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吸血村へ プロローグ1
ハンターのいない日本で、ある村は吸血鬼に占領された。
『姉さま、本当に吸血鬼の家で働くの?』
『しかたないでしょう? 働く場所なんてそこか水商売しかないの』
金はなくとも由緒ある村一番の名家の長子が、水商売なんてするくらいなら。
村を支配する吸血鬼に与するほかない。
村人は吸血鬼に絶対服従だ。風あたりはいくらかマシな筈。
「お前がこの屋敷にきて10年になるな」
西暦20××、吸血鬼の末裔は屋敷の主となる。
16の誕生日を迎えた少女は、末裔の付き人になった。
吸血鬼の支配も、彼の父の代から緩んできて、これまで耐えてよかったと安堵する。
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「またとない名家のご令嬢ですよ坊ちゃま」
魔法区域ヴェルドには貴族制度が残っており、彼の場合は吸血鬼の末裔で特に結婚の自由がない。
一族は科学区域の開発した血液生成機により牙が退化している。
「まあ……そのうちさ」
「そういって何度お断りなさったのでしょうか」
じいやはもう老い先短いんですぞ。青年はため息交じりにマリッジハラスメントを受け流す。
「結婚のことより、まずは眷属だ」