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グランドールフェスト  作者: 五月雨 拳人
第一章 グランドールフェスト
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閑話 後日談をせよ

 操縦士の体力回復と診察のために休憩を挟んだ後、表彰式が執り行われた。


 国王の前に並んだのは、今回の優勝者である巧真。

 準優勝のヒルダ=クラウフェルト。

 そして惜しくも三位だったガンロックである。


 三人はそれぞれ国王から労いの言葉と、順位に応じた賞金を受け取った。

 巧真はその賞金で工房「銀の星」の借金を返済した。賞金は借金を完済してもまだ少し残ったので、そのお金で今度は少しばかり豪華な祝勝会を開いた。


 アイザックは当然のような顔をして参加していた。

 だがこの時ばかりは誰も何も言わないばかりか、せっかくのお祝いなので近隣住民だろうが通りすがりの人だろうがお構いなしに招き入れた。


 中には酒や食い物持参でやって来る殊勝な者までいて、祝勝会は思わぬ盛り上がりを見せた。

 どんちゃん騒ぎは三日続いた。


     †     †


 一方その頃、ヒルダ=クラウフェルトはクラウフェルト家が所有するグランドール工房の一室にいた。

 ヒルダは左手に持った魔導石板に映る長い文字の羅列を目で追い、視線が最後の文字に行きつくとゆっくりと目を伏せた。


「いかがでございましょう」


 彼女の背後に控えるようにして立っていた執事風の老人の声に、ヒルダは閉じた時と同様たっぷりと時間をかけて目を開いた。


「にわかには信じられませんわね」

「ですが数値が証明しております」


 老人に言われ、ヒルダは再び魔導石板に視線を落とす。確かに数値は嘘をつかない。ただし観測の時点で誤りがあれば話は別だが。


 しかし今回は観測においても誤りは無い。何しろ実際に対象に接触したのは自分なのだから。

 自らの手で採取したデータを分析してこの結果なら、数値を信じるしかあるまい。たとえそれがどんなに信じられない結果であろうと。


 ヒルダは魔導石板に右手の人差指を当てて下に弾くように動かし、画面を一番上まで移動させる。

 画面は記号や数字が羅列しており、特別な知識が無い者が見たら子供がでたらめに記入したのかと思うものだった。


 だが特別な知識がある者が見ればとても興味深い、そしてヒルダと同じく信じられない事が表示されていた。

 記号や数字は生命体の生体情報伝達術式――つまり遺伝子情報を表しており、それが変質も欠損もない完全で健康体である事を示している。

 この世界の人間では、あり得ない事であった。


 そして最上部に記載された題名には、


『採取サンプル シンドウ・タクマ』


 と記載されていた。

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