表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欲望の日常  作者: 枕元のうさぎ
2/2

初めまして。わたしの名前は

欲望達って食欲や睡眠欲じゃなくてもお腹すいたり眠くなったりするんだろうか?

擬人化だからどうとでもできるかな。

……あれ?なんか日本語として成り立ってない。

ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン。

冬の夜空を汽車の煙が灰色に染める。


「しっかしさぁ」


色欲が無欲に話しかける。


「あ?」


「なんだってこんな寒い日に生まれるんだろうねっ」


「……知るか。てーか、欲望は人間によって生み出されるものだろ。俺たちを作った人間が、今回のはそうとう物好きだったんじゃねえの」


言い終わるや否や、無欲はふわああっと欠伸をした。

色欲はそれを見て、一つ、へえ……とつぶやくと眠る睡眠欲を見ながらさらに話を広げる。


「夜だし。おもちゃの汽車に乗る掟とか森の行き方を知ってるのがこの汽車だけとか、そもそも何でこれ空を飛べるのとか色んなことが意味わからないなぁっ…………って聞いてるのかい?無欲……」


喋りながら後ろを振り返ると、帰ってきたのは返事ではなくいびきだった。


「えええっ……。暇なんだけどー……まあいいや。僕も眠ろうっ」


――――数時間後。


ガタン……ゴトン……ががこっ。


汽車が急停止した。

そして眩く輝いたかと思うと、結晶のようにぱりんっと割れた。

眠る欲望たちはそれに気づかず、力の入っていない体は重力に逆らえずそのまま。


どてっ。


「ぐがっ」


「んへっ!?」


「……んむっ」


三者三様に声を上げ、汽車から落ちた。


「ほほ。相変わらずじゃの。お前らは」


「……あー?」


「えっえっ?……あ、着いたのかっ」


「……おはよう……ございます……ぶつよくさま」


ざわざわと揺れる木々に囲まれたぽっかりとした空間。

目の前には穏やかに笑う、欲望が一つ立っていた。

そして、横には金色の髪をしたツインテールの欲望もいる。


「ちょっとアンタ達、挨拶くらい出来ないの?睡眠欲ですら出来てるのにほんっとうにグズなんだから!」


周りにいる他の欲たちから「あいつら今年も落ちてやんの」だの「出たよ知識欲の説教」だのと聞こえてくる。茶化すように明るい笑い声が響いた。


「わああ知識欲ちゃん、ごめんなさいっ。物欲様、お久しゅうございますっ」


慌てて頭を下げる色欲。

ほら、無欲もほらっ、色欲に促され、無欲も頭を下げる。


「……こんばんは」


「ほほ。久しいのう。ここの欲はみな仲が良いようで安心したぞ。――さて、そろそろ生まれ時じゃ」


微笑みながら、物欲が空間の中心に手をかざすと、白く輝く球体が現れた。


「物欲様、今回はどんな欲が来るのでしょうか?」


知識欲が聞く。


「知らぬ。俺とて人間の考えなど未知の領域じゃ。だが――然るべき対処、要は仲良く暮らすのだぞ」


「はい。仰せのままに」


胸に手を当てる知識欲。

他の欲も知識欲に続いて同じ動作をする。


ぱきっ。ぱきぱきぱきっ。

球体にヒビが入った。


「……生まれる」


無欲が呟いた。

ぱきっぱきぱきぱき……ガシャン――。

球体が割れ、中から新しい欲が出てきた。


長い黒髪に紫色の目。雪のように白い肌、白い着物。

雪女を連想させる様な姿をしている。

静かに周りを見回したあと、ゆっくりと、その欲は口を開いた。


「……はじめまして。わたしの名前は――死消欲。……あなたは?」


死消欲は手をかざしている物欲に問いた。

物欲が優しく笑いかける。


「俺は物欲じゃ。生まれたばかりですまぬが、これだけはそなたに問わねばならない。お前は――何故うまれた?」


みんなが見守る中、死消欲は俯いた。

物欲様は男でも女でもないです。

当たった人にはぱちぱちぱちっ(拍手)!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ