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三崎くんの恋事情!  作者: 高柳ヒロミ
1/1

遼太郎、ラブコメ展開に遭遇する。


三崎遼太郎(みさきりょうたろう)


 群馬の県立緑大(みどりだい)高等学校に通う高校1年生の普通の青年、だが校内で彼のことを知らない者は居ない。赤茶色の頭髪に気だるそうな三白眼、筋肉質な身体に右頬の刃物傷。そして少しぶっきらぼうな口調のため先輩方からは目をつけられ、教師や同級生からは“不良”と言うレッテルを貼られ怖がられているからだ。


「はぁ……今日も散々な目に合った」


遼太郎は夕日が彩る茜色の空に向かってぼやくと背後から笑い声が聞こえた。


「今更気にしたってしょーがねーだろ、もしやり直すとすりゃ入学式からやり直すんだな!」


「や、やめなよぉ“ひーちゃん”……だ、大丈夫だよ遼太郎。そのうちの誤解だって分かってくれるよ……多分」


振り向くと腹を抱えながら爆笑してる小学校からの悪友、高橋秀道(たかはしひでみち)と弱々しくもちゃんとフォローしてくれる男の娘な親友、藤田直斗(ふじたなおと)が居た。


「お前等、俺より学校出たの早かったよな?何してたんだ?」


「うんとね……き、今日は僕が欲しかった本の発売日だったから、ひーちゃんに一緒についてきてもらってたんだよ」


「そーそー……けどなー、お陰で幼馴染みの知らない一面を知ってしまったよ……俺は」


「???そんなにショックな一面だったのか?秀道」


「あぁ……まさかまさかだったよ、直斗にあんなBぇ『わー!わー!言っちゃだめぇー!」


秀道の言葉は直斗の女子の様な甲高い叫び声によって掻き消された。が、遼太郎はなんとなく察しが付いたようで何度も深く頷いている。


「そうかそうか……人には人の乳酸菌が有るように、個性や趣味があるかな。気にしなくても大丈夫だぞ!直斗!」


「ゔぅ……それ、全然励ましになってないよぉ……遼太郎」


その後数分の沈黙が続き、最初にしびれを切らせたのは遼太郎だった。


「そ、そうだ!お前等このあと暇だろ?俺ン家でゲームしよーぜ!この間面白そうなカセット買ったからさー、一緒にやろーぜ!」


「お、おぅ……そうだな!どうせ家帰ってもやる事ねーし、寄ってこうぜ?直斗」


「う、うん……遼太郎が良いんなら、お言葉に甘えるけど」


こうして、なんとか気まずい状況を脱した遼太郎と秀道は心の中で大きな安堵をついた。そして三人で並んで遼太郎の家へと向かった。


「ただいまー……ん?」


「どしたー?なんか変なもんでも転がってたか?」


「いや、知らない靴があるんだけど……多分また姉貴

が買ってきたんだと思うから気にしなくって良いよ」


遼太郎には三人の姉がいる。三人ともまだ結婚はしておらず実家暮らし。だからこそ遼太郎にはその靴に対して一つの違和感を覚えた。


この靴のサイズは姉貴達やオカンの誰のものでもない――


だがもしもお客さんのものだったところで、自分には関係無い。またどうせこの髪色と目つきの悪さで相手の方から話しかけてくることは無いだろうから。


遼太郎はそう思っていた。実際に経験しているからこそ、そう思うしか無かった。


「俺、飲み物取ってくるから先に俺の部屋行っといてくれ」


「二階右側の一番奥だよな?」


「あぁ、俺が行くまで適当にテレビでも観といてくれ」


遼太郎は秀道達を先に部屋へ行かせ、一息着いてからリビングのドアを開けた。


「あら、遼太郎いつ帰ってきてたの?」


「ついさっき玄関ただいまって言ってただろーが」


「遼太郎!お母さんに向かってそんな口聞いちゃダメだよ!」


「あぁ?ンなのいつもの事…………って誰だ?!なんで俺の名前知ってんだ!?」


一瞬姉達の声だと思いいつもの口調で返事を返そうとした遼太郎だったが、聞き覚えの無い声に驚いていた。


「えぇー、私の事忘れちゃったの?遼太郎」


金髪の髪に青色と黄色のオッドアイ。雪のように白い肌、人形の様に整った顔。肌色からして彼女は日本人とロシア系とのハーフだろうと遼太郎は考えたが、遼太郎の記憶の中に該当するそれらしき人物は思い当たらなかった。


――すみません。全くもって身に覚えがございません。


「そっかぁー、憶えてないか……まぁ仕方ないよね。私は小学5年生のときに家の事情でロシアに行っちゃったからね……みんなにバイバイもしないで」


遼太郎の中で一瞬、小学校時代の走馬灯が流れた。その中に、彼女と思わしき人物がいた。そして遼太郎は思い出した――


「お前…………もしかして、“アリス”か?」


「うん……久し振りだね、遼太郎」


小鳥遊(たかなし)アリス


遼太郎の小学生からの幼馴染みで日本人とロシア人のハーフの女の子、だが中学に上がる前に突然転向してしまった。そんな思いがけない人物との対面で遼太郎は頭の中がこんがらがっていた。


「えっ?いつ日本に帰ってきたんだ?……てかなんで家にいんだよ、親はどうしたんだよ」


「まぁ待て遼太郎、アリスちゃんはな今日から家に住むことになったんだ」


アリスをまくし立てるように質問する遼太郎を、父親の宗一(そういち)が宥めてからとんでもない爆弾発言をかました。


「…………はい?今なんて言った?親父」


「だから、アリスちゃんは家の事情と言うかなんと言うか…………そう!色々と訳あって今日からうちに住むことになった!」


「な、なんですとおおぉぉぉぉぉっ!!!」


混乱のあまり叫んだ遼太郎に対し、母親の郁代(いくよ)は更なる追い打ちをかけた。


「お父さんあんなこと言ってるけど実はねぇ、アリスちゃんのお父さんが遼太郎のことをすごく気に入っちゃってね〜つい先月『私の娘を貰ってはくれないか』って言われちゃったらしくてね、お酒が入ってたからお父さん、『はい!喜んで』って言っちゃったのよー」


――何それ?全く訳が分かんないんだけど。


「……じゃ何か?アリスは俗に言うアレか……俺のい、いい、許嫁(いいなずけ)だって言いてぇのか?」


「まぁ…………そう言う事になるな。あぁ、それと明日からアリスちゃんもお前と同じ高校に行くから色々と教えてやんな」


「そう言う事だから…………3年間よろしくね!遼太郎!」


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


遼太郎はこれからの高校生活に波乱が巻き起こる予感がしていた。

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