してくれる。

「あのね、魔導石に適応できる人が凄く少ないっていうのは知ってる?」


 頷く巧真に、ヴィルヘルミナは「それでね」と続ける。


「魔導石に適応できても全部の属性にってわけじゃなくて、普通は一つの属性だけなの。といってもグランドールは別なんだけど。でも二つ以上の属性に適正を持つ人なんて今までいなかったのよ」


 魔導石技師の組合でも、二つの属性を掛け持ちするような者は未だかつていなかった。中にはヴィルヘルミナの言う通り、グランドール乗りでありながら別の魔導石の適正を持つ才能に恵まれた者は、多くはないがいる。しかし一人が扱える魔導石の属性は一つ限りというのが、この世界での常識である。


「それってどういう……」

「つまりね、あなたは普通の人と違うんじゃないかって事」

「マジすか……」


 お前は普通じゃないと言われて困惑する巧真に、ヴィルヘルミナはかける言葉を失って長い耳を伏せた。

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