No.045 事実は小説よりもまた奇なり
「あーあ、にしても結局あの爺さんろくに説明してねーじゃねーか完全に迷宮入りだっての事件を引っ掻き回す迷探偵かよ」
「せやけど、カイトはんがユニススの角を手に入れたおかげで目指すもんは解ったんやし、ええやないの」
「それにしても凄いですわね……角から溢れ出した水が像の姿を映した時は驚きましたわ」
「いし、うつった、すごい!」
「もしかするとそれがユニススの特性かも知れないなの」
僕らは今、ガユル森林の奥に来ている。
エリファスさんとフェイが住む家の、その更に奥深く。
そこにある石像を手に入れる為に。
イニー洞窟でお爺さんたちと別れたのは良いものの、どう世界を救えばいいのか解らない。
ならばまずは英気を養うべきだろうと、手近な宿屋を探すことにした。
そんな時、ユニススの欠けた角から突然水が溢れ出したのだ。
そして水面にはどこかの景色が浮かび上がり、中央には人の頭を模した石像がある。
姿を頼りに調べてみると、以外にも直ぐその石像へと辿り着いて。
僕らはそこから手がかりを見つけ出す為に、宿屋を諦めここまでやってきた。
「ここら辺にはフローティングアイが出るからクエストも受けていこうぜこれが俺たちの初クエストだ!」
「ふろーてぃんくあい、なに?」
「宙に浮かぶ大きな目玉なの」
「そらええなあ。しかと腕前見せてもらいまひょ」
「私も負けませんわ!」
手がかりかもしれないというだけで、その石像に何があると解ったわけではない。
だけれど、彼らと向かうクエストは、その道中でさえ心が沸き立つような気分になれる。
今まで森の中に入ることが出来なかったリジーさんや、前回は居なかったマリアさんも一緒で賑やかだ。
「どうしたんですの、カイト様」
「あはは、えっと、なんていうか、嬉しくなっちゃって」
「嬉しい、ですか?」
不思議そうに覗き込んでくる姿は、彼女の可愛さを助長させていて。
「うん。みんなが僕をあんな風に思ってくれてたなんて、全然知らなかったよ」
「あんな風に……ああっ! あの、私、カイト様を、っ」
「うん、僕もリジーさんが好きだよ」
「……えっ、えええ!? そっそそそれは本当ですか!?」
「うん、僕はここに居るみんなが、すっごく好きです」
「…………そう、そうですわよね……はい、存じております」
「リジーさん?」
「……私も全然知りませんでした。カイト様もそのように笑ってくださるのですね」
「僕が……?」
「ええ、暖かな太陽のような優しい笑みです。そして、私への言葉も変わりました」
「そっか……嬉しいな」
「私はそんなカイト様が、す、す……き」
「はーいラブコメタイムは終了でーすお帰りくださいこんにゃろう」
リジーさんと笑いながら話していると、背後からにゅっとエリファスさんが姿を見せた。
この人も笑っていて、それがやっぱり、僕は嬉しい。
「もう、邪魔をなさらないでください魔導士様!」
「はーいー? 俺の名前はそんなんじゃありませーん」
「名前ではなく称号ではないですか!」
「俺にはエリファス・クロウリーという素晴らしい名前があるっつーの」
「勿論存じております」
「……はあ、俺疲れるわこれ」
大きく息を吐くエリファスさんと、首を傾げるリジーさん。
それを見た僕らは、声に出して笑っていた。
「多分ですけど、名前で呼んでほしいってことだと、思うよ」
「それは違うぞ呼びたければ許してやるというだけだカイト決して浮気じゃないんだぜフェイたん!!!」
「魔導士様が……私に……」
「第一周りに俺が魔導士だってばれると面倒だろうがよ折角魔術士っつー認識されてんのに手放すのもどうかと思って致し方なくだな」
「改めてよろしくお願いします、エリファス様!」
「……チッ」
「何故舌打ちをなさるのです!?」
楽しい。嬉しい。心地良い。
ない交ぜになるこの感情を伝えるには、やっぱり言葉にしてこそなんだと思う。
そう、思うようになった。
「あの、エリファスさん」
「あー……どうしたよカイト」
「僕、エリファスさんのことが好きです」
「………………ファッ!? 突然なんだどうした一体いつどこで俺はフラグを」
「マリアさんのことが好きです」
「ふふ、おおきに」
「リジーさんのことが好きです」
「私もですわ」
「フェイのことが好きです」
「知ってるなの」
「勿論京のことも好きだよ」
「キョウ、ごしゅじん、すき!」
一緒に居たいと思える、最高の仲間たちへ向けて。
「僕はみんなが、大好きです」
心からの気持ちを、心からの笑顔で。
「カイトは小悪魔になる素質を十二分に持っていると思うのだがどうだろうマリアっちさん」
「そやねえ、似通ったもんはもっとるかも知らんなあエリファスはん」
「お2人共、悠長にお話している場合ではないですよ!」
「めだま、たくさん!」
「正真正銘【Kinship】の初クエストなの」
さっき知った、僕らのギルドのその名前。
名付けたのはフェイらしく、言葉の意味は家族のようなものだと言われた。
家族。
それは、手に入れることが出来なかった存在。
見えるはずも無いその繋がりを、僕は確かに、ここに感じた。
仲間であり、家族でもあるみんなと一緒に。
これから先も、僕らは進んでいくんだ。
「フローティングアイ、来ます!」
「「「「「おう(はいっ)!」」」」」
僕らは同時に、魔物に向かって飛び出した。
未だ見ぬ未来は怖いけれど。
しかし同時に楽しみでもある。
みんなと一緒なら、きっとどんなことだって。
前略、過去の境 界人へ。
僕の人生は今、全てに恵まれていて幸せです――
Fin.
ここまで読んで下さった全ての方に特大の感謝を。
活動報告を更新しました。




