No.040 旅は道連れ世は情け
京を助けてくれたリジーさんが、実はお姫様で。
トカゲだと思っていた京が、実はドラゴンで。
魔術士だと思っていたエリファスさんが、実は魔導士で。
なんていうか……うん、凄いな。
他に言いようが無い。
というよりも、あまりに幸運が続きすぎて理解が追いつかない。
「どうしたよカイトおねむか?」
「うわっ、えっ、あ」
「落ち着け落ち着けそろそろ慣れろよ後ろから抱え上げられても動じないくらいにはさ」
「そっ、れは驚きます!」
「ハッハハハ冗談だってその調子だカイトそれでどうしたよ」
直ぐにでも向かうことにした僕らは、ギルド組合所をあとにした。
そして、イニー洞窟までの道のりを急ぐわけでもなく歩いている。
「エリファスさんこそ、どうしたんですか?」
「もっとフェイたんに言うみたいに言えよ」
「え、えっと……エリファスさんこそ、どうしたの? 確かフェイと一緒に先頭を歩いてたはずじゃ……」
「良く出来ました正解者には俺の答えをプレゼントしてやろうフェイたんはキョウ氏に構ってばかりで返事もしてくれなくなったからここに来たわけださあ構え構うがよい!」
前を見やれば2人の姿が見えた。
ゆっくりと歩くフェイの頭に乗り、器用に背中へ張り付いている京。
重くないのかな……。
2人が仲良くしている姿は嬉しいけれど、なんだろう。
少し、残念なような。心寂しいような。
そんな気もする。
「お互い傷心を癒すべく盛り上がろうぜカイトさあ何を話そうお前とキョウ氏が出会ったあとの話がいいなそうだそうしよう」
「私も聞きたいです!」
「すっこんでろよお前なんなの心はダイヤモンドなの砕けねーのかよ流石の俺もびっくりだわ」
「聞きましたかマリア! 魔導士様が私のことをお前とお呼びしましたわよ!」
「ふふ、一歩前進やね」
賑やかな声につられたのか、フェイと京も僕らと混ざって話し出す。
仲間と繰り広げる楽しさは、どうやら場所を選ばないらしい。
太陽が傾いて、空は綺麗なオレンジ色に塗り替えられた。
以前来た時は涼しげな空気で満ちていたけれど、今はほんのり暖かくて心地良い。
「そんじゃさくっと終らせますか」
エリファスさんの魔眼は、物との繋がりから持ち主を視ることが出来ると聞いた。
どうやらそれだけではないらしいけれど、今重要なのはイニー洞窟にお爺さんたちが居るということだけで。
だからこそ、僕らはここまでやってきた。
「視えたのは洞窟の中だったが床一面緑に覆われてやがったな。解るかカイト」
「だい、じょうぶ……解る、よ」
「おっしそんじゃ任せたぜリーダー」
かつて、京と2人だけで生きていたあの世界で。
ここに来る寸前まで、僕らは洞窟最奥の部屋に居て。
だけれど、京を探しに来たこの世界の洞窟にはそんな場所は無かった。
代わりにたどり着いたあの広場がきっと、僕らが向かうべき場所なのだろう。
何故だかは解らない。
それなのに僕は、絶対にそうだと確信していた。
「何が起こるか解らない、ので、慎重に、行きましょう」
洞窟内の道と、広場に出る境目。
僕らは声を潜めて近付いた。
壁に張り付いて、そっと広場を覗き見る。
「魔物は……いない、かな」
「何してんだカイトさっさと行こうぜ」
「えっ、ちょ……!?」
そんな僕の肩を押して、エリファスさんが平然と歩き出した。
彼の動きに隠れようなんて意識は全く無くて。
「おら出てこいやなんか良く解んね-2人組!」
「あの、慎重、に……」
「諦めるのが一番なの」
フェイに諭され、僕の言葉は空しく消えていった。
エリファスさんに続いて僕らも広場へ足を踏み入れる。
けれど、そこに僕ら以外の姿は無い。
魔物の気配も無く、あのお爺さんたちだって居やしない。
草原のように青々とした地面が広がるこの場所は、のどかで軽やかな風が吹き抜けいてて。
どうしても、洞窟の中だということを忘れそうになってしまう。
「誰も……居ない?」
「あっれーおっかしいなー俺の魔眼に間違いなんざなかったんだけどなーつーかなんだここ変な場所だなおい」
「キョウ、ここ、すき!」
「イニー洞窟にこのような広い空間が……」
「以前来た時は、今よりも狭かった気がするなの」
口々に漏らす言葉が広場内で反響する。
幾ら自然の景色があろうと、岩が周りを囲っているから外へ出たわけではない。
僕らが入ってきた場所を背に見渡すけれど、他に入り口があるようにも見えなくて。
「まだ来てないのか、もう、出て行ってしまった、のか」
考えられるのはそのふたつくらいだろう。
それじゃあどうする?
このままここで待つべきか。それともいったん外へ出て様子を伺うべきか。
みんなと居ればここに居ても平気だとは思うけれど……でも、ここにいては直ぐに見つかってしまう。
だから。
立て直すためだと、みんなに言おうとしたその時。
「……どなたか来はるえ」
ずっと黙っていたマリアさんが口を開いた。
誰も居ない中央を見つめ、“何か”を待っているかのように。
そして僕らの視線が中央に集まった瞬間、それは巻き起こる。
突如として真っ白な煙が発生し、雲となって宙を漂い、一箇所に留まり広がって。
「ほう、鋭い子が居るようだね」
「やっぱしつけられてんやないか! しかも裏技使って! ずっこいわあ」
雲を掻き分けるように、お爺さんが現れた。
片や白色、片や黒色。
それぞれ真逆のスーツを身につけた2人組が、僕らの前に現れた。




