入学式その1
僕の名前は佐々木清。スポーツも勉強も平均的で、みんなからは"サキ"という愛称で呼ばれている。
今日はこれから入学式がある。高校生になったという実感は湧かないが、中学までの制服と違い、ブレザーなので、少しは高校生の自覚を持たなくては...と思いながら学校へ行く支度をしていると、
「清。もう涼くんは学校に行ったわよ。あんたも早く学校に行かないと、入学式に遅刻するわよ。」
と母親が言った。涼くんとは僕の兄で、名前は佐々木涼介という。兄は僕と違い、スポーツも勉強もトップという典型的な文武両道男子だ。
入学式は13時30分からで、時計の針は12時45分を指している。自宅から学校まで20分で行けるが、
「入学式ぐらい早めに学校に行くか」
と口にして僕は家を出た。歩いて学校に向かっていると
「サキー、一緒に学校に行こうぜー!」
という声が聞こえた。
「ああ。しかし、こんなに早くに家を出ているとは、お前にしては珍しいな タク。」
「そりゃあ、入学式に遅刻なんてしたら悪い意味で有名人になっちゃうだろ!」
(お前は中学生の時に入学式と卒業式に遅刻して、有名だったじゃないか。...悪い意味で。)と思いながら歩いていた。
こいつの名前は柳拓斗。小学校からの付き合いで、昔からよく遅刻をするやつだった。タクはテニスが得意で色々な学校から推薦が来るほど、テニスが上手である。
タクと色々な話をしていたら、いつの間にか学校に着いていた。校門の近くでは、
「野球部、部員募集中ですよ!」
「サッカー部に入部してくれよな!」
いろいろな部活が勧誘をしていた。この学校"陸奥島高校"はスポーツがとても盛んである。
僕はとりあえず昇降口を目指していると
「君、もし入りたいと思う部活が無ければ、私たちの部活に入部してくれないかな。」
と声をかけられた。声が聞こえた方向を向くとそこには、女子の平均身長くらいで茶髪が肩のあたりまで伸びている女子生徒がいた。
「私たちの部活は部員が少し足りなくて、入りたい部活が無ければ、是非うちの部活に入部して欲しいな。」
「何の部活か分かりませんが、僕は今のところ、どの部活にも入るつもりはありませんよ。」
「ごめんごめん。部活の紹介をしてなかったね。部活の名前は...。」
「おーい!サキー、早く体育館に行こうぜー!」
「ああ。分かったー。」
タクが呼ぶ声が聞こえたので、僕はタクの方へ行くことにした。
「すいません。友だちが呼んでいるので、また後で部活の紹介をしてください。」
とだけ言い、僕はタクの方へ行った。