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No.042 烏兎匆匆(うとそうそう)

 順番に思い出していこう。




 いつの間にかやってきていたこの世界で目が覚めて。

 訳も解らないでいた僕はフェイと出会えた。

 彼女に連れられた先で京が居ないことに気が付いて、喪失感に耐えられなくて。

 だけれど、そんな僕の背中を押してくれたのもまたフェイだった。




 フェイと別れた僕は1人。

 次々と降りかかる幸運に恐怖していた。

 クエストを受けようと発注所へ行けば、そこで【1】だったステータスが反転していることが解って。

 【999】というその数字を正常に理解なんて出来ないまま、星1ランクのクエストへと向う。


 魔物と遭遇しても幸運が尽きるなんて事は無く、手に入れた報酬額には開いた口が塞がらず。

 何度目かのクエストを終えた後に黒いスーツのお爺さんと出会い、そして京への手がかりを手に入れた。




 京と再会出来たあの瞬間。

 忘れもしない、あの安心感。

 やっと見つけ出した相棒と、彼を助けてくれたらしい恩人を探しに行って。


 ここでもやっぱり幸運が僕らを手助けした。

 あの世界では真っ暗だった僕のみらいが、この世界では光が差している。

 そんな中で見つけた女の子。

 それがエリザベス・コリン――リジーさんだ。




 街へ戻った僕らは、彼女を宿の女将さんに託す。

 そして一緒にクエストを受け、発注所でステータスも振り分けた。

 驚くほどあっさりと倒せた魔物に戸惑いつつも宿へ戻ろうとすると、連れて帰られたはずのリジーさんが現れて。

 そして僕らは彼女に連れられ、王都のお城へと迎え入れられたのだ。




 お城では宴が開かれ、主賓として呼ばれた僕らはマリアさんと出会って。

 更には王様から直接命令を受けてしまった。

 逆らう気なんて全く無い僕は、黙ってそれを受け入れる。


 装備品を一新する為に城下町へ出た僕らは、そこでフェイと再会した。

 何処で知ったのか、彼女は僕の為に装備品を用意してくれていて。

 新しく知りえた知識を胸に、フェイは僕らの元から足早く去って行った。




 馬車に揺られて向った先はガユル森林。

 王様からの命令は、ここに居る魔術士を連れてこいとのこと。

 森の中にひっそりとたたずむ不思議な家で、僕らはエリファスさんと出会った。

 初見で怖いと思ってしまったけれど、何故だか僕らに優しくしてくれる良い人で。

 一緒に住んでいたフェイと共に、快く王都へ来てくれた。


 馬車を途中下車して、結局王様には会わなかったけれど。




 王様から再び命令を受けた僕らは、城下町に戻って2人を探した。

 そこで再びマリアさんと出会って、直ぐにリジーさんも合流して。


 ここで僕ら6人が、初めて同じ場所に集まった。


 次いでギルドを結成することになり、更には僕が代表になってしまって。

 あれ、そういえば、ギルド名って何になったのかな?

 ……まあ、それはともかくとして。

 僕らは名実共に、同じギルドの仲間となった。


 どうしても後ろ向きになってしまう僕が。

 どうしようもないほどに頼りない僕が。


 少しでも変わったのだと思えるなら、恐らくあの瞬間がきっかけだろう。




 そこからは怒涛の展開が続いていた。

 京が実はドラゴンで。

 実は魔導士だったエリファスさんがそれを手助けしてくれて。

 更には偶然ぶつかったお爺さんが探していた人物その人で。


 僕にマントと鞄を売ってくれたお爺さんやお詫びに貰った本が、こんな風に絡んでくるとは思いもしなかった。




 そして僕らは今、そんな過去の上に、こうしてこの場に立っている。











「……僕だけが、知りたいこと」


 全てを遡って、僕がたどり着いたその答え。


 この世界に来てからは何の音沙汰も無く、だけれどこの世界と僕を強く結び付けているその答え。


「おうおう、ようやっと解ったかボケコラ」

「さて、そうならば聞かせてください。君の問いを」


 フェイ、マリアさん、リジーさん、エリファスさん。

 彼らが知らないその答え。

 京は考えてすら居ないだろうその答え。



 考える時間はまだあるだろう。

 けれど、僕はそれを口にした。




「僕らがこの世界に来た理由を、貴方たちは知っていますか?」




 ずっと疑問だったこと。

 ずっと解らなかったこと。

 ずっと考え続けていたこと。


 何の対価も無く続く幸運や、反転しているステータス。

 それらの根本を指すであろうその事実が、僕の導き出した答えだ。


 僕だけが知っていて。

 尚且つ、僕だけが知らないこと。


 誰にも告げていないその現実を、みんなの前で声に出した。



「質問はそちらでよろしいですか?」

「もう変更は出来へんで」



 みんなの声は聞こえない。

 届いてくるのは、息を呑む気配だけで。


 僕もそれに倣って、お爺さんたちの言葉に黙って頷いた。






「よっしゃ! それをまっとったんやで俺ァ!」

「君がそこに行き着いてくれて何よりです」



 そして2人は口角を上げる。


 最大まで。

 最高点まで。

 最口角度まで。


 愉快に放たれるその声は、広場の中で反響し続けた。





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