はじめてのぶかつ
「こんちわー」
そう言って僕は部室に入ると、既に二人の部員が何かをしていた。よく見るとその二人の部員は、副部長の田中先輩と二年生の野村先輩だった。
「先輩方、何をしているんですか?」
「おう!神経衰弱だ!」
(は?意味がわかんない。昔の遊びをする部活が神経衰弱だって?いったいどういうことだ?)
と思っている僕に野村先輩は
「まだ部活は始まってないんだし、現代の遊びをしても問題ないんだよ。」
「なるほど、そういうことだったんですね。でもなんで神経衰弱なんですか?」
そうだ。何故、神経衰弱なのかが気になっている。別に神経衰弱以外にも、たくさん遊びはあるのに。
「いや〜。野村さ、神経衰弱めっちゃ強くてさ。まだ一回も勝ったことなくて、いつも挑戦してるんだ。」
「なるほど。」
どうやら野村先輩はとても神経衰弱強いらしい。少なくともこの学校の中で、野村先輩に神経衰弱で勝てる人はいないらしい。
結果、3回勝負をして3回とも全部、野村先輩が勝っていた。3回目の決着と同時に部長が部活にやってきた。
「よしみんな、部活始めるぞ〜!」
「「はい!」」
どうやら部活は部長が来てから始まるようだった。部長が休みの日とかの場合はどうなるのか気になったが、聞いたら聞いたで面倒くさいことになりそうだったので、頭の隅に排除した。
今日の部活は将棋をしたり囲碁をしたりした。伝統娯楽部らしい昔の遊びだった。将棋は昔、祖父とやっていたので、部長と野村先輩に勝つことができたが、田中先輩には負けてしまった。次に囲碁をしようとした時、部室の扉が開いた。
「遅れてすいません!総務委員の集まりで遅れました。」
牧野さんだった。どうやら総務委員の担当らしい。
「早く準備してね!」
牧野さんが準備を終え、こっちを向くと
「なんだ、将棋をしてたのね。佐々木君、私と一回、勝負してくれないかしら?」
予想外だった。牧野さんが将棋をしようと言って来たことが、予想外だった。しかし断る理由がないので
「いいですよ。その勝負、受けて立つ!」
こう格好つけてみたが、それを後悔するのに時間はかからなかった。
牧野さんと勝負をしたが、僕はボロボロに負けてしまった。
「負けた...格好つけたのが恥ずかしい...。どうしてそんなに強いの?」
「小さい頃によくおじいちゃんと将棋をしていたからかな?」
僕と同じかよ。牧野さんも小さい頃からやっていたんだな。と思っていると
「じゃあ次は、囲碁をしよう。」
「僕、囲碁のルールとか分からないんだけど。」
「う〜ん、どうしよう?」
少し悩んでいると、部長が
「じゃあ!チーム戦にしよう!私は佐々木君と組むわ。柚子ちゃんは優姫ちゃんチームに入ってね!」
「あれ?俺って余り物?俺はどうしたらいいの?」
「う〜ん。」
かわいそうな副部長だ。余り物になってしまうとは...
「じゃあ、審判をお願いしまーす!」
「はぁ...りょーかいでーす。」
囲碁のチーム戦はすぐに始まった。お互い攻め合いの勝負をしていたが、僕が小さなミスをしたせいで、そこから一気に攻められ負けてしまった。
「優姫ちゃん強いね〜。なんでなの?」
それは僕も気になった。あの強さは小さい頃におじいちゃんと囲碁をしていたじゃ納得できない強さだった。
「いえ中学生まで、囲碁教室に通っていて、よく囲碁教室の先生に勝っていたので。」
「すごいね〜優姫ちゃん!先生に勝てるなんて。」
(本当にびっくりだ。僕はそんなに凄い人と戦っていたんだ。いや、戦えてはなかったか...)
僕はもう一戦したいと思い、お願いしようと思ったとき、部長による部活終了の合図があった。
「じゃあ、部活終了〜。みんな気をつけて帰ってね!」
「「ありがとうございました!」」
(まあいいか。もう少し強くなってから、牧野さんに再挑戦しよう。)
と僕は思い、家に帰った。